トップが語る、「いま、伝えたいこと」
第2次世界大戦前から戦後、しばらくの間、アメリカは世界で最も豊かで、しかも策略的であるか否かを別にすれば、人間的にも、もっともすぐれた人たちの国家であったようです。それに対して日本は不自由で、統制的な、真実を国民に知らさない国家であったようです。日本のことは私自身よく分ります。戦争は、その時点の文化と文化の対決といえるようです。
歴史と真実の探究が好きな私は、今年4月15日に講談社から出た『トレイシー』という中田整一さんの著書に惹かれました。彼の著書は私には参考になるのです。
そこで入手したのですが、先週になってようやく読む時間ができました。2日間でゆっくり読みました。びっくりしました。
以下に同書の表紙ならびに中田さんの経歴を紹介します。
『トレイシー 日本兵捕虜秘密尋問所』
中田整一
零戦の性能、大和の構造、軍需工場の内部、
暗号の詳細……アメリカ軍はどのようにして重大機密を獲得したか?
長らく米側で秘匿されていた「日本必敗」の構図
〜最強の日本兵は、かくも容易に口を開いた!〜
〈戦争は、国家相互間の文化と文化の対決である。戦いの局面には国柄や民族の特性が如実にあらわれてくる。「生きて虜囚の辱(はずかしめ)を受けず」の「戦陣訓」も戦前の日本の文化の容(かたち)と国民性であり、「戦陣訓」の間隙をついた秘密情報機関の「トレイシー」も当時のしたたかなアメリカ文化の容であった。 (「エピローグ」より)〉
《中田 整一(なかた・せいいち)プロフィール》
1941年熊本県生まれ。1966年、NHK入局。プロデューサーとして、現代史を中心としたドキュメンタリー番組の制作に携わる。代表作に「戒厳指令…『交信ヲ傍受セヨ』二・二六事件秘録」(79年放送)、「二・二六事件 消された真実―陸軍軍法会議秘録」(88年放送)、「ドキュメント太平洋戦争」(92−93年)がある。文化庁芸術祭優秀作品賞、日本新聞協会賞、放送文化基金本賞など受賞多数。退局後、執筆に専念。著書に、毎日出版文化賞と吉田茂賞を受賞した『満州国皇帝の秘録―ラストエンペラーと「厳秘会見録」の謎』(幻戯書房、2005年)、『盗聴 二・二六事件』(文藝春秋、2007年)、編著『真珠湾攻撃総隊長の回想 淵田美津雄自叙伝』(講談社、2007年)など。
私は、アメリカが、そんなにしたたかな文化を持っているとは思わないのですが、日本人には、したたかさはほとんどないと思っています。それが日本人のすばらしさです。
中田さんの主観が、強く出ている著書ですが、調査などは、実に徹底しており、書かれていることは読者さえ、その気でおれば、客観的に読め、事実を充分に知りうる名著です。
本書を読んでびっくりしました。指導者の大事さと体制の大事さをよく知りました。日本はアメリカという国をほとんど知らず戦争に突入したようです。そして、とうとう知らずに敗戦しました。
アメリカも日本のことは余り分っていなかったようですが、徹底的に調べて充分に知ろうと努力し、またそのうちに詳しく知って、戦争に対処したようです。これは当り前ですが、日本人は戦争には向いてないようです。それらが実にはっきり分ります。
当時、もっともすばらしかった国と、どちらかと言えば、その逆と言ってもよい国が戦ったのですから、しかも戦争に向いている国と向かない国の対決ですから、日本の敗戦はやむをえなかったと思います。これは歴史上のルールのようです。
戦争中、小学生や中学生であった私は、自分の体験をもとに、この本で書かれていることをかなり深く理解したと思います。よく分りました。特に、日本のリーダーの大事さが分りすぎるぐらい分りました。
だから日本人、特にリーダーにはぜひ読んでほしく、ここに紹介することにしたのです。
いまのアメリカには当時のすばらしさは、ほとんどないように思います。「どうしてか?」などを考えるのもよい勉強になります。
はっきり言って、いまは日本の方がアメリカより対決力がすぐれているところが多いかもしれません。とはいえ、いまの日本が学ぶなら当時のアメリカからだと思います。
ともかく、こんなに考えさせられる本は余りありません。びっくりしました。
当時の日本の軍人や政治家は、トップ層は別として、第一線で戦った人たちの大半は立派だったと思います。
これは同書を読んで感じた私の見解ですが、できれば同書を一冊買ってでも、ゆっくりお読みください。日本人としておおいに参考になると思います。
なお、本を読むときは、著者を知り、内容を客観視するクセも本書ではつくと思います。そうでないと読めない本だからです。ともあれよい本でした。
=以上=
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