加治将一の精神スペース
このページは、作家でセラピストの加治将一さんによるコラムページです。加治さんは、『龍馬の黒幕』『幕末 維新の暗号』『舞い降りた天皇』『失われたミカドの秘紋』(すべて祥伝社)などの歴史4部作が大反響を呼ぶ一方で、『アルトリ岬』(PHP)や『大僧正とセラピストが人間の大難問に挑む』(ビジネス社)などのカウンセリング関連の著書も好評です。そんな加治さんが、日々の生活で感じること、皆さまにお伝えしたいことなどを書き綴っていきます。
無事、連載小説『西郷の貌』の最終回を書き終えました。
ふ〜。
連載には締め切り日が、必ず設定されています。
こればかりは連載雑誌の発売日が決まっている関係上、交渉の余地はありません。
ところが加治将一は、あまり〆日の守れない物書きでありまして、今回はなんと一週間以上も素通りし、担当編集者にはハラハラ、ドキドキ、大迷惑をおかけました。
最終回ということもあってちゃんと間に合わせる、という固い決意があったにもかかわらずです。
なぜ、こんなことになったのかといいますと、来年、年明け発売の『倒幕の紋章』の文庫化とばっちり重なり、この加筆訂正がことのほか大作業だったのですね。
言い訳は無用です。はい。
平に、お詫び申し上げます。
文庫化の作業は、長期間ロサンゼルスに滞在し、しこしこと孤独に取り組んでおりました。
合間にゴルフを三度したくらいです。
日米人生ゴルフ哲学
ゴルフ場は、家の近所にあります。
車で15分くらい。
パーム・ツリーが立ち並ぶ、南国ムード満点のゴルフ場なのですが、なにせ人がいない。平日なら、いつ行っても前後はまばらで、誰もいないこともあり、寂寞(せきばく)としています。
ここでよく人生を反省し、思索します。
というか、時おり野うさぎ、リス、ロードランナーが走り回るだだっ広い原っぱで一人ゴルフ・カートを運転していると、自然にそういう空間にハマってまっているわけです。暇だし。
したがって、僕にとってのここでのゴルフは、哲学と同意語ですね。
近辺の上品な老夫婦と、一緒になることもある。
この歳になるとみなさん先を急がない。急いでもあの世が近付くだけですから、できるだけ遅く若者の二倍くらいのんびり行く。なんら張り合うこともなく、ほのぼのと冗談をいいながら4時間以上を一緒に過ごすわけですから、結構な情報が伝達され、最終ホールを終えて上がるころには生まれ故郷から前の仕事、家族構成、趣味、犬の名前までもしっかりと覚えてしまって、親戚が増えたような気持ちになる。
それにしてもゴルフの予約システムが、実によくできています。
なにも言わなくとも、〈何時スタートが空いていますよ〉というメールが届く。
仕事の合間に、ちらりと目になんかに止まったりします。
美しいグリーン、抜けるようなカリフォルニアの青い空の画像付きなので、思わずギュッと心を掴まれ、そうかあ、肩も凝っているし、気分転換も必要だよなあ、となるわけです。
料金は安くて、一人45ドル。
換算すると3,500円くらいでしょうか、それには電気カート代も含まれます。
しかし、これでよくまあ運営できるよなあという値段ですが、我が国のように、やれグリーン・フィーだ、カート代だ、税金だ、サービス料だと、ちまちまと別料金で毟(むし)り取るセコさはありません。
45ドルといったら、後にも先にも45ドルぽっきり。
面白いのは、同じ日でもプレイ時間によって値段が違うことです。
夏場は、涼しい午前中は45ドルですが、暑くなる午後スタートは38ドルに下がる。
さすが資本主義の国、不人気時間帯には、心憎いばかりの心付けがなされております。
で、シニア割引がある。これで5ドル安くなる。
たかが5ドル、されど5ドル。なんだか年輩者が大切にされているような感じで、これもまた妙に楽しくなるのですね。
このゴルフ場は、建売り住宅地の真ん中にあります。
ようするに、大規模開発の目玉としてゴルフ・コースを造ったのです。
お目当ての購買層は退職者。
退職後はこの住宅を買って、あとは悠々の年金生活。
ゴルフやテニスで汗をかき、プールで泳ぎ、ジムで鍛え、乗馬をし、図書館やコミュニティ・センターでまったりと余生をお過ごしください。ということで、ここには今列記した贅沢過ぎるすべての施設があります。
だからといって、老人ホームではありません。
普通の住宅です。
ただし、購入資格は55歳以上、大人の街です。散歩をしても音楽一つ聞こえず、やたら静かで安全なのがいい。
夢のハッピー・リタイヤメント、終の棲家。人生の締めくくりはこうでなくっちゃというお手本の街です。
