トップが語る、「いま、伝えたいこと」
つい先週のことです。私と親しいある女性経営者(40代前半、すばらしいやる気のある優秀な人です)から「上海万博見学記」とでも言ったらよいお手紙や写真、資料などが送られてきました。
その見事な感想、そして文章に「びっくり」しました。
彼女の言うように、私も、中国が上手に発展してほしいと思っています。
とともに、いまの若い日本人に危惧を感じています。これも同感です。それについては、5月24日に少し、このホームページに書きます。
以下にそのお手紙の大部分をのせます。
船井先生
いつもありがとうございます。
本日は、5月1日から始まった上海万博に行って来ましたので、簡単に、その報告を致します。
欧米では船井先生の予言通り、資本主義が壊れてきていますが、中国は今から資本主義的発展を遂げるステージにあります。それがとても興味深かったので、私の感想を手紙にしてみようと思い立ちました。
私が営んでいるコンピュータシステムの会社で、システムを導入させていただいた顧問先に文具メーカーがあります。その会社は十数年前に上海に現地法人と工場を作っており、今回の上海万博では、文具商品の公式生産権を取得して、公式ロゴやキャラクター(ハイパオ)入りの筆記具を生産販売しています。
私も以前からその工場へお邪魔したり、そちらから紹介を受けて2000年頃から犬の服の生産を上海でしているご縁から、この度チケットを戴いて、一般の人が入る前と、一般公開日に、万博へ行くことができました。
今、上海の街に行けば、一目で、この万博に向けて大きく発展したことが誰にでも分かります。
「ベターシティ、ベターライフ」をテーマとしている上海万博は、大阪万博と比べられる通り、その状況は、とても似ていると思いますが、その規模は人口比に値するとして13倍、スピードは昭和30年代から一気に平成20年になるという驚異的な速さで桁が違う感じです。
家、家電、車と、上海市民はまさに日本の平成的というか21世紀の便利なベターライフをこの数年で手に入れたようです。
こうして国家主導で、突然、近代化が一気に進み、地下鉄などのインフラが作られ、60階以上の高層建築がにょきにょき建って、商店が次々にでき、あらゆる商品がなだれこみ、サービスが提供されると、終身雇用制など元々ない国ですから、人々はより高い収入になる職場へ移動していきます。ここに人の流れ、お金の流れが生まれ、経済がますます巨大化していきます。
この2〜3年で、30代、40代で起業した人が、どんどん成功し、アメリカンドリームならぬ上海ドリームを叶えています。今回食事を一緒にした40歳の女性社長は、上海の高校を卒業後、日本へ留学。亜細亜大学に、帰国子女ではない一般受験で合格し、在学中にアルバイトで1000万円をコツコツため、卒業して上海へ帰り、会社を設立。13年経った今、従業員600人以上の会社に成長させた上海セレブです。英語、日本話が堪能で、その取引先は、日本・フランス・アメリカの一流企業です。
もちろん、日本にも優秀で情熱のある人はたくさんいらっしゃいますが、こんなにパワフルな方にはなかなかお目にかかれません。こういう人がいるんだなあ、と感服しました。「儲かったお金はどうするの?」と尋ねましたら、「また工場を作るわ」と即答されました。不動産も既に数え切れないほど持っているということでした。単なるハングリー精神ではなく、最近日本ではあまり見かけなくなった、パイオニアスピリットと言いますか…とにかくいまの日本人から見ると桁外れのパワーとパッションがあるのです。
こうした人々の思いが、上海だけでなく、地方都市でも大きな動きになっていて、万博をビジネスチャンスととらえる地方の企業家(とはいっても30代位の人達)が、上海へPR活動に来ています。これから上海に支店を出すという人にもたくさん会いました。13億人がみんなでやる気を出しているようですから、本当にすごいなあ。
そういえば、昨年行ったマカオの巨大カジノは、レートがラスベガスより格段に高くて、ビックリしました。テーブルゲームでは、1ゲーム2万円が最低。それなのにカジノ全体では、5000人以上の中国人がプレーしていました。
今100万円負けてる、なんて話す人もいて、本当に驚きました。
東京は、最近、正反対に元気がなくなっていますね。この4月に入ってから、空店舗となった所も多く、都心がシャッター街化してきました。若い人が海外旅行へ行かない、車を買わない、出掛けない、という昨今、一般の人があまりお金を使わなくなったために商店がやっていけなくなったのだと思いますが、デパートが縮小する背景には、外商を通じ超高額品を買う超裕福層の人が減ったことも大きいと思います。収入減というより、モノあまりで、物欲がなくなっているからだとも思います。1人1人のその気持ちが集まると、全体ではかなりの影響力が出ます。(マイナスの。)
逆に中国は、富裕層が台頭し始め、強大な消費行動が起きていますから、商店街は、どんどん大きくなって、商品が集まり、買い物客が溢れています。店舗や住宅の家賃も、ニュースではバブル化しないように調整しているなど、いろいろ言われていますが、実際は上がり続けています。
ルイ・ヴィトン、エルメス、Cartierなどの大規模なブランドショップがあちこちの路面に、次々オープンし日本ではなかなかお目にかかれない、何億円もする宝石もショップに並んでいることも、「世界の工場」から「世界の市場」へ変化を遂げたことを象徴しています。
人々の消費欲が、街に物を集め人を呼び、またその循環が起き、とにかく街に活気が溢れています。
日本が欧米に追いつき追い越した時のように、中国は、高層ビルが立ち並ぶ上海にいると、既に日本を追い越しているように思います。
しかし…。
万博の公式グッズを売る国管轄のショップで、商品を入れてくれた袋は、ディズニーのキャラクターを勝手に印刷したビニール袋でした。
万博に合わせて、(たぶん)5月1日に地下鉄13号線と10号線が開通し、総距離で、世界一になったそうです。
開通日がよくわからないのは、工事が終わり次第走らせるというような…ゆるい感じでソフトオープンするためです。日本のように、「OO線、○月○日開通」というような旗や飾りなど、一切ありません。
実際、私も5月3日に、10号線に乗ろうと切符を買い、ホームに向かったら、目の前で突然シャッターを閉められました。理由はわかりませんが。「それなら切符を売らなければいいのに!」と傍にいたアメリカ人の旅行客と話しましたが、とにかく突然アウトです。切符代返して!
