加治将一の精神スペース
このページは、作家でセラピストの加治将一さんによるコラムページです。加治さんは、『龍馬の黒幕』『幕末 維新の暗号』『舞い降りた天皇』『失われたミカドの秘紋』(すべて祥伝社)などの歴史4部作が大反響を呼ぶ一方で、『アルトリ岬』(PHP)や『大僧正とセラピストが人間の大難問に挑む』(ビジネス社)などのカウンセリング関連の著書も好評です。そんな加治さんが、日々の生活で感じること、皆さまにお伝えしたいことなどを書き綴っていきます。
お元気ですか?
ひと月の御無沙汰でした。
齢を重ねると、何もしなくとも耐えられると思っていたのにその逆で、その間、横着者の僕がけっこう律儀にスケジュールをこなしてきた結果、普段とは違う退屈しない日々を送っていたので少々開陳させてください。
5月初めは、所用で札幌に二泊。
帰ってすぐ、朝から夕刻までの終日、加治式メンタル・セラピー初級講座です。
受講者のレベルがとても高く、かえって僕の方が勉強させられたくらいでしたが懇親会やら反省会が遅くまで続いて、帰宅はいつの間にか夜の12時。
翌早朝アポがあって、ばたばたと伊豆へ出かけセラピーの仕事を一つこなしました。
今年は、どうゆうわけか端っからやたらに忙しかった。
福島原発問題で、外国の科学者とやりとりし、それを知り合いの政府関係者に伝える、という仕事の割り込みこそあったのですが、多忙はそれ以前の、なんといいますか年の巡り合わせというやつでありましょう、あまりの忙しさに伊豆高原では、ぼーっと海を眺めているうちに、つい蒸発してしまう人の心に共感している自分がいて、はっと我に返ったくらいです。
セラピーの先生なのに己のセラピーを切実に欲している。危ういことです。
―休むことも覚えなきゃ・・・―
今日は東京に戻らないぞとばかりに、衝動的にホテルに飛び込んでしまいました。
夕食を済ませた後、部屋から庭にせり出した露天風呂につかった。
瞑想とセルフ・セラピー三昧です。
水をかぶっては湯船に入り、満天の星空を眺めながらしつこいくらいにセルフ・セラピーをし、また水を浴びる。滝にうたれる修行僧のごとしです。
全身を冷水と湯で交互に刺激する。こうすれば細胞が生き生きするばかりではなく、脳内物質のセロトニンがどばっと出る、という説があって、ボケません。
文明が発達したのは、すべて寒さ厳しき北半球であることを思えばその説も宜(むべ)なるかなでありましょう。
横道にそれましたが、二日後、今度はロサンゼルスに出発です。
ロサンゼルスでなにをしていたか?
はい、健康的にふるまっておりました。
10日ほどの滞在でゴルフを4ラウンド消化する。
本を書いていない時でも、頭は創造的なことに没頭しているのですが、裏山にもよじ登りましたし、姉に連れられて、普段行ったこともないジムに、二度も通うというむちゃくちゃぶりです。
筋肉という筋肉、関節という関節が悲鳴を・・・と思うでしょう?
ところが、かの香港タイガー・バームを倒産させたと誉れ高い強力ゴールド・クリームを身体にせっせとすり込んだおかげとヨガ、そして蜂蜜紅茶で、まったくもって痛みはなく、ただ全身がかったるい以外は、なにも感じないサイボーグ人間と化したまま、帰国は2日前でした。
時差があるのかないのか、追いまくられている原稿の一つが、この「文(本)はだれにでも書ける」でありまして、でも明日から京都と大阪取材ですから、今日中に上げて皆様にお届けしたいとパソコンに向かっているわけです。
僕の場合、心の疲労対策は三つ。
セルフ・セラピーと周囲を誉めること、そして瞑想。これで完璧です。
身体的疲労の方は、ヨガと蜂蜜で消滅します。
セルフ・セラピー、瞑想、ヨガ、蜂蜜、誉め行為を「無病五行」と呼んでいますが、食事と同じで毎日のルーティンでありまして、「無病五行」を続けている限りはストレス、疲労の多大なる蓄積はありません。
唖然とするほどの断言ですが、本当の話です。
と、ここまではエッセイ風報告書。
さて、これまでエッセイの書き方について4回連載させていただきました。
何かを残したいという人間の衝動が文を書かせますが、その中でもエッセイは、日常を活写し、オリジナリティあふれる自分の目線で腑分(ふわ)けするのが基本でしたね。覚えていますか?
