中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2017.06.20(第33回)
拝啓 安倍晋三内閣総理大臣殿

 今回は、公開で安部総理大臣にお手紙を書いてみました。まだ本当には出していません。政治に不満を募らせているより、直接思っていることを率直に述べた方が良いと思ったからです。

拝啓 安倍晋三内閣総理大臣殿

 自然の脅威や外国の脅威から、日本国民の暮らしを一生懸命守ってくださって、ありがとうございます。常に厳しい状況の中で、隅々にまで目を配り、正しい判断をしていくことは、とても大変な仕事だと思います。毎日のお働きに感謝しております。
 さて、わたくしは、本業は主婦、3人の子は独立して家庭を持ち、現在、自宅で母(91歳)の介護をしながら、2001年から認定NPO法人メダカのがっこうの代表をしております。

 次世代に清浄な水や土などの生きる環境を残すには、国土の7%を占める田んぼは重要なところと考えております。それを確かめるために、2002年から田んぼの生きもの調査を始めましたが、日本のほとんどの田んぼは稲以外の生きものがいない「沈黙の田んぼ」であることに驚きました。
 しかし農薬・化学肥料を使わず、一年中水がある通年ビオトープを設置すると、絶滅危惧種であっても、あっという間に戻ってきて繁殖することがわかり希望が湧きました。そして次に分かったことは、絶滅危惧種はトキやメダカではなく、この作業をしてくれる農家が絶滅しそうだということです。そこで、これらの農家のお米を後継者ができる程のフェアーな価格で買うことを始めました。

 私たちは、農薬・化学肥料を使わず、生きる環境を取り戻してくれている4農家(佐渡、大田原、郡山、香取)の田んぼを応援しています。趣旨に賛同してくださる会員がお米を買ったり、生きもの調査や田の草取りを手伝ってくれています。

 この農家たちと手をつなぎ、生きる環境と安全な食糧に困らない日本を残せるような先祖になることが、私たちの目標です。ところが、最近この目標が果たせそうにない事態が起きています。それは、種子法廃止案や、農業競争力強化支援法案など農業関連法案が可決されたことです。それで、思い切って安倍総理大臣にお手紙を書くことにしました。

 私たちは、国の防衛は食にあり、種にあり、水にあり、と思っています。この国の存亡にかかわることを、種を扱っている当事者である農家に相談もなく、国民も殆ど気が付かないうちに、審議が進められ可決されたことに、当初はとても怒っていました。しかし、規制改革推進会議のメンバーを見てみると、経営の専門家ばかり、自然界から惠を得る経験を持っている人がいないので、この判断も無理はないと思うようになりました。

 たとえば、農業競争力強化支援法案の中の、8条「銘柄集約」のところですが、工業製品ならば、71品目ある製品を6〜7品目に減らせば、確かにコストは下がり収益はあがりますが、自然界では、71品種の大豆を6〜7品種にすると、日本の津々浦々で育っていた大豆ができなくなります。大豆は同じように見えても、北から南までの緯度の違い、標高の違い、土壌の違い、風土の違いで、それぞれの土地にあった品種に変化していくのです。それは長年の栽培者の観察と努力により、安定的な品種へと育てられてきました。

 自然の恵みを頂くためには、自然の摂理=自然の掟を知らなければなりません。農業は工業生産とは違います。命あるものと命ないものの違いです。良く例えられることですが、工業製品の靴は、歩けば歩くほど靴底が減りますが、生きている人間の足は、歩けば歩くほど足の裏が厚くなります。大豆は奨励品種だけでも71種、地方の在来種まで含めるとどれほどあるかわかりませんが、自然の恵みを頂くために、ご先祖様や農業試験場の方や、地元の農家の方がその土地その土地で良く育つ品種を育ててきたのです。日本の宝ものです。

 「銘柄集約」で、品種を減らすことは、食料安全保障の上でも危険です。効率や採算の問題ではありません。1回の異常気象、1回の病虫害で、全滅する恐れがあります。日本のお米は奨励品種だけでも300種以上、これを常に誰かが作り続けていることで、守り続けていくことが出来るのです。ほんの一例ですが、これだけでも、今回の農業関連法案が、いかに自然の掟を無視した内容であるかが分かっていただけたでしょうか?

 自然の掟を無視すると、自然の恵みを得られなくなります。地球上で唯一の生産者は、地球の外からのエネルギーである太陽光を使って澱粉やたんぱく質を作ることが出来る植物です。今ある石油も石炭も、天然ガスも作ったのは光合成の技を持つ植物たちです。人間は材料を掘り出して組み合わせて何かを作っているようですが、地球上のものを使って形を変えているだけで、無から有を生じることはできません。

 今、どんなお米の品種が登録されているか、ご存知ですか? 雄性不稔の稲や、遺伝子組み換えの稲が、新たに品種登録されています。日本の民間企業や外資の民間企業です。農家との契約書には、自家採種禁止と書かれています。これは毎年種を買ってもらわないと、企業経営が成り立たないからです。

 しかし、これは日本民族の存亡にも拘ります。雄性不稔で自家採種不可能なお米を日本で栽培して、食べると、子供ができない人がもっと増えてしまいます。また、遺伝子組み換え技術自体は、悪ではありませんが、除草剤に耐性を持った稲の栽培には、除草剤が以前よりたくさん使われますし、殺虫性を持った稲ができたりすると、日本の生態系に及ぼす影響は計り知れません。稲以外の草や生きものたちが何もいない田んぼは、美しい日本とは言えません。日本は大倭豊秋津島(豊かなトンボの国)と言われていたのですから。

 遺伝子組み換え技術は人類の科学の進歩だと思いますが、それを使う人間の動機が悪いと大変なことになります。草も殺す、虫も殺すの先には、農家は生産ラインの一部で人間扱いしない、消費者も人間として健康と繁栄を願う対象ではなく、金もうけの対象という扱いになります。

 私は一介の主婦ですが、命を優先する農家と協力してお米を作り、在来種の大豆を作り、小麦を作り、味噌も醤油も梅干しもたくあんも無添加で手造りし、菜種油やヒマワリ油を、遺伝子組み換えでない種で無農薬で栽培し低温圧搾で搾っています。私自身は、全て無償の働きですが、一族や仲間たちの食料係として健康を守るという働きをしています。一銭もお金を稼いだことはないので、GNPに貢献したことはありません。ですが、次世代に生きる環境と安全な食料に困らない日本を残す先祖になることが人生の目標です。頼りになるばあちゃんとして輝いて生きています。これも女性が輝いている生き方だと思いませんか?

 種は儲かるというのが、世界の趨勢らしいです。どうか、種で儲けようとする人たちから、日本の種を、多品種で成り立っている日本の農業を守ってください。自家採種の権利を守ってください。遺伝子組み換え作物の畑は、草も虫も何もいない緑の砂漠と呼ばれています。そんな農地が日本中に広がらないよう、美しい日本を守ってください。草も虫も農家も消費者も収益を上げるためなら殺しても平気という何でもありの人たちから、日本の自然や生きものたちの命や日本人の健康を守ってください。どうぞよろしくお願いします。

 防衛にかける情熱を、米麦大豆の種という日本の大切な防衛の要にも注いでくださいますよう、重ねてお願い申し上げます。どうぞお体を大切に、今後のご健康とお働きをお祈り申し上げます。

敬具

2017年6月27日
認定NPO法人メダカのがっこう理事長 中村陽子


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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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