ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測

このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。

2021.10.01(第92回)
これからも続く危機に日本は対処できるのか?

 いま我々は未曾有の危機と転換の時代に生きているが、日本の政府や官僚機構はこれに対処できるのだろうか? 日本特有の意思決定システムを踏まえ、この可能性を検討してみる。いま我々が置かれた状況を概観し、今後の展望を得るためにも、今回のような俯瞰的な視点からの考察は必要になると思う。
日本のみならず世界全体もそうだが、現在我々は未曾有の危機と変化の時代にある。おそらくこの認識に異論を唱える人は少ないはずだ。多くの人々が共有する認識になっている。

 戦後の日本は、1971年の「ドルショック」と高度経済成長の終焉、1973年の「オイルショック」と低迷、1991年の「バブルの崩壊」とその後10年以上続いた不況、1994年の「阪神淡路大震災」、1995年の「オウム真理教事件」、1997年の「金融ビッグバン」による長期不況、そして2011年の「東日本大震災」といまも解決しない放射能漏れ事故というように、まさに危機と呼ぶことができる数々の困難に直面してきた。日本は時間をかけながらもこれらの危機に対処し、いまに至っている。
 しかし、日本では2020年初頭から始まった今回の新型コロナウイルスのパンデミックは、その期間の長さとそれが社会に与えるインパクトの大きさから見て、過去のどの危機の規模も上回っている。我々の社会は根本から変化してしまった。

●それでもまだ危機は続く
 これがどれほどの変化と危機なのか、すでに我々一人一人が直接体験しているので詳しく述べる必要はないだろう。だが、パンデミックから始まった一連の危機は、これからも続くと見て間違いない。
 連鎖する危機の合間に大きな出来事が起こらない一時的な静穏期もあるだろうが、しばらくすると予想外の出来事がまた続いて起こるはずだ。いま新型コロナウイルスの第5波がピークアウトしつつあり、以前よりも落ち着いた雰囲気になりつつあるかもしれないが、それはつかの間の平和に過ぎないだろう。これからどのような危機と変化がやってくるのか、いまの時点である程度予想できるものを見てみよう。
 もちろん、これから起こる危機がすべて予見可能かと言えばそうではない。多くの場合、危機とは、予想外の出来事の連鎖である。

 危機は、最近、日本国内の随所で頻繁に発生している突発的なゲリラ豪雨に似た性質をもっている。ゲリラ豪雨は、上空の大気が不安定になって発生した積乱雲が原因となって起こる。通常だと積乱雲は、10分くらい続く夕立を引き起こすだけで、一時間に200ミリというような集中豪雨なみのゲリラ豪雨の原因になることはない。だが、気象庁の予測を完全に裏切り、夏の熱波を冷やしてくれる夕立が、突如としてゲリラ豪雨に発展し、洪水を引き起こしたり、都市の交通を麻痺させる自然災害を引き起こしたりするのだ。危機に発展する多くの出来事も、これと同様の予測不可能な特徴を持つ。
 しかし、そうではあっても、危機に発展する可能性のある出来事くらいは、いまの時点でも列挙できる。以下である。

●新型コロナウイルスの第6波
 新型コロナウイルスは、2カ月半から3カ月の波で蔓延を繰り返す。それぞれの波は新しく出現した変異種の拡大によって引き起こされる。しかし、変異種の増殖が続くと遺伝子のコピーミスが重なり、一定の期間を経るとウイルスは自己崩壊し、蔓延の波は終息に向かう。しかし、しばらくすると新しい変異種による新たな波が始まる。

 いま日本ではデルタ株による第5波がピークアウトし、終息に向かっている。9月の第4週目くらいになると、全国的にも新規感染者数は大幅に減少した。その後、1カ月半くらいは感染拡大が押さえられた静穏期に入る。しかし、その後、しばらくするとミュー株やラムダ株などの新しい変異種が主導する第6波が始まる可能性が高い。
 すでに効果的なワクチンがあり、また特効薬の候補も開発されつつあるので、第6波が始まったとしても感染者数や死亡者数は多くはならないかもしれない。しかし反対に、ワクチンの作り出す抗体を回避する能力や、治療薬に反応しない能力などを新しい変異種が獲得すると、第6波は予想外に危険なものになる。感染者数は第5波を越え、重症化率も増加するかもしれない。いまのところこうなるとは断言できないが、可能性は否定できない。

●米軍のアフガン撤退以後の地政学的な変化
 新型コロナウイルスのパンデミックの他に危機の震源となる可能性があるのが、米軍のアフガン撤退以後の地政学的な変動である。
 米軍の拙速な撤退によるアフガニスタン政府と軍の崩壊、そしてタリバンによるアフガン全土の掌握は、予想外の出来事であったわけではない。アメリカの情報機関は、かなり以前からタリバンやアフガニスタン政府軍の動きを詳細にモニターしており、このような結果になることは予想できていた。アフガニスタンにおけるタリバン支配の容認は、バイデン政権の意図的な政策として実行されたものである可能性が高い。

 それは、1979年のアフガン紛争のときのように、イスラム原理主義勢力を支援することでソビエトを疲弊させたように、今度はアフガニスタンをテロの温床として混乱させ、周辺国である中国とロシアに関与させ、これらの国々の国力を消耗させるという意図的な戦略の可能性がある。これは、1979年に大統領補佐官であったズビグニュー・ブレジンスキーの立案したものを今度は中国を対象に適用するのだ。
 おそらくアメリカは、中国やロシアと直接的に対峙するのではなく、中ロが国力を消耗させざるを得ない国際環境を作ることで、これらの国々の拡大を抑止する戦略に転換した可能性がある。

