ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測
このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。
これから月一回のペースで「ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測」という連載を始めます。
この連載は普通は政治や経済というハードな分野では除外されている精神世界の動きも包含し、これから私達の社会と世界がどの方向に動いて行くのか、展望します。
●世界情勢と精神世界を組み合わせる
世界情勢と精神世界とを組み合わせるというアプローチには少し違和感があるかも知れません。しかしいま、このような方法をとらないと、混迷した世界情勢は解読できない状況なのです。
これまで多くの専門のシンクタンクやエコノミストが、現実の動向を踏まえた精緻な論理を駆使した分析で情勢の変化を予測してきましたが、その多くが的中しませんでした。
ここ数年でも、2007年から始まる金融危機、2009年の米茶会派の抗議運動、2010年から始まるアラブの春、2010年のオキュパイ運動、同じく2010年から始まるPIIGS諸国の財政破綻、2013年のトルコやブラジルの抗議運動など、それこそ歴史の方向性を左右することになった大きな変化が幾度となく起こりました。でも、これらの変動の予測に成功した機関や専門家はほとんどいなかったのです。日本でも海外でもこれは同じ状況です。
それというのも、いま私達の生きている社会と世界は、これまでになく不安定になってきており、それに伴い私達の集合無意識という、安定した状況では作動することのなかった意識の深層に存在する感情が、勢いよく表面に吹き出し、これが論理的な予測を越えた情勢を形成するようになったからです。
現代の世界は、集合無意識という本来は精神世界に属する対象を的確につかまないと、情勢の判断も予測も難しくなっています。これが政治経済と精神世界を組み合わせることが必要になっている理由です。
●不安と恐怖が覆う
でも、どうして現代にそのようなアプローチが必要なのでしょうか? その理由は、私達の生きている世界から安定性が次第に失われ、それとともに、安定した生活世界ではこれまであまり経験する必要がなかった不安や恐怖が社会を覆うようになってきたからです。
それを引き起こしたものこそグローバリゼーションです。たとえば、1988年頃を思い出して見てください。グローバリゼーション以前の世界です。
日本では終身雇用制が一般的な雇用形態で、どんな人でも企業で働き、普通に頑張れば、中流の生活が保証されていた時代です。一億総中流が当たり前のような時代でした。
また終身雇用ではないアメリカやヨーロッパでも、同じような状況でした。学校を出て、普通に働いていれば、やはり中流の生活はだれにでも保証された世界でした。
またこの当時、いまは新興国と呼ばれている中国やインドでは、工業化と急速な経済成長の時期はまだ到来しておらず、ゆるやかな発展のもと、安定した伝統的な生活圏が維持されていました。
ところが、90年代から始まるグローバリゼーションで、先進国の生産拠点は賃金の安い新興国へ移動したため、低賃金労働が一般化して先進国の中間層は没落しました。すさまじい格差社会の到来です。
また新興国でも、急速な経済発展の波にうまく乗った層と、乗れなかった層の間で格差はすさまじく拡大しました。そして、貧しくても安定していた伝統的な共同体が失われたので、発展に取り残された人々の受け皿も消滅し、格差は一層厳しいものとなりました。
これは日本も同様です。かつての終身雇用の世界は完全に失われ、不安定な契約労働や派遣労働が拡大し、ネット難民もいまだに存在しています。一億総中流の時代は消滅しました。
そのようななか、どの地域でも安定感が失われたので不安と恐怖が社会を覆いました。
それは、世界各地で反格差を訴える激しい抗議運動を引き起こすと同時に、常識的な理性とそれに基づく合理的な思考の岩盤がかち割られ、民族的なトラウマや、失われたかつての偉大な国家への憧憬といった、安定した社会では心の奥底に見えないように抑圧されていた力を解き放ったのです。ナショナリズムの胎動です。
これは、集合無意識という解除されてはならない荒々しい力が引き出されてしまい、そこに内包されているエネルギーが外部に噴出してしまったかのような状態です。
