“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2009.07
秋に向け、鳴りをひそめている危機

「ターミネーターにやられた!」
 今、カリフォルニアの人々は地団駄を踏んでいます。俳優のアーノルド・シュワルツネッガーを知事にした時から、何か破壊的なことが起きるとは予感はしていたでしょうが、まさにターミネーターの名のごとく財政を破壊してくれました。なんと、お金は払われず、“IOU”という借用証書で決済です。

 「ターミネーターを知事に選んだ時からこうなることはわかっていたのに!」反対派だった人達は、声を上げて言っているのです。
 実際問題、カリフォルニア州の財政は破綻しているのです。カリフォルニアに限ったことでもないし、全米中、ないしは世界中かもしれませんが、どこでも財政は逼迫で、「いかに借金ができるか」が勝負です。

 カリフォルニア州はイタリアに次ぐ財政規模を持つ、世界第8位に相当する財政規模です。知事は社会保証の削減など財政圧縮を目指しましたが、議会の反対で果たせず、ついにI owe you(私はあなたに借りがある)というIOU証書の発行に至ったのです。これがマンガチックで面白い。このIOU証書は珍しいので、コレクターの間ではちょっとしたブームになっているのです。
 「IOUを額面の70%で引きとりたい」や、「80%で…」など、ネット上では花盛りです。カリフォルニア州ではこのIOUに関しては、「10月から支払をする」と言っていますので、おそらく、デフォルト(債務不履行)でこの証書が紙になってしまうというケースにはならないでしょう。債券などは、期限が5年とか10年、長いものは30年40年ですから、これらの債券や国債の方がよっぽど危険と言えば危険極まりないと言えるのではないでしょうか!

 投資家で、冒険家のジム・ロジャーズは、「米政府は紙幣を一段と増刷しており、さらに多くを借り入れている。これは健全な通貨の基盤ではない。米国政府に30年間、3〜6%の利子で金を貸す(米国債30年物を購入する)ことなど、私にとっては全く考えられない。いずれ米国債を空売りする計画だ」と述べました。

 「米国債を買うなら、10月から支払を開始するというカリフォルニアのIOUの方がよっぽどまし!」 

 まともに考えればそうかもしれません。当然、投資としてもその3.7%という金利から人気が出ているのです。危険分散という観点から、その他の比較的格付けが低い債券と組み合わせて、投資債券を作るとか、相変わらず、どんなことでも金儲けに結びつけるところは、さすがアメリカというしかありません。

 名物知事とIOUという面白さから、話題となっていますが、この財政難からくる借金はどこの国でもやっていることであり、日本の国債も同じことです。最終的に国が面倒を見るかどうかというところが焦点であって、取り立てて驚くことでもありません。 

インフレはどうやって発生するか?
 これらグローバルな借金体質は今や、国家単位の問題として、「いつこの借入政策、ないしはそれを覆い隠す中央銀行の紙幣増刷という行動に限界がくるのか?」という段階にあると思います。いわゆるインフレの出現による社会システムの崩壊です。
 いくつかのケースがあると思われますが、この破壊的なインフレの出現は、それがあたかも自然発生したかのごとく演出されることでしょう。今予想されるところでは、イランの核開発に対しての欧米、イスラエル対イラン保守政権の対立激化からくる、紛争の拡大、軍事衝突からくる石油の暴騰に端を発する商品インフレが有力な候補でしょうか。

 7月上旬、英紙が報道したところによると、「今後、イスラエル軍がイランを空爆する際は、サウジアラビアが領空通過を黙認することで両国の当局者が合意した」とのこと。イランの核開発は時間の問題であり、アメリカ、とりわけイスラエルが黙って見過ごすことはないでしょう。
 米国債の暴落からくるドル暴落による貨幣価値の失墜から起こるインフレはどうでしょうか? 先日、中国の保有国債がまた増加したということで、米国債に対しての購入は続けられるとの見方も出てきました。中国は未だに元の相場を管理している関係で、ドル買いを続けています、そうなると、余ったドルの運用という観点から、どうしても米国債は投資対象から外せないとの読みです。しかし、報道によれば、中国の米国債買いは相変わらず短期債に限っていて、しかも今回の買い付けが増えた時期もガイトナー米財務長官の訪中時と一致しているとのこと。7月に懸念された、米国債大量発行による、米国債の暴落は一応回避されましたが、ニューヨーク・ダウの上げと共に、また景気回復ムードが訪れれば、いつ長期金利の上昇(米国債下落)の激しい嵐が押し寄せるかわかりません。世界中の投資家に見限られつつあるドル相場は、時間の問題で波乱局面となっていくことでしょう。

