“超プロ”K氏の金融講座
このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。
「地球温暖化の時代は終わり、地球が沸騰する時代が来た!」
7月、国連のグテレス事務総長は世界に向けて深刻な警告を発信しました。
実際、現在世界中で考えられないような暑さが席捲していて、被害が世界各地域から伝えられています。日本でも連日熱帯夜が続き、熱中症で亡くなる人も後を絶ちません。しかし世界を見渡せば日本の状況などまだ特筆するものでもないようです。先日はハワイのマウイ島の山火事で米国史上最大の被害者が出たことが大きく報道されていました。ハワイは日本人にとってもなじみの深いところですから、驚きを持って受け止められました。
誰でも昨今の暑さや豪雨など気候変動は異常であり、地球は今後、大変な事態に陥っていくのでは? という予感は抱いていると思います。ウクライナでは戦争もぼっ発していますし、経済もインフレが加速して全世界的におかしくなってきています。それに輪をかけるように気候変動も襲ってきています。これらは全く別々のことなのですが、気候変動が激しくなると食糧生産に支障が生じてインフレが加速します。またインフレが加速すると、人々の生活が苦しくなって各国間の争いが激しくなり、場合によっては戦争に至ります。どうも現在の状況は世紀末というわけではありませんが、混乱が混乱を呼び込む悪循環の展開に向かっているように思えます。今回は世界の気候変動の実体と日本の危機について考えてみます。
●世界中で頻繁に起こっている山火事
ハワイ、マウイ島のラハイナは町が全滅してしまいました。観光地で美しかった町があっという間に火に包まれて焼け落ちてしまったのです。死者は100人超に及び全貌はまだわかっていません。多くの人が火から逃れて海に飛び込んでやっと生き延びることができたと証言しています。ラハイナでは長い間乾燥状態が続いていたということです。そこに山火事が発生して、当時は台風並みの風速35メートルの強風も吹いたということで火が予想を超える速さで広がってしまったということです。シュミレーションによると風速35メートルという台風並みの風が吹いて、そこで火事があった場合、火の回りは異常に早く数キロメートル先まで火は瞬時に広がっていくというのです。数キロ先まで瞬時に火が伝わってくるのでは火事の被害を防ぐ手立てがなかったように思えます。
この話を聞いて日本の状況と照らし合わせて決して他人事ではないと思いました。日本でも昨今台風の巨大化が見受けられますが、仮に地震などと一緒に混乱が同時に起こって、強い風が吹き荒れていれば、かような被害が起こることもあるのではないでしょうか。現在では山火事は世界中で頻繁に起こってきています。
カナダではこの夏、5800件以上の山火事が起こったということです。焼け落ちた面積は約14万平方メートルと東京ドームの3000倍の面積に渡っているのです。これは過去最大だった昨年の倍の広さです。あまりに激しい山火事だったので、その煙はカナダから米国まで広がっていき、ニューヨークで全く視界が効かなくなったほどでした。この時ニューヨークでは、大気汚染指数が世界最悪となったのです。学校は休みとなり、飛行機は欠航となりました。スペイン南部の山火事も悲惨で、北大西洋上にある有名な観光地であるラ・バルマ島では気温が44度に達し、山火事が発生、4000人が避難する事態となりました。
ギリシアでは山火事の影響でアテネの北25キロにあるキャンプから700人が避難、アテネでは40度を超える熱波が襲い、観光地のパルテノン神殿は一時閉鎖となったのです。米国のデスバレーでは気温が56度に達したということです。さらにインドのウッタル・プラデーシュ州では最高気温が45度、連日40度を超える暑さとなって熱中症で病院に運ばれる人が殺到し、ついに病院がパンク状態となったとのこと、100人超の死者が出たということです。
さらに世界では水害の被害も各地で報道されています。中国では台風5号に伴う豪雨によって北京周辺で洪水が発生、死者数はこの10年で最大となりました。米国ではバーモント州でこの100年で最悪の洪水となって家屋や事業所、重要インフラが破壊されました。またカリフォルニア州ではハリケーン<ヒラリー>が猛威を奮い、この地域でも100年ぶりに道路が冠水状態となったのです。このカリフォルニア地域をハリケーンが直撃することはかつてなかったことです。韓国でも台風6号が直撃、住宅や道路の被害が相次ぎ、堤防の決壊も起きました。土砂崩れや地下道が水没して死者46人という大惨事となったのです。これらの話は世界で生じている山火事や水害の一例に過ぎず、この夏は気候変動で世界中がパニックに陥っているのです。
●「自然災害は身近に迫ってきている」という認識が大事
