“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2023.04
危うい中東情勢

「イランのウラン濃縮度が84%に達した」
 2月下旬、国際原子力委員会(IAEA)は驚くべき報告を発表しました。
 イランの核開発が成功直前にまで迫っているというのです。通常核開発にはウランの濃縮度90%が必要と言われていますが、84%までくればあと一歩でイランは核開発できるということです。この報道に対してイラン原子力庁の報道官は「事実の歪曲だ、濃縮度が60%超のウラン粒子が存在していることは、濃縮度が60%を超えたことと同じ意味ではない」とIAEAの報告を全面的に否定しています。
 しかしながらイランの弁明を信用することはできないでしょう。事は切迫しているとみてよく、いつイランが核開発の成功を発表するかわからない状況です。世界は今、ウクライナ情勢に一喜一憂している状況で、イランの暴走はじめ中東に目が向いていません。振り返ってみれば、ロシアがウクライナ国境に大量の軍隊を配備していた時、まさかロシアが本当にウクライナに侵攻すると誰が想像したでしょうか?

●ノーマークになっている中東情勢について
 問題はこれからのイスラエルの出方です。イスラエルはかねてよりイランの核開発はデッドラインであり、決して許容しないと公言、軍事行動を辞さない姿勢を示唆してきました。そして現在のイスラエルの首相は最もタカ派で知られるネタニヤフ氏です。仮に中東でイランを巻き込んだ紛争が勃発すれば、その影響はウクライナ紛争の比ではありません。一般的には現在全くノーマークになっている中東情勢について考えてみます。
 イラン製のドローンがウクライナ戦争に使われているのは周知の事実です。ロシアに公然と武器輸出しているのはイランと北朝鮮だけです。まさにイランは<ならず者国家>と言えるでしょう。そのイランは現在、社会が大混乱となっています。事の発端は髪の毛を覆うように定められた法律に違反したとして当局に逮捕された若い女性が謎の死を遂げたことです。この女性は当局に殺されたとみられています。またイランの学校教育の現場ではとんでもないことが起こっています。女性の教育に対して不満を持つ勢力が学校で女性に毒を盛るという行為が頻繁に行われているのです。かような驚くべき人権侵害が恒常化していることに対して、社会の怒りが爆発してイラン国内各地でデモが多発しているわけです。かような中、イランは権力移行の過渡期でもあります。
 と言うのも、最高指導者であるハメネイ師は現在84歳になり何年も前から健康不安が噂されています。イランは国王が統治していた時代から1978年革命が起こりイスラム共和国となったのですが、その後44年間最高指導者の交代は一回しかありません。今後の指導者が誰になるのか、その帰結によってイランがどのように変わっていくのか全く先が見えない状況なのです。そのような不安定な状況のイランが核開発に成功しそうなわけです。
 このような危うい状況を中東諸国はとても安心してみていることはできないでしょう。イランと対立するのか和解するのか、地域各国の指導者は選択を迫られているわけです。ここで本来であれば米国が圧倒的な力を持って、その軍事力をバックにイランを押さえつければいいのですが、米国の力の衰えは明らかでそれができない状況です。米国の現在の力ではイランによるロシアへのドローン供給もイランの核開発も止められないのです。ロシアはイランとの関係を密にしています。イランはドローンを大量に供給する見返りにロシアからウランの供給や核開発の技術を要求していることでしょう。まさに<悪の枢軸>が結託しているわけです。

 一方、イランと犬猿の仲のイスラエルも混乱の極みにあります。
 イスラエルでは選挙を何度行っても安定した政権が作れず、選挙は繰り返す、政権交代が頻繁に行われるなど全く政治が定まらないのです。現在政権についているネタニヤフ首相は詐欺や贈収賄で起訴されているのですが、首相に返り咲くことができました。ネタニヤフ首相は裁判で有罪を免れる目的と思われますが、強引に司法改革を行おうと試みました。しかし三権分立を危うくする方針にイスラエルの世論は激しい反発となったのです。
 結果、イスラエル全土でデモ頻発するようになり、結局、司法改革はとん挫しました。かような情勢下でイスラエルの宿敵イランの核開発が成功しようとしているのです。
 ネタニヤフ首相は軍事行動も含めてイランと激しく対峙したいという欲求が強くなるでしょう。国内の不満の目を外に向けるのです。ネタニヤフ首相は元々タカ派ですし、イランの核開発を黙って見過ごす選択肢はないように思えるのです。過去にもイスラエルはイランの核施設を攻撃したことがありました。
 そしてイランの核開発の研究者の暗殺も何回か成功させています。イランは「イスラエルを地図から消し去る」と公言している宗教国家ですから、核を持てばその指導者の決断で何を行うかわかりません。先手を打ちたいイスラエルの焦燥感は強いと思います。

