中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2020.11.20(第74回)
種苗法改正案の慎重審議をお願いする活動に協力してください。

 日本の種子の主権=食料主権が、農家から開発者に移ろうとしています。開発者には、日本の民間の種屋さんから世界の種子市場の6割を持つ超グローバル企業まで入ります。
 そして世界ではM&Aが続き、ますます超グローバル企業のシェアーが大きくなりつつあります。この流れは、大きく言えばTPP協定の一環の200本以上ある国内法整備です。
 TPPとは世界の政府の仕事を民間企業に渡してしまう動きです。企業が世界を支配することになります。企業はインフラなどのお金がかかるところは税金で、儲けは自分が取るでしょう。
 TPPとは世界の政府の仕事を民間企業に渡してしまう動きです。企業が世界を支配することになります。企業はインフラなどのお金がかかるところは税金で、儲けは自分が取るでしょう。
 11月19日、衆議院本会議で、種苗法改正案は通過してしまいました。これから参議院農水委員会の審議が24日、26日とあり12月1日採決、12月2日衆議院本会議採決の予定です。
 そこで、参議院農水委員会の議員に以下の働きかけをしたいと思い、6通のお願いを書きました。参議院農水委員会名簿を付けますので、人脈豊富な読者の皆様からお願いをしていただきいと思っております。FAXが有効だそうです。どうぞよろしくお願いします。
★参議院農水委員会名簿★)

【種苗法改正案に慎重な審議をお願いします。その1】
 国民や農家の誤解や不安を取り除くため、正確なデータで十分な審議をお願いします。

●ご存じだと思いますが、種苗法改正は、大きくはTPP協定の条件であるUPOV条約の国内法整備に当たります。UPOV条約は制定当時の目的から離れ、1991年に超グローバル企業の要望が入り、加盟国に、@公共の種子生産の中止、A自家増殖原則禁止、B種子と農薬セットの栽培方法から農機具購入から販売先までを企業が指示(農家の裁量なくす)、C登録品種以外市場に出せなくする、などを要求してきます。

●日本はアメリカ投資家からの要望に応えて、UPOV条約の求めてくる上から2つに応じ、2018年に@種子法で公共の種子生産を中止し、2020年にA種苗法改正で農家の自家増殖を原則許諾性にしようとしています。許諾性ということは、種子の主権が育成者にあるということで、農家にはないということです。

●アジアや中南米などでの農家を悲惨な状況を見るにつけ、これだけ世界の流れと一致しているのに、政府は、グローバル企業に種子の権利を握られる心配はない。農家への影響力はほとんどない。と述べています。本当にそれで大丈夫なのでしょうか?

 国民の生命・食糧を預かる国会議員として、直近のことだけでなく、世界の動きを参考にして、一手先、二手先を読んでの慎重な審議をお願いします。

【種苗法改正についての地方公聴会を開いてください。その2】
●政府や農水省の方たちは、反対している国民に対して、よく理解していない、誤解していると片付けていますが、審議会で答えていない質問があること、誤解が解けないままの採決であったことなど、種子の主権に関する重要な問題として、全く審議が足りていません。

●また、一方、ほとんどの国民や農家は、この種苗法改正が今国会で審議されていることさえ知りません。またお伝えすると「お上がそんな酷いことをするはずがない」と言って信じません。日本政府への絶大な信頼を持っています。

 国民の信頼に応える政治家として、農家を集めての地方公聴会を開いてください。参議院農水委員会では、地方公聴会の必要性について提案して下さるよう、切にお願い申し上げます。

【種苗法改正案に慎重審議をお願いします。その3】
●農水省のデータが正確ではありません。もう一回差し戻して、正しいデータの元での慎重審議をお願いします。議論の根拠が正しくなければ、審議は成り立ちません。今回のこの改正案、賛否両論に分かれていますが、賛成している方たちは、農水省のデータと説明を信じている方たち、反対している方たちは、その説明やデータが現状と間違っていることを自分で調べて発見している方たち、と考えられます。

●一例を挙げると、農水省はコシヒカリを一般品種なので自家採種自由の方にカウントしていますが、新潟のBLコシヒカリは登録品種です。新潟はBLコシヒカリでなければ新潟コシヒカリと認めないとし、買い上げ価格にも差をつけたので、新潟の農家は99%BLコシヒカリに切り替えました。この新潟のBLコシヒカリを登録品種に入れるだけでお米の登録品種は40%になります。農水省は17%といっています。農水省のデータが正確でないことが、賛成と反対に分かれた理由だとすると、みんなに公正な判断をさせない罪なことです。