地球温暖化の動きは加速してきた模様で後戻りすることはないと思った方がいいでしょう。今年起こったことは毎年恒例行事のように起こる可能性が高いと構えておく必要があります。異常高温や洪水の発生は<新常態>であって当たり前のことと思わなければなりません。むしろまだ混乱は始まったばかりで加速する可能性が高いと覚悟を決めておくべきかもしれません。
というのもあらゆる指標が今後の更なる地球の温暖化の加速を示唆しているからです。例えば世界の海の平均温度です。今年世界の海の温度は史上最高を記録して、現在記録を更新中です。これが恐ろしく怖いのです。通常世界の海の温度は3月にピークを付けて、その後下がってくるのは毎年のパターンでした。ところが今年に限って3月から海の温度は下がることなく、日々高温記録を更新し続けているのです。因みにフロリダの海岸の温度は38度に達している地域もあるということで、これでは温泉状態です。日本でも東北沖は例年より2-6度高くなっているということです。昨今の海の気温上昇で海の生態系は完全に崩壊してしいました。例えば秋と言えばサンマですが、日本におけるサンマの収穫は全盛期と比べて97%減とサンマの収穫は壊滅状態です。スルメイカなども同じような状況です。このままいくとサンゴなどは世界中で死滅すると予想されています。世界で最も気温上昇が激しいのは北極で、世界の平均的な気温上昇の4倍の速度で気温上昇が続いています。北極で次々に氷が溶け始めていますから夏には北極の氷が消滅する日も近いでしょう。北極航路が開通するというわけです。
ところが北極の氷が溶けだしますと、氷に閉じ込められていた地下水が上がってきてそこから大量のメタンガスが放出されることとなります。メタンガスは非常に強い温室効果ガスです。メタンガスは二酸化炭素の80倍もの温暖化効果をもたらすのです。となると北極の氷が溶けることで世界は更に温暖化が加速するという事態に追い込まれていくわけです。もちろんウクライナでの戦争とか、世界中でさらに拡大している石炭などを使った火力発電なども温室効果を高めていきます。2015年パリ協定で地球温暖化を阻止するために産業革命前に比べて地球の気温を1.5度までの上昇に抑えるように努力することが決められましたが、守っている国は殆どありません。ティッピングポイント、これは物事が一定の条件を超えると一気に拡大していく状況、いわば後戻りが出来なくなる状況を指すのですが、地球、人類は気候変動においてティピングポイントを超えてしまって地球は二度と元の状態には戻れないと思われます。
直近日本で起こりそうな事態を考えますと、台風の巨大化による想像を超えた洪水被害の発生が考えられます。日経新聞によりますと3メートル以上、これは住宅の2階部分に相当しますが、河川の洪水によってそこまで浸水する恐れのある市街地に住む人は、2020年時点で日本全体で約790万人に達していて、そのような危険地域に住む人は増える一方でこの20年で60万人も増えたということです。これまで特に関東などでは酷い洪水などめったに起こりませんでしたし、海抜の低い平地は住みやすいのでどうしても多くの人々が住むようになっていきます。土地を買うときや家を建てる時には不動産関係の人はハザードマップを持ってきてその土地の危険度を知らせることになっています。誰でも調べれば自分の住んでいるところがどのくらい水害の危険性があるかがわかります。その危険度ですが、3メートル以上の浸水が想定される区域に住んでいる人は、東京近郊でみると江戸川区や足立区の約4.5万人、埼玉県ですと川口市の3.5万人などが挙げられています。一部の地域では5-10メートル浸水する可能性も指摘されています。
台風が巨大化している今、関東に住んでいる人も洪水による災害を他人事と見過ごしていられない状況になってきたと思います。昨今は日本でも様々な自然災害のニュースがありますが、日本はまだ世界と比較すれば甚大な被害は被っていない方です。しかしながら災害は身近に迫ってきていると認識した方がいいと思います。大きな被害を被っていない現在にこそ、しっかりと備えを万全にしておく必要があると思います。
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★『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。
★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/
経済アナリスト。
株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。
実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。
著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。
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