トップが語る、「いま、伝えたいこと」
最近、読んだ本の中で、多くの人にもお読みいただきたい本が3冊あります。
それは、中丸 薫さん(国際問題評論家)と菅沼光弘さん(元・公安調査庁、調査第2部長)の対談本で、『この国を支配/管理する者たち』(2006年2月28日 徳間書店刊)と、本山美彦さん(京大大学院、経営学研究科教授)の、『売られ続ける日本、買い漁るアメリカ』(2006年3月20日 ビジネス社刊)、そして斉藤 栄さん(元・国土庁のキャリア官僚、現在、国会議員秘書)の『まちづくりから日本を変える』(2006年3月10日、海南書房刊)です。
特に一気に読んだのが斉藤さんの著書です。この本は著者がサイン入りで私宛に送ってくれたものなのですが、同書のサブタイトルは〈元官僚が挑戦する「新まちづくり論」〉です。この本は書かれている内容が、すべて参考になり、先週日曜日(4月2日)にもう一度メモをとって読みなおし、あらためてびっくりしました。
4月3日の船井総研の入社式に参加した後、役員諸君と昼食会を兼ねた懇親会を持ちましたが、その時に、彼らに読んでほしい3冊の本の中の1冊としてあげたくらいです。斉藤さんと同年輩の人たちがほとんどだからです。
ところで斉藤さんの本については私のノートのメモには次のようなことが書かれています。
1. 日本の人口――@鎌倉幕府成立時 696万人 A室町幕府成立時 818万人 B江戸幕府成立時 1,227万人 C天保時代 3,101万人 D日露戦争時 4,780万人 E2000年 12,693万人 F2050年 10,059万人
2. キャリア官僚の思い――@地方自治や住民参加も信用できない。人材がいないし、エゴしかない。国は頭脳、地方は手足でよい。
Aわれわれは「wifeの死に目にあうより仕事が大事」でやっている。
B省益こそ、もっとも大事。これが自分らの最高の仕事。
C政治家には情報がない。したがって彼らはわれわれの案に従わざるをえない。
Dお金(予算・税収)を伴った権力こそ万全。これを手放してはならない。
3. 官僚が嫌われる理由――@霞ヶ関のキャリアには東大卒が多い。特に事務官には東大法学部卒が多い。彼らでは新しいこと、オリジナルなことは絶対に出てこない。
Aキャリア官僚が国民の自由を奪い、自立した市民の育成を阻害している。企業の活力や自由も奪っている。
B日本は官僚天国。日本は官僚社会主義。
C日本は中進国、個人生活の充実より、景気向上。これは官僚の意図。
D心ある人は「役人はまともな人間ではない。税金にぶら下っているゴキブリみたいな存在だ」と思っている。
さいごに、この本の「あとがき」で斉藤さんはつぎのように書いています。これも参考になります。
おわりに
私はこれまで、チェコスロバキア、デンマーク、スペインなどヨーロッパの国々を訪れる機会があった。そこで常に感じたのは、ヨーロッパの「圧倒的な心の豊かさ」である。
たとえ失業率が高かろうが、財政難であろうが、それは自分達の長い歴史の中のほんの一時的なことと捉え、精神的な豊かさを失うことはない。しかも、一人ひとりが「自分にとっての幸せ」を明確に意識し、それをつかもうと常に努力している。そして、その幸せは必ずしも経済的なものとも限らない。
自分は、たまたま「まちづくり」に関連する仕事に携わってきた。自分の経験を活かして「新しいまちづくり」を進めてゆけば、あのヨーロッパの豊かさに日本が近づけるのではないかと考える。明確な目標と計画、そしてそれに賛同する仲間を集めることができれば、きっと実現できるはずである。
ヨーロッパのまちを歩いていると、ふっと歩き疲れたなと感じる時に、目の前にベンチがあることが多い。日本ではどうだろうか? ベンチよりも自動車が優先されていたり、ベンチがあっても寝そべることができないような細工がしてあったりと、どうも『人間中心』の思想からは程遠い。
この両者の違いは、多くのことを国に任せ、全国一律の基準でまちづくりを進めてきた日本と、たとえ合意形成に時間がかかっても、住民が関係しながらまちづくりを進めてきたヨーロッパとの違いではないだろうか。自分が高齢者になった時、街中で自然にベンチが目に入る、そんなヨーロッパの風景を日本で実現できれば、私はこの上なく幸せである。
最後に、出版にあたってご協力いただいた各方面の皆様に心から感謝の意を表して、この本の結びとさせていただきます。
斉藤 栄(抜粋ここまで)
できることならこの本を読んでください。その後、私はこの人と二度あいました。著者は人間味あふれるアタマのよい人です。価格は1600円と消費税80円ですが、非常に勉強になる本です。「日本の役人」について考えさせられるとともに、人としてどう生きるべきかにも、多くのヒントがあります。
=以上=
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