●もう一つ、農水省の説明にある「登録品種は種子全体の10% 以下」ということは間違っていませんが、農家が実際に栽培している割合を見ると、お米の64%〜沖縄のサトウキビ90%まで様々、農家が10%しか登録品種を栽培していないということではありません。国民にも、国会議員のみなさまにも、誤解を招く説明で現状を正しく表してはいません。

 国民の現状を知るべき国会議員として、農水官僚の間違いを見抜き、日本人の基本食料である米・麦・大豆の種子と、国民の食糧安全保障を守ってくださるよう、お願いいたします。

【種苗法改正案に慎重審議をお願いします。その4】
 種苗法改正の理由に掲げられている海外流出についてですが、何よりも有効な対策である海外での品種登録を徹底してやってください。

●日本の優良品種の海外流出防止に賛成しない国民はいません。このように、誰も反対できない理由を、それとは直接関係のない農家の自家増殖一律許諾性の理由にすることはずるいやり方だと思います。農水省や農研機構は海外での登録を怠っておきながら、農家の自家採種のせいにしています。海外流出は、相手国で品種登録するしか原則的に守れません。

●日本は知的財産権立国を目指すという国の方針でありながら、外国での登録の手間と費用をケチるのは言動が一致していません。工業製品ならあり得ないことです。種子は何より大切です。海外での品種登録を徹底してやってください。

●2017年農水省は、海外での品種登録の支援策を整備しました。海外での登録料の1/2補助、訴訟費用の2/3補助などですが、それでも登録が進まないようなら、こちらの支援を手厚くするなどの法改正してください。

 日本の保守として、日本の農家の権利を奪うことなく、日本人の優秀な品種の知的財産権を守ってくださるよう、海外での品種登録の徹底をお願いいたします。

【種苗法改正案に慎重審議をお願いします。その5】
●日本政府が忘れている民間力があります。それは農家の種取り技術、その地方の優良品種に育てる栽培技術です。農家が元気だった時代は、家族が持てあますほど品種改良に熱心な農家の親父が結構いました。

●いまでも有機農家の中には研究者に匹敵するほど能力と情熱を持った方たちがいます。またその方たちは、農研機構や大学の先生たちと共同で開発しています。官民共同でやっています。これがもっと活発だったときは日本の新規登録数はどんどん増えていました。種子法廃止で官を崩し、種苗法改正で農民の民を崩し、どうして日本の品種登録を増やすことができるでしょう!

●民間の種苗会社に頑張っていただくことは賛成ですが、種苗開発者は、今まで農家が優秀な品種にまで育ててきた在来種を使って、改良し、もし弱いところが見つかったらまた在来種を使って改良して、新品種を作っているのです。種子を命の始まりから作れる人間はいません。公共機関と農家と民間企業は三位一体です。

 日本の保守として、真の民間力として農民の技術力を再認識し、農研機構や試験場などを充実させ、そのうえで民間企業を応援して、日本の食糧安全保障を守ってくださるようお願いいたします。

【種苗法改正案について最後のお願いです。その6】
 種苗法改正案は、大げさではなく、種子の主権が農家から育成権者に移ってしまう、日本の食糧安全保障上の重大な転機です。この時、「私は反対しました」と言える国会議員であって欲しいです。ご自分の信じる答えが党の方針と違った場合は、党議拘束に従わないでください。

 どんなウソをついてでも通さなければならない法案なんて・・・ もう国民やっているのも疲れます。本当に大変なことが起きているときに、大丈夫です、安心してください、などと言われても、ますます頼りなく感じます。

 大変なことが起きているときは、「大変です!」と国民を目覚めさせてください。非難する国民もいるでしょうが、自助で対策を練り、日本の農業、安全な食糧を守ろうと立ち上がる国民もいます。

 日本の国会議員として、誇りを持って、私たち国民を信じ、本当のことを言ってください。一から始める覚悟はできています。

※わかりやすい、と好評のマンガです。
https://www.facebook.com/npomedakanogakkou/posts/2167401993391576

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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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