ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測
このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。
今回は、トランプ政権が成立した場合に起こるアメリカ政治の根本的な転換についてだ。
おおかたの予想通り、ことし秋のアメリカ大統領選挙に向けた野党・共和党の候補者選びの初戦、中西部アイオワ州の党員集会で、トランプ前大統領は51.0%を獲得し、ほかの候補者に大差をつけて勝利した。トランプは、4つの刑事事件で起訴されているほか、立候補資格をめぐっても各地で訴えが起こされており、選挙戦と裁判が並行して行われる異例の展開となっている。だが今回の選挙は、事前の世論調査どおりの勢いを示した形になった。
共和党の候補者選びの第2戦となる東部ニューハンプシャー州の予備選挙は1月23日に行われ、トランプが勝利した。事前の世論調査で全国平均でトランプの支持率は62%と圧倒的なので、トランプが共和党の統一候補となる可能性は非常に高い。一方、コロラド州やメイン州の最高裁判所はトランプの大統領選挙への立候補を禁止する命令を出したが、連邦最高裁判所はこれを覆し、立候補を容認する可能性が大きいと見られている。そして、バイデンとの選挙戦を制し、2025年にはトランプは大統領として再度返り咲く可能性が出て来た。
●トランプが大統領に就任すると何がおこるのか?
このように、いまトランプ旋風が吹き始めている。先のアイオワ州の予備選挙は、それが始まったことを告げる最初の機会になった。では、トランプが実際に大統領になるとどんな政権になるのだろうか?
2020年までのトランプ政権は、一国主義が基本方針であった。このため、移民の入国制限と不法移民の排除、同盟国への経済制裁、同盟国との関係の希薄化、そしてNATOのような国際機関からの脱退や関与縮小、地球温暖化防止に向けた政策の全面的な見直しなどが基本政策であった。一方、アメリカの世界への関与を縮小させたため、海外で戦争を引き起こすことはなかった。トランプがまた大統領になると、バイデンの国際協調主義から、こうした一国主義の政策に戻る可能性が高い。日本の主要メディアを見ると、このような観測が一般的だ。
しかし、トランプが大統領になると、アメリカの民主主義のシステムを根本的に変更する変化があると見た方がよい。以下のアメリカの著名なシンクタンク、「ユーラシア・グループ」が出したレポート、「トップリスク2024」には、未来のトランプ政権を予想して次のように書いている。長いが引用する。
リスク1 米国対自国
ユーラシア・グループの2024年トップ・リスク・レポート
2024年1月8日
著:イアン・ブレマー、クリフ・クプチャン
https://www.eurasiagroup.net/live-post/risk-1-the-united-states-vs-itself
「トランプが再び勝利したら?
第2次トランプ政権は、行政権力を強化し、チェック・アンド・バランスを弱め、法の支配を弱体化させる措置を取るだろう。トランプは、障害とみなす数千人の公務員を粛清し、経験の浅い忠実な職員と入れ替えることで、連邦政府機関を取り込もうとするだろう。
(中略)
「ディープ・ステート(深層国家)」を一掃したトランプは、法の支配を破ることにあまり制約を受けなくなるだろう。彼の最初の仕事は、FBI、司法省、IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)を武器にして、自身とその同盟者に対する手続きを妨害し、政敵を迫害することだろう。バイデンとその家族もその対象になるだろうが、野党議員、メディア関係者、献金者、批評家など、この追放主義的マッカーシズムがどこまで及ぶかは、特に、政治的異論をよく言えば冷え込ませ、悪く言えばほぼ完全に封じ込めるという意味で、政治的スペクトル全体の行動を決定する重要性を示すという意味で、非常に重要な問題である。
第二次トランプ政権が無法な行動をとった場合、連邦レベルではそれを抑制する救済策はほとんどないだろう。議会が分裂したり共和党に支配されれば、トランプ大統領の行き過ぎた行動をチェックすることはできないし、する気もないだろう。保守的な最高裁は、その3分の1がトランプによって任命され、独立性を保つだろうが、反抗的な大統領に対して判決を執行する権限は限られ、南北戦争の終結以来、アメリカが経験したことのないような憲法上の危機が発生する可能性がある」
これを見ると、二期目のトランプ政権は司法省をはじめ、各省庁のベテラン連邦政府職員を粛正し、連邦政府に対してホワイトハウスが権力を集中するホワイトハウス独裁制を構築する可能性が高いというのだ。この体制を確立するためにトランプは、「法の支配を弱体化させる措置を取り」、トランプの反対者やバイデン一家をはじめ、野党民主党を迫害するとしている。
●「プロジェクト2025」
このような予測を見ると、耳を疑いたくなる。これはまさに、ホワイトハウスが連邦政府を取り込み、その命令に絶対的に従わせるいわばホワイトハウス独裁制の成立になるだろう。これは、ホワイトハウスがすべての行政を独占することで、司法(最高裁)と立法(議会)に制限を加えて独立性を奪い、アメリカの伝統的な三権分立の理念を破壊することにもなりかねない動きだ。
バイデンならびにトランプを批判したすべてのものに復讐を誓っているトランプであればこのようなことも願望するに違いないが、実際に政権を樹立するとなると、合衆国憲法ならびに米国の法的な規制があるので、これは実質的に不可能なのではないだろうか?
