ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測

このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。

2015.01.01(第11回)
多極化は終わった? 超資本主義に向かう動き

 いよいよ2015年に突入しました。いったいどんな年になるでしょうか? 昨年の2014年は実に多くのことがあった激動の年になりました。「イスラム国」の拡大、ウクライナを巡るロシアと欧米の確執、アメリカの反人種差別運動など予想を越えた突発的な出来事によって、大きく撹乱(かくらん)された年でした。まさに、ブラックスワンの出現です。

 そのような傾向を見ると、今年は一層激しく予想できない出来事が起こる予感がします。

▼注目されていない重要な出来事
 このようなとき、ときとしてあまり注目されていない出来事が、水面下で起こっている重要な変化を示唆することがときとしてあります。それは、巨大地震の前兆現象をとらえるようなものです。後になって見てみると、あれが変化の予兆だったんだということが分かります。

 では2014年には、2015年以降の大きな変化を示唆するあまり注目されていない出来事はあったのでしょうか?

▼アジア太平洋自由貿易圏
 実はあったのです。それは、2014年5月に開催された「アジア太平洋経済協力会議(APEC首脳会議)」で明らかにされた「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」構想の発表です。
 当時の日本では、この会議の目玉は安倍首相と習近平主席との首脳会談、ならびにパク・クネ韓国大統領との会談など、日中韓の緊張緩和であるとして報道されていましたが、実態はそうではありません。APEC首脳会議のポイントは、アメリカと中国が相互に協力し、「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」の立ち上げが明確になったことです。
 アメリカのオバマ大統領は、2014年5月10日に行われた演説で、「中国と米国が協力できれば、世界が恩恵を受ける」と述べました。
 さらに、中国の習近平国家主席が2013年6月のオバマ大統領との会談で、「広大な太平洋には両国を受け入れる十分な空間がある」と述べたことに「同意する」とも述べ、「繁栄し、平和的で安定した中国の台頭」を歓迎する立場を改めて表明したのです。

 アメリカと中国のこのような相互容認の結果として宣言されたのが、「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」という聞き馴れない新しい構想のアイデアでした。

●これまでのものとは決定的に異なる構想
 一見すると「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」は、すでに交渉が進展している「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」や、東アジアとASEAN全域をカバーする「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」、そして「日中韓自由貿易協定(日中韓FTA)」など、関税を撤廃し、あらゆるタイプの規制の撤廃を目標にした既存の自由貿易協定となんら変わることのない構想であるかのような印象をもちます。

 でも、これはそうではありません。「FTAAP」構想は、世界の向かう新たな方向性を指し示す既存の協定とは大きく異なる特徴があるのです。

●「多極化」というコンセプト
 ところでいま、世界の変化を理解するとき使われるもっとも重要な枠組みは、「多極化」というコンセプトです。周知のように、特に2003年のイラク侵略戦争と2008年のリーマンショック以降、アメリカの政治的、経済的覇権は急速に弱体化しています。それに代わり、中国を筆頭とするBRICs諸国の力が台頭しつつあります。

 特に中国の拡大は顕著で、中国の影響力の強い独自な政治経済圏の形成に向けて急速に動いています。またロシアも、欧米に敵対する「ユーラシア共同体」形成の動きを活発化させています。こうした中国とロシアが、やはり反米のイランとともに、アメリカの覇権に対抗できる国際秩序の形成を目標にした機構が「上海協力機構」です。

 一方アメリカは、このような多極化の動きに対抗して「環太平洋経済協力連携(TPP)」を立ち上げ、あくまでアメリカを中心とし経済秩序の維持と強化に乗り出しています。
 他方中国は、「新開発銀行(NDB)」や「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」など、現在のアメリカ主導の経済秩序の基盤である「IMF」や「世界銀行」などの機構に代わる新たな組織を設立し、中国を中心とした秩序の形成を加速させています。
 さらに中国は、「日中韓FTA」や「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」のような、東アジアや東南アジアで、アメリカを除外した多国間協定の樹立に積極的に乗り出し、アメリカ以後の秩序形成をさらに加速させています。

●中国を包囲するアメリカと日本
 このような理解が、「多極化」というコンセプトの内容です。つまり、アメリカの一極覇権が崩れ、世界が中国やロシア、またブラジルやトルコなどの国々へと世界の秩序が分散化するというイメージが「多極化」です。

 そして、このような「多極化」の主要な担い手である中国の進出と拡大に対抗するため、日米関係を強化して中国の動きを封じ込める政策を基本としているのが、現在の日本の安倍政権です。安倍政権は、加速する「多極化」の現実を受け入れることを拒否し、東アジアにおけるアメリカの覇権の基盤強化に積極的に協力してきました。

