ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測

このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。

2021.12.01(第94回)
怒りが沸点に達しつつあるアメリカ

 いま、たしかにアメリカ経済は回復基調にある。成長率は鈍化したものの、7月から9月のGDPの成長率は前期比で2.0%である。個人消費も0.6%の成長を堅持している。これはいまだにGDPの成長率がマイナス3.0%、個人消費がマイナス1.1%の日本とは対照的だ。また、慢性化しつつある人手不足が背景となり、企業は賃金を引き上げ、待遇改善に努めている。いまでは年収1000万円を越えるトラック運転手も珍しくなくなっている。

 しかし、このような好調な経済にもかかわらず、インフレは急速に亢進しており、多くのアメリカ人に恐怖感すら感じさせるレベルになっている。インフレが日常の必需品にまで及び、生活不安を惹起しているのだ。

●生活必需品の高騰
 アメリカのインフレ率は6.2%だ。これでも十分に高い水準だが、日常の生活必需品はこれからさらに高騰する可能性が大きく、多くのアメリカ人を不安にさせている。たとえば、食品大手の「クラフト・ハインツ社」だが、来年の1月9日から全米で数百品目の値上げを予定していることを発表している。以下が値上げのリストの一部だが、すべての品目はアメリカ人が日常的に消費している食品だ。

 ・Jell-O(ゼリー)7%〜16%
 ・Bagel Bites(冷凍スナック)10%
 ・Cool Whip(トッピング製品)7%〜10%
 ・Kraft Big Bowl(冷凍マカロニ)20%

 我々にはあまりなじみのない食品かもしれないが、日本でいうとこれは豆腐、コンビニ弁当やおにぎり、カップ麺などのような食品が一斉に10%〜20%値上げのするようなものである。すでにアメリカでも日本でもガソリンなどのエネルギー価格が高騰しているが、食品のインフレはこれにもまして生活を直撃することは間違いない。
 ちなみに日本では、円安による悪いインフレの発生も危惧されているが、インフレ率はいまだに低い。日銀の推計によると、2021年で0%、2022年でも0.9%程度だ。
 もちろん特定の物品によっては価格がもっと上昇するものもあるだろうが、アメリカの水準とは比べものにならないくらい低い。まだインフレが生活不安を惹起するような段階ではないようだ。

●ローレンス・サマーズの警告
 こうしたアメリカの状況に強い警告を発しているのが、ローレンス・サマーズ元財務長官だ。サマーズはクリントン政権末期の1999年から2001年まで財務長官だった人物で、当時の巨額の財政赤字の削減に大きな功績を上げたことで有名になった。最近サマーズはいまの亢進するインフレがいずれコントロールが効かなくなるのではないかと警告を発し、ツイッターに頻繁に投稿している。

 つい最近サマーズは、バイデン政権の「連邦準備制度理事会(FRB)」は、インフレ抑制という課題を認識する必要があり、それが政策全般に反映されるべきだとツイートした。インフレに対抗するためには、関税の削減が最も重要な供給側の政策であると述べた。また、「FRB」が資産購入のテーパリングを加速することも提言している。
 さらに、次のように投稿し、インフレのコントロールに失敗すると、トランプが大統領として返り咲くことになると警告した。

「過剰なインフレとそれがコントロールされていないという感覚が、リチャード・ニクソンとロナルド・レーガンを当選させ、ドナルド・トランプを再び権力の座に就かせる危険性がある。」

●FBIの報告、国内テロの増加
 日本の主要メディアでは報道されることも少ないので日本にいると実感するのは難しいかもしれないが、SNSの投稿や多くのアメリカ人が日常的に読む記事、さらに筆者のアメリカの友人たちの話などを総合すると、いまアメリカでは国民の怒りがどうも沸点に達しつつあるように感じる。
 もちろんその原因はインフレの亢進だけではないだろう。移民政策の失敗、失敗したアフガン撤退、社会主義とも思えるようなあまりに巨額の財政支出、そしてなによりもアメリカ国民の約半数を占める共和党支持者の間ではいまだに共有されている2020年大統領選挙の不正疑惑である。このような要因にさらにインフレ懸念が加わることで、国民の怒りがバイデン政権に向かっている。特に怒りが共和党の支持者を中心に強いことは言うまでもない。

