中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2023.08.20(第106回)
日本のお米の自家採種ができなくなる
〜放射線育種米って知っていますか〜

 突然ですが、みんな大好きな秋田県のお米、あきたこまちは、2025年からカドミウム低吸収米として開発されたあきたこまちRという品種に全面的に入れ替わることが秋田県議会で採択されました。従来のあきたこまちの種の生産と提供は2024年で最後になります。あきたこまちRは、放射線育種米コシヒカリ環Tとあきたこまちを掛け合わせて作った品種です。これは国策です。このことは、大手メディアはもちろんですが、秋田県地方紙でも報道されていません。ですから秋田県の方たちはほとんど知りません。農家も相談されていません。しかも、秋田県を皮切りに、兵庫県、そして全国のお米を○○○○○Rに全面転換する予定です。そこで、今回これはどういうことなのか、何が目的で、何が良くて、何が問題なのかを整理してお知らせしたいと思います。

放射線利用の現状 原子力の平和利用
 混乱するといけないので、放射線の利用の種類について、整理しておきます。放射線は原子力の平和利用として戦後始まり、放射線照射食品としての代表は、ジャガイモにコバルト60という放射線を照射して芽を出させなくする技術として知られています。他に放射線照射をかけて保存力を高めているものは、練り物製品、香辛料などです。しかしジャガイモの放射線照射は今年終わり、工場がこわされました。
 もうひとつ、放射線育種ということが、ガンマ線により、行われていました。これはウルチの雑穀をモチにしたり、私たちが知らないうちに多くの品種が作られています。もう把握するのも大変で調べることもできません。
 今回の放射線育種は、イオンビームを使うもので、その破壊力において今までとは一線を画しており、始まったばかりの技術です。その強さは小銃と大砲ほどの威力の差があり、遺伝子のらせん構造の2本の鎖を一度に寸断してしまうほどです。この破壊力のため、品種改良の効率が上がりました。これよりさらに効率が良いのがゲノム編集で、農研機構はこれを予定しているようです。
 誤解のないようにしてほしいのは、放射線育種とは、品種改良の1つの方法であり、出来たお米に放射線をかけているわけではありません。

品種改良の方法の種類と変遷についての整理
 ここで時代とともに変わってきた品種改良の技術を整理してみます。 1.交配による雑種(研究熱心な農家や種屋が良い形質の物の種を採ることで行ってきました) 2.自然の突然変異 3.化学薬品による突然変異(ここから人工技術になります。ミルキークイーンなどが有名です) 4.放射線照射による突然変異(ガンマ線、コバルト60) 5.イオンビームによる遺伝子損傷(これがコシヒカリ環Tで、ここから○○○○○Rが作られています) 6.ゲノム編集による遺伝子操作

 これを人間の科学の進歩だと称賛するか、遺伝子は人間がいじるものではないと規制するかは、私たちの倫理観・自然観によって違ってきます。

今回の放射線育種米の目的とは
 なぜ今、放射線育種でカドミウム低吸収米を作る必要が出てきたのか? それは、化学肥料が高騰し輸入も制限され不足していることから、汚泥を使った堆肥の利用を推進するためです。汚泥には、ヒ素、カドミウム、水銀、ニッケル、クロム、鉛などの重金属が含まれています。それだけでなく、日本には鉱山やセメント工場により、カドミウム汚染されている土地がかなりあります。イタイイタイ病の原因です。

国の方針と考えられる問題
1.カドミウム汚染米の買い上げを止めることにしました。
カドミウム汚染は企業の責任ですが、それを追求することなく、国が0.4ppm以上の汚染米を買い上げて救済してきました。しかし今後はこれを止め、あきたこまちRに転換してもらうことにしました。ここには、今後も国土の汚染をする企業に責任を取らせないということで良いのかという問題が残ります。

2.秋田県ではあきたこまちRに全面転換し、カドミウム汚染された田んぼ以外でもあきたこまちRを栽培することにしました。
カドミウム汚染された田んぼでだけ栽培すればよいのではと思いますが、県全体を一律にするのかという理由は、一部だけで栽培すると、カドミウム汚染された田んぼであるという風評被害が出るからだそうです。
国は、秋田県だけでなく○○○○〇Rを全国一律にする方針ですが、その理由も秋田県だけやると、風評被害で秋田県のお米が売れなくなる心配があるというものです。
この品種は、カドミウムを吸わないだけでなく植物や人間に必要なマンガンも吸わないので、イネが病気にかかりやすいという問題があります。ここには、品種を1つにすると、気候変動に耐えうる多様性が失われるという食糧安全保障上の問題があります。

3.放射線育種米のお米を有機認証として認める方針です。
放射線育種は、世界ではもうやっているところはありません。これを日本で有機認証に入れて本当に良いのでしょうか?

4.従来のあきたこまちの種子の生産と供給を止める方針です。
これが一番の問題です。多様性がなくなるのもさることながら、有機農家の中で、放射線育種米を良しとせず、従来のあきたこまちで作りたいと思う方がかなりいると思いますが、2024年を最後にあきたこまちの種子は買えなくなります。自家採種すればよいではないかと思うでしょうが、自家採種している農家でも、数年に1度は種子の更新をしています。
あきたこまちRは新品種であり登録品種であり、当然ながら知財権が発生します。あきたこまちの種子が買えず、あきたこまちRに切り替えざるを得なくなると、自家採種はできなくなります。

5.日本のお米をすべて知財権を持った品種にして、自家採種できなくする。
これは国の目指すところだとは思いたくありませんが、結果的にそうなります。種子メジャーの目指すところ、種子を制する者は世界を制する、ということが日本の米で実現してしまうことになします。種苗法改正の時に、国は日本の米は登録品種でないものが多いので大丈夫だと言っていましたが、それが数年後にウソになります。これは阻止したいと思いませんか?

 この道しかないのか? ・・・検討してほしい良い品種があります。
 知財権という問題はありますが、もう一つの選択肢に、 ポッカリという昔からある品種の存在をご紹介します。
 岡山大学の馬建鋒教授は、インドの古代米Poccali(ポッカリ)からコシヒカリの栽培試験をしています。ポッカリはインドに6000年前からある古代米で根ではカドミウムを2倍吸収するのに、種子である米は吸収しないしマンガンは吸収するという希望通りの特徴があります。知財権の問題はありますが、この品種の検討を国にしていただきたいと思います。

 最後に、土壌学者の福留さんは、カドミウム低吸収米のあきたこまちRでは、地中のカドミウムは減って行かないで日本の大地に残ったままなので、子孫に汚染源を残すことになり、この方法は邪道だというご意見を発表されています。
 良き土と、水と、食料を次世代に残すことを目標にしている私たちの心に響くご意見です。

 以上、日本のお米の危機的状況をお伝えしました。みなさまも気をつけて見ていてください。


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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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