“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2015.07
異常気象の連鎖

 日本でもここにきていきなり全国的に猛暑が襲ってきていますが、最近は猛暑といっても従来とは程度が違い、まさにうだるような暑さが日本全土を覆ってきています。一方で台風などは季節に関係なく発生し、大型化して一度台風が通過すると従来では考えられなかったような被害が多発するという状況が生じてきています。まさに気象変動は年々激しくなって、暑さも寒さも風雪被害も竜巻までもが発生するという異常事態が常態化しつつあります。
 明らかに地球全体が温暖化しているなかで、日本もその影響を受け、気象状況が変わってきていることは明らかだと思いますが、これは何も日本特有のことではありません。世界を見渡すと日常茶飯事のように連日、どこかで熱波や干ばつ、豪雨などの深刻な被害が多発しているのです。このような環境の変化を見るにつけ、多くの人々は地球全体も人類全体も何か得体のしれない危機に向かっているような感覚を持っていると思われます。
 これは何も気象に限ったことでなく、国際関係や異常に膨れ上がったマネーの山が、一体世界に何をもたらすのか、経済や政治や国際関係の激変に対しての変化も予感させるものでもあります。今回、異常気象が世界各地で起こっていることを羅列的に取り上げ、現在の地球全体の異常性を示してみたいと思います。

●干ばつによる世界各地の被害の実態
 地震や台風など日本では完全に慣れっこになってきていますが、日本のように建築がしっかりしているところならまだしも、世界では杜撰な建築がまかり通っていますから、ひとたび、大規模な地震や台風などに襲われると考えられないような被害が続出するケースがほとんどです。
 直近の干ばつの例を示すと、まずはお隣の北朝鮮が100年に一度と言われる深刻な干ばつに見舞われています。日本では大きく報道されませんが、事態は深刻です。とにかく雨が降らないわけです。また北朝鮮ではエネルギー源が主に水力発電なので、雨が降らずダムに水がたまらない状態ですと発電ができません。従来は雪が解けて川の水量が増える晩冬と初夏は最も発電に適した時期なのですが、今年は干ばつのために全く発電ができず、平壌でも春から停電が多発しているということです。もちろん干ばつで水不足ですから、農業も壊滅的な被害を受けているようです。水がないために人海戦術で田植えを行っているということで、それでも生産は上がらないようで、秋には極めて深刻な事態に発展しているかもしれません。

 また同じく農業の深刻な事態に直面しているのがタイです。タイの農業と言えば、世界一のコメ輸出が有名でした。ところが前政権によるコメの高値買い取りというばら撒き政策によってタイ国内ではコメの膨大な過剰在庫がたまり、それが処分できずに財政的な危機が生じてしまったのです。当然、高値買い取り政策は破たんして中止です。そこに今回は20年ぶりの干ばつで全くコメの収穫ができず、収入が激減して農民は窮地に陥っているようです。すでに干ばつによるタイの被った損害は数千億円に達する見込みで、今年のタイのGDPは下方修正されそうです。
 オーストラリアに目を向けると、クイーンランド州では干ばつがかつてないほどに拡大。牛に与えるエサもなく、ついに業者は牛の大量処分に走っているわけです。このため食肉処理が超繁忙となって牛肉生産が急拡大するという皮肉な結果が生じています。その肉を米国にハンバーガー向けということで輸出、こうしてオーストラリアから米国への牛肉輸出は前年比70%も増えるに至ったのです。
 オーストラリアに比べて干ばつの状態が一段と深刻なのがカナダです。オーストラリアの場合は育った牛に与えるエサがなく食肉処理となったわけですが、カナダでは干ばつが数年続いているのですでに牛の絶対数が減りつつあり、牛の供給が逼迫しつつあるのです。このため食肉処理業者は処理する肉が不足しています。そのような状況下、食肉業者は牛肉の確保に奔走、プレミアムを支払って牛肉を手当てしている状況です。当然牛肉の値段は鰻登りとなって牛ひき肉は過去2年間で33%、サーロインステーキは44%値上がりしているという品薄での価格高騰が起こっているのです。