 サウジアラビアはイランと国交回復という歴史的な和解となりました。中国の仲介によるものです。3月10日、北京においてサウジアラビアとイランの代表団は7年ぶりに外交関係を正常化させることで合意したのです。相互に大使館を設置すること、双方とも内政干渉を行わないことなどを決めました。
 その後4月10日には同じく北京で双方の外務大臣の会談が行われて正式な国交回復となりました。これをみればサウジアラビアとイランの間は完全に雪解けのように対立が解消されて、今後、融和と共に安定した関係が構築されるのではないか、と思えますがそうはならないでしょう。
 というのも基本的にサウジアラビアとイランはお互いを全く信用していないからです。これは両国の歴史的な関係をみれば明らかです。サウジアラビアはつい最近までイエメンと戦争を行っていたのですが、イエメンのバックはイランであって、実質サウジアラビアとイランは代理戦争を行っていたようなものです。
 つい最近でも2016年には在イランのサウジ大使館や領事館をイラン人が襲撃しましたし、2019年にはイランの武装勢力がサウジアラビアの石油施設に対してミサイル攻撃を行いました。この時米国は紛争の拡大を恐れ、イランに対して報復しませんでした。これがサウジアラビアにとって米国に対しての決定的な不信感を抱かせたものと思われます。
 米国を当てにすることはできない思ったサウジアラビアは独自の道を歩き始めました。折しも石油情勢が緊迫化してきたことで、サウジアラビアはじめとする産油国は世界経済に大きな影響力を持つようになってきました。サウジアラビアはロシアと提携してOPECプラスを十分機能させる方針に転換しました。
 サウジアラビアは米国の同盟国であり、サウジアラビアは自国の安全を米国に頼っているわけですから、本来日本の立場と同じように米国には本気で逆らえない立場であるはずです。ところがサウジアラビアは近年、米国の意向を無視するような行動を続けるようになったのです。

●サウジアラビアと米国の最近の関係
 昨年米国のバイデン大統領は中間選挙の前にわざわざサウジアラビアを訪問して、米国内のインフレを抑えるためにサウジアラビアはじめとするOPEC諸国に対して原油の増産を要請したのですが、サウジアラビアの答えは何とわずか10万バレルの増産というバイデン大統領の意向を無視したような馬鹿にしたような答えでした。そしてその後サウジアラビアは原油の増産どころか減産を発表、バイデン大統領に恥をかかせたのです。そして今年4月になるとさらに追加的な原油の減産を発表しました。これによって70ドル台前半だった原油価格は80ドル台に一気に跳ね上がったのでした。
 一連の流れをみる限り、サウジアラビアはもはや米国の意向など全く気にしないで「原油価格は自分たちで決める」我が道を進むという態度です。少なくともバイデン政権が続く限り、サウジアラビアは米国の意向に従うことはないでしょう。そのような行動の極みが今回の米国抜きでの中国を仲介者としてのイランとの国交回復劇でした。
 かようにイランもサウジアラビアもイスラエルも各々の事情があり、独自の道を歩むようになったのです。中国は仲介者となって影響力を増しましたし、サウジアラビアとロシアは同じ産油国ですから利害が一致する関係となっています。さらにサウジアラビアはシリアとも国交回復する流れとなりました。こうなると表面的には中国の仲介によって中東に安定が訪れるようにもみえます。

 しかしかような中東地域の緊張緩和の期待などいずれ一気に吹き飛ぶに違いないのです。というのも中国もサウジアラビアもイランもロシアもこれらすべての関係は利害関係だけが絡んだ関係だからです。人間関係も利害関係だけの関係はもろいもので、利害が対立すると一気に関係が解消されてしまいます。そもそも中国の仲介による緊張緩和など実質、何の意味合いもないと思った方がいいでしょう。中国はウクライナに仲介者としてふるまっていますが、ウクライナとロシアの問題を本気で解決しようとは思っていないでしょうし、そんな力もないこともわかっていると思います。今回中国がサウジアラビアとイランの国交回復を仲介して一時の間だけ緊張緩和を演出することができたとしても、そんなものは一時的な約束であっていつ破られるかわからないものでしょう。
 米国の仲介が威力があったのは米国の圧倒的な軍事力とドルをベースにした経済力がバックにあったからなしえたものです。サウジアラビアは今回米国の意向を無視して中国の仲裁に乗ったわけですが、かような軍事力や経済力を伴わない強制力のない口先だけの合意などいざことが起こればあっという間に雲散霧消してしまうことでしょう。中国にしても合意が破られたときに制裁もなければ軍事力を行使するなどという選択肢などあるはずもないのです。
 かように中東地域における現在の国家間合意や現在の小康状態は危ういのです。イランはいつ暴走を始めるかわかりませんし、サウジアラビアも米国の意向を無視していては米国もいざというときに助けてくれないでしょう。そしてイランに核開発の成功が迫ってきています。イスラエルは生存を賭けたイラン攻撃という重大な決断を迫られてきます。サウジアラビアもイランが核を持てば対抗上、核を持たざるを得ません。かような事態をみれば米国という重しがなくなって中東全体がカオス状態に陥っていく状況が如何に危ないかわかるというものです。
 日本は原油の9割超を中東に依存しています。ひとたび中東で事が起これば日本経済は大打撃を被ります。しかしながら日本中、誰も中東の危機を感じとっていません。何が起こるかわからないのが現在の世界情勢です。ロシアのウクライナ侵攻から明らかに世界が変わってきています。しっかり現状を見据えて危機に備えておく必要があるのです。

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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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