しかし、ホワイトハウス独裁制の樹立を現実的に構想するプロジェクトがある。それが、「プロジェクト2025」だ。2017年に成立した前トランプ政権には、統一的な政策は、アメリカ極右の大物、スティーブ・バノンを中心としたチームが作成した。それは比較的小規模なグループだった。しかし、2025年のトランプ政権の基本政策を準備している「プロジェクト2025」は、はるかに規模が大きく、組織化された集団だ。
Project 2025
このプロジェクトは、2024年のアメリカ大統領選挙で共和党が勝利した場合に、アメリカ連邦政府の行政部門を再編成する計画である。
プロジェクトの参加者は特定の大統領候補を推すことはできないが、多くはトランプやトランプ2024大統領選挙キャンペーンと密接なつながりを持っている。この計画は、「ユニタリー・エグゼクティブ理論」に基づいているとしている。
この理論は、合衆国大統領が行政府に対する絶対的な権力を持つべきだとする理論だ。つまり、大統領就任と同時に行政府全体を速やかに乗っ取るというものである。
この計画の策定は、アメリカの保守系シンクタンクである「ヘリテージ財団」が主導しており、チャーリー・カーク率いる「ターニングポイントUSA」、マーク・メドウズ元トランプ大統領首席補佐官をシニアパートナーとする「保守パートナーシップ研究所」、トランプ政権の元行政管理予算局長のラッセル・ヴォートが率いる「アメリカ再生センター」、スティーブン・ミラー元トランプ大統領上級顧問率いる「アメリカ・ファースト・リーガル」など、約80のパートナーとの共同作業で進められている。
●「ディープステート」の解体
このように「プロジェクト2025」では、三権分立を制限して、すべての権力をホワイトハウスに集中する大統領独裁制と呼べるような体制の構築を目指している。そして、この大統領独裁制には明白な目標がある。
それは、「ディープステート」の解体である。ちなみにこのプロジェクトの言う「ディープステート」とは、「CIA」や「FBI」、そして「NSA(アメリカ国家安全保障局)」のような情報機関だけに限定されるものではない。司法省をはじめとした連邦政府の各省庁の官僚制全体が「ディープステート」とされ、解体の対象になっている。
この計画では、「司法省」の資金削減、「FBI」と「国土安全保障省」の解体、「教育省」と「商務省」の廃止が提案されている。「ワシントンポスト紙」は匿名の情報源を引用して、「プロジェクト2025」には、国内法執行のために1807年の暴動法を即座に発動して、米国内で軍隊を配備することや、トランプの敵対者を追求するよう司法省に指示することが含まれていると報じた。
プロジェクトのディレクターである元トランプ政権高官のポール・ダンズは、2023年9月に、「「プロジェクト2025」は大統領に進軍し、ディープステートとの戦いに備え、整列し、訓練され、本質的に武装化された保守派の新しい軍隊をもたらすために組織的に準備している」と述べている。これはまさに、トランプの保守派による革命プランである。
こうした革命プランは、「Mandate for Leadership: The Conservative Promise(リーダーシップの使命:保守派の約束)」と題された920ページの政策提言本にまとめられている。これは無料でダウンロードし、誰でも読むことができる。これには、革命政権の高官候補者となる人材リストが付随している。また、「大統領行政アカデミー」と呼ばれるオンラインコースや、政権移行計画策定の手引きもある。以下で読むことができる。
Mandate for Leadership
The Conservative Promise
●地球温暖化の否定
この計画案はとにかく過激である。実際にトランプが大統領に就任し、このプランが実行されると、法の支配に基づく民主主義国家としてのアメリカが、本質的に転換してしまう可能性は高い。いま日本の主要メディアでは、トランプが次期大統領になった場合、国際協調を否定した自国最優先の一国主義になることが懸念されている。
