加治将一の精神スペース
このページは、作家でセラピストの加治将一さんによるコラムページです。加治さんは、『龍馬の黒幕』『幕末 維新の暗号』『舞い降りた天皇』『失われたミカドの秘紋』(すべて祥伝社)などの歴史4部作が大反響を呼ぶ一方で、『アルトリ岬』(PHP)や『大僧正とセラピストが人間の大難問に挑む』(ビジネス社)などのカウンセリング関連の著書も好評です。そんな加治さんが、日々の生活で感じること、皆さまにお伝えしたいことなどを書き綴っていきます。
いやはや、4月23日という日には、驚かされました。
いくらなんでもでも、こんなのあり? という驚きを通り越して不気味でさえありました。
場所は品川駅港南口、インター・コンチネンタルホテル。
世間的にはインター・コンチで通っておりますが、僕はイタコと呼んでおります。そんなことはどうでもよろしい。そこで起ったのです。
26階フロアに足を運びます。
するとそこに今回のオークションの主催者名が書かれておりました。
「株式会社日本コイン・オークション」
執筆の合間をぬって、わざわざ足を運んだ理由はただ一つ。お目当ての銀貨、通称ポルトクリスであります。
鋳造はエリザベス一世(1533〜1603)の治世の終盤、このあたりはシェークスピアが活躍しておりまして、日本では、関ヶ原の合戦で徳川家康が天下に名乗りを上げた時代です。
エリザベス一世さんはイングランドとアイルランドの国王ですが、結婚もしなかったために処女王などと呼ばれていたのに、けっこうやりましてかのスペイン無敵艦隊を撃破し、誇り高きチューダー朝の最後の黄金時代を築いた英国の人気者です。
で、コインです。
珍品、ポルトクリスのデザインは一風変わっています。
君主時代のコインは、堂々とした国王の肖像かなにかが一般的ですが、こちらはなし。なんと牢獄の「落とし格子」なのです。
妙な図柄ですが、理由は彼女の履歴にあります。
21歳の花も恥じらう乙女でした。
その時、どこにでもある後継者争いで、地下牢に約一年の幽閉という辛い浮目にあっているのです。
まあ、下々はもっと辛い目にあっていたと思いますが、それはそれとして、女王は政敵に対する怨念なのか、はたまた油断するな! という自分に対する戒めなのか、実(げ)に恐ろしき牢獄の「落とし格子」を自分専用のマークとしてコインの中に刻み込んだのであります。
普通でないのはデザインばかりではありません。
ポルトクリスの流通エリアです。東インド地域に限られていたのですね。かといって当世流行りの、「東インドご当地記念コイン」ではありませんよ。
では、いかなる因縁で東インド地区の限定にしたのか?
順序立てて述べると、つまりはこうです。
血沸き肉躍る東インド貿易。
ご存知のとおり、アジアの国々から香料を持って帰ればたちまち億万長者、すでにオランダやスペインに莫大な富をもたらしていたのです。
指をくわえてじっと見てる場合ではないと、英国も腰をあげます。
任されたのはレヴァント社です。
「会社」などといっても上品なものではなく、だいたいこのころのヨーロッパの貿易会社など、乱暴狼藉を働いて他人様のお宝を平気で分捕る海賊と変わりなく、つまり英国女王は無頼(ぶらい)の海賊を手なずけてお宝をごっそり集め、英国に君臨した海賊の親分みたいなものですが、このレヴァント社も、エリザベス一世お墨付きの国策会社なのです。
「そなたに、東インドは任せたぞえ」
第一回目の航海は1601年でした。
資金は68,373ポンド、すべてを出資者から集める。
これを四隻の船に積むわけですが、出資者だってカネ転がしにかけては心得ておりますから莫迦(ばか)じゃありません。
もし船が海賊、あるいは嵐と遭遇したらどうなるか?
積んであるカネはパーです。
「はて、どうする?」
頭のいいやつは、すでにオランダやスペイン、いやもっと昔からいたのですね。
彼らが考案したのは代用貨幣です。
お国で流通している本物の通貨は使わない。で、ニセガネ、いや失礼、つまりは代用貨幣、英語ではトークンなどといいますが、そっちを船に積載したのであります。
そうすれば、仮に海の藻屑と化しても懐はそんなに痛みませんね。海賊が略奪しても、東インド以外ではまったく無価値だし、無理に使えばなにせ「落とし格子」のデザインですから簡単に足がつき、どうにもならないのですよ。
賢いやり方です。
だからといって、単なるビンの蓋では信用してくれないので、そこはもっともらしさを出すためにちゃんと銀を使用し、エリザベス女王が好んで使ったマーク「落とし格子」をデザインしたというわけです。
「これを使うように。あとは、よきにはからえ」
代用貨幣ですから、肖像画などはありません。
東インド貿易の競争が激化し、英国は敗れます。その結果、ポルトクリフは徐々に使われなくなったため、現存枚数は少ない。
おそらく50枚以下です。
ね、歴史を知っているとコインは面白いでしょう?
で、僕は瞑想の導きで、ポルトクリフは確実に値上がることを確信していたので、買うことに決めていたのであります。
ほぼ満席のオークション会場、次第にお目当てコインの順番が巡ってきます。
カタログに、スターティング・プライスは85万円と書かれています。
「競り」は、その額からはじまり、おそらく2倍の170万円までには、絶対に決着が付くはずだと踏んでおりました。
そこで自分が許せるギリギリの天井予算を170万円と仕切った。
いざ出陣!
ところが、しょっぱなのスターテング・プライスのアナウンスで、つまづく。
「175万円!」
「なに・・・?」
うろたえる加治。
なにせカタログに書かれている85万円ではなく、いきなり二倍以上の175万円からはじまったのか?