誰もがびっくりする「ありえないこと」を狙えば、読者の関心を引きつけるのは言うまでもありません。
と言うと、たいがい今回の大地震に眼を向けます。
たしかに日常「ありえない悲劇」です。
しかし、そういった壮大なテーマは万人が取り上げます。万人というからにはプロも手掛ける。
読者は、プロの作品を多く眼にすることになるので、眼が肥えます。その肥えた眼で比較されると新米作家はとてももたない。
ですから、だれでも知っている壮大なテーマは体験者以外は厳しい選択だと言わざるをえません。
あえて厳しさに挑まなくとも、周辺にある自分だけの「ありえないこと」を捜してください。
会話を入れる
たとえば僕の「ありえない」話しとして、先ほどのアメリカに住む姉に再び登場してもらいましょう。
この姉は、僕がアメリカに住んだのを知り、追いかけるように渡米したのですが、長い間、泣かず飛ばずといいますか、経済的にいつも不安定で、何をやっても上手くいかないお手本のような人でした。
波動が周囲と噛み合っていないのです。
にっちもさっちもいかず、何ヵ月も夫婦で僕の家に転がりこんだこともありましたし、姉の息子の面倒を僕が何年もみざるを得なかったことも事実です。
老後は覚悟していました。面倒みなければならないだろうなあと。
ところがなんと転機が訪れます。今から12年前のことでした。
「家を買ったので、遊びに来てちょうだい」
「家?」
僕は、ぽかんとした顔で問い返します。
「だれが家を買ったの?」
「私よ」
「・・・」
「プール付きの家」
「プール付きって・・・本物の?」
唖然として訊き返す。
「そう」
「誰が?」
「だから、あ・た・し」
句読点を二つ挟み、明快な表示があってもまだピンときません。
なにせ世界最強の商売下手。不器用さにおいては日本屈指、世界広しといえどもあれほど不器用な人を見たことがない。
しかし、なにがどうなったらそうなるのか、手掛けていたゴールド・クリーム(※)がどかんと当たったというのです。
本当のことでした。コンティナごと中国に輸出しはじめたのです。
人生何が起こるか分かりません。ちょっとした隙のまさかの一発大逆転、大転換を迎えていたのです。
ことの顛末を聴き、納得しました。
その理由を芯から理解しているのは、おそらく姉と僕だけでしょう。
なぜ57歳の崖っぷちにして、大転換があったのか?
「愛」に目覚めたからです。
大袈裟でもなんでもなく、これは断言できます。
啓示を受けたという報告は聞いてないから、それはないと思いますが、今から12年前、姉夫婦はなにを思ったのか、あちこちに愛を振りまきはじめる。
自分も貧しいくせに、ホームレスを見つけては金銭、食事を振る舞ったのです。
いやはや、唐突すぎる行為です。
横で観ていた僕は、そんなおカネがあるなら、将来のために1ドルでも預金に回すべきだと主張したのですが、聞く耳持たずです。
人種を問わず、困窮者を家に招いては施す。いくらなんでもやり過ぎだと思いましたが、お手上げでした。
すると、半年もたったでしょうか、あれよあれよという間に、姉夫婦を取り巻く時空が、がっくんと回り舞台のよう好転しはじめたのです。
愛を贈れば、余りある祝福が天から降ってくるという典型に違いありません。
資金力ゼロ、商談力ゼロ、商売知識ゼロ。
世の書店にずらりと並ぶ成功体験談のどのパターンにも属さないのですから、神の采配以外なにも考えられないのです。ただ弱者に分け与えた。だだそれだけ。
成功の秘訣本を書けば「愛を贈って、あとは天に丸投げ」というただの一行。
たったそれだけで達成したのですから、カーネギーだって姉を見たら、泡を吹いて卒倒する展開です。
12年を経た今もボランティは続いており、生涯その姿勢は変わることがないと確信しています。
で、この春にアメリカの姉の家を訪れました。
アメリカは大不況真っただ中で、ますますおかしくなりかねないというのに、姉のゴールド・クリームは打撃どころか、ますます順調に儲けをはじき出し、僕に投資先を聴いてくるしまつです。
利殖などなにも知らないのは昔のままですが、僕が居間で、犬の頭を撫でてふと振り返ると、思いもかけず姉が階段の中ほどにいた。
その光景がまたありえなかった。
なんと僕の大きな旅行鞄を両手で持って上って行くではありませんか。
想像してください。70歳の姉が、30キロの旅行トランクを持って階段を力強く踏み上がる様子を。
驚きが「あっ」という声に出ました。
「腰を痛めるから・・・」
僕は階段を駆け上がり、鞄を降ろさせようとしましたが姉は握って放しません。
「大丈夫よ!」
涼しい顔のまま、すたすた上って行くのですよ。
想定外の光景に唖然と見上げるばかりです。
「・・・」
「平気、軽いもんよ」
聞けば2年前からせっせとジムに通い、個人指導を受けているとのこと、まさにスーパー・ウーマン化していたのです。
57歳の経済的大転回といい、70歳のスーパー・ウーマン化といい、信じられますか、こんなこと。
とまあ、日常の僕の「ありえない」話しをさらりと書いてみました。
ちょっと面白いでしょう?
