“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2015.01
止まらない<株売却ブーム>

 日本の個人投資家の株売却の勢いが一向に止まりません。私は数年前から日本では株ブームなどでなく<株売却ブーム>が起こっていると主張してきましたが(当コラム2013.5「株 売却ブーム」参照)、この個人投資家の株売りの勢いが止まる様子はないのです。
 思えば2年前、安倍政権が発足してから円相場は80円から120円、日経平均は8,000円から18,000円にまで大きく上昇したわけです。また政府は、投資に対しての無税特権、NISAを導入、無税枠を100万円から120万円と年々更新し、さらに贈与の対象として年80万円の子供名義に対してのNISAの枠を設けるなど、必死に「貯蓄から投資へ」と呼びかけ続けています。

●政府の思惑とは裏腹に、個人投資家の株離れは進む一方
 この間の統計を見る限り政府の思惑とは逆に、日本人の株離れは一向に収まることがないのです。皮肉なことですが日本では<株売却ブーム>は止まることがないのです。またマスコミの報道をみると、いかにも株高で全国的に投資マインドが高まっているような報道がなされているのですが、実は事実はそれと全く逆であり、基本的に日本人の預金に対しての選考は不変で、株式市場がこれだけ話題になっていても個人投資家の株離れは進む一方なのです。
 2014年3月末における日本の個人投資家の日本株の保有比率は18.7%となり、前年比で1.5%減少しました。この間、株式市場は倍近い上昇していたわけですから、この上げを好機とみて株売却を積極的に進めた日本の個人投資家の姿勢がうかがわれます。
 日本の個人投資家の株式保有比率が減少しているのは、株式市場が上昇してきた2012年度、2013年度と2年連続です。個人株主数(延べ人数)も4575万人となって21万人減少しました。減少幅は、比較できる1985年以降で最大だったのです。
 この個人投資家の株式保有比率低下傾向は、日本株の全業種に及んでいて、衰えを見せません。日本では株の上昇によって個人投資家の間で強力な<株売却ブーム>が生じていることがわかります。

 マスコミを見ると、NISAで多くの人達が証券会社や銀行にNISAの口座を開き、いかにも日本全体で投資熱が高まっているように錯覚します。しかし数字は正直で、実体は逆なのです。確かに2014年1月からNISAが導入されました。これによって800万近い口座が設定されて、そのうちかなりの投資家がNISAを通じて株や投資信託を購入したことは事実です。しかし統計を見る限り日本の個人投資家全体としてみると、NISAの口座による株式の買い付けを遥かに上回る日本株の売却が行われているという驚くべき事実に突き当たるのです。
 私は日本では一貫して<株売却ブーム>が生じており、これは大きな問題である、と指摘してきました。終戦後、財閥解体時は個人投資家の株式の保有比率は日本株全体の70%を超えていました。
 1989年バブル時は日本の個人の金融資産の33%までも株や投資信託、債券など預金以外の投資に向かっていたのです。それが2014年3月末では18.7%となったわけですから、おおよそバブル崩壊後、基本的には25年間にわたって、日本の個人投資家は株式の保有を減らし続けてきたと言えるでしょう。

 問題は昨今、日本政府がNISAの導入をはじめとしてこれだけ力を入れて「貯蓄から投資へ」との流れを作っても、日本の個人投資家の株を売却し続ける傾向は変わらず、かえって株が高騰したことによって今こそ<売りのチャンス>と多くの日本の個人投資家が株売却にわれ先にと走っている現状があるという嘆かわしい事実です。このバブル崩壊後25年の間、日本の個人の金融資産に占める預金の割合をみると一貫して上昇し続けています。バブル時の1989年当時は、個人の金融資産の44%が預金や現金だったのですが、この比率はその後一貫して上昇を続け、2014年には53%にまで膨れ上がりました。
 因みに米国では預金・現金の比率はわずか13%、欧州でも35%に過ぎません。如何に日本の個人の資産が預金に偏っていて、政府の「預金から投資へ」の掛け声にもかかわらず依然預金選好の傾向が止まっていないことがわかります。

 実際、アベノミクスが始まってからの日本の個人投資家の株売りは、株の上昇と比例するがごとく勢いが一段と増してきているのです。毎年の日本の株式の投資主体別の売買動向をみると、日本の個人投資家は、日本株を2012年は1兆9,111億円の売り越し、2013年は8兆7,508億円の売り越し、2014年は3兆6,323億円の売り越しとなっています。
 株式市場における投資別の主体とは、主だったところは、日本の個人投資家や外国人投資家や生損保とか銀行とか年金基金などに分類されています。もちろん、これだけの多額の売り越しを行っている投資別の主体は個人投資家以外にはありません。
 2012年、2013年に関しては、日本株については外国人投資家以外、日本の投資家は個人投資家も生損保も年金基金も銀行もすべての投資主体が売り越しでした。
 2012年、2013年を振り返れば、日本株は倍近く上昇したわけですが、その勢いのついた上昇過程において日本全体で怒涛の<株売却ブーム>が進行していたのです。それが2014年になって、年金基金は日本政府の方針もあり、株購入というふうに、今までの方針を180度転換して株購入に舵を切りました。年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式購入に向けた動きが大きな議論となっていたのは記憶に新しいところです。

●日本人はなぜ投資より預金が好きなのか?
 現在、預金金利は0.025%とほとんど金利がない状態です。それにもかかわらず、なぜ多くの日本人は自分の資産を預金や現金に滞留させているのでしょうか?