 そして、この怒りを背景にして、国内テロも増大している。この状況が日本では報じられることはめったにないが、最近FBI長官は国内テロの急激な増加について警告している。
 つい最近、FBIのクリストファー・レイ長官は、上院の委員会で、「確かに、国内テロ事件の件数は爆発的に増加している」と述べ、テロ攻撃の防止が「現在および予測可能な将来にわたってFBIの最優先事項である」と訴えた。そして、さらに次のように付け加えた。
「この15〜16ヶ月間で、国内テロ事件の捜査件数は約1000件から約2700件へと2倍以上に増加した。また、この脅威に対処するためのFBIの人員も前年の2倍以上に増強した。」

 レイ長官によると、この急増の一因は、1月6日に起きた連邦議会議事堂への攻撃で5人が死亡し、600人以上の逮捕者が出たことにあるという。そしてこの議会議事堂の包囲は、「政治的・社会的な目標を達成するために、政府に対して暴力を行使しようとする者がいることを示している」とレイ長官は警告した。
 また、国内テロの実行犯は単独行動者が多いという。彼らの多くはインターネットに大きく依存しており、そのため追跡が困難であると述べている。
「彼らは単独で行動し、過激化から行動に移るのが早く、簡単に手に入る武器をソフトターゲットに使うことが多いため、これらの攻撃者は点と点を結ぶことができない」とレイは委員会で証言した。
 また、この2、3年で、FBIはニューヨーク、ラスベガス、マイアミなど、アメリカの主要都市でのテロ攻撃を阻止することができたと報告した。

●暴力を容認する雰囲気
 このようにFBI長官も証言するように、国内テロは明らかに増えている。これらはバイデン政権、及び民主党への怒りに駆られた単独犯、ないしはグループによる犯行だ。このような国内テロが頻発する雰囲気は、「ニューヨークタイムス」のようなアメリカの主要紙などの記事でもよく分かる。次は「ニューヨークタイムス」の記事に掲載されていたものだ。

「先月、アイダホ州西部で開催された保守派の集会で、一人の青年がマイクに向かって「いつ民主党員を殺していいのか」と尋ねた。

 聴衆が拍手する中、彼は「いつになったら銃を使えるようになるのか」と言った。「この人たちを殺す前に、いったい何回選挙を盗むつもりなんだろう」。共和党である地元の州議会議員は、後にこの質問を「フェア」だと言った。」

 さらに、次のような話も紹介されていた。

「オハイオ州では、共和党の上院議員予備選挙の有力候補者が、マスクの着用やワクチンの摂取を強要する連邦政府の「暴政」に抵抗するよう、共和党員に向けてビデオを公開した。
「ホロコーストの生存者の孫であるジョシュ・マンデル候補は、9月に公開されたビデオの中で、「ゲシュタポが玄関に現れたら、あなたは何をすべきか知っている」と語っている。」

 ちょっと分かりにくいかもしれないが、相手はゲシュタポのような存在なのだから、殺害してもよいということだろう。

●共和党全体に広がる脅迫と暴力の容認
 しかし、バイデン政権や民主党への憎しみが巷でささやかれるのであればまだ分かる。日本でもネトウヨなどの間では類似した現象もある。しかしアメリカでは、共和党全体に脅迫と暴力を容認する雰囲気が広まっているのだ。
 連邦議会では、議員に対する暴力的な脅迫が、大統領選挙で大揺れに揺れた昨年の2倍になっている。共和党にもトランプ前大統領を支持しない議員はいる。彼らは侮辱、罵倒、死の脅しの標的になっているが、その多くは彼らを裏切り者として糾弾する同僚議員、ならびにトランプ支持の活動家によって行われている。

