中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2022.11.20(第97回)
オーガニック給食を支える有機農業技術大集合

 前回、10/26オーガニック給食フォーラムに全国の首長さん、これからの農業はオーガニックだというJAの組合長さんが参加してくださり大きな成果があったことで、「正義は勝つこともある」という記事を書いたと思います。
 有機農業の推進の50年間でも、良い食材を採用しようとした栄養士さん、自然食品店、有機農家などの頑張りがありましたが、徐々に安上がりの給食を目指す流れ、効率を求める給食センター化の流れ、そして予算がつかずやりくりの限界があるという現実に、押し戻され、挫折してきました。誰か一部の人たちの頑張りでは成就することは出来ないということです。

 今回のフォーラムの一番の成果は、首長さんたちの決断です。その先頭に立ってくださったのが、いすみ市の太田市長です。給食は自治体の裁量に任されています。首長さんが決断して初めて、地域挙げての総力戦が可能になります。
 総力戦のためには、みんなの心が1つになること! そのためにメダカのがっこうとして、是非やりたいことがあります。2004年から隔年で開いている田の草フォーラムですが今年は特別に、オーガニック給食の食材の供給に必要な有機農業技術を、これから挑戦する自治体の農林課や農家の方に聞いていただきたいのです。有機農業の一番の問題は草と虫、大切なのはミネラルバランスのよい微生物いっぱいの土づくりなど、農法の名前や技術は違うように見えても、1つに行きつく原理を実感して、心を1つにしたいのです。農薬がなければ絶対できないと信じられているほど、草が繁茂し虫が繁殖する高温多湿の気候を持つ日本ですが、ここで発達した有機農業技術と哲学は、世界最高水準です。
 では5つの技術と1つの番外編をご紹介します。

1.自然農法センター(公財)自然農法国際研究開発センター
70年以上の歴史を持つ自然農法について、1985年に設立以来、農薬や化学肥料に依存しない栽培の研究・普及を行う研究センターです。有機栽培に向く品種の育成と在来種の磨き直し・種子の維持保存や種子頒布を通して、自然農法の普及を行っています。自然に増殖する多様な草や虫などの存在意味を考え、生態系の土台である土の力を最大限に引き出すことで,野生放任の状態より何倍も収穫できる農法です。
2019年からは、長野県松川町の有機給食の充実に役立つように米や野菜の栽培指導にあたっています。子どもたちの給食により多くの有機農産物が使われることを願い、自然農法の研究成果を学びたい方や団体に向けて出前講座やオンライン講習を始めています。

2.NPO法人民間稲作研究所
稲葉光國氏が研究した除草剤を使わない有機稲作技術です。草を防除するというより、イネの栽培中にいかに草の発芽を抑えるかを徹底的に研究したものです。基本は2回代かき深水管理ですが、地域によって作業内容や時期が変わってきます。千葉県いすみ市や木更津市、栃木県塩谷町の有機米給食の稲作を支えている農業技術です。もう一つ提唱している技術は、米・麦・大豆の2年3作の輪作体系です。これは、基盤整備され田んぼと畑の両用可能な農地で、草を抑え日本の主要農作物である大豆や麦の自給率を上げることが出来る優れた農法です。

3.はくい式自然栽培
はくい式自然栽培は、農法というより、木村さんの地球愛の心で、与えられた環境下でいろいろなものに寄り添いながら答えを見つけていく栽培であり、その本質はバランスです。子育てのようなアプローチで農産物を育てる栽培方法であり、地域の子どもも育てる有機的な地域づくりを意味します。現在JAはくいの自然栽培部会は39名で、自然栽培の野菜、果樹、お米を栽培しており、年に数回、小中学校や保育園の給食に、市の予算で提供しています。また、全国から塾生を募集して、のと里山農業塾という自然栽培の哲学と技術を学べる塾を開催しており、これまで約600名の卒業生がいます。

4.自然物や生ごみを使った菌ちゃん農法
菌ちゃん農法は、出来るだけ短期間に、草や生ごみを使って菌ちゃんいっぱいの土づくりをすることが中心課題です。この土が出来れば、病気にも虫にも強いファイトケミカルたっぷりの野菜が育ちます。この元気な野菜で数多くのオーガニック和食給食を実践している保育園、幼稚園を支えています。研修制度はなく、菌ちゃん先生こと吉田俊道さんが、全国を講演と土づくりワークショップに歩いています。

5.小祝政明氏のBLOF理論
BLOF理論は、「根から養分をどう吸って成長していくのか、どのような原理で光合成が行われるのか」を自然界から学び、有機栽培に応用したものです。経験や勘に頼るのではなく、客観的なデータを駆使した有機農業の実践を指導しています。主宰している一般社団法人 有機農業普及協会では、毎年栄養価コンテストを主催。野菜の持つ栄養価を、糖度、ビタミンC、抗酸化力、硝酸イオンを測定し見える化し、人を健康にする栄養価の指針を明瞭にしています。慣行農家が有機農法に転換する時に特に役に立つと考えられます。

番外編 大地の力を引き出す大地の再生技術
地面の下の気の流れ、水の流れを遮断している現在の土木工事の弊害を、改善する技術です。これをすることで、同じ農法同じ技術でも、土がフカフカに作物がのびのび育ちます。秀明自然農法ネットワークの方たちがこの技術を駆使しているので、改善例をいくつか紹介していただきます。

 それでは以下 会の概要です。
オーガニック給食を支える有機農業技術大集合(第10回田の草フォーラム特別編)
日時:2023年1月18日(水)11時〜18時30分(お昼休憩13時〜14時、6時間半研修会)
場所:参議院議員会館会議室(1か月前まで部屋未定)
内容:有機農業技術大集合の趣旨説明、農水の有機農業支援策の説明(予定)、5つの技術オリエンテーション+大地の再生事例紹介 自治体への取り入れ方、パネルディスカッション
共催:
(公財)自然農法国際研究開発センター、NPO法人民間稲作研究所、秀明自然農法ネットワーク、菌ちゃんふぁーむ(予定)、のと里山農業塾(予定)、日本有機農業普及協会(予定)

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オーガニック給食のオーガニックという言葉に込める意味

22/11

オーガニック給食を支える有機農業技術大集合

22/10

正義は勝つこともある

22/09

子どもたちのために立ち上がったカッコイイ首長さん紹介

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有機給食にトップダウンの時代がやってきた!

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食料危機が来ることは悪くない

22/04

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最近気が付いた黒焼きの正体

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子どもを元気にする「生命尊重食」=有機給食をいまこそ文科省にお願いしましょう!

22/01

有機給食へのはじめの一歩


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JAに有機栽培の自信がつけば、最大の味方

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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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