ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測

このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。

2020.01.01(第71回)
「LEAP/2020」の驚くべき予測。

 明けましておめでとう。2020年になった。オリンピックで明るい年になるという予感もあるが、実際はどうなるだろうか? 気になるところだ。今回は2020年代全体を展望する記事にした。

 フランスの著名なシンクタンク、「LEAP/2020」の最新報告書、「GEAB139」の2020年代の予想についてである。

 「LEAP/2020」は、「ニューヨーロピアン政治政党」という党を立ち上げ、ヨーロッパの一層の統合を推進する汎ヨーロッパ主義思想運動の旗手であったフランコ・ビアンチェリが、1997年に設立したシンクタンクだ。40名ほどの研究者と専門家が世界の政治経済的な変動のトレンドを予測し、投資のアドバイスも行う。「LEAP/2020」は「GEAB」という名称の有料レポートをほぼ毎月発行しており、広く読まれている。筆者も購読している。

●的中した金融危機と多極化の予測
 すでに知っている読者も多いかとは思うが、「LEAP/2020」が俄然注目を集めるようになったのは、2006年からだ。この年「LEAP/2020」は、数年以内に金融危機が発生してグローバル経済の枠組みがほころび、中国を中心とした新興勢力の急速な台頭により、世界は多極化すると予想した。そして、金融危機の発生から多極化の進行を4つの段階に分け、そのタイムラインにしたがって世界は変化するとした。

 この予測が発表された2006年は、いわばグローバリゼーションの絶頂期であった。世界経済は勢いよく成長しており、金融危機が発生する予兆はまったくなかった。グローバリゼーションはこのまま進行し、将来は国境さえなくなり、すべての国々がシームレスに結び付く世界経済が出現するとする極端に楽観的な見通しが信じられていた時期だ。このようなときに発表された「LEAP/2020」の金融危機の予測は、悪い冗談として無視された。

 しかし、2007年4月に起こった「サブプライムローン破綻」、そして2008年には金融商品「CDO」の破綻が引き起こした「リーマンショック」の発生で、金融危機が深化し、世界経済の統合性すら危ぶまれる事態になった。これはまさに「LEAP/2020」が2006年に予想したことであった。それも、「LEAP/2020」が予告した4つのステップのタイムラインで起こった。そのため、2007年から「LEAP/2020」は注目を集めるようになった。

 もちろん、「LEAP/2020」のすべての予測が的中しているわけではない。しかし、金融危機以降も、中国の「一帯一路」の拡大、欧米とロシアの対立、「IS」の台頭、トランプの出現とアメリカの分裂、ブレグジットなどの出来事を予見し、現代の世界が向かうトレンドの解析に成功している。

●最新報告書が予測する2020年代の安定
 このように長中期のトレンドの予測に成功してきた「LEAP/2020」だが、その予測はグローバリゼーションの解体と世界の不安定化する動きが中心であった。
 しかし最新報告書の「GEAB139」では、これまでの予想とはうって変り、2020年から長期の安定化のトレンドに入ることを予測した内容になっている。これは「LEAP/2020」が金融危機とグローバリゼーションの縮小、そして多極化を予見した2006年の報告書に匹敵する衝撃的な内容だ。

 このコラムでは、「抑圧されたものの噴出」をキーワードにしながら世界情勢の長中期的なトレンドを解析してきた。「抑圧されたものの噴出」とは、社会的格差の拡大など、行き過ぎたグローバリゼーションのマイナス面が形成した負のエネルギーの噴出によって、既存の社会システムが流動化する現象だ。格差の拡大を引き金にして、白人至上主義、極端なナショナリズム、宗教的原理主義など、これまでの安定した社会では抑圧され、管理されてきたエネルギーの解除が進む。それとともに社会は一層流動化し、カオスと混乱が拡大する。
 いまこうした「抑圧されたものの噴出」が目の前で進行しており、2020年代はさらに社会の流動化のペースが速くなるだろうと予測してきた。混乱の拡大である。2021年あたりになると、覇権の失墜を恐れたアメリカはさらに凶暴化し、中国との一切の貿易関係がなくなる地点まで米中対立が拡大する。そしてこれが、次の世界的な経済危機を引き起こす背景になる可能性がある。

 実はこれまで「LEAP/2020」もニュアンスの違いはあれ、このような予測を展開し続けていた。カオスと混乱に向かう過程が一層深化するという予測だ。
 しかし今回の最新報告書では、これとは正反対の予測なのだ。世界は急速に安定期に入る可能性が大きいというのだ。むろん筆者も「抑圧されたものの噴出」によるカオスと混乱のシナリオを放棄したわけではない。これはこれでしっかりと堅持するつもりだ。しかし、「LEAP/2020」のような信頼できるシンクタンクが、こうしたこれまでとは異なるシナリオに転換したのだ。これも考慮しないわけにはゆかない。もしかしたら2020年代は、本当に安定期になるのかもしれない。