注目して欲しいのは文中の会話です。
エッセイに会話を入れてはいけない、というルールはありません。
いや、むしろどんどん書くべきです。
どうして会話を薦めるかというと、理由は二つ。
一つは、読者を飽きさせないためです。
文章力の弱い新米物書きのだらだらとした解説、描写の独演は、退屈でうんざりなのですね。
コース料理を想像してみてください。
ときどき毛色の違った料理や口直しを挟みます。それと同じです。
もう一つは、動きが出てくる。
会話自体がアクションなので紙面に生きいき感がでます。
全体の3割、4割を会話で埋めてみてください。変化が出てくるでしょう?
新米作家の会話は、二人までが無難ですね。3、4人だと誰が誰の発言なのか混乱の元になるので避けるのが賢明でありましょう。会話ですから、むろん口語体で、リズムがなくてはなりません。
船井幸雄先生の本を、一度声を出して読んでみてください。
メロディとテンポがあります。そのメロディとテンポは一種独特で、文の中身が直接心に注入されるばかりではなく、人を快く酔わせるものがあります。
酔わせるメロディとテンポは、モーツアルトの音楽同様、必ず宇宙の波動とリンクしていますね。ですから宇宙の産物であるあなたを酔わせるのです。
ではあなたも、宇宙の波動を感じながら最初の一行の取りかかってください。
レッツゴー。
最後に一つだけ。
みなさん『陰謀の天皇金貨』 (祥伝社)を読んでいただけましたか?
若者も読んで欲しいのですが、40過ぎの方には是非お願いしたいものです。というもの、そのくらいお歳なら「昭和天皇在位六十年十万円金貨」を知っているはずで、臨場感をもって存分に楽しめると推測できるからです。
くれぐれも、よろしくお願い申し上げます。
ではまた来月、お目にかかりましょう。
※「ゴールド・クリーム」にご興味のある方は、(株)船井メディアまでお問い合せください(フリーダイヤル:0120−271−374 担当:薄井(うすい))。
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作家・セラピスト。1948年札幌市生まれ。1978年より15年間、ロサンゼルスで不動産関係の業務に従事し、帰国後、執筆活動に入る。ベストセラー『企業再生屋が書いた 借りたカネは返すな!』(アスキー)、評伝『アントニオ猪木の謎』、サスペンス小説『借金狩り』、フリーメーソンの実像に迫った『石の扉』(以上三作は新潮社)など多数の著作を発表。『龍馬の黒幕』『幕末 維新の暗号』、『舞い降りた天皇』『失われたミカドの秘紋』(すべて祥伝社)の歴史4部作は大反響を巻き起こし、シリーズ 50万部の売上げ更新中である。その他、カウンセリング小説『アルトリ岬』(2008年 PHP)や『大僧正とセラピストが人間の大難問に挑む』(2010年 ビジネス社)などがある。
2011年4月に最新刊『陰謀の天皇金貨』(祥伝社刊)が発売。
★加治将一 公式音声ブログ: http://kajimasa.blog31.fc2.com/
★加治将一 公式ツイッター: http://twitter.com/kaji1948