“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2013.12
インフレに向かう日本

●止まらない「株高、円安」の動き
 株式市場の上昇と円安の勢いが止まりません。株式市場は年末に向けて上昇のピッチを早め、12月27日、ついに6年ぶりに終値ベースでも16,000円台に乗せてきました。円相場も5年ぶりの105円台です。
 昨年11月の解散宣言当時は、株式市場は8,000円台、円相場は70円台だったことを考えると、隔世の感があります。私は一貫して株式市場は大相場に突入し、円相場も大暴落の流れに入った、と著作やラジオ放送、講演、レポートなどでしつこいほどに指摘を続けてきました。
 そしてそれが現実化してきているのですが、実際、多くの人達も株や円安について注目するようになってきていると思います。
 私が主張し続けているのは、この動きは止めることができなくなり、更なる株高、円安が人々の想像を絶するほどまで拡大していって、日本はやがて止めることのできないインフレ状態に陥っていくということです。現在の株高、円安はその動きの一里塚なのであって、この動きの行く先はマネーの価値がなくなるインフレが待っているということです。

 ですから私は一貫して株式投資、ドル投資の必要性を述べてきました。多くの日本人はまだ行動を起こせないでいると思いますが、来年はさらにこの動きが激しくなっていくでしょうから、預金や保険など従来安全と思われていた資産運用に凝り固まっている人達は厳しい局面が訪れることでしょう。また金投資など従来はインフレに強いと思われていた投資にも赤信号がともってきたことも注目です。
 本来は景気回復、デフレからインフレへという中で金投資などは報われるわけなのですが、これも世界的なドル復権の動きを受けて全く精彩がありません。金相場は今年13年ぶりにマイナスのパフォーマンスとなりました。ひとえに株と不動産だけが絶好の投資対象となって上げが拡大しているわけです。今後も投資の世界では株の一人勝ち傾向はますます勢いを増していくでしょう。

●いよいよデフレ脱却? インフレが始まる!?
 今年(2013年)、日本の個人投資家は年間で7兆円を超える額の日本株売却を行いました。私は何度も指摘していますが、日本では株式ブームなど起こっていません。実際起こっていることは<株売却ブーム>であって、投資家別の売買動向の統計数字がはっきりそれを証明しています。日本人の大半は株を売り続けているのです。これは長い間のデフレマインド、株は上がったら売るという投資手法が身にしみついているからです。将来はわからない、株は上がればやがて下がる、株は怖い、などと警戒して、上がったら売っておこうと、従来の投資手法を続けている結果がこのような史上まれにみる日本における<株売却ブーム>を引き起こしました。
 個人だけでなく、金融機関、年金基金、生損保と、日本ではあらゆる金融機関が株の売却に奔走したこの1年でした。
 今年、外国人投資家は年間では史上最高額となる14兆円の日本株買い付けを行いました。それに売り向かったのはすべて日本国内の投資家です。上昇相場でこんな膨大な売りを出し続ける国民は日本人しかいません。今年日本で起こったことは常軌を逸した<株売却ブーム>であり、日本の最も貴重な資産であり、世界に冠たる技術力を持った企業群の大安売りが行なわれたのです。不幸なことですが、これら日本人の誤った資産運用が変えられ、個人、法人を問わず、株や不動産を買うことに追い込まれる流れが今から始まると思えばいいでしょう。
 現金だけが安全、預金だけが万全ということなどあり得ません。時代は常に変わり、インフレとデフレを繰り返すのです。そしてアベノミクスの登場により日本は歴史的、劇的な変化の真最中なのです。それは20年にわたったデフレからの国を挙げての脱却であり、その行く末はデフレの逆の止まらないインフレが待っているのです。
 インフレになれば金利が上がる、金利が上がれば1,000兆円を超す日本国債の利息を払うことができなくなるのです、子供でも分かる理屈なのですが、この単純な図式に日本国全体が単純に進んでいるだけです。