 干ばつでもっと深刻な被害を受けているところは牛肉や農業の問題よりもより生活に欠かせない飲み水の問題が深刻化している地域です。特に米州、カリフォルニアから中米諸国、南米諸国へと被害は広がっています。この地域では干ばつのうえに一旦、雨が降るとハリケーンのような豪雨に見舞われて甚大な被害を被ってしまうのです。カリブ海諸国はただでさえ、例年、ハリケーンの通過で大きな被害を受けるのにそのうえ雨は例年の半分しか降らないので水の確保に窮しています。プエルトリコでは約35万人が水へのアクセスを制限されました。ジャマイカ西部では乾燥で山火事が多発、農業が大きな被害を受けています。ドミニカも農業が危機に瀕しています。これらカリブ海の諸国は水へのアクセスが死活的な問題になりつつあります。水の確保が容易でないのです。米国と陸続きでないので水の輸送が簡単にはできません。
 NASAの科学者はカリフォルニアの干ばつの酷さをみて「あと1年しか水はもたない」と嘆きましたが、ブラジルではもっと深刻です。今年はじめブラジルの東南部のサンパウロ州では100年に一度という酷い干ばつになりました。サンパウロ周辺に水を供給する貯水池はカラカラ状態となりました。このため公立学校では学生の歯磨きを禁止、理髪店ではドライシャンプーを使用するに至ったのです。このような状況に乗じて暴力団が住民に巨額の給水費用を要求して社会問題化しました。このため住民はワニのいる川に危険覚悟で水を取りに行ったとして話題になりました。
 ブラジルより南に位置するチリでも干ばつが酷く、砂漠が南方に拡大中ということです。チリの首都、サンティアゴの水供給の半分を占めているアンデス山脈では降雨が全くなく、いずれサンティアゴ周辺は砂漠化していくという観測も出てきています。チリでの干ばつ傾向はすでに8年にわたって続いているというのです。中南米最大のかんがい施設であるパロマ貯水池では水が全くなく、水門は閉鎖され、残っている水もとてもダムまで到達できる状態でなく、地面は完全に干上がっているということです。

 米国カリフォルニアの干ばつも手が付けられません。山火事が多発、かつては肥沃と言われたカリフォルニアは4年にわたって干ばつ状態が続き、全く環境が変わりつつあるのです。 米国の干ばつモニターによれば、カリフォルニア州のほぼ半分の地域が「例外的に厳しい」干ばつ状態ということで最も深刻な状況になりつつあるというのです。4月にはカリフォルニア州のブラウン知事は住民に25%の節水義務を発表しました。「歴史的な干ばつには前例のない行動が必要だ」として住民に理解を求めたのです。
 カリフォルニア州は昨年も干ばつ状態で非常事態宣言を行い、住民に20%の節水を求めましたが、年々状況が悪化しています。何しろ水源の山に雨が降らないのですから水が川から流れてきません。カリフォルニア州ではビバリーヒルズなど高級住宅街が有名ですが、これらセレブの庭の木が青いことに非難の声が上がっています。カリフォルニアではスプリンクラーなど水の無駄使いは禁止ですから、住民に違反は通報するようにホットラインが開設されています。芝生の水まきはご法度ですし、トイレの水も毎回は流さず節約しなければなりません。プールはもちろん空っぽでなくてはなりません。これではビバリーヒルズのセレブも居心地が悪いことでしょう。

 世界の火薬庫となっている紛争地域の水不足も深刻です。特に中東などでは水は石油以上に希少な資源です。トルコ東部からシリア、イラクを通るユーフラテス川はかつてメソポタミア文明の発祥の地でした。ところがこのユーフラテス川一帯の地域に現在では、上流にトルコ、そして中下流にはイスラム国やシリア政府、そしてイラクというように紛争国が混在状態です。
 上流に位置するトルコは自国の水使用のためにダムを建設、大量の水を使用し始めました。このためユーフラテス川の水位は従来の半分にまで低下、下流のイスラム国やイラクでは水の確保が難しくなっているのです。干ばつが起きているわけではありませんが、水の使用について管理方法が合意されておらず、各国勝手に使用している状態です。

 このような水を巡る争いは、日本のような島国ではわかりづらいですが、世界を見ると日常茶飯事です。東南アジア各国なども似たような深刻な問題を抱えています。主に上流を抑えている中国が水を自国のために利用するので、下流の各国に深刻な問題が生じています。アジア地域に流れる巨大河川、メコン川、インダス川、ブラマプトラ川、長江、黄河、など多くの原水はチベットなどヒマラヤ山脈から発生しているので、このチベットという地域は、資源の源という意味で最も重要な地域とも言えるわけです。中国が手放すわけがありません。
 かように世界各国、どこを見渡しても深刻な干ばつや豪雨の被害が激しくなっています。そこに秩序のない水の奪い合いが起きており、関係国は一向に利害調整ができず、混乱に拍車をかけている状態です。このまま世界は安泰に向かっていくとはとても思えません。
 気象も争いもさらに激しくなっていくことでしょう。一体この末路にはどんな未来が待っているのでしょうか? 地球の悲鳴が聞こえるようです。人類への切羽詰まった警告に耳を傾けなくてはなりません。



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株、株、株!もう買うしかない 〜日経2万円突破でも日本株はバブルどころか“逆バブル”『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売。

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