“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2015.08
荒れた株式市場の先行きは?

 世界の株式市場が大荒れになっています。中国上海市場の急落から始まった世界の資本市場の混乱は当初は、上海市場や、新興国の株や為替、並びに商品価格の急落などに収まっていたのですが、8月下旬から一気に米国市場を襲い、ついにその波は日本へも襲い掛かってきて日本株も急落するに至ったのです。日経平均は高値20,900円台から18,000円割れまで入ってくるという大荒れ状態になりました。

●世界の市場混乱の発端は?
 世界的な株安の主因は中国経済への根強い不信感です。中国は長期に渡って二桁成長を続けてきましたが、やはりここにきて高度成長から中低成長へと変わる過渡期に差しかかっています。その時に様々なあつれきが予想され、経済的社会的な痛みが中国国内で生じてくるのはやむを得ないことなのです。中国政府はこの衝撃を緩和しようと国内の株式市場の上昇を目論み演出しようとしました。中国政府は株価を大きく煽るような行為を行って、中国国内に異様なバブル状態を作りだしてしまったのです。結果、経済状況を無視した株高が一時的に生じて、それが破裂するというとんでもない事態になっているのです。そのことが、減速しつつあった中国経済の先行きを更に不安定なものとしてしまいました。
 こうして不安定化した中国経済への懸念が急速に広がってきたのです。その懸念は中国株の下落と相まって世界を覆うようになり、結果的に新興国や資源国の混乱、商品価格の急落、そして日米など先進国の市場まで連鎖するに至ったのです。
 とにかく中国当局の株高政策は常軌を逸していました。人民日報や新華社など国営のメディアを使って<上海市場は4000ポイントから大相場へ向かっていく><中国株がバブルなんてとんでもない、これがバブルなら世界にバブルなど存在するのだろうか?>とまで言って国民に株式投資を煽ったのです。中国は共産党国家ですから、国民としても政府の機関紙である人民日報や新華社がこのような論調を張って株式投資を奨励すれば、株を購入したくなるのも当然と言えます。結果、多くの初心者が株を始めましたし、並びに政府の息のかかった国営法人をはじめとして個人、法人とも全国民的に株式相場に熱狂するようになっていったのです。こうして官制主導の相場が過熱し続け、中国株は昨年から1年間で2.5倍にまで駆け上がったのです。

 こんな状態が続くわけもなく、中国の株式市場はあえなく暴落に至ったわけですが、その後は中国らしいというか、更に常軌を逸した政策を連発、とんでもない株価維持策を行ってきたのです。下がりそうな株は売買停止にしたり、証券会社には無理やり株を買わせ、国営企業にも自社株を買わせ、株を大きく売却するような投資家には当局が重大な警告を発し、それでも株価の下げが止まらないと、ついには中央銀行である人民銀行で元紙幣を印刷して株式を購入し始めるという有様です。
 中国では全国民的に株式投資が広まっていましたが、その動きは大学生にまで広がっていました。中国の大学生の何と3人に一人は株式投資を行い、その中の4分の1は、100万円以上も株式投資を行っていたというのですから尋常ではありません。これら富裕な大学生はほとんど共産党幹部や中国のエリート階級の子息と思われますが、彼らが大きな損失を出したということは、そのまま中国の上層部であるエリート層の動向を写しているものと思われ、共産党の上層部を含めて今回の株式ブームで相当甚大な損失を被ったことは疑いないでしょう。

●中国株暴落から世界同時株安までの経緯
 これら共産党の中枢に当たるエリート層が株の暴落で大きな損失を被ったわけですから、中国当局としてもそのまま放置しておくわけにはいかなかったものと思います。そのため、あろうことか、中国当局は株の強力な買い支えに入ったのです。日本円にして100兆円近い金額を株の買い支えに投入したという説もありますが、これについては中国当局が公式に発表していませんので、いくらくらい当局が株買い支えに資金投入したかは定かではありません。いずれにしても株買い支えの資金は、中国の中央銀行である人民銀行を通じてマネーを印刷する形で実行されたに違いありません。
 普通は、中央銀行が大量のマネーを印刷して株を限りなく買い支えれば、株式市場の下げは止まる、と思えますが、中国の場合は余りに株価を高く誘導し、国民が借金をしてこぞって株を高値まで買い上がったために今度はいくら買い支えをしようとしても膨大な資金が必要となってしまい、ついに中国当局は株の買い支えを放棄するに至ったのです。
 具体的には上海総合指数が5000ポイントまでいってその後、暴落概ね3500ポイントのところで買い支えに入り、3500ポイントから4000ポイント程度まで買い支えを続け、さらに当局が証券会社の株を買い支えさせて、その購入した株は4500ポイントまで売ることはないから安心するように、と人々に呼びかけたものの、投資家としてはあまりに損失が大きかったので、とても新たに株式市場に資金を投下した買い出動というわけにはいかなかったようです。