しかしこれは、あくまで年金がちゃんとしていればの話しです。
夢が悪夢に変わる不安材料はたくさんある。
筆頭はカリフォルニア州が、一年以上前に破産していること。
抜き差しならぬことになった一因は、富裕層に甘い税制です。
これはカリフォルニアに限ったことではなく、アメリカという国の体質。
ついに世界的な投資家バフェット氏もキレて、大金持の自分達を甘やかせるな! もっと俺から取れ! と史上初、世にも珍しい自虐の抗議の声を上げたほどです。
それほどひどく偏っている。
彼によれば1,000億円の収入で、税はせいぜい170億円、つまり所得税はたった約17パーセントで済んでしまう。
一握りの富豪には甘く、庶民には辛い。
北欧を除く、ヨーロッパも独特の格差社会です。
債務危機の戦場と化している国の多くは、地下経済が発達しており、裏金と表金の量が半々だというのだから呆れた話です。
プール付きの邸宅に住む富裕層は、ほぼ税金を払っていない怪物君、貧乏人の上に胡坐(あぐら)をかき、かつ税金は貧乏人から絞り取る。
平等とは名ばかりの富裕層独裁国家、徴税が機能しないのですから、国が破綻するのはあたりまえです。この忌まわしい社会構造の深い部分にメスを入れ、とことん明朗会計にしないことには、どんな支援策も無駄だと思う。
それはそれとしてアメリカの年金は、州の予算とは別会計なので、今のところは支払われています。
しかし今後は、どうなるか分からない。
というのもこの不況です。
年金ファンドの安全な投資先が地上から消え、連敗につぐ連敗でもはや制御不能、行く先は不透明どころかお先真っ暗です。
打開策を考えた結果、この国もご多分にもれず、手っ取り早い解決策、支払いの先延ばしをやらかしました。
60歳から62歳へ。
受給資格年齢の切り上げです。
まあ62歳からは貰えるのですが、収入のある人はさらに65歳までダメとなった。
ただしアメリカの偉いところは、遅らせるとそれに見合ったご褒美を配ることです。
毎月の取り分が増える。
どのくらい増えるかというと、約2割から4割増し。この美味しい鼻先人参で、けっこう納得する。
もっともこうした見返りがなければ、とんでもない銃社会、老い先短い方々を怒らせると反乱を起こさないとも限らず、政府も無体なことはできません。
実は年金、僕も貰えるのですね。
アメリカは、7年働いて年金を納めれば貰えます。日本と比べると太っ腹でしょう?
しかも東京在住でもちゃんと送金してくれ、日本のように海外はダメ、国内で受け取れ、などという横柄さはありません。
偉いなあ。
とういうわけで、多少なりとも収入がある僕の場合、65歳までお預けなのですね。
でも、その年になったら、また先延しになるかもしれません。67歳とかに。で、その歳近くなったら又延ばす。追っかけっこをしているうちに僕は死んじゃいます。
冥土の土産が、年金の空手形なんて嫌だなあ。
すみません。めっそうもない話になりました。
話しを戻すと、アメリカの大不況は、家の値段もぐんと下げました。
僕が行くゴルフ場の住宅でいうと敷地100坪、3LDKが6年前で80万ドルでした。
現在はその半値以下、35万ドル(約2,800万円)くらいです。
前回一緒に回った、老カップルの奥さんが言ったものです。
「せっかく忘れているのよ。お願いね、私たちの家の値段を訊かないで」
分かります、分かります。
そう、そうやって悔しまぎれに地団太をたくさん踏めば、下半身強化につながり飛距離はアップします。
金の売り買い
仕事の合間、時おり街に出かける。
やたら目に飛び込んでくるのが「ゴールド買います」と「コイン買います」の看板です。
こんなにたくさんあったかなあと思っていたら、偶然翌日の新聞に載っていた。
記事によれば、このご時世、ゴールドを売りたい人、買いたい人、コインを売りたい人、買いたい人がめちゃくちゃ増え、その手の店が、雨後のタケノコように、あちこちに。
州や街によっては、これ以上増えるのは好ましくないということで、許可しなくなったという。
なぜ好ましくないのか理由は書いてありませんでしたが、そう言えば日本も金ブームです。
日本の場合、売りたい人の方が多く、ネックレス、ブレスレット、指輪、金歯など、年間40トンも売りに来るというからすごい。目のくらむ金塊がなんと40トンですぞ。
黄金の国ジパングの名に恥じない量です。
でもなぜか、日本は世界と逆を行く。
世界は買いに走っているのに逆張りの売り越しで、今や世界一の金輸出国だそうです。