 中国の「一帯一路」には6つの経済回廊がある。アフガニスタンは、「中国・パキスタン回廊」と、「一帯一路」のハブのひとつであるカザフスタンを通り、ウズベキスタンとトルコメニスタンを経由する「中国・中央アジア・西アジア経済回廊」という2つの重要な回廊のちょうと中間に位置している。これらの回廊は中国経済の重要な背骨のひとつになりつつある。
 もしアフガニスタンがテロの温床となり、これらの経済回廊の国々でIS系武装組織のテロが増加し、さらに不安定になったアフガニスタンから約260万人の難民がこれらの国々に流入すると、「一帯一路」の中核でもあるこれら2つの経済回廊は不安定化する。これは中国経済にとって大打撃だ。さらに、この地域の安定を維持するために中国が軍事介入するようなことにでもなれば、中国は国力を消耗することにもなる。

 また、中ロの国力消耗戦略に舵を切ったアメリカは、東アジアでも同じようなことをする可能性も否定できない。台湾海峡や南シナ海の情勢をあえて不安定にする事態を誘発して、中国にとって不可欠なシーレーンや「一帯一路」の一部を遮断し、中国を経済的に圧迫するのである。もちろん日本にとっても同じシーレーンは不可欠なので、これは大きな打撃となる。
 これは絶対にあり得ないと思うかもしれないが、同盟国であるアフガニスタンを見捨てたのと同じように、追い詰められたアメリカは、中国とロシアの拡大を抑止するためには、日本や韓国、そして台湾のような同盟国の利益を犠牲にする可能性もある。万が一でもこのような状況になれば、日本にとっては危機だ。

●政府の信用失墜、国民の分断、激しい抵抗
 いま欧米や日本などの主要な先進国では、国民の政府に対する信用が失墜しつつある。日本は新型コロナウイルスの蔓延を押さえ込むことに失敗し、全国各地で医療崩壊を引き起こす状況になっている。
 またアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなどの欧米諸国では、コロナの蔓延をなんとかいまは抑制できているものの、それを実現するために導入した厳しいロックダウン、移動制限、マスク着用の義務化、そしてワクチンパスポートの導入などの強い処置は国民の強い反発をまねき、暴動のような激しい抵抗運動を引き起こしている。
 このような状況から、欧米諸国や日本の政府は国民の信頼を失いつつある。この結果、かなりの数の国民は容易には政府の指示と方針には従わない状況になっている。これから国民の怒りが爆発し、政権が不安定化する国々も出てくるかもしれない。日本では、目に見える形の国民の怒りの爆発はないが、政府の信用は低く、感染拡大防止のための行動制限の呼びかけにも反応しなくなっている。
 政府へのこうした不信感といらだちは、11月にもやってくる可能性が高い第6波には、さらに表面化することだろう。政府がどれほど自主的な行動制限を国民に訴えようとも、また法的な強制力のある欧米のような強いロックダウンを導入しても、政府への信頼を失った国民はこれを無視するだろう。その結果、第6波のパンデミックはさらに拡大し、深刻になるかもしれない。

●日本政府はこうした危機に対応できるのか?
 危機的な状況を引き起こしかねない出来事はほかにもたくさんあるだろうが、当面問題となる可能性が高いものだけ列挙してみた。これらはどれも、日本を危機的な状況に追い込む出来事だ。幸運にもこれらはまったく起こらないかもしれないし、逆に、いくつかの危機が連鎖して一緒にやってくることもある。いずれにせよ、そうした状況になったとき、日本政府と官僚機構は危機に適切に対処できるのだろうか?
 新型コロナウイルスのパンデミックに対する日本政府の対応は、お世辞にもほめられるものではない。第3波の終息直後には蔓延拡大の可能性を無視し、「GOTOキャンペーン」を強行した。その結果、第4波の新たな蔓延を引き起こした。

 さらに、第5波の感染拡大が続き緊急事態宣言を出しながらも、オリンピックとパラリンピックを開催した。これはお祭り騒ぎのなかで人流の抑制をうったえるという矛盾したメッセージを国民に送ったため、人流は抑制されず東京は1日の感染者数が5000人を越えるという最悪な事態になった。
 しかし、そうした状況でも、各国がいち早く作った野戦病院のような緊急医療施設は一向に建設されなかった。新規感染者と重傷者の拡大で医療機関の収容能力は限界に達し、各地で医療崩壊が起こった。多くの感染者が自宅療養を強いられ、死亡している。
 このような日本政府の対応を見ると、すべての対策が後手後手になり、オリンピックをやりながら感染を拡大させるというような、チグハグな対応しかできていないことは明白だ。

 このチグハグの対応は、アフガニスタンへの自衛隊機派遣でも見られた。C-2とC-130という大型の戦術輸送機を2機も派遣しながらも、邦人1人とアメリカに依頼されたアフガン人14人だけを乗せ、退避するという始末だった。現地の日本大使館で働く500人を越えるアフガン人とその家族は、置き去りにされた。

●なぜここまでチグハグなのか?
 このように、危機が起こったとき、日本政府の対応はあまりに遅く、それもチグハグで、まともに対応しているとは到底思われない。日本の政治や行政の機構は正常時のルーティーンワークには対応可能だが、日常業務を逸脱する危