●第4次産業革命のテクノロジーがもたらす安定
 では、「LEAP/2020」が2020年代が安定期になるとする根拠は何だろうか?
 それは、2008年から始まった金融危機と世界不況を脱出する過程で、政府機関が培った高度な危機管理能力、そして5G、AI、ビッグデータ、そしてブロックチェーンを中心とした第4次産業革命のテクノロジーの急速な発展である。

 「LEAP/2020」は、2008年の金融危機以前の政府機関の危機管理能力と、現代のそれでは雲泥の違いがあるという。あまりに記事が長くなるので今回は詳細は書かないが、経済や金融の分野では、第4次産業革命の先端的なテクノロジーの応用によって、政府の予測能力と分析能力が飛躍的に進展し、はるか以前に危機の発生を予測して問題に対処できるようになりつつあるという。それは、市場のビッグデータを高度なAIが解析し、市場がパニックに陥る予兆をはるか以前に把握したり、金融商品の動向をAIが細かくモニターし、破綻の時期を予測したりすることだ。

 「LEAP/2020」は、CLO(ローン担保証券)の破綻、ドイツ銀行の破綻、市場のパニックなど、金融危機の引き金になるといま考えられているような事態は、たとえそれが起こったとしても、それが危機を引き起こさないように十分に管理されているので、これらが危機の原因となることはまずないだろと予測する。
 そしてさらに注目すべきは、5G、AI、ビッグデータ、そしてブロックチェーンなどの第4次産業革命のテクノロジーを適用して高度な社会管理が可能になり、それが社会の安定を実現することだという。

 ちょっと分かりにくいかもしれないが、それはこうしたことだ。高度な第4次産業革命型のテクノロジーの活用によって、国民の不満や不安、そしてストレスなど、社会を不安定にさせる要因を発見し、それを社会政策で対応することによって、国民の不満が臨界点を越えて拡大することを早期に抑止してしまうシステムだ。このような高度な社会管理を実現するシステムを政府が導入すると、社会は安定すると「LEAP/2020」主張する。

●具体例、ブロックチェーンとAIの組み合わせ
 しかし、「LEAP/2020」がこのように主張しても、これがいったいどういう状況なのかイメージしにくい。国民の不安や不満、そしてストレスを早期に発見し、対処するシステムとはどのようなものになるのか、ヒントとなるものを見て見よう。
 これは「LEAP/2020」に掲載されているわけではないが、イメージできる具体例となるものがあったので、見て見よう。それは、AIとブロックチェーンの組み合わせが実現する、医療分野などで実際に運用されているシステムだ。

 個人の病歴や医療機関受診記録の電子化は徐々に進んでいるが、これをブロックチェーンで一括管理すると、個人の健康に関するすべてのデータが安全に記録できる。すると、この記録を必要とするあらゆる医療機関がこれを参照できるため、個人の病歴や治療記録が確実に共有される。
 また、患者の許可さえあれば、医療の個人データは研究者にも参照が許されるため、新しい治療法や医薬品の研究に有用なデータを即座に提供することが可能となる。
 すでにこうしたプロジェクトはあるが、これは医療分野だけではない。自動車メーカーやディーラー、そして保険など、社会サービスのあらゆる分野で画期的なプロジェクトが進行中だ。

 将来、自動車メーカーやディーラーは、購入者の個人情報をすべてブロックチェーンに記録して、そうしたビッグデータのAIによる分析から、個人にカストマイズされたモデルの開発ができるようになるかもしれない。また医療分野では、あらゆる個人の事故や疾病の治療記録をブロックチェーンのシステムで管理するプロジェクトがすでに複数立ち上がっている。さらに警察は、事故や犯罪に関係するすべての記録をブロックチェーンで管理することは可能だ。
 ブロックチェーンにはAIを内蔵させることができる。こうしたAIは、ブロックチェーンが管理しているデータを分析し、様々な予測を提供することができる。たとえば医療分野のブロックチェーンのAIであれば、特定の個人の疾病記録や治療履歴、そして生活記録を分析し、将来罹る可能性のある病気とその時期を予測することができる。
 さらに、このようなAIを内蔵したブロックチェーンのシステムが、自動車、医療、警察、保険などの相互の関連性が高い分野のブロックチェーンと連携できるのであれば、年齢別の事故率や疾病確率の平均値をもとにした既存の保険契約ではなく、徹底的に個人のリスクに特化した保険の提供が可能になる。
 自動車メーカーやディーラーのデータから抽出した個人の購買履歴を参照したり、さらに医療分野のブロックチェーンに管理されている個人の疾病、ならびに治療履歴を分析し、そして警察が管理しているデータにアクセスできれば、自動車事故や病気のリスクを個人単位で細かく予測し、保険を個人ベースで算定されたリスクをもとにカストマイズできるのだ。

