“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2016.05
衣食住がただ、お金のいらない世界に!?

 今回のレポートでは、近未来についての興味深い予想を紹介したいと思います。私もこのコラムでは主に経済の変動や市場、世界情勢の変化やその裏にうごめく動きなど、直近で関心をもたれると思われる事象を書いてきました。
 現在の世界は実体経済が動かしているというよりも、金融が異常に肥大化して、その金融が実体経済をかき回している構図が見て取れます。各国の中央銀行が経済を何とかしようと無尽蔵の資金を供給し続けています。日銀も年間80兆円という巨額なマネーを創出して日本の国債を買い続けていますが、一向に日本は目標としているインフレに向かうどころかますますデフレ状態が酷くなって、今年に入ってからは円高模様が酷くなっています。かように世界の金融情勢は不可思議で、もはや中央銀行は節度を失ってマネーの増刷に走っているのですが、その副作用は今のところ出ていません。安倍政権は消費増税先送りを決めましたが、それによって日本の信用度が下がるということもなく、円の価値は万全に保たれています。日本全体が財政再建とか積み重なる膨大な借金に対して全く危機感を失っています。かような情勢は危うく、いずれ金融的な大混乱は免れないと各方面から警告が発せられていますが、一向にそのような混乱の気配は生じてきません。

●常識を覆す夢のような世界が実現!?
 さてそのような中、金融的な混乱が生じて世の中が収集のつかない状態になっていくという警告とは全く逆の、今後、人類はコンピューター、ないしはAI(人工知能)の爆発的な進化によって、ついには衣食住、全てがただになるようになり、人類は<不労>という働かないで生きていける状態となり、更に<不老>という老いないでいつまでも若く生きていられるという夢のような世界が訪れるという驚くべき予想を紹介したいと思います。

 これは日本においてスーパーコンピューターの世界では第一人者と思われる齊藤元章氏による『エクサスケールの衝撃』(PHP研究所)という本に詳細が書かれています。その内容はまさに驚愕せずには読めない内容なので、その一部分を紹介させていただきます。
 齊藤氏によれば、コンピューターの演算速度が倍々ゲームで進化している現在、いずれ1兆の100万倍の演算が1秒間に可能になる夢のようなスーパーコンピューターが出現してくるということです。この1兆の100万倍の単位はエクサというのです。コンピューターの情報量の単位を順番に書きますと、千がキロ、百万がメガ、10億がギガ、1兆がテラ、千兆がペタ、そして百京がエクサです。兆の上の単位だと余りに天文学的でなじみがないですが、兆の上の単位は京です。そして現在100ペタの演算速度を有するコンピューターの開発が急がれているのですが、その先には1000ペタ(エクサ)という今まで人類が到達できなかった演算速度を持つコンピューターの開発が目の前にきているというわけです。ここまでのコンピューターの発展も驚愕すべきものでしたが、このエクサをいうレベルにまで演算速度が到達してくると、劇的に様々なことが変わってきて、人類は未踏の領域に入って大発展を遂げるというのです。今は明らかでなく、解決されていない様々な問題がある日突然、一気に多発的に解決の糸口が見つかり、その衝撃の技術の発見によって、衣食住、全てがただになる世界が訪れるというのです。

