“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2017.08
好調な日本経済と外部情勢

 焼き鳥居酒屋チェーンの鳥貴族は8月28日、10月1日からメニュー全品を値上げすると発表しました。280円均一だった価格を298円に引き上げます。値上げは何と28年ぶりのことです。デフレや安売りの象徴となっていた鳥貴族も曲がり角がきているようです。さすがに昨今の人手不足による人件費の高騰や天候不順による食材費の値上がりには対応できなかったようです。
 鳥貴族は業界随一の安さで有名で、その評判を守るため2015年から<280円均一を守ろうプロジェクト>を推進、国籍を問わず人を取り、特にベトナム人のアルバイトを大量に採用するなど経費削減のため必死の努力を続けてきましたが、圧倒的な人手不足という時代の流れには逆らえなかったようです。

 そもそもこの値上げをというのは、どの企業にとっても相当な決断です。外から見れば人手不足で人件費が上がっていますし、食品の材料費も高騰しているわけですから、値上げするのは当然と思いますが、売り上げの行く末を考えるとそうもいきません。特に日本の企業の場合、値上げして売り上げが落ちるという苦い経験があります。
 2014年の消費税引き上げ時に多くの企業が値上げしたわけですが、その時はほとんどの企業が売り上げ減に見舞われました。どの企業もその時のトラウマが消えていません。
 例えばユニクロ、ファーストリテーリングは、2014年、2015年と値上げを行ったわけですが、大幅な売り上げ減に見舞われ、2016年にはふたたび値下げに追い込まれてしまいました。ユニクロの柳井会長兼社長はその後、「値上げは今のところ考えられない」と方針を一転しています。スーパーの大手イオンリテールの岡田社長は「脱デフレは大いなるイルージョン(幻想)だ」として今年4月に値下げ、そして更に8月に再値下げを打ち出したのです。
 企業の戦略で値下げをできるところはいいですが、現実問題として昨今のヤマト運輸の値上げのように、人件費の高騰や労働問題の勃発から値上げに踏み切らざるを得ないところも次々に出てきています。そして鳥貴族も値上げに追い込まれたわけです。

●賃金上昇で日本はデフレを脱却できる?
 ヤマト運輸や鳥貴族の例をみるまでもなく、昨今の日本の人手不足はかなり深刻な事態になっています。あらゆる業種において人が足りなくなっているのです。今後AIの発展で仕事がなくなる、という話も多々ありますが、それはまだ先の予想で、現実に起こっていることは全く逆で、人手不足は酷くなるばかりです。日本は低成長でなかなか賃金が上昇しないで、景気が大きく盛り上がってこない、という指摘がなされて長いわけですが、実際、人が確保できなければ賃金を上げて人を確保するしかないわけです。そういう意味では賃金の継続的な上昇、それに伴う物価の上昇、いわゆる物価高、本格的な景気回復が起こってくる可能性も高いわけです。巷では人手不足なのに賃金が思ったほど上昇してこない、という嘆きが多く出ています。しかし本当に人が足りなければ給料を引き上げて人を確保するしかないわけです。このような情勢下、どこかで臨界点が来るはずです。
 今後本格的な賃上げは起こってくるのでしょうか? そしてそれと共に日本はいよいよデフレから脱却することになるのでしょうか?

 様々な見方がありますが、結論的に言えば、この状態が続いて行けば、そして世界の景気が今までのように順調に拡大基調であれば、日本において本格的な賃上げ、消費拡大、物価高の循環が始まってくるでしょう。現在、人一人に対してどのくらいの求人があるか図る有効求人倍率は7月にはついに1.52倍となって、5ヶ月連続の上昇、1974年2月以来43年5ヶ月ぶりの高水準となったのです。企業の求人に対して実際に職に就いた人の割合を示す充足率はわずか15%に過ぎません。企業は人を募集しても7人に1人しか雇えないのが現実なのです。失業率は2.8%と完全雇用状態です。アベノミクスに対して様々な批判はあるでしょうが、このような完全雇用状態を作り上げたのはアベノミクスが機能したからです。
 またアルバイトや派遣やパートの賃金上昇に勢いがついてきています。小売りや外食などの労働組合で構成するUAゼンセンでは今春のパート一人当たりの平均賃上げ率が2.28%と過去最高になりました。これは正社員の賃上げ率を上回っています。また3大都市圏のアルバイト、パートの平均時給は前年比2.4%高い1010円とついに1000円に乗せました。49ヶ月連続で前年水準を上回ったのです。幅広い業種で賃上げが進んでいます。そして正社員の有効求人倍率も6月には1.01とついに1を超えてきたのです。本格的な賃上げの始まりはこれからでしょう。