日本でも、一昨年末の安倍政権誕生から、日中、日韓関係の緊張の高まりが背景となり、戦後長い間タブー視されていた偉大な国家への待望論が高揚し、これまでにないナショナリズムの高まりが見られるようになりました。
この動きは、これからの歴史の流れを左右する大きな影響力をもつことは間違いありません。私達の社会と世界のこれからを的確に予測するためには、意識の光が届かない深層の集合無意識にまで到達できるアプローチがどうしても必要になります。これが、政治経済の分析と精神世界の動向が組み合わされなければならない理由のひとつです。
●新しい意識の覚醒
でも、精神世界に目を向けなければならない理由はこれだけではありません。
実はもうひとつあります。それはいま、私達の目の前で新しい意識の形態が生まれつつあり、それを理解するためには精神世界に足を踏み入れなければならなくなっているからです。
現代の社会は、フェースブックやツイッターなどのSNSの拡散により、個人が発信した情報が一挙に拡散し、個人が大きな社会運動を引き起こすことも可能になっています。SNSから拡散したアラブの春、スノーデンという一人の個人が明らかにしたアメリカの国家犯罪の暴露などは、個人の力が社会を動かす巨大な源泉になり得ることを証明しました。一人の覚醒した個人がいれば、世界と社会は確実に変わり得るのです。
個人の力の覚醒は、社会運動にはとどまりません。3Dプリンター、3Dスキャナー、3Dレーザーカッターなどの新しい製造技術の個人への普及で、これまでは大手製造業でしか作ることのできなかったあらゆる製品を、個人が手軽に作ることができるようになりました。その結果、ネットでは、個人が作成したあらゆるユニークな製品が溢れ、大手製造業の規格化した大量生産型の製品と市場で競争するようにさえなっています。
個人の力が市場に浸透し、大量生産で規格化され集合的な製品を押しのけ、市場を、生産者個人の個性を表現するステージに変えつつあるのです。集団から個への動きです。
●個に内在する力に目覚める
個人は自らの力の大きさを実感できるあらゆる手段を手に入れました。このように見ると、もはや個人は、組織や国家に組み込まれた受動的でひ弱な存在ではありません。組織や国家を自分の手で変えることのできる自立した主体です。
そのように見ると、今度はある特別な感覚が目覚めてきます。現実とは、私達の前に壁のように立ちはだかる絶対に変更不可能なものではなく、私達の想念と力で比較的容易に変えることのできるものなのではないかという感覚です。
そして、この感覚がさらに一歩進むと、現実を変える力は、実は私達の一人一人に内在しており、それを目覚めさせると現実は変化するという感覚に変わります。
数年前、「引き寄せの法則」というビデオと本が人気を博しました。これは、現在の現実は自分の想念が「引き寄せた」ものなので、それを変えるには異なった現実を「引き寄せる」想念をもてばよいという思想を広めました。つまりどの個人にも、現実を変えてしまうだけの精神的な力が内在しているのではないかということです。
●2つの力の衝突が歴史を作る
この力は、個人を飲み込み、国家や集団の大きな力のひとつとして組み込む集合的な力に決然と抵抗し、集団の熱狂には飲み込まれない強い個人を作る大きな力になります。ネットのサイトやSNSを見ると、こうした意味の「個の覚醒」が実際に進んでいることがよく分かります。
すると、いまは2つの大きなトレンドの衝突のなかで、新しい時代が作られる時期に入ったといえます。個を飲み込み、集団と一体化させてしまう「集合無意識の力」と、個人に内在する力を覚醒させ、現実の変革主体となるように促す「覚醒した個の力」です。
このどちらの力もスピリチュアルな力です。その動きを捉えるためには、やはり精神世界の動きを把握しなけれなばなりません。
さて、長々と書いてきましたが、私は世界情勢を政治経済的に分析すると同時に、この2つの精神世界的な力を土台にしてこれからの変化の方向を読み取って行きます。どんな光景が見えてくるでしょうか? 来月から具体的なテーマについて書いて行きます。
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社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/