 具体的にはまず、その先鞭を着けるのは、エネルギーがただになるという革命によって大きな変化が生じるといっています。現在でも太陽エネルギーとか水力、火力、原子力、様々なエネルギー源があるわけですが、この各々のエネルギーの効率的な使い方や新たな発展や技術革新は日々発展し続けています。エクサのコンピューターの出現によってそれらの発展がいきなり今までの次元と違うレベルの発見となって、あっという間にエネルギー問題の解決が全世界的に成し遂げられるというのです。著書では、現在行われている最新の研究の進み具合を紹介しながら、その各々のエネルギーの開発や使用法がエクサのコンピューターによって劇的な進化が可能であることを大きく紹介しています。
 例えば、その一つである「超高性能蓄電池」について紹介しますと、現在多くの人がスマホを持っていると思いますが、実はスマホの重量のほとんどは電池です。いわゆるリチウムイオン電池というものです。リチウムイオン電池は非常に優れていますが、まだ値段も高く、重いうえに時と共に劣化します。ところがエクサのコンピューターができるようになると、このリチウムイオン電池を大きく凌駕するような、薄くて、軽くて安くて、劣化しない「超高性能蓄電池」が開発されることは必至であるというのです。考えてみると30年前は携帯電話もなかったですし、これほど小さなスマホにこれだけの情報量や機能が搭載されるようになるとは誰も想像できなかったと思います。今や人々の必需品はスマホのような携帯電話であり、これ一台あれば通信やカメラやテレビや辞書、何の用途でも使えるわけです。このような短期間での技術の発展の経緯を考えれば、いずれ、今普及しているリチウムイオン電池の性能がもっと違った物質を使ったり技術革新を重ねることで、電池の機能が革命的に進化する可能性を容易に想像できます。
 そして超高性能蓄電池ができるようになると、現在のスマホは重量の重さから解放されて紙のように薄くなって、充電する必要すらなくなるというのです。そしてそのような超高性能蓄電池ができると、電気を充分に蓄電できるようになります。現在、原子力発電や火力発電は昼夜をたがわず動いているわけです。電力は昼間の最も電力使用量が大きな時に合わせて発電の能力が作られています。ですから発電量でみると昼間はやっとカバーできるわけですが、反面夜は作られた電力が大量に余っているわけです。この、夜間に発電された余った電力は保存できず、捨てられているのが実情です。仮に超高性能蓄電池ができると、夜余って捨てられている電力を蓄電できるようになります。となると夜中、電力を蓄電して、それを昼間に放電すれば簡単に電力が賄えるようになるわけです。

 これを電気自動車のような膨大な蓄電能力を持つ機器に蓄電させるわけです。スマホが紙のようになる時代が来れば、電気自動車で蓄電できる電力容量は相当なものとなることは必至です。そして夜の間、電気自動車を充電して電力を蓄電し続けて、それを昼間に放電して自宅の電力を賄うことができます。更に昼間、たっぷり充電した電気自動車を走らせて、コンビニに行けばコンビニの電力装置に繋いでコンビニに電力を供給することもできます。同じ理屈でスーパーで買い物をしている間に、電気自動車をスーパーの電力装置につないでスーパーに電力を供給することもできるわけです。そうなればこうした電気自動車で買い物を行えば、電力を供給したことによって買い物の値段を安くすることも可能ですし、溜めた電力をスイカのような電子マネーに溜められるようにもなるでしょう。このようなシステムが構築できれば、電気自動車は<移動体超高性能蓄電池>となって重宝されて使われるようになるというわけです。