 「預金から投資へ」の圧倒的な波を受けて、日本の上場企業は大きく株主に報いるように根本的な姿勢を変えてきています。儲かった資金は株主に還元ということで配当金を増やしたり、自分の会社の株を購入することで発行株数を減らして株価を引き上げようともしています。世界的な流れのなかで株主に報いるという風潮は今後も日本の上場企業の中で常識的な流れとなっていくでしょう。このような情勢下、日本を代表する誰でも知る優良株も思い切った配当政策に乗り出しています。キャノンは4%、武田は3.5%、NTTも3.5%、三井物産は4%、トヨタは2.5%と投資家に対して十分な配当を約束しているのです。これらの企業は数年にわたって業績も好調で、毎年収益を拡大させてきています。また昨今の円安によって収益も拡大しているのです。
 日本の個人投資家はなぜ、金利のつかない預金にばかり資金を滞留させていて、このような配当を充分に出してくれる誰でも知る優良株に投資しないのでしょうか?
 キャノンや武田が4%に上る配当を毎年出し続けているのに、なぜ金利のつかない預金や現金に資金を滞留させているのでしょうか?
 明らかに日本全体が資産運用の常識的な平衡バランスを失っているのではないでしょうか? 「株は怖い」「株なんてやるものではない」「株なんて損するに決まっている」まるでいじめられっ子のように投資すれば必ず損失を被ってしまう、と脅えきっているようです。元々世の中に100%安全というものはありません。日本国の1,000兆円という天文学的な借金の返済の方がよほど心配になるのが当たり前の感覚ではないでしょうか。
 もし、国が借金を返せないと多くの人が思うようになれば、円という通貨の価値は地に落ち、現金も預金もあっという間に実質価値を失う可能性が高いのです。その場合、国が借金で潰れるというよりは、通貨価値の減価によってインフレが激しく襲い掛かると思ったほうがいいでしょう。それでも世界に冠たる日本の企業は倒れることはあり得ません。
 海外でしっかりビジネスを行っているわけだし、蓄積された技術がなくなることはありません。国内の売り上げが一時的に落ちてもインフレには完全に対応できるはずです。激しいインフレが株価の大暴騰を引き起こしてもおかしくないのです。株は元々インフレに最も強い資産です。
 借金で首が回らない日本国の発行する円紙幣よりも世界にしっかり根を張った日本の優良企業の株式の方が安全であるという考えはおかしいでしょうか? 日本の上場企業は実質無借金の会社が半数に及んでいます。優良株はその上、預金金利を大幅に上回る配当もくれるのです。それなのになぜ、日本国民は株式投資を嫌い、いつまでも国を信じて利息も付かない円紙幣を待ち続けるのでしょうか? いつまでも国を信じ、金利ゼロの世界に安住している日本人全体はどこかバランス感覚が狂っていると思えませんか? 「国のやることは絶対安全」「株は恐ろしいもの」このような今までの自分が感じていた常識をもう一度考え直す必要があります。1,000兆円などという膨大な借金は返せるはずがないのです。消費税を50%にするわけにもいきません。結局インフレにして借金は返すしか道はありません。国はそれがわかっているから一生懸命インフレに誘導しようとしているのです。
 だから株なのです! そしていざインフレがきた時にマネーの価値がなくなって年金も支払えないような状態になってはまずい、という深刻な判断の下、国は年金基金で株式を大量に購入することにした、というわけなのです。現金を持っているだけではインフレ時代には生き残れないのです。みなさんの年金基金の半分は株式に投資されることはすでに決まりました。そして日本国は際限もなく日本円を印刷することでインフレを引き起こし、株が恒常的に上昇し続けることを目論んでいるのです。
 そして日本国は現実に円紙幣を印刷し続けることで、必ずやインフレを引き起こすことができるのです。誰が考えてもわかるはずです。マネーを際限なく印刷し続ければマネーの価値がなくなっていくのは当然のことです。それを一生懸命やっているのが今の日銀だし、だからこそ円安になって株高となっているのです。国の覚悟と方針を甘く見てはなりません。マネーを際限なく印刷できる国の力を見くびってはならないのです。何があってもインフレに誘導させる国の意志は固いのです。本格的な大規模な株高、インフレが訪れてからでは遅い、今ここで将来を見据えて来るべき怒涛のインフレに備える必要があるのです。

★朝倉慶さんと舩井勝仁の共著の最新刊『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)が11月に発売。現在、大好評発売中!

(※朝倉慶氏は、(株)船井メディア企画の『朝倉慶の21世紀塾』でも詳しい経済レポートやCD情報、セミナーを開催、お届けしています。よろしければご活用ください。)


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失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売。

『朝倉 慶の21世紀塾』を2009年2月より開始(主催:(株)船井メディア)
朝倉氏の最新情報を【A】レポート、【B】CDマガジン、【C】セミナーから学べます!
詳しくはコチラ→http://www.funaimedia.com/asakura/index.html


★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売。

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