 安倍内閣は12月24日、来年度の予算案を発表しました。それによると一般会計の規模は95.9兆円と過去最大に膨らんでいます。社会保障費は30兆円の大台を超えました。高齢化社会を迎え、社会保障費は今後も自動的に毎年1兆円ずつ増えていきます。
 新規国債の発行額は41兆円となり、昨年から1兆6,000億円減額で、如何にも健全財政に近づいているような錯覚を覚えます。税収は50兆円を超え、アベノミクス効果で大幅な税収増加も見込まれています。しかし来年度の国債の発行額は181兆円に上り過去最大となり、今年度から10兆円も増えるのです。いわゆる借金の乗り換え、借り換債が増え続けるからです。
 税収が7兆円も増え、景気回復が見込まれていますが、国の借金の総額は減りません。減るどころか増える一方なのです。歳出の大半を占める社会保障費を減らせると思いますか? この高齢者社会の到来時に? 国債の利払いである国債費は23兆円と、今年より1兆円以上増加、利払いは膨らむ一方です。今後もこの国債費と社会保障費は減る目途が立ちません。どんな政権ができようが減らしようがありません。
 来年度予算の新規国債の発行額が減ったとはいえ、この有様で依然、国家予算の43%は国債で賄われるのです。
 もう日本国全体がこのような状態に慣れっこになっているので、日本国民のほとんどは永遠に借金が続けられると思っているようです。そして現実に面白いことに、社会保障費の増大も税収の拡大も、そして国債の増発もまだまだ続くと思われます。
 こんなことが何故続けられるのでしょうか?

●これからの時代に生き残れる企業
 実に単純で、お金を日銀が作りだしてくれるからです。国債をいくら発行しても、回り回って日銀が全てを引き受けてくれるからです。
 今年4月に行われた異次元緩和によって、日銀が毎月7兆5,000億円、年間で90兆円もの国債を円紙幣を印刷して購入してくれているのです。だから何でもできます。
 公共事業だろうが、中小企業への支援だろうが、生活保護費の支給だろうが、できないことはありません。予算を組み、国債を発行すればいいのです。借金の雪だるまになって国債発行額が現在のように増え続けようが、日銀が全てを購入してくれているのです。

 これこそ異次元緩和の凄さです! 日銀さまさまなのです。だから円安になって当たり前でしょ! だから株が上がって当然ではないですか!
 「財政規律は守る」なんてお題目、ポーズにしか過ぎません。増え続ける国債発行額とそれを凌駕するほど国債購入に走る日銀の奮闘ぶりを見れば簡単にわかることです。経済理論の難しい話なんて理解する必要もない。極めて単純なことです。

 インフレ時代の到来には、インフレに対応できる会社が素晴らしい業績を上げ、人気化するものです。日本の企業でいえばソフトバンクが代表です。実質無借金企業が半数を超す日本企業の中にあって、借入金で買収を繰り返し、世界第二位の巨大通信企業に成長しつつあるソフトバンクは、まさにこれから来るインフレ時代の寵児で、低金利の借入を100%以上有効に使った企業経営の鏡でしょう。
 将来のインフレを考えれば、金利がただのように安いのですからそれを使わない手はありません。ソフトバンクが株式市場で人気化し、トヨタに次ぐ、日本第二位の時価総額の会社となるまで発展してきたのも経営者の手腕であり、時代を読む目があるわけで、人気化は当然のことでしょう。
 一方で、親方日の丸意識が抜けず、衰退していくNTTとは見事なコントラストとなっています。
 また、パナソニックやソニーなどは、このインフレ時代の到来に逆行して、貴重な財産である自社ビルの土地や関連会社の株を売り払い、借金を返し、自社をスリム化、リストラを繰り返しています。インフレ時代到来を考えれば、低金利の今、借金をして投資すべきところを全く逆に動いています。まさに縮こまったサラリーマン経営者の発想が会社を支配しています。いくら名門とはいえ、デフレからインフレという基本的な流れを理解せず、時代に逆行する会社には明るい将来はないでしょう。
 時代が変わるときはあらゆるものが逆転していきます。資産運用で言えば、株式市場が上がっているときに株を売り続けるような生損保などの業種に未来はありません。国債だけを買い続ける日本の生損保は資産運用会社として完全に失格ですが、ただ今までの蓄積で生き続けるだけです。新しい息吹、デフレからインフレへのダイナミックな波を感じなければなりません。生き残るのは強い者ではありません。時代に対応できる、変化できる者だけが生き残る資格があるのです。

13/12

インフレに向かう日本

13/11

株式投資に舵を切る年金基金

13/10

金相場のたそがれ

13/09

新刊『2014年 インフレに向かう世界』まえがき より

13/08

崩壊に向かう新興国経済

13/07

ドルが復権する世界

13/06

激動前夜

13/05

株 売却ブーム

13/04

異次元の世界

13/03

日本の行く末

13/02

株バブル勃発、円は大暴落(新刊まえがき)

13/01

「アベノミクス」がもたらすもの


バックナンバー


暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

数霊REIWA公式サイト 佐野浩一 本物研究所 本物研究所Next C nano(ネクストシーナノ) 成功塾説法 舩井幸雄動画プレゼント 高島康司先生の「日本と世界の経済、金融を大予測」 メールマガジン登録 舩井メールクラブ 佐野浩一note