●エネルギーがただ同然になった時、考えられる変化は?
 このような流れが日本全国に波及するようになれば、自然にエネルギーコストは限りなく安くなっていきます。この流れが大きく拡大していくことによって、やがてエネルギーの価格は限りなくゼロに近づいていくというわけです。
 エネルギーの価格がただのようになると、世の中に大きな変化が生じてきます。例えば、今レストランの一角でみられるような植物工場などが大々的に発展することになると思われます。現在、植物工場は急ピッチで普及していますが、この植物工場のコストの大部分は電気代です。光源を維持させ、適度な温度を保ち、また時には光源を冷却するなど、その維持管理コストの大半は電気代です。仮に電気代がただになれば、植物工場の生産コストもただに近くなってしまいます。そして同じくエクサのコンピューター技術によって、どのくらい光源を与えたら効率的な植物生成ができるか、どのくらいの温度を保てばいいのか、など植物の生成に必要な最適な方法が発見されていくわけです。こうして野菜などの植物は容易に植物工場で大量にただに近い資金でいくらでも作れるようになるのです。
 更にエネルギーコストがただになると、現在稼働している植物工場だけでは発展は収まりません。現在すでに研究、開発されていますが、実はコメや小麦なども植物工場で生成することはできるのです。現状でそのようなコメや小麦の生成工場が作られないのは、コストの関係です。コメや小麦となれば、今普及している植物工場の何倍にも何十倍にも匹敵する設備や電力が必要となるからです。ところがこのような電力の大量使用の問題もエネルギーコストがただになれば問題になりません。そうなれば技術的にコメも1年で12回取れるような技術がすでに確立しているわけで、この技術を大量な電力を使ってコメ生産工場や小麦生産工場を作ればいいわけです。こうしてエクサのコンピューターができると、農作物全てが工場で生産されるようになるというわけです。この流れはあっという間に全世界的に広まり、農業を外でやる必要がなくなります。食べるものは工場で作る時代となるわけです。
 こうなると今度は農地がいらなくなります、農地がいらなくなると、当然、土地が大量に余ります。土地が大量に余れば、住宅問題などいっぺんに解決してしまうというわけです。
 またエクサのコンピューターができると、今度は魚やウナギなどの魚介類の養殖も簡単にできるようになるはずです。現在魚などの養殖の技術も驚くべきスピードで発展してきていますが、依然電力を大量に消費するためにコストの問題が横たわっています。先ほど指摘したように電力がただになると、魚の養殖に使うための電気や温度管理などもほぼただで運営できるようになるはずです。エクサのコンピューターによって魚の種類によって、どのような海水温度が飼育に適切なのか、どのような栄養分を必要としているのか、どのような温度変化がいいのか、全て明らかになっていくでしょう。そうなるとその研究結果をもとに、地上で「閉鎖式循環式陸上養殖」を行えばいいというのです。地上に大きな「いけす」のようなものを作り、必要な栄養分をたっぷり含んだ「好適環境水」を循環させることによって、理想的な魚やウナギの養殖が可能になるはずというのです。もちろんエネルギーのコストはただですから、これら新鮮な魚の養殖もほとんどただのような資金でできるというわけです。こうして家やマンションを作った時にそのとなりにコンテナーの植物工場や小麦やコメ生産工場を隣接して、更にその隣に大きな体育館のような中に循環型の「いけす」のようなプールを作って魚の養殖を行えば、新鮮な食べ物はほぼただで毎日供給されるようになるというわけです。エサは植物工場で取れた栄養分たっぷりの清潔な無菌のエサで飼育されるので余計に安全でうまいというものです。

 もちろんこれは齊藤氏の著書の一部分を紹介したにすぎませんが、このようなアイデアが様々紹介され、現在の研究度合いと相まって、エクサのコンピューターができると、多くの、現在の我々の想像を絶するような発展が可能なことが書かれています。
 結局、究極的にエネルギーコストがただになることによって、多くの物がただになり、衣食住が全てただになってしまう時代がやってくるというのです。
 そしてその後は、衣食住がただになることによって、お金がいらない世界が到来するだろうと予想しているのです。衣食住がただになると、人々の間に必然的にお金は必要ない、として集まってくる集団ができてくるはず、というのです。もちろん衣食住がただになっても、多くの労働や取引は残るでしょうから貨幣は必要と思いますが、人々は衣食住が満たされることによって、多くの労働をボランティアで行う可能性も広がるはずです。こうして現実に衣食住が足りて「不労」「不老」の世界が広がってくると、ある一定の人々がお金のいらない、貨幣を使わないコミュニティーが出現するということも想像できます。齊藤氏の予想ではそのようなコミュニティーがあちこちにできるようになり、やがてそれが大きな渦となって日本中、世界中に広がってお金のいらない、貨幣のない世界が広がっていくというのです。
 非常に面白い考えですし、現在のコンピューターの発展が続き、それを人類が理想的に使いこなすことができれば、実現可能なのかもしれません。齊藤氏はそのためにも日本人はいち早くこのエクサのスーパーコンピューターを開発する必要があると強調しています。
 人間の知恵を遥かに凌駕するスーパーコンピューターが悪意を持った人や機関に開発されてしまっては人類の未来もおぼつかないと言っています。時代の動きは激しく急で、我々がとても想像できないような様々な変化が生じてくるのでしょうか? 日本人によるスーパーコンピューターの開発が待たれることです。

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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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