船井幸雄グループ社員の、日々もの思い、考へる

このページは、船井幸雄グループスタッフによるコラムページです。
日々仕事をする中で感じていることなどを自由に語ったページです（このページでは、便宜上、船井幸雄を“船井会長”と呼び、敬語表現を使わせていただいています。ご了承ください）。

　暑い夏が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか？
　私も暑いので、それを和らげるために家の中ではしばしば上半身裸で過ごしています。上半身裸になっているとお腹が見えます。少し肉がついて太めになった腹の肉をツマんでいると、
「学生時代は綺麗に腹直筋が６つに割れてたな。良く腹筋に力をいれて鏡に映してたっけ。」という思いと共に、唐突に昔の記憶が蘇りました。

　２８年前―。
　当時私は高校１年生。剣道部に入って5ヶ月目。合宿のため埼玉県の秩父へ行っていました。
　うだるような暑さの中でぶ厚い刺し子の胴着を着て、さらに防具をつける剣道の合宿はキツく、気分が悪くなって、面の中で吐く同輩もいました。
　道場の片隅に掃除した後に置きざりにされている濡れ雑巾に足で触ることが気持ち良く、その気持ち良さと言ったら稽古後に水を喉から飲む以上でした。

　夜になり、ウトウトすると、竹刀で打ち合っている稽古の夢で呻き声を上げ目が覚めました。周囲を見るとみんなが、寝たまま「ウッ」「ウッ」と同じように呻いており、同じ夢にうなされていることが見て取れました。


　その合宿で「引き立て」という稽古がありました。剣道には相手にひたすら打ち込んでいく「かかり稽古」がありますが、その時間が長くなり、２人もしくは３人の先輩から同時にかかられるというものです。当時、高校生では体力的に危険だと言うことで校長から禁止令が出ていました。
　それをさらにキツくした「いけにえ」という、稽古がありました。時間無制限でさらに多くのＯＢから竹刀で叩かれ、足を払われ、体当たりされるという、ほとんど集団リンチに近い稽古で、時折校長の目を盗んで「引き立て」は行っても、さすがに「いけにえ」が行われることはめったにありませんでした。


　それがその夏、なぜか部でただ一人、私が「いけにえ」の稽古に選ばれてしまったのです。

　正面に立った一番大きなOBが悪魔のように見え、「オラ来んかいっ！」という声に引きずられるようにかかっていったのを覚えています。他の大勢のＯＢには竹刀で全身を叩かれ、体当たりされ、引きずられると眩暈と吐き気がしてきて、それを通り過ぎると、身体は汗グッショリなのに悪寒がしてきました。
　「もう駄目だ」と何度も思いましたが、その都度なんとか踏ん張って目の前のＯＢに打ち込む、ということを際限なく繰り返しました。


　肉体的苦痛から時間が無限に思え、それさえ考えられなくなった時、突如として心身の状態が変わりました。スーッと楽になったかと思うと、気持ちが良くなり、とてつもなく大きな力が私の内から湧いて来たのです。身体の軸がしっかりしてきて、目の前のOBを体当たりすると彼は後ろに大きくよろけて体育館の舞台の角に身体をぶつけてしまいました。


　今で言う「ランナーズハイ」のような状態に入ったでしょう。
　火事場のバカ力とはあのようなものだと思います。
　それを潮にＯＢ達も竹刀を納め、稽古は終了しました。
　最後に稽古を終える時も私の五体には凛々と気力が漲り、蹲踞（そんきょ:剣道の礼法）をしている時もどっしりとした自分を感じていました。


　結果的にあの稽古を耐え抜いたのが原因で２年時キャプテンに選ばれ、合宿や試合、ＯＢや後輩との人間関係の軋轢でさらに苦労することになったのですが、過ぎれば全ては楽しい思い出。

　「あの合宿の時のことはいまだに語り草になっているぞ。」と剣道部のＯＢ会では先輩に笑いながら言われます。
　あの時の湧き上がってきた大いなる力は私に内面の神秘に対する関心を増大させ、船井幸雄グループに入る原動力になったように思います。
　「どんな苦しいことも過ぎれば小さなこと」と言われますが、その通り。
　あの時の苦しみ、そしてその苦しさの果てに湧き上がってきた強大な力の経験は、今でも苦しい時に私を支えてくれるかけがえの無い財産になっています。



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　最後までお読みいただき、ありがとうございました！


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