●根本的に流れを変える「FTAAP」
 これが現在までの見方でした。しかし、今回の「APEC」で合意された「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」の構想は、これまでの「多極化」とは本質的に異なる方向に世界が動きつつあることを示唆する構想です。

 一言で言うと「FTAAP」とは、これまで経済圏の形成で激しく対抗していた中国とアメリカが手を結び、相互の利益になる統一した世界経済の秩序をアジアに構築するというプランなのです。この新しい秩序の枠組みには、日本や韓国をはじめ、アセアンやロシアなど、「APEC」の参加国すべての参加が見込まれています。このような巨大な経済秩序の構想はこれまでにはありませんでした。

 この文脈から見ると、日本の安倍政権が中国と韓国に敵意する方針を改め、いきなり対話路線に転換した理由も見えてきます。「FTAAP」という新しい統合的な秩序の形成に向けて、これまでの「多極化」による中国の台頭阻止に基づく戦略を根本から改めるように、アメリカから圧力があったと見るべきではないでしょうか。

●なぜ「多極化」ではなく、統合的な秩序なのか?
 しかし、それにしても、なぜ中国やアメリカがこれまでの対抗的な「多極化」の戦略から、統合的な秩序形成に向けて方針を転換させたのでしょうか? この理由ははっきりとは見えてきません。
 そこで私は、この理由を探るため、今回はかなり大胆な転換を行い、これまでとはかなり異なった視点から現在の情勢を見て見ることにしました。

 イマニュエル・ウォーラスティンという非常に著名な歴史家がいます。ウォーラスティンは、政治と経済の両面を包含した「世界システム論」という独自な歴史認識を構築したことで知られている人です。現在はニューヨーク州立大学ビンガムトン校にある「フェルディナンド・フローデルセンター」の所長を努めています。

 ウォーラスティンは、1990年代の半ば頃から、21世紀になると資本主義のシステムが重大な危機の時期に入り、これまでとは異なったシステムへと変貌する可能性があると指摘していました。
 もしかしたら、今回の「FTAAP」による統合的な秩序形成の動きの背景にあるのは、このような変質なのかもしれません。

●グローバル資本主義の長期的傾向
 ウォーラスティンの「世界システム論」は、資本主義はもともとグローバルに発展するものだとする前提に立っています。そのようなグローバルな資本主義の発展が長期間続くと、次の3つの傾向が現れるとしています。

1)成長の限界とグローバル資本主義の外延的な拡大
 グローバル資本主義の成長が続くと、人件費の高騰から企業の収益が逓減(ていげん)し、利益の確保が難しくなります。そのためグローバル資本主義は、人件費の安い地域へと外延的に拡大する運動を続ける必要性が強まります。

2)超階級社会の出現
 グローバル資本主義の外延的な拡大の結果、超富裕層が富の大部分を独占する厳しい階級社会が出現します。

3)国家独占資本主義の体制
 超階級社会には、国民から激しい不満と抗議があります。これが原因で、社会が不安定になる可能性が出てきます。これを抑圧して社会の安定を維持する必要から、政府はあらゆる権力を集中して国民を管理する「国家独占資本主義」の体制に移行します。そのようにして体制を安定させながら、グローバル企業が収益を確保できるような外延的な拡大を続けます。

 この3つの傾向です。

●「多極化」とは異なる流れ?
 さてこれが、ウォーラスティンが指摘するグローバル資本主義の長期的な傾向です。もちろん、この傾向が指摘する、グローバル企業の収益性が決定的に減少する「限界点」にはまだ至ってはいません。でも、これを回避するためには、グローバル資本主義は一層外延的に拡大しなければならないことは事実です。
 他方、これまでの「多極化」に向けた動きでは、中国やロシアなどの中心国がそれぞれの政治的な国益を実現する余地を拡大するものの、世界経済はそれぞれの自立性の高い経済圏に分割される傾向が高くなります。そのため、それだけグローバル資本主義の外延的な拡大は阻害されることになります。その結果、人件費の高騰も早い時期に到来し、ウォーラスティンの指摘する「収益性の限界」も早期にやってくることになるのです。
 これはまさに「多極化」の弱点です。この弱点の乗り越えを意図した統合秩序の形成をこそ、今回の「FTAAP」が内包する構想ではないでしょうか?

