トップが語る、「いま、伝えたいこと」
『企業倫理学ノート』(同友館刊)書中より |
何かおかしい。これまでの常識が崩れ始めている。勝ち組と負け組みがはっきりした。本当にそうなのだろうか。豊かさを実感できない豊かさと、紛争や失業に向き合う貧困とが世界で共存する。1日1ドル以下で暮らす人は地球上に10億人、その一方で1日2兆ドルを超える国際投機資金が地球上を駆け巡る。
インターネットで誰でも瞬時に時空間を超え、バーチャルリアリティを再現できるIT技術を手にした人類も、水1杯口にしなければ1週間ともたない。夏は冷房、冬は暖房、熱いシャワー使い放題の暮らしでは、こうした矛盾は感じ取れない。氷床がすさまじく溶け出し、犬ゾリ犬が失業しているグリーンランドの現地に立たないと、温暖化も実感できない。
20年も前、ポーランドの造船所の反乱が予想もしなかった共産主義の崩壊を招いたが、激変した旧ソ連や東欧など体制の混乱は別にして、勝ち組となる米国など、資本主義の前途に輝きはもう見られない。なぜだろう。
企業とは何か、が問われている。まさに同じ理屈である。失業した犬ゾリ犬ではないが、企業の目的は人の雇用に尽きる。米国を震撼させた2001年の同時多発テロ、世界中に相次ぐテロや暴力行為も、元をただせば最貧国を覆う圧倒的な失業率、若年層のほとんどが職を求めて無為無策に1日を過ごす矛盾に行き着く。
資本主義はゼロサムゲームである。決まったパイを分け合うことなく、勝った者がすべてを取る。極端にいえば、勝った者が儲けた分、負けた者が償わねばならない非情な仕組みである。勝った者はその代償として、多額の分け前を社会に寄付することで(罪?を償い)名誉を手にする。
この仕組みでは雇用は企業目的とは見なされない(抜粋ここまで)。
私が最近読んだある本の「まえがき」です。すばらしい文章です。
資本主義というか資本主義的生き方には大きな矛盾があります。この文のとおりです。われわれは、ぼちぼち、その「まちがい」に目ざめ、「変えよう」と動き出さねばなりません。
このことは十年ほど前から、折のあるたびに私の言ってきたことですが、現実は、その逆の方向に進んでいるような感もあります。とはいえ、それはますます矛盾を表出させることになりました。
ところで、先日、船井総研の常勤監査役の宜川 克君から、彼の新著を送ってきました。その題名は『企業倫理学ノート』で、今年3月25日に同友館から発刊されたばかりの本です。
著者は、私の家内の弟で、私の義弟になります。
高分子科学が専門の工学博士ですが、ドイツのダルムスタット工科大学で客員研究員をしていたのを、私の都合で日本へ連れて帰り、船井総研に入社してもらいました。20数年も前のことです。彼は時々、著書を出します。
私から見てもすばらしい奥さんに恵まれたからか、どんなことも実に中庸、公平な見方をします。
理科系の学者にありがちな、固い文章ですが、その本の内容は読みごたえがあり、どの本も私は丹念に読んで「なるほど」と感心しています。
船井総研に20数年も在籍し、「経営」というものを見てきたので、この『企業倫理学ノート』の内容は、企業経営にとっては、その根幹である「雇用」と「持続可能性」こそが、企業価値だと見事に喝破しています。
特にドイツにいたのでドイツと日本の比較などにふれていますがよく分ります。
たとえば次(右上)のような表がこの著書中に載っています。
ともかくわれわれの考え方の「なにがまちがい」かを気づかせてくれる本です。義弟の著書なので、「読んでほしい」と言いにくいのですが、経営者にはぜひ一読をお奨めしたいと思い紹介しました。
=以上=
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