 結果的に中国の株式市場は徐々に人気が衰退していって、ついに3500ポイントの維持が難しくなってしまいました。8月14日、中国当局は「通常の状態では株価に介入することはしない」とコメント、そこから上海市場は下げ始め、ついに防波堤を失って3500ポイントも割れ、3000ポイント割れにまで下がってしまったのです。
 結果、中国の株式市場の時価総額は高値の5000ポイントから見て、約600兆円も失われることとなったのです。日本のGDP以上の資金が泡と消えたわけです。
 このような状況下、さすがに日米などの先進国の状況もこのままではいられない、という懸念が急速に広がってきて世界的に株安が連鎖して今回の世界同時株安が起こってしまいました。

●日本の株式市場の展望は?
 一連の動きは、あまりに日本の経済状況と中国の状況をリンクして悲観しすぎと思いますが、株式市場などは一種、相場を取り巻く気分というかその時の雰囲気で動いてしまうところもありますから、中国発の世界的なショックで、先行き不透明感から一時的に日本株に対しての投資熱が覚めるのもやむを得ないかもしれません。
 ただ、あまりに現状は中国に対しての悲観な見方が日本経済や日本株に必要以上の警戒感をもたらしていることも事実でしょう。日本はすでにバブル崩壊から20年以上も経過していて、企業の財務体質は万全の状態になっています。日本企業はその5割以上の会社が現在無借金状態です。一方で、中国企業は膨大な借金を抱えている状態です。
 また、中国経済に対しての依存度も、東南アジア各国や韓国や台湾などと日本の依存度は全く違います。新興国や資源国は中国経済への依存度が高いのと、商品価格の急落やドル高によって深刻な影響を受けています。一方、日本企業も影響はないことはないですが、その反面、原油価格の下落をはじめとする物価安の恩恵を得ていることも忘れてはなりません。
 中国経済の悪化が激しくなっていく過程で、いよいよ中国でも金利の大胆な引き下げや、すでに中央銀行によるマネーの増発も始まっています。中国発のショックから世界経済の悪化を懸念して予定されていた米国の9月の利上げは先延ばしとなりそうな様相です。また物価が思うように上がらない状況を受けて、日銀は再度の追加緩和することも期待されています。その追加緩和においては日銀による株の買い付け、ETFの買い付け枠の拡大が発表されることでしょう。

 確かに世界を取り巻く情勢は不確定で、多くの不安要因が次々と噴出してきます。しかしどれもマネーを印刷することで問題を解決しようとする政策は変わりません。日本でもすでに、日銀による日本国債の買い付けは300兆円を突破、GDPの6割に至っています。この調子で日銀が国債の買い付けを続ければ2、3年後にはGDPと同じ500兆円に達してくるでしょう。慣れっこになってもう意識しなくなっているかもしれませんが、円紙幣は引き続き怒涛の勢いで印刷され続けているのです。そして景気が悪ければ悪いほど、印刷されたマネーの行き場所がありません。今や世界を見渡しても資金の行き場所がなくなってきているのです。その中にあって世界で最も順調な企業業績を叩きだして、しかも政治的に最も安定している日本株に資金が来ないわけがありません。中国経済の悪化によって、さらなるマネーの限りない印刷は続くのです。世界には膨大な額のマネーが溢れ、その増刷の流れは止まることがないのです。紆余屈折はあれ日本の株式市場は基本的に下がりようもないのです。

15/12

2016年の展望

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中国の結婚事情

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現れ始めた高齢化社会のひずみ

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アベノミクス その光と影

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ギリシアの悲哀

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止まらない<株売却ブーム>


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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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