「WHY?」
理由は「事前入札」というオークションのルールですね。
前もって誰かが、インターネットかファックスで入札額していたのですよ。
それも複数の入札があり、こういう場合は、事前入札の上から二番目に高い入札額が、「競り場」でのスターティング・プライスとなります。
早い話が、175万円が入札二番額で、その上に最高値の入札があった、ということです。
最高額は、会場には知らされません。
「175万円!」
オークショナーのアナウンス。思わぬ伏兵(ふくへい)に心の準備が整わぬ中、たちまち場内の誰かが札を上げたのでしょう、「180万円!」のアナウンス。
ぼやぼやしてはいられません。
かといって、無暗に突っ込むわけにもいかず、それでもなんとか頭を切り替え、自分の天井を200万円までとリセットし直したのであります。
「185万!」
僕が、素早く自分の札を挙げます。
「190万!」
誰かが、値段を更新した。
―いったい誰なんだろ? ―
こんなとき「クソッ」とか、「チキショー」などとは決して思わないものです。僕と同じコインに眼をつけた相手はどんな人か、むしろ親近感が湧き、また相手はどこまで競るのか知りたくなるものです。
僕が札を上げる。
「195万円!」
若干の間があって、また誰かが上げました。
「200万!」
オークショナーの視線を追って、場内をさっと見渡したが不明です。
「210万円!」
これはもう自分の予算オーバー、競り負けた僕はいさぎよく沈黙しました。
「210万!」
という念を押しのアナウンスが二度。だが、だれも札を上げなかった。
「210万円で落札しました」
落札宣言の木槌が、コーンと打ち鳴らされた。
「あれれ?」
と首を捻る。
会場での札上げは明らかに200万円止りでした。したがって、すっかり200万円が落札価格だと思っていたら、意外や意外210万円だという。
一拍置いて気づきました。
カラクリを明かせば、事前入札の最高値の方が、場内の200万円を上回っていたということなのです。
落札者は場内ではなく、FAXによる事前入札済みの英国人でありました。
奮闘むなしく、残念ではありますが、すがすがしい気分です。
それにしてもほぼ2.5倍の値上りで、売った人はいい商いです。
しかし僕がほんとうに驚愕した場面は、その3時間後、こんなものではすまなかった、
それはカタログNo.733で起りました。
1906年発行のチャイナ銅貨です。
なんの変哲もない20文銅貨ですから、スターティング価格は20万円です。
そんなものでしょう。
ところがどっこい、あれよあれよとグングンと上昇し、なんと、なんと540万円で落ちたのですよ。
考えられますか? 27倍ですぞ。
27倍といったってあなた、これはスタート価格の27倍でありまして、当の売主は、二束三文で手に入れた代物。それを家に放っておいたら540万円という、庶民の年収に匹敵する金額をゲットしたというわけです。
そこに、なんの努力もいりません。
勝利の方程式は、所有するだけ。小学生の子供にだってできます。
これぞ他力本願的コイン・マジックでありました。
なぜこんなことが起るのか?
はい、大変長らくお待たせしました、
みなさんとのお約束どおり、子供からお年寄りまでが簡単に理解できる、買い方、売り方、その諸々のノウハウがぎっしり詰まった本を書きあげました。
『カネはアンティーク・コインにぶちこめ!』(東洋経済新報社)です。
人生を、おカネで決めるわけではありませんが、しかし、なんといってもおカネがなければ行く末が不安です。
今からアンティーク・コインを買っておく。60歳、70歳でもぜんぜん遅くはありません。
買っておけば、コイン年金になり、腐ったリンゴみたいに食えなくなるかもしれない「年金」など、屁です。
『カネはアンティーク・コインにぶちこめ!』(東洋経済新報社)は、この4月27日に発売です。
ぜひ読んで、あなたも「開運コイン」「マジック・コイン」「お宝コイン」を手にしてください。
読めば、な〜んだ、そうだったのか、と世界が変わるはずです。
★『カネはアンティーク・コインにぶちこめ!』加治将一著、東洋経済新報社、4月27日発売です。
二月に発売した歴史ミステリー、望月先生シリーズ第四弾『西郷の貌』(祥伝社)は、おかげさまで四刷りとなりました。シリーズ累計は50万部を突破しております。今後ともお引き立てのほどをよろしくお願いいたします。
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作家・セラピスト。1948年札幌市生まれ。1978年より15年間、ロサンゼルスで不動産関係の業務に従事し、帰国後、執筆活動に入る。ベストセラー『企業再生屋が書いた 借りたカネは返すな!』(アスキー)、評伝『アントニオ猪木の謎』、サスペンス小説『借金狩り』、フリーメーソンの実像に迫った『石の扉』(以上三作は新潮社)など多数の著作を発表。『龍馬の黒幕』『幕末 維新の暗号』、『舞い降りた天皇』『失われたミカドの秘紋』(すべて祥伝社)の歴史4部作は大反響を巻き起こし、シリーズ 50万部の売上げ更新中である。その他、カウンセリング小説『アルトリ岬』(2008年 PHP)や『大僧正とセラピストが人間の大難問に挑む』(2010年 ビジネス社)などがある。
2011年4月に『陰謀の天皇金貨』(祥伝社刊)を、2012年1月に『倒幕の紋章』(PHP文芸文庫)を文庫版として発売。2012年2月に『西郷の貌(かお)』(祥伝社刊)を、2012年4月に新刊『カネはアンティーク・コインにぶちこめ!』(東洋経済新報社)を発売。
★加治将一 公式音声ブログ: http://kajimasa.blog31.fc2.com/
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