 議会から地方組織まで、共和党のかなりの層で暴力の脅しが日常化しているのだ。1月6日に暴徒が連邦議会議事堂を襲撃してから10ヶ月、敵対者に対してしばしば暴力的な言葉を使った前大統領の4年間を経て、共和党の右派は、自分たちを政権から追い出した人々に対抗するために、武力行使を正当化することをより公然と、より頻繁に語るようになっている。
 ワシントンの連邦議会では、礼儀作法がいまだに重視されており、同じ建物の中で長時間過ごす議員の間では、暴力的な言葉や脅迫的な言葉を使うことは、まだ珍しい。しかし、熱烈なトランプ支持の保守派の間では、国が武力衝突を必要とするような岐路に立っているという信念は広く共有されるようになっている。
 しかし、共和党本部にはこのような状況を抑制する気はないようだ。共和党では暴力を容認する傾向が広がるばかりだ。世論調査によると、共和党員の30%、極右のニュースソースを「最も信頼している」人の40%が、「真の愛国者」は国を「救う」ために暴力に頼らなければならないかもしれないと考えている。同じ調査を民主党員や無党派層でも実施したが、暴力への支持はほとんどなかった。
 ところで暴力の容認は、戦闘的、革命的な言葉で表現されることが多く、白人の人種的な恨みや福音派キリスト教の宗教的な熱情と絡み合っているとされている。最も活発な共和党の支持者は、自分たちの考えるアメリカ文化や社会における自分たちの居場所を守るために、聖戦に参加していると考えるようになっているようなのだ。

 こうした状況なので、共和党の指導者たちが暴力的な言動に反対する発言をすることはほとんどない。その理由は、暴力に反対すると党内の有権者のかなりの部分と対立することになるのを懸念しているからだ。
 このような状況の中で、共和党の現役の政治家でも暴力を容認する発言も相次いでいる。例えば、アリゾナ州選出のポール・ゴザール下院議員は、自分が民主党左派のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員を殺し、バイデン大統領に2本の刀を振り下ろすように改変したアニメの動画をツイートしている。

●分断では済まなくなる2022年から24年
 よほどの事件でもない限り、このような状況が日本で報道されることはないだろう。だから、日本の主要メディアを見る限り、こうした状況を我々は知ることはないかもしれない。しかしアメリカでは、水面下でバイデン政権と民主党に対する保守派の怒りは沸点に達しつつあるように見える。
 筆者は2018年に「2020年アメリカは分裂する!」(ヴォイス)という本を書いた。これは2017年当時のアメリカの水面下の状況から見て、2020年の大統領選挙はただでは済まず、分断から分裂に向かってもおかしくないような困難な時期にアメリカが入ると感じたので書いた本だ。たしかにこの本で予測したように、2020年の大統領選挙は大荒れに荒れて、2021年1月6日の連邦議会議事堂への熱狂的なトランプ支持者の突入となり、アメリカの混乱は深まった。
 いま、この本を執筆していた2017年当時に感じたレベルを上回るエネルギーが沸騰しつつあるのを強く感じる。おおらく2022年の中間選挙から2024年の大統領選挙にかけての時期は、2020年の大統領選挙が小さく見えるほど暴力的な対立が激化するかもしれない。いまのアメリカを見ていて、少なくとも筆者はそのように感じる。

●内戦の予測
 デビッド・キルカレン博士がという人物がいる。元米国防総省の対テロ戦争担当で、いまはオーストラリア、ニューサウスウェールズ大学の教授をしている。内戦の専門家である。キルカレン博士は、新型コロナウイルスのパンデミックが拡大し、大統領選挙でアメリカが混乱する2020年に、次のように発言していた。

「現在の状況は、私がイラク、レバノン、リビア、ソマリア、カンボジアで見てきたものと不穏に似ていると感じています。」

 キルカレン博士が最も心配しているのは、経済危機や健康問題、リーダーシップの失敗、重武装した過激派グループの拡散・拡大といった問題に加えて、3億丁の銃と数千億発の弾薬、そしてアフガニスタンやイラクから都市部や農村部での戦いの技術を持ち帰った300万人の米軍退役軍人がアメリカに溢れているという事実だ。

 そして、次のようにも言う。

「もし暴力が拡大したとしても、それはアメリカ南北戦争の再来とはならないでしょう。むしろ、関係するグループの数の多さ、地理的な重なり、緩い構造を考えると、もっと拡散することが予想されます。」