万博は、大勢の人が来る前提で運営されているので、一般公開前の人が少ない時でも運営ルールは不動です。
入口へ向けて直線で歩いていけば、1分もかからないのに、長い柵を迷路のように往って入場しなければなりません。日本ならば、その柵を動かして直線で入れるようにするでしょうが、中国ではそんな融通はきかないのです。
一般公開された5月4日でも、未完成のパビリオンがたくさんありました。それも日本では考えられないことです。
ゲストを入場させているパビリオンでも、一部工事中という所がたくさんありました。
会場内にたくさん配置されている「ゲストを案内する役割のスタッフ」も、広い会場内を全く把握しておらず、いい加減な案内を「堂々と自信たっぷりに」します。後で現地の日本人に訊いたら、それが中国人の特徴である、というようなことでした。わからないなら、そう言ってくれれば他をあたるのに!
各パビリオンでは、比較的マナー良く並んでいた人々も、レストランやトイレでは全く並びません。我先に、と入ってしまいます。
以前、泊まっていたホテルの横で高層ビルの建築が進んでいました。毎晩ホテルに帰ると、何となく視界が変わっていて…写真を見比べたら、隣りの高層ビルが2日で1階分も高くなっていることに気付きました。日本なら、こんなスピードで建物が建つことはありません。どんな工事をしているのか…? どのホテルも高層建築なので、泊まるのがちょっと怖いです。
そういえば、上海の工場で生産した犬の服は、裏面に電話番号などを赤ペンでメモしたものが、何枚もありました。これは商品にならないので、受け取れない、と言っても全くわかってもらえなかったことも懐かしいです。
そして、万博の内容ですが、各国のパビリオンは、建物の見た目こそ立派ですけれども、その中身は、その国の特徴ある場所をプロジェクターで映し、民族衣装や工芸品を展示しているだけ、という所が殆どでした。
北朝鮮のパビリオンが日本でも報道されていましたが、ここも似た感じです。
中国人観光客を呼び込みたい国、技術を売り込みたい国や団体にとっては格好のアピールの場ですからどこも一生懸命なのですが、インターネットであらゆる映像が見られることやディズニーランドのアトラクションに慣れていると、「これで面白いのかな? 何時間も並ぶ価値があるのだろうか?」と思えました。が、まだ海外旅行が一般的でない中国の人々の目には、興味深く映るのかもしれません。
会場内の道路や、いくつかの施設は閉会後も使われるので、とても広く大きく立派でした。壊される建物は環境に配慮してゴミにならない素材で作られているそうです。
このようにハードや掲げる看板はとても立派だけれど、細かく見ると新しいのに汚れている、平らであるべき所がガタガタ、初めからヒビが入っている、見えない所は塗らない、といったいい加減な作りを見ることが、(決してアラを探すつもりではないのですが、)とても面白く興味深かったです。
船井先生が仰る通り、日本人の気質は誠実で、約束を守り、争いや自己主張をせず、お人好しという特性がありますが、中国の人々も、マナーやモラルがちょっと変わって良い面での百匹目の猿現象が起きれば、13億人のパワーで、すぐに「みろくの世」が実現するのになあ、と思いました。
今の中国は人々の暮らしが便利に、豊かになる方向なのでいいと思いますが、ギリシャやイギリスや日本を参考にして、中国の発展の方法が先例とは変わればいいなと思います。
前述の女性社長にも船井先生のお話をして、著書を送りました。ちょっとずつでも、確実に「みろくの世」に近づけばいいなあと心から思います(転載ここまで)。
以上のとおりです。私は多分、上海万博には行きません。余り万博には興味ありません。
が、思ったとおりの「お手紙」でした。
中国の今後には、日本の今後とともに大変興味を持っています。中国には、少しエゴを減らして伸びてほしいですね。そして日本と仲よくして、よい国をお互いにつくりたいものですね。
=以上=
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