 もちろんこうしたシステムの構築が技術的に可能であったとしても、個人情報のアクセスが許可されるかどうかは分からない。特に日本では、医療や警察の個人情報は、法的に保護されている。しかし、そのようなアクセスの法的な制限が比較的に緩い自動車メーカーやディーラーのシステムとの連携のハードルは、さほど高くないはずだ。
 メーカーやディーラーも特定車種の事故の履歴は持っているはずなので、こうしたデータを保険分野のブロックチェーンが内蔵しているAIに分析させると、被保険者の性別や年齢、職業、そして購入した車種に対応して将来の事故率を予測できる。

●政府が個人の満足度を把握する調査
 このように、ブロックチェーンに記録された個人のデータをAIが分析するとともに、そうした記録の集合体である特定の社会集団のデータをビッグデータとしてAIが解析し、個人と社会集団の将来の行動を予測するシステムが、おそらく「LEAP/2020」が主張する内容に近いはずだ。

 さらに「LEAP/2020」は、政府が国民の不安や不満を事前に把握して社会政策を小まめに実施し、社会を安定化させるためには、やはりAI、ブロックチェーン、ビッグデータなどを活用して社会調査を頻繁に行うことになるだろうとしている。それは、医療や保険、車の運転、商品の購買履歴などを通して個人をプロファイリングすると同様の方法を用い、個人がなにに不満を持ち、なににストレスを感じ、そしてなにを望んでいるのか政府が把握するための調査だ。こうした調査を頻繁に行うことで、特定の社会集団の要望にカスタマイズされた政策の実施が可能だ。

 ところでこれは、国民の意見や要望、そして政策に対する満足度を政府が細かく国民に聞くので、これも民主主義の一形態であるといえるのかもしれない。日本や韓国を含めた欧米先進国のモデルが、選挙で国民の代表を選ぶ間接民主制だとしたのなら、政府が国民の要望と意見を細かく聞き、政策を小集団や個人にニーズにカスタマイズさせる新しいタイプの社会管理型の民主制といえるのかもしれない。

●中国が導入か? 習近平政権の方針
 そして「LEAP/2020」は、このような社会管理型の民主制を最初に導入する可能性がもっとも高いのは、中国になるはずだという。
 その根拠のひとつとして、2018年12月に「ケンブリッジ大学」から公開された論文、「中国の草の根討議はどこまで民主的か?」を引用し、2012年から浙江省の省政府が実施している、住民の要望を聞き、問題を協議する草の根討議を社会管理型民主制の例としている。すでに2018年までに393回実施されているという。

 これは興味深い事例である。そして、10月末から11月の初旬にかけて中国共産党は新しい方針をいくつかの機会に発表した。

 まず中国共産党は、今後の重要な政治方針を決める中央委員会総会、4中全会を開き、「国の統治の方法をより現代的なものに変えてゆく」という方針を決定した。これは、建国100年にあたる2049年を見据えて、1)国家の統治システムの現代化、2)党の科学的・民主的な政務の執行、3)人民を主人公にして社会主義民主政治を発展させること、4)国家の安全を守るための法と執行制度を確立することなどが中心的な内容だ。

 「人民を主人公にして社会主義民主政治を発展させること」とは、民主主義を導入するかのようなニュアンスの方針だ。いったいこれはどういうことだろうか?
 これは10月24日に開催された「中国共産党中央委員会(中共中央)政治局第十八回集団学習」という会議における習近平の発言を見ると、具体的な内容が分かるとされている。そこで習近平は、「ブロックチェーンを核心的技術の自主的なイノベーションの突破口と位置づけ、ブロックチェーン技術と産業イノベーション発展の推進を加速させよ」と命じた。さらに「ブロックチェーン+」という応用を用いて、実体経済や民生に役立てるようにせよというメッセージも出した。

 「ブロックチェーン+」というシステムを用いて、窓口を一つにした社会サービスを提供するともしている。先の例では、医療や保険の分野でブロックチェーンとAIを組み合わせてサービスを個人のニーズにカストマイズするシステムを見たが、これと同じようなものを社会サービスをカストマイズするために導入するのかもしれない。これはまさに社会管理型民主制ともいえるようなものだろう。

●新しい国民管理の方法、香港以降
 いま香港で起こっている動乱の管理には、こうしたシステムの導入は間に合わないだろう。香港がこれからどうなるのか注目しなければならないが、香港の抗議運動が大きな教訓となり、これから中国本土では高度な第4次産業革命のテクノロジーに基づいた社会管理型民主制のシステムが早急に導入される可能性が高いと思われる。

 今回の「LEAP/2020」の報告書は、これが2020年代の社会体制を決定するシステムとなり、欧米をはじめ他の国々でも早急に導入され、その結果、社会の安定期に入ると予見している。これはこれまでの民主主義体制とは異なるものの、民主化の新しい方向性ではないかとしている。
 もちろん、こうした社会管理型民主制のシステムの導入で社会が安定する前に危機が発生し、カオス的な混乱期に突入する可能性はある。いわばいま我々は、危機の発現が先か、社会を安定させるシステムの導入が先かが問われる地点に立っている。どちらの方向に進むのだろうか? 要注目だ。

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Profile:高島 康司(たかしま やすし)
高島 康司(たかしま やすし)

社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/

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