 そして博士は、1948年から1958年にかけてコロンビアを襲った10年に及ぶ無秩序な紛争を、これからアメリカを襲う内戦の「最も良い例え」として挙げている。この紛争は、反政府活動によって20万人以上のコロンビア人の男性、女性、子供が犠牲になった。

「首都ボゴタでの暴動に始まり、既存の都市と農村、左派と右派、階級と人種の違いによって引き起こされた暴力は、2つの主要政党が農村の支持者を動員してお互いのコミュニティを攻撃することで、農村に広がっていった。地方政府は警察を武器にして政敵を殺害したり追放したりした。過激派も加わり、暴力を長引かせて利益を得ようとする「紛争起業家」が現れた」と指摘している。

 アメリカで同様の紛争が発生した場合、武力紛争は、リベラル派と保守派のコミュニティが融合した「紛争地域」で起こることが予想されるという。

 これはキルカレン博士の2020年6月の発言と分析だが、昨年はこのような最悪の事態になるのがぎりぎりで回避された。しかし、怒りのエネルギーが沸点に達しつつあるいま、中間選挙が行われる2022年から大統領選挙が実施される2024年にかけて、このような状況にアメリカが陥る可能性は否定できないように思う。いまは極端に思える予測だが、来年になると現実味を帯びるかもしれないのだ。要注目だ。

21/12

怒りが沸点に達しつつあるアメリカ

21/11

働かない人々はどうやって生活しているのか?

21/10

これからも続く危機に日本は対処できるのか?

21/09

意図的に引き起こされたアフガニスタンの危機

21/08

分断が解消されないこの夏のアメリカ

21/07

国防総省関係者が明かすUFOレポートの内容

21/06

期待が持てる「組み替えタンパクワクチン」

21/05

アメリカの経済回復の背後で起こっていること

21/04

ワクチンの効力と副反応

21/03

明らかになる「グレート・リセット」の内容

21/02

トランプを大統領に押し上げた勢力

21/01

不正投票はあったのか?



バックナンバー
24/11

国際決済における脱ドル化と暗号通貨の使用

24/10

中国を見くびると痛い目にあう――オーストラリア国防省シンクタンクの最新レポート

24/09

岸田の立候補断念と総裁選における米国の圧力

24/08

トランプの暗殺未遂事件で何が起こっているのか?

24/07

クレイグ・ハミルトン・パーカーの日本予言

24/06

海外エコノミストの予想、円は170円まで軽く行く

24/05

イランとイスラエルの緊張で食糧危機になるのか?

24/04

中国経済の背後で起こる構造的な転換

24/03

日本でいったいなにが本当に起こっているのか?

24/02

トランプの当選で始まるホワイトハウス独裁制

24/01

世界の最先端テクノロジーの開発状況

23/12

これから正念場になるガザ戦争

23/11

憎しみの対象となるイスラエル

23/10

アメリカは本気だ、緊張するアジア

23/09

人間の概念を変化させる深層の動き

23/08

アメリカ経済は不況にならないのか?

23/07

明らかに文明の風は東アジアから吹いてる

23/06

歴史的に見た債務上限引き上げ問題の深刻さ

23/05

「LEAP/2020」が明らかにするドル覇権放棄の段階

23/04

ウクライナが和平案を受け入れる可能性

23/03

いよいよ始まったロシア軍の全面攻勢

23/02

「大辞職(The Great Resignation)」とはなにか?

23/01

米経済の実態、なにが起きているのか?

過去年

2023年バックナンバー

2022年バックナンバー

2021年バックナンバー

2020年バックナンバー

2019年バックナンバー

2018年バックナンバー

2017年バックナンバー

2016年バックナンバー

2015年バックナンバー

2014年バックナンバー

Profile:高島 康司(たかしま やすし)
高島 康司(たかしま やすし)

社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/

数霊REIWA公式サイト 佐野浩一 本物研究所 本物研究所Next C nano(ネクストシーナノ) 成功塾説法 舩井幸雄動画プレゼント 高島康司先生の「日本と世界の経済、金融を大予測」 メールマガジン登録 舩井メールクラブ 佐野浩一note