幕末もそうでしたね。
で、金が流れ込んでいるのがアメリカ。アメリカの金融機関は、ギリシャにカネを貸していますが担保はぜんぶ金で、今や担保流れの金塊が、ばんばんアメリカに運ばれている。
金を売る日本、金を溜めるアメリカ。この勝負、目に見えています。
僕はアンティーク・コインの収集家なのでこの辺のことがよく理解できます。
株ダメ、土地ダメ、預金ダメの三ダメ恐慌ですから、おカネが、金に向かうのは当然です。
あれほど強かったユーロ通貨が、あれよあれよという間に悪夢の落下、今やユーロ体制そのものがメルトダウン寸前です。
ユーロが融ければ、巨大金融機関が倒れ、ドルが潰れ・・・ドミノ現象が起きて、ジ・エンド。
円の独り勝ちを期待しているあなた、そう甘くはない。
大黒柱のお父さんも、家計を預かるお母さんも、大不況をなんとかかわし、預金の目減りはならじと、鉢巻をしめ直すのが人情。しかし唯我独尊、自己陶酔は大火傷の元、ここはひとつ地味に資産の分散です。
僕も、各分野に分けております。
預金、金、株、土地・・・でも土地と株はもう止めました。塩漬けになったものを若干保持している程度です。
外国預金は、金利は高いのですが為替相場が問題。
でも僕の見立ては今だからドル預金です。
個人的な見方ですが、アメリカはやはりなんといっても底力があって、いずれ盛り返し1ドル120円くらいになると踏んでいます。
根拠は、ただ一つ、超大国だからです。
農業、資源、石油、軍事、なんでも自前でまかなえる国は他に類を見ません。100年くらい輸出入を止めたって、国家そのものに力があるのでへっちゃらです。
そんなわけで、ドルです。今は年利2.8%あたりです。
もっといい利回りを教えろですと?
では、とっておきの切り札をお教えします。アンティーク・コイン。
日本人はアンティーク・コインについてほとんど知らないのですが、実はこの世界、大変すごいことになっているのですよ。
では、来月じっくりとお話します。
《追伸》
総理になって、一番資産を増やしたのは中曽根元総理です。それはもうぶっちぎりで、小沢などママゴト遊びに見えるほどですね。
原発をがっと推進し、ロッキード事件、天皇金貨事件、リクルート事件……数ある事件をギリギリでかわし、莫大な資産を築きました。
僕は、その中の一つ、天皇金貨事件に挑みました。
それが『陰謀の天皇金貨』 (祥伝社)です。
事件は、一人のコイン商の事情徴収から始まります。
ロン・ヤス会談。
会談場所は中曽根の別荘「日の出山荘」ですが、その会談はまさに日本の日没でした。
どうやって中曽根のヤスはレーガンのロンに取り入り、中東に手を突っ込んだのか……そしていま、世界は夕暮れを通り越して完全に日は没し、深い闇に包まれております。
その原点は『陰謀の天皇金貨』にあり、一読していただければ解けます。
是非お読みください。
驚愕のあまり、椅子から転げ落ちること受けあいです。
★加治先生の『アルトリ岬』の文庫版が、PHPより9月17日に発売されました。
世界初のメンタル・セラピー小説です。
癒されてください。と同時に、セラピーとはどういうものか、手に取るように分かる作品です。
読んで感動したら、是非ブログやツイッターやフェイスブックで広めてください。
よろしくお願いします。
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作家・セラピスト。1948年札幌市生まれ。1978年より15年間、ロサンゼルスで不動産関係の業務に従事し、帰国後、執筆活動に入る。ベストセラー『企業再生屋が書いた 借りたカネは返すな!』(アスキー)、評伝『アントニオ猪木の謎』、サスペンス小説『借金狩り』、フリーメーソンの実像に迫った『石の扉』(以上三作は新潮社)など多数の著作を発表。『龍馬の黒幕』『幕末 維新の暗号』、『舞い降りた天皇』『失われたミカドの秘紋』(すべて祥伝社)の歴史4部作は大反響を巻き起こし、シリーズ 50万部の売上げ更新中である。その他、カウンセリング小説『アルトリ岬』(2008年 PHP)や『大僧正とセラピストが人間の大難問に挑む』(2010年 ビジネス社)などがある。
2011年4月に最新刊『陰謀の天皇金貨』(祥伝社刊)が発売。
★加治将一 公式音声ブログ: http://kajimasa.blog31.fc2.com/
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