しかしこの計画を見ると、変化はそれどころではない。アメリカという国家の根幹を揺るがす大統領独裁制の成立になる。もちろんトランプは、こうして得られた権限を使って、バイデンやクリントン、そして民主党を排除し、自分を迫害したものの法的責任をとことん問う闘争を開始するはずだ。このように見ると、先に紹介した「ユーラシア・グループ」の「トップリスク・レポート2024」で予測されたトランプの復讐は現実になる可能性が高い。
この計画書には、ホワイトハウスに権力を集中させた後、連邦政府の省庁をどのように改革すべきか、その具体的なプランが掲載されている。だが、この計画書には本来あってしかるべき項目がない。それは、地球温暖化の対策である。
「プロジェクト2025」は、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出を削減するための戦略を提示していないのだ。この計画書には、クリーン技術に3700億ドルを提供する画期的な法律である「インフレ削減法」の廃止、「米エネルギー省」の「融資プログラム局」の閉鎖、「米国家安全保障会議」の議題から気候変動を排除すること、同盟国に化石燃料の使用を奨励することなどが含まれている。
またこの計画書は、北極圏の掘削を支持し、連邦政府には「莫大な石油・ガス・石炭資源を開発する義務」があると宣言している。「プロジェクト2025」は、二酸化炭素の排出が人間の健康に有害であると判断した2009年の「環境保護庁」の所見を覆し、連邦政府が温室効果ガスの排出を規制することに反対する。
●2020年以上に混乱する米大統領選挙
さて、今回はすでに公開されている「プロジェクト2025」の内容のほんのさわりを見た。この計画書にある外交政策などは、記事を改めて書くことにする。日本にも甚大な影響があることは間違いない。
このプランが大統領独裁制と呼べるようなシステムにアメリカを作り替え、トランプにすべての権限を集中させるものであるので、バイデンを中心とした民主党は、あらゆる手段を使ってトランプの勝利を阻止しようとするだろう。一方、トランプ陣営も草の根保守のあらゆる力を結集して、彼らが「ディープステート」と呼ぶ連邦政府を解体すべく激しい運動を展開するに違いない。
民主党が圧倒的多数で勝利するという事態でもない限り、どちらが勝っても、トランプの共和党もバイデンの民主党も不正選挙があったことを理由に、結果を受け入れないだろう。2020年の選挙では、トランプが不正選挙を主張し、抗議運動が暴力化した。
しかし今回は、「プロジェクト2025」が大統領独裁制を主張し、連邦政府機関の一部解体を主張しているだけに、民主党の支持者も暴力化することだろう。すでに、トランプの当選を絶対に阻止することを目標にした「ネバートランプ」と呼ばれる過激なグループも広範囲に現れている。こうして見ると、今年の米大統領選挙はただでは済まないことは明らかだ。もしかしたら、暴力の応酬が収拾がつかなくなり、内戦を思わせるような状態になるのかもしれない。要注目だ。
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●「ヤスの勉強会」第127回のご案内●
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※録画ビデオの配信
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【主な内容】
・米大統領選挙の最新情報
・避けられない中東大戦争
・確実にやってくる金融危機
・中国経済圏の報道されない拡大
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社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
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