中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2019.04.20(第55回)
やっぱり、人間の腸能力はすごい!

 最近、私は人間をがっかりさせて元気をなくすという敵の術にはまってしまい、かなり落ち込んでいました。種子法廃止や水道民営化、自家採種原則禁止、農薬の残留基準値が世界一緩和されていること、TPPで日本の独立性がなくなったこと、発達障害の児童数、ガンの死亡数、アレルギーの患者数の急増、調べれば調べるほど、すべてが右肩上がりのグラフで気持ちが暗くなります。
 とにかく子どもたちだけでも何かしなければと思い、子どもたちに最良の食べ物を食べさせるため「安全給食研究会」と勝手に銘打って呼びかけました。メダカのがっこうの一斉メールで呼びかけただけなのに、10名の人が反応して集まってくれました。本当に同じことを考えている人たちでした。

 40数年前に、武蔵野市の境南小学校の給食を、素性の分かる米や野菜(自然栽培や有機栽培)と、原料から安全な本物の調味料にしてくださったレジェンド、山田征さんには顧問として来ていただきました。
 私はこの日のために、現在の食環境の危険さを示した資料と周辺の自治体の給食の実態を調べたものを用意していたのですが、彼女はこれを見て、怒りや恐れからは運動は実らないと思うとはっきりおっしゃいました。
 40数年前に境南小学校の給食を素性の分かる作物に変えることができたのは、自然栽培の田んぼや畑で育ったおいしいものを子どもたちに食べさせたい、という真心から出た思いが栄養士さんや校長先生を巻き込んで実ったのだとおっしゃいました。
 そうか、怒りからは何も生まれないのか、問題をチェックする活動ではだめなのか、出発点は慈愛の心でなければならないのだと大きな気づきを頂きました。
 しかしここで大きな壁にぶつかりました。40年以上前は農薬や化学肥料の心配はあっても、食物アレルギーや環境アレルギーはありませんでした。厚生労働省の広報誌によると、今や日本人の2人に1人がアレルギーだそうです。
 今や給食で一番大変なことは食物アレルギーへの対応なのです。卵、乳製品、小麦、そば、エビ、カニ、落花生などなど、ちょっと間違えたら死に至ることもあるのですから、安全対策の一番の課題はアレルギー対策なのです。アレルギー反応を抑える注射を持っている生徒も5000人近くいるそうです。

 給食を考え直す前に、食物アレルギーの根本原因を知らなければなりません。ところがこの会議に、予防医学の看護師さんが参加されていて、大事な発言をされました。それは、単純なことですが、ただよく噛むだけでご自分のお子さんのアレルギーが治ったというお話です。よく噛むと何が起こるのかというと、胃酸が出て消化の準備をし、腸の働きが良くなるのです。すると、腸の働きが悪くて未消化のものが漏れ出してしまうことで起こるとされているアレルギーが起こらないのだそうです。

 するともう一人、生きものに詳しい有機認証の検査員をやっていた方の発言がありました。動物にとって食物はすべて異物に当たり、消化して吸収するのはかなり大変な仕事だということ。実際虫の中には、1種類の植物しか食べられないものが多い。それは、生殖にほとんどのエネルギーを使うためなのです。それに比べて人間はずいぶんたくさんのものを食べられる。人間の消化器の働きはずば抜けて優れていることを教えてくれました。
 腸が解決の鍵かもしれません。すると、ほとんどなんでも消化してしまう人間の素晴らしい腸の働きを阻害しているものが、食物アレルギーの原因だということになります。最近ではやはり2人に1人がアレルギーとか発達障害になっているアメリカの子どもたちのお母さんたち(MamsAcrossAmerika)が立ち上がって、NonGMO(遺伝子組み換え食品を食べない)運動と、GMOでなくてもプレハーベストでグリホサートをたくさん使って作られた小麦などを食べないオーガニック運動が広がったところ、アレルギーが激減したという事例があります。

 これらがなぜ腸をズタズタにしてしまうのかを説明すると、遺伝子組み換えではトウモロコシや大豆にBt毒素という土壌微生物の遺伝子が入っていて、その葉っぱを食べると、虫の消化器に穴が開いて死ぬのです。虫と違って人間の胃液は酸性なのでBt毒素は無害化すると説明されていましたが、水牛に作物の残差を食べさせると100%死んでしまうのです。羊で実験しても死んでしまいます。人間は水牛や羊ほど敏感ではないとはいえ、腸が傷ついてしまうことは想像できます。
 また除草剤グリホサートをかけても枯れないように遺伝子操作されている作物は、たくさんのグリホサートが使われています。これは植物が栄養をつくれないようにある酵素を阻害する働きをするらしいのです。企業からは人間には関係ない酵素で大丈夫だとの説明でしたが、最近人間の小腸にもその酵素があることが分かり、腸が働かなくなる理由が分かりました。
 原因さえわかれば治すのは簡単です。腸の働きを阻害するものを食べないで、良い体をつくるものをよく噛んで食べればいいのです。給食への働きかけも、これがポイントかもしれません。腸を含め人間の優れた消化器がフル回転すれば、すべての病気から立ち上がることができるとは、赤峰さんや新野さんや多くの賢者が支持している千島学説の腸内絨毛造血説の結論です。

 幸い私たちは、食を変える自由も、生き方を変える自由も与えられています。怒りや恐れは、その覚悟がない時に出てくる感情かもしれません。これで最近の私の怒りを消して、実りある慈愛の心を育もうと思います。

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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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