中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2015.07.20(第10回)
自家採種できる種を子孫に残すオイルプロジェクト

 メダカのがっこうでは、米を筆頭に味噌、醤油、梅干し、たくあん等、基本的な食材を原料から無農薬・無添加で作っていますが、昨年から民間稲作研究所の稲葉先生の指導の下、油も種からこだわって作り始めました。実際に原料からよく調べて作ってみると、いろいろなことがわかりましたので、少々報告させていただきます。

 まず種の問題です。春林蔵というヒマワリの種を播いたのですが、これは名前が日本名なのに、カナダから輸入したハイブリット(F1種・1代限りの交配種)で2代目に同じ形質の種ができません。しかし次世代に自家採種できる種に戻すため、これを2代目のよい形のものを選んで自家採種し、3代目を作るために種播きをしました。
 すると、収穫量が激減しました。1代目はヒマワリの高さもそろい、一株に一つの大きな花が咲き、種も大きく育ったものが収穫できるので、油もたくさん搾れるのですが、2代目は高さもバラバラ、花芽も1株にたくさんつくものが多く、種も小さく油もあまり搾れません。ましてや3代目となると、さらに高さがバラバラで、その中から1株1花のしっかりしたものを選ぶのも大変な手間と作業が必要です。その上除草剤を使わないので、草の勢いも半端でなく、ヒマワリが埋もれてしまった場所もかなりありました。結局、収穫量も1代目なら1ヘクタール当たり1トン収穫できるところが、3代目は100kgと1%の量しか収穫できませんでした。
 テレビや写真で私たちが知っている素敵なヒマワリ畑は、みんなハイブリットの種を播き、しっかりと除草剤を撒いた畑だったのです。しかし、メダカのがっこうの自給自足くらぶの会員たちはこのギャップにがっかりはしたものの、めげることなく、また収穫量が最初に予定していた半分以下になったことにも納得して、とても高くついてしまったヒマワリ油を現実を知る貴重な体験として受け取ってくれました。

 今年4代目のヒマワリを育てていますが、うれしいことに茎が太く一株に一つの花芽が付いたしっかりとしたヒマワリが増えています。収穫量も少しは増えることでしょう。
 次に搾り方の問題です。日本には昔、村に一か所は油搾りの場所があったのですが、今ではほとんどありません。そこで稲葉先生は油搾りの文化が残っている韓国に行って、スクリュウ式の搾油機を手に入れて来ました。ここにヒマワリの種を入れると、真っ黒な油が搾り出てきます。これを1週間ほどかけて濾過すること2回、やっと薄い黄色の透明なヒマワリオイルがとれるのです。この過程と手間と時間がこれほどかかることは、やってみるまで知りませんでした。
 ちなみにこのような搾り方を低温圧搾式と言います。これだとヒマワリだと収穫量の25%しか油が搾れません。100kgなら25kgの油しか取れないのです。私は油がこれほど貴重なものだと知りませんでした。今ではほとんど揚げ物はせず、昔の日本人のように、ゴマやクルミをすり鉢ですって油をだし、あえ物にして油分を摂ることが多くなりました。
 私たちが作ったヒマワリ油は原価で300ccあたり1800円以上になってしまいました。収穫量が2倍になっても900円。それなのに、スーパーで売っている油は何故安いのでしょう。
 それはまず、種がハイブリットや遺伝子組み換えの大量にとれる種であること。それと有機溶剤で溶かして収穫量の90%近くの油を取り出しているからです。遺伝子組み換えについては、遺伝子組み換えとはその植物のたんぱく質の形に現れ、その葉を食べた虫が死んだりするのですが、油にはタンパク質が入らないので、表示しなくてよいことになっています。しかし地球上の生態系に大きな打撃を与えるものである以上、メダカのがっこうはその油をよしとするわけにはいきません。
 しかしノルマルヘキサンという有機溶剤は私たちが知っているベンジンであり、これに種を溶かしてから熱して揮発させ取り出した油を、脱色脱臭するために、薬品や200度以上の高温で処理した油には、その種の良い成分が消えてしまっています。また、高温処理によるトランス脂肪酸への変化や、消泡剤(シリコーン)や酸化防止剤の添加による質の劣化が避けられません。

 巷では日本人に不足しているオメガ3系の亜麻仁油が良いとか、エゴマ油が良いとか様々な情報がありますが、どんな植物油もその取り出し方に良し悪しの基準があります。
 メダカのがっこうは、種の重量の20〜30%しか搾れず高価になってしまいますが、低温圧搾の油をおすすめします。この油は低温圧搾式と書かれており、500ccで3000円以上はします。
 次にそれほど悪くないといえるのは、温度をかけて煎ってから搾った高温圧搾法です。170度に熱してから搾ると60〜70%取り出せるので少し安価になります。高温圧搾法とか玉締め法とか一番搾りとか書かれています。オリーブオイルでいえばエキストラバージンオイルのみ。これ以外のものは必ず搾りかすをヘキサンで溶かして取り出したものを混ぜ込んでいます。またよい油も150度以上で熱するとトランス脂肪酸になりやすいので、調理方法に注意が必要です。
 本当に自家採種できる種を子孫のために残しながら、低温圧搾の良い油を手に入れるには、自分たちで作るしかありません。しかも、私たちが取り組んでいるオイルプロジェクトは、民間稲作研究所が、放射能に汚染された畑をヒマワリや菜種で浄化しようという運動です。これらの種を搾った油にはカリウムが含まれないので、放射性セシウムが入らないことから、これを農家収入にしながら日本の土を取り戻そうというすばらしい活動で、メダカのがっこうはこれに協力したいと思っています。

 これを読んでくださっている皆様も、このオイルプロジェクトに参加してみませんか。
 8月1日(土)ヒマワリ畑の草取り作業と菜種の搾油か濾過の見学。8月22日(土)はヒマワリの収穫があります。1口9000円で300ccのヒマワリ油が8本から10本分けられる予定です。
 集合8時東京駅八重洲北口、工事中の第一鉄鋼ビル前です。関心のある方は、メダカのがっこう事務局までメールまたはお電話ください。http://npomedaka.shop-pro.jp/?pid=74164716 
 メール:npomedaka@yahoo.co.jp Tel:0422-70-6647 です。

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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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