 つまり、アジア・太平洋地域で政府による規制をさらに大胆に撤廃し、グローバル資本主義が一層拡大できる余地を形成するという戦略です。これは、グローバル資本主義をさらに外延的に拡大させて人件費を一層下落させ、グローバル企業の収益率を上昇させることがねらいです。
 言い換えれば、「FTAAP」の統合秩序の形成とは、すでに既存のアメリカが主導した世界経済の秩序では限界に達しつつある収益率の制限を、中国とアメリカが協力して突破し、グローバル企業がさらに収益率を拡大するための新しい秩序を形成するという戦略です。

 そうした視点から見るならば、一見敵対関係にあるように見える中国とアメリカは、グローバル企業の収益性を確実に確保し、超富裕層の利害を確実に実現させるという点では、基本的に利害は一致していることになります。もちろん中国の超富裕層とは、中国共産党そのもののことでもあります。
 「FTAAP」は、ウォーラスティンの指摘する「収益性の逓減」というグローバル資本主義の限界を、中国とアメリカが協力して乗り越え、グローバル資本主義がさらに外延的に拡大できる環境を整備するための統合的な秩序を形成するための枠組みです。

●日本でも同じ状況
 では私達の日本ではどうでしょうか? 他の国々同様、ウォーラスティンの指摘する傾向は出てきているのでしょうか?

 日本でも明確な現象となって現れていることは間違いないでしょう。日本のグローバル企業は海外に外延的に拡大し、日本国内ではかつてないほど格差が拡大し、「超階級社会」が出現しつつあります。
 そして、もっとも顕著なのが国家が強力な権力を掌握した「国家独占資本主義」への体制の移行です。
 私は、東日本大震災とフクイチの放射能漏れ事故が発生した1ヵ月後の2011年4月22日に、以下のような予想をメルマガの記事に書きました。重要なので、ちょっと長いが引用します。以下です。 ↓ ↓ ↓

●政府の公共投資への依存の増大
 (未曾有の大災害の状況でも)なんとか経済を維持するためには、政府が大規模な公共投資をあらゆる分野で実施するなどして、政府が経済のけん引役にならなければならない。海外からの投資も途絶えた状況では、政府しか頼るものがないのである。

●国家と政府、そして中央官僚の強化
 しかしこれは、民主党政権が抵抗し、解体の方向を模索していた「中央集権的システム」への逆戻りとなることを意味する。
 日本は、すべての権限が政府と中央官庁に集中し、規制の強い中央集権的なシステムが災いとなり、人と資本の国境を越えた自由な移動を特徴とするグローバル経済のシステムに完全に乗り遅れ、長い間停滞した。
 小泉政権は規制を大幅に緩和して市場原理を導入し、グローバル経済のシステムの適用に踏み切ったが、結局は格差社会を作り出し、社会矛盾の激化から失敗した。
 そしていま、新しい方向としての「地域共同体にゆだねる分散型システム」への本格的な模索が混乱のなか続いている最中にこの大震災が起こり、かつては停滞の原因であった中央集権的システムへの回帰がまた始まろうとしているのだ」

 以上です。さて、どうでしょうか? この記事を書いた2011年4月はまだ民主党の菅政権でした。安倍政権の誕生の2年以上前のことです。
 しかし、2013年12月に成立した安倍政権が実施している「アベノミクス」は、まさにこうした内容の政策です。
 この過程で与党の自民党は、「憲法修正案」を発表しましたが、それは基本的に、国民を国家に奉仕する「臣民」として規定し、国民を国家に組み込む内容になっています。これはまさに、階級社会を固定化した「国家独占資本主義」形成に呼応した動きかもしれません。

↑ ↑ ↑(引用ここまで)

●グローバル資本主義の統合秩序形成に向けて
 このように、「国家独占資本主義」の体制に移行して「超階級社会」の矛盾を管理し、「グローバル資本主義の外延的拡大」を加速して「人件費の高騰による収益率の逓減」を乗り越えるという、ウォーラスティンが指摘する方向は、まさにいまの日本でも実現しつつあるのではないでしょうか?
 このような流れでは、これまでの「多極化」の状況では敵対的な関係にあった国々が、グローバル資本主義の利害を共有し、共同した歩調を歩むことにもなります。この新たな動きが、「FTAAP」の発表で始まった可能性があるのです。

 これこそ、「FTAAP」の発表というちょっとした出来事が示唆する大きな流れの歴史的な変化です。そうであるなら、2015年にはこの「国家独占資本主義」の「超階級社会」の成立に向けた動きが、水面下で加速することになるでしょう。

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Profile:高島 康司(たかしま やすし)
高島 康司(たかしま やすし)

社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/

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