中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2019.08.20(第59回)
今一番の緊急課題。それは子どもの食を有機にすること!

 何を大げさな……と思う方もいらっしゃるでしょうが、まず《表1》をご覧ください。



《表1》

 これは、日本の小学校の特別支援学級児童数の最近10年間の推移です。
 2017年が小学生だけで167,259名。この10年間で、全体数2倍、情緒障害・自閉症は2.5倍、知的障害は1.65倍という増加率、この2つで全体の94.5%を占めています。出生数はこの10年で10%減っているのに、その子たちが健康に育っていません。これが何を意味しているかといえば、日本は次世代の子育てに失敗しているということです。

 《表1》の推移のグラフで最後の3年の勾配が急になっていますが、2015年にネオニコチノイドが大幅緩和されたことが関係していると考えられます。また、この表には除草剤グリホサートが最大400倍に緩和された2018年以降のデータがまだ含まれていません。2018年から明らかに小麦粉類の農薬残留濃度が高くなっているので、さらに増加率が上がっていると推測されます。ちなみに、60年前は17,314名でほぼ1/10です。昔は気にしなかったという方とか、調査が今ほど充実していなかったとしても、増えすぎです。特にここ2〜3年の急増ぶりは食環境が急激に悪化したとしか思えません。

 これは、おかあさんたちが悪いのではありません。情緒障害・自閉症や知的障害には原因があります。それは食環境の急速な悪化です。
 食環境の悪化を復習してみると、始まりは1972年出版の有吉佐和子さんの『複合汚染』に出てくる農薬や保存料などの添加物、同年の塩田が廃止され微量ミネラルが含まれていた塩が塩化ナトリウムに変わったこと。1996年ころからの遺伝子組み換え作物と同時に始まった除草剤グリホサートの散布。2010年までのデータしかありませんが、重度のグルテンアレルギーの息子さんを持つナンシー・スワンソン博士の研究では、除草剤グリホサートの使用量の増加と重度のグルテンアレルギーの患者数が相関関係にあることが分かります。また、2000年頃から急激に使われるようになったネオニコチノイド系の農薬。これは長期残留するので、減農薬を可能にした農薬と称賛されましたが、脳かく乱物質で、まずミツバチが巣に帰れなくなり死滅する現象と同時に、多動性の子どもたちの増加が始まりました。

 これで、日本の子どもたちの命が劣化しているのは分かっていただけたかと思います。これは本当に本当に大変なことです。私たちは野生動物として失格です。次世代に良い遺伝子を繋げていないのですから。

 しかし、ここに解決策があります。まず次の新聞記事をご覧ください。前回ご紹介した朝日新聞2019/7/18によると、たとえ、農薬使用の普通の米や野菜を食べて、体内に5ppmほどのネオニコチノイドが残留している人でも、5日間有機食材だけを食べると、体内の農薬は半減し、1か月続けると、1/10以下の0.3ppmに減るという調査結果が発表されています。これが、生きている人間が持っている浄化能力です。健康になる力、自然治癒力とも言います。子どもに全く農薬や化学肥料を使わない作物、添加物も使わず、本物の塩や調味料で料理した最高のものを食べさせたら、どんなに良い子が育つと思います?
子どもが持って生まれた身体能力や知力や人間力が思いっきり育ちますよ。まず手始めに有機給食にしましょう!


 有機給食というと、夢のような話だと思うでしょうが、2019/6/16の東京新聞をご覧ください。世界ではオーガニック給食が広がっています。フランスでも、イタリアでもEUでも有機食材を使う学校は増えています。お隣の国韓国のチェンジュ市では、すでに小・中・高の学校給食を有機で無償化しています。そして2021年からはソウル市もすべての小・中・高校で「オーガニック無償給食」にする予定です。

 日本では国が安上がりの給食を進めているため、全国で50%、関東圏では90%が民間委託になっています。しかし、一部の自治体では信念を持った校長や保護者や栄養士などの個人の頑張りで実現しています。愛媛県今治市、長野県上田市、千葉県いすみ市、東京都武蔵野市などです。その他には、一部の保育園で園長の考えにより有機給食が実行されています。とても元気な良い子が育っています。日本でもできます。

 それでは、日本で有機給食を実現するには、何が必要でしょうか? それは国や自治体の後押しです。保護者には給食費の無償化を、有機農家や給食を作る方たちへは、買い上げ価格と予算との差額補助です。子どもを健康に育てる食に税金を使うことは、日本とって最も大事な政策であるに間違いありません。自治体におかあさんたちが声を上げれば必ずできることです。

 1日1回の給食で効果なんかあるの? と疑問に思う方もあると思いますが、それが効果があるのです。良い材料を本物の調味料で料理した食事は口にも腸にも脳にもおいしいです。残飯が出なくなります。そして食育で子どもたちに食を選択する知識と有機農業の大切さを教えれば、おかあさんたちが変わり家庭の食事もかわっていきます。

 もう一つ良いことがあります。それは有機給食にすると、有機農業が広がるということです。世界ではこの17年間に有機農業面積が5倍になりました。無償の有機給食を始めた韓国では、日本の18倍の面積になっています。有機農業の面積が増えるということは、子どもたちに生きる環境を残せるということです。こんなにがんばり甲斐があることって、他にあるでしょうか?
  今、署名活動や上映会など、いろいろと作戦を立てているところです。皆さんご協力をお願いします!

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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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