●日本経済は実はよくなってきている
 巷では北朝鮮の問題、米国のトランプ政権の迷走など不安定要因が多く、日本の経済の先行きに不透明感や不安感が広がっています。北朝鮮問題も米国のトランプ政権の迷走ぶりも、今後の先行きの見通しが難しいことは事実です。しかしながらこのような情勢下にあって日本の景気が確実に良くなってきたことは頭に入れておくべきです。
 内閣府が発表した4−6月期GDPは年率換算で4.0%増と驚くべき伸びでした。景気が順調と言われる米国でも欧州でも2.5%程度の伸びしかないわけで、実は日本の成長が4−6月期に関しては突出した形です。このような好成長が今後も続くとは思えませんが、足元の日本の景気が悪くないということは認識する必要があります。
 この4−6月期の成長のけん引車となったのは個人消費です。個人消費は6四半期連続でのプラス、実は1年半に渡って日本人の消費は盛りあがり続けているのです。特にレストランとか飲食サービスで客足が伸びたのと、2008年リーマンショック時にエコポイント制度で家電などが大きく買われた時から10年近く経って買い替え需要が盛り上がってきたという事情もあります。また企業の設備投資も好調で、特に人手不足を睨んで省力化の投資が盛んになっています。かように足元の景気が好調であることを知らない人が多いのではないでしょうか? 景気は気ですから実感がわかないということもあるでしょうが、少なくともあまり悲観したものではないと意識すべきでしょう。

●本当に怖いのは中国経済の行方?
 さて今後ですが、やはり日本の景気動向はどうしても世界情勢に左右されてしまいます。北朝鮮の問題は厄介な問題ですが、米国としても軍事行動はあまりに犠牲が大きすぎるので、経済制裁並びに今後北朝鮮との本格的な交渉に入っていく可能性があります。北朝鮮は8月29日朝、弾道ミサイルを発射しました、北海道を通過させて弾道ミサイルを太平洋に落としたということで日本中、大きな騒ぎとなっています。北朝鮮としても技術に相当の自信があって、日本の領土、領海に落ちないという確信を持って行った恣意的な脅しでしょう。
 一見、緊張は高まっていくようですが、逆に米国も北朝鮮も核を持つことでお互いに手が出せなくなる抑止力が働いてきた段階に入ってきたように思えます。北朝鮮も自国の生き残りのために虚勢を張っているわけです。必要以上に恐れる必要はないでしょう。恐れれば恐れるほど北朝鮮に利するように思えます。
 米国は確かにトランプ政権が機能しないという問題があるのですが、米国の経済はトランプ政権の政策なしでも十分好調で、問題もないようです。9月末に米国の債務上限引き上げの問題があるのですが、それはテクニカルな問題で、混乱が起こっても一時的なことで、確実に短期間で収まると思われます。

 むしろ本当に怖いのは中国経済の行方です。中国は習近平政権がさらに独裁的になり、10年2期ではなく3期目も習近平政権が続きそうな気配です。習近平の神格化の方向に動きつつあります。中国は経済的にはかなり無理をして体裁ばかり繕うような経済運営を続けていますので、先行き大きなクラッシュもあり得ます。
 こう見ていくと日本の経済は人手不足から徐々にインフレ方向に動いていく展開で、賃金上昇、物価上昇のサイクルに入っていく可能性も高いわけです。ただ一番注意すべきは中国経済の動向で、ここは最大の闇と捉えて注意深くみていく必要があるでしょう。

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バックナンバー
17/08

好調な日本経済と外部情勢

17/07

仕事はなくなるのか?

17/06

イスラエルとサイバー技術

17/05

欧州危機は去ったか?

17/04

加速する人手不足と日本の将来

17/03

民主主義の危機

17/02

止まらない米国株の上昇

17/01

迫りくる戦争の危機

16/12

日本人と株式投資

16/11

トランプ勝利をもたらしたもの

16/10

新著『暴走する日銀相場』まえがき

16/09

AI技術者に殺到するヘッジファンド

16/08

止まらないデフレの行く末

16/07

ウーバーライゼーション

16/06

衝撃的な英国の離脱派勝利

16/05

衣食住がただ、お金のいらない世界に!?

16/04

熊本地震とヘリコプターマネー

16/03

トランプ旋風が写すもの

16/02

新著『世界経済のトレンドが変わった!』まえがき

16/01

波乱で始まった2016年

15/12

2016年の展望

15/11

中国の結婚事情

15/10

郵政上場

15/09

現れ始めた高齢化社会のひずみ

15/08

荒れた株式市場の先行きは?

15/07

異常気象の連鎖

15/06

値上げラッシュ

15/05

新刊『株、株、株! もう買うしかない』まえがき

15/04

日米同盟強化の恩恵

15/03

アベノミクス その光と影

15/02

ギリシアの悲哀

15/01

止まらない<株売却ブーム>

14/12

アベノミクス

14/11

バンザイノミクス

14/10

新刊『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(舩井勝仁との共著)まえがきより(※目次、舩井勝仁のあとがきも含む)

14/09

加速する物価高

14/08

新冷戦という脅威

14/07

新刊『株は再び急騰、国債は暴落へ』まえがき より

14/06

深刻化する人手不足

14/05

何故ドルなのか

14/04

株高は終わったのか?

14/03

ウクライナを巡る暗闘

14/02

中国ショック

14/01

ハッピー倒産ラッシュ

13/12

インフレに向かう日本

13/11

株式投資に舵を切る年金基金

13/10

金相場のたそがれ

13/09

新刊『2014年 インフレに向かう世界』まえがき より

13/08

崩壊に向かう新興国経済

13/07

ドルが復権する世界

13/06

激動前夜

13/05

株 売却ブーム

13/04

異次元の世界

13/03

日本の行く末

13/02

株バブル勃発、円は大暴落(新刊まえがき)

13/01

「アベノミクス」がもたらすもの

12/12

浜田教授のリフレ政策

12/11

円を売る時がきた!

12/10

チャイナリスク

12/09

大恐慌か超インフレだ!(新刊「あとがき」より)

12/08

中東情勢の泥沼化

12/07

食糧危機の足音

12/06

ユーロ崩壊へのカウントダウン

12/05

新刊『2013年 株式市場に答えがある』まえがき

12/04

ぶり返すユーロ危機

12/03

円安が始まった

12/02

株式投資の勧め

12/01

上昇転換した株価とその背景

11/12

大波乱の幕開け(最新著『もうこれは世界大恐慌』序章)

11/11

ギリシア救済というトリック

11/10

崩壊に向かう資本主義

11/09

欧州危機と錬金術

11/08

ユーロ崩壊

11/07

逆ニクソンショック(金本位制への回帰)

11/06

2012年、日本経済は大崩壊する!(はじめに)

11/05

スーパーマリオ

11/04

インフレの到来

11/03

今後の経済と生き方

11/02

液状化する世界

11/01

始まった食料高騰

10/12

迫りくる大増税

10/11

物価高騰に備えよ

10/10

まえがき(新著『2011年 本当の危機が始まる!』より)

10/09

中国の謀略

10/08

ニューノーマル

10/07

焼け太ったFRB

10/06

金(ゴールド)相場の映すものは?

10/05

ギリシア問題の末路

10/04

ゴールドマン・ショック

10/03

郵政改革の裏

10/02

金融問題公聴会

10/01

グーグルVS中国

09/12

新興衰退国

09/11

デフレとインフレ

09/10

円高で、為替仕組み債が破裂(破綻続出へ)

09/09

悲惨なアイスランド

09/08

不発弾(米住宅問題)が爆発するとき

09/07

秋に向け、鳴りをひそめている危機

09/06

今後の行く末は?

09/05

ゆっくり進むドル危機

09/04

上昇、やがて、壊死する株式市場

09/03

アメリカン・エキスプレスのキャンペーン

09/02

リーマンと山一證券

09/01

ゲート条項

08/12

ドバイの落日

08/11

ターミネーター


暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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