“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2017.11
年金が大黒字

 「政府として見込んでいた数字を大きく上回っている。年金財政の安定に大きく寄与する成果だ」
 11月2日、菅官房長官は年金運用で予想以上の黒字が出たことを報告しました。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2017年7−9月期の運用収益が4兆4,517億円の黒字だったと発表したのです。これで5四半期連続の黒字であり、しかも世界的な株高の恩恵を受けて黒字幅が拡大している状況です。GPIFは2014年10月から資産運用のポートフォリオを大変革しました。
 国内外の株式の割合をそれまでの12%から25%と倍増させたのです。この結果、GPIFにおける株式の運用比率は国内株25%、海外株25%と両方合わせて運用資産全体における株式運用の比率が50%となったのです。こうしてそれまでの国債に偏った資産運用の形態を大々的に変えたのです。
 そこまでのポートフォリオにするには国内で喧々諤々の議論がありました。しかし振り返ってみれば、ポートフォリオの変更は大正解であって、結果的にGPIFの資産は大々的に増えたのです。従来GPIFの資産イメージは概ね110兆円程度という感覚が大勢だったと思います。それが現在では157兆円に迫る勢いで、近いうちに160兆円を超えているものと思います。2001年からGPIFは市場運用を始めました。それ以降GPIFの累積収益は63兆円弱の黒字で、運用収益は楽に60兆円を超えて資産は割増です。おおざっぱに言えば2001年から2017年までで100兆円が160兆円になったと思えばいいでしょう。あなたはゼロ金利で資産が増えないと嘆いているかもしれませんが、年金基金と同じように資産運用すればあなたの資産もこの17年で6割も増えていたわけです。

 皮肉なもので、これだけ国民の年金基金が大幅に増えたのにも関わらず、このような事実はほとんど話題にもなりません。仮にこのようにGPIFが急速に利益が出ているという事実が一般的に広まってくると、「バブルで危ないのではないか」というような懸念の声が広がってきそうです。ここまで書いてきたように株高は日本の国策であり、デフレからインフレに持っていくために政府も日銀も必死になっています。その成果の一端として今回の日本の株高が生じてきたこともあるでしょうが、国民の冷ややかな目は変わりません。日本人はどうしても株が高くなると、「おかしい」とか「バブル」とか、否定的な感情ばかり抱くようです。日本人の大半は長く続いた株式市場の低迷に懲りて<株嫌い>です。個人投資家はバブル崩壊後27年に渡って一貫して株を売り続けています。かように多くの日本人は基本的に自らが株式投資にいそしんでいないで、外からみている一方なので、株高にも違和感を持つようです。自分の景況感と余りに急激な株式市場の上昇ピッチが全く合わないので、「おかしい」と感じてしまうようです。しかし日本企業の収益は拡大する一方で、過去最高の利益を毎年稼ぎ出しています。米国の株に比べて、様々な指標で日本株の割安さが目立っているのが実情です。株高と言いますが、収益が伴ってのことですから、市場関係者の多くは株式市場が高くなってきたことは当然との受け止め方も大勢なのです。しかし日本人の大多数はこの現実を素直に受け取れていないようです。

 今回、株式市場の上昇を受け、そしてGPIFは株式の割合を大きく増やしたことによって、膨大な利益を得ることができました。仮にこれが逆に損失を被っていたら大変な非難をを受けていたことでしょう。「何で大事な年金で株なんか買ったのだ!」という大合唱になっていたと思われます。 面白いことですが、今回GPIFが大きく利益を出したことはマスコミの話題にもなりません。ところが2016年の決算でGPIFが巨額の赤字を出した時はマスコミを通じて、非難の嵐となったのです。政治の面でも野党から、国会において「年金基金が株式を購入したことで赤字となった。その責任をどう考えるのか?」と政府を非難する国会での議論にもなりました。当時も安倍首相は「年金の運用に関しては単年度でみるものではない」と野党の質問を突っぱねていましたが、野党側の非難は収まりませんでしたし、新聞の論調でもGPIFの資産運用でリスク資産である株式を増やしたのはどうか? という意見も多々あったわけです。かように日本人は株が下がる、損失を被る、というようなときに特に敏感です。国民の多くに株式投資に対してのアレルギーがあって株が下がると「ほら見たことか」と噴出してくるようです。一方で株高によって運用資産が大きく増えた今回のようなニュースに関してはほとんど関心を示さないのです。

 私が一貫して主張してきたのは株式投資の重要性と、GPIFに見られるような株式投資における成功例を素直に受け止めるべきということです。そういうとそんな大金は持っていないから株式投資などとてもできない、という声も出てきそうです。現在は株式投資などほんの少額でできるのです。<おつり投資>という物を購入したおつりで株式投資を行うアイデアも出てきています。
 しっかり見て認識しておかなければならないのは、あなたの、まさにあなたの老後を支える年金基金は株式投資によってその資産の50%が運用されていて、それがうまくいっているという事実なのです。そしてGPIF、日本の年金基金が運用資産の50%を株に投資しているのは、決しておかしなことや、異様なことでなく、世界的なスタンダードであるという事実です。年金基金の50%を株で運用するのは世界的にみて当たり前の運用であるという事実です。これがわかなければなりません。株50%、国債などの債券50%は決しておかしな運用方法でなく、世界中みて普通のポートフォリオなのです。そして今回それがうまくいったわけです。
 ましてや日本は政府と日銀が何としてもインフレに持っていくと奮闘を続けているわけです。日銀は円紙幣を印刷してそのお金で日本の株式市場を買い続けています。こんな時に株式を購入しないで、一体あなたのお金はどうなっていくと思います? 20年に渡って株が下がり続けた国など日本だけの特殊な経験だったのです。世界の歴史をみればわかりますが、紆余屈折はあれ株式市場は基本的に上がり続けるものなのです。政府や日銀のインフレへの誘導は堅い決意に基づいているのです。待ったなしの超高齢化で増え続ける国の借金、これらはインフレを引き起こさなければ決して返すことができないという現実を考えてみてください。世界を見渡して資産運用としての株式投資は極めて平凡で普通のことなのです。年金運用がうまくいっているのを見てもわかるように、間接的かもしれませんが、あなたも株高で恩恵を受けている一人なのです。

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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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