中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2019.09.20(第60回)
ゲノム編集について知っていてほしいこと

 ゲノム編集という言葉をテレビで聞いてからまだ3か月ほどで、ゲノム編集は表示義務なしに解禁されました。ゲノム編集とは、遺伝子操作の一つで、初めはリンゴやジャガイモの切り口が赤くなるのを防ぐため、赤くする遺伝子を取り除いたリンゴやジャガイモにするというようなものです。アメリカではNewGMOと呼ばれています。
 この時点から、私はゲノム編集に嫌悪感を持っていました。その理由は、切り口を赤くするのは、生体が第2の皮を作り身を守る生体反応であり、それを人間の都合で取り除くことで、この生きものは自然界の中では淘汰される運命にあると思うからです。それと、リンゴやジャガイモにも環境の変化に適応する進化をするため、遺伝子が変わることはあると思いますが、切り口を赤くする遺伝子を取り除くという変化は決して望まないだろうと思うからです。
 さて、今年の4月NHK夜7時のニュースで初めて、ゲノム編集の肉や魚が8月くらいから市場に出回ると知らされました。海の資源が枯渇に向かっている中、筋肉がつくのを抑制する遺伝子を取り除かれて大きく太ったタイやフグが、人類の食料を救うことができるという研究者の言葉に違和感を感じました。どうして、海の環境を取り戻して、多種多様な魚がたくさん泳いでいる海にしようと思わないのでしょう? リンゴの時と同じく、太るのを制御できない魚や動物は人間でいえば成人病、健康な肉ではありません。これを食べて健康を維持できるとは思えません。私は食べたくありません。
 4月の時点で、既に市場に出回ることがいつの間にか決定している以上、あとは表示していただくための活動しかありませんでした。消費者連盟の署名活動に協力しました。
 ところが、最後の砦である、消費者庁が表示を義務付けしませんでした。いよいよ10月1日から表示していないゲノム編集食品が市場に出ます。私たちの選択の自由は奪われたのです。私はいつも買い物をしている比較的良いものを扱っているスーパーの魚売り場の方に、ゲノム編集の魚を扱わないでほしいとお願いに行きました。すると「うちは大丈夫だよ。そういうのは、回転ずしとか外食産業に行くからね。」という答えでした。これでいよいよ外食はできないなと思いました。

 以下ゲノム編集で政府の説明のウソや懸念材料を指摘しておきます。
(1)「ゲノム編集は科学的に検出できない」について
 「ゲノム編集は自然界の突然変異と同じなので、識別が科学的に不可能だから、違反しても証拠を掴めない。取り締まれない」と説明していますが、遺伝子組み換えのチェックより簡単ではないというだけで、検査すれば痕跡を見つけ出すことができます。
 それに、もう一つ社会的検証というものがあり、トレサビリティーのように遡って調べて行けばゲノム編集という特許技術を使っているものかどうかは必ずわかります。企業がごまかしたり違反しても証拠を突きつけられないというのは、企業を信頼していないことになりとても失礼に当ると思います。
 現に、EUなどゲノム編集の表示義務がある国に輸出する企業は、その国向けだけに表示するのですから、やろうと思えばやれるという証拠です。

(2)ゲノム編集の大豆も遺伝子組み換えではない範疇に入り、有機栽培が認められる。
 これはすでにアメリカではゲノム編集大豆のオイルの瓶に、NONGMOとオーガニックのマークが表示されています。日本に来るのも時間の問題です。有機とかオーガニックの表示が安心の証ではなくなります。

(3)ゲノム編集にはオフターゲットの危険がある。
 ゲノム編集のイメージ図にハサミで遺伝子の鎖を切っている絵がありますが、実際にはハサミというよりナタに近い荒い作業で、思ってもいない箇所を切ってしまうことがあります。オフターゲット事件では、多数の死者を出した製薬会社があります。また、編集というなら、切ったら貼り付けるという作業が必要になりますが、ゲノム編集は破壊までで終わりでやりっぱなしです。想定外の野菜や動物が生まれる可能性は否定できないでしょう。

 わたしは専門家でも研究者でもありませんが、日本でこれからも生きていかなくてはならない方たちに、この程度のことは知っていてほしいと思います。

 ゲノム編集では、血液をサラサラにするリコピンをたくさん持ったトマトも出ます。野菜版サプリメントというべきでしょうか? 一つ一つは世界の人たちへの貢献に見えますが、そのもとにある動機は、食糧による独占、利益追求、支配下に置くシステムを強化するという1点にあります。私たちにできることは、反対することは反対と意思表示することと、怪しいものは買わないこと、食べないこと、そして食を変えてこの最悪の食環境から子どもたちを守ることです。

 原発を止めて処理技術開発に専念し、農薬を止め、遺伝子組み換えやゲノム編集を止め、正しい栄養学を採用し、次の世代を担う子どもたちを健康に育て、良いものだけを残す。そういう日本になるのを見届けてから死にたいと思う陽子ばあちゃんです。

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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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