避けられない旧東欧諸国の爆発
 ちょっと変わったところで、東欧の経済崩壊から起こるヨーロッパの銀行破綻からくるユーロの問題もあります。今や旧東欧諸国の経済は破綻寸前の状態とのこと。ハンガリーからの報告では、なんと旧共産党時代のような闇の商売が花盛りということです。闇の商売というのはたとえば、家の改築や、修繕を頼まれた時に、これを会社で引き受けることなく、個人で、秘密裏に引き受け、少し安く仕事をして、全く、誰にも当局には報告しないというわけです。これにより税金を全く支払う必要がないということです。このような闇の仕事引き受けは、共産党時代には当たり前のことだったようですが、自由陣営に入って、そのようなことはなくなったのに、今この経済難によって、昔の形が復活してきたとのことです。何とGDPの20%までがこのような闇の仕事というから驚きです。急激に市場開放した旧東欧諸国は自国の技術の蓄積がなかったのです。そのまま西欧と合体したため、ほとんどの産業や金融機関はいわゆる、西欧の資本となったのです。

 日本が終戦後、すぐに市場を開放していたらどうなったでしょう? いい技術のある松下やソニー、トヨタといった企業はすべて発展途中で外資に買収されるか、そのような企業は育たなかったでしょう。旧東欧諸国はそのようなものと考えればいいでしょう。いざ経済危機となれば、自国の技術はまったくなく、また、どの国の国民も外貨で借金していたため、自国の通貨安で、借金の額が膨らみ、動きが取れない状況です。これから発生する旧東欧諸国の官民による巨額の債務は、西欧の銀行がすべてをかぶるしかなく、ふたたび金融危機が訪れるのは必至でしょう。今はIMFの緊急融資でつないでいる状態です。いずれ旧東欧諸国は、火薬庫となって爆発することは避けられないでしょう。

  1998年、ロシアはデフォルトして、LTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネージメント)はじめ、ヘッジファンドの大きな危機が訪れました。
 現在ロシアは、原油価格の下落と自国の産業の競争力低下から、経済は危機的な状況に陥りつつあります。銀行の不良債権比率は、ムーディーズによると、現在の11%から20%に拡大するということです。融資の2割が焦げつくというのは尋常な世界ではありません。10年前の悪夢の状態と少しも変わらない状況、むしろ酷くなっているかもしれません。このように、火薬庫は世界中に広がっているのです。今や、それらが複合的に発生してくるかもしれません。
 また、全く別の角度から、強毒性のインフルエンザの蔓延が新たな混乱作っていくかもしれません。スペイン風邪は、1918年の春にまずアメリカで発生しました。このときは、ほとんど死者は出なかったのです。同年9月、ヨーロッパから世界各地で、ほぼ同時に大量感染が始まったのでした。このときウィルスが変異して強毒性となったのです。1919年の春から、さらなる感染拡大となり、5千万人以上の人が亡くなり、これが、第一次世界大戦終了の真の理由とも言われています。
 いずれにしても、今秋からの混乱の種はつきそうにありません。束の間の安定期間がこの夏ということではないでしょうか。


(※朝倉慶氏は、(株)船井メディア企画の『朝倉慶の21世紀塾』でも詳しい経済レポートやCD情報、セミナーを開催、お届けしています。よろしければご活用ください。)


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朝倉 慶氏の新刊『日本人を直撃する大恐慌幕』『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、朝倉慶氏の新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売!さらに最新刊 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が5月30日に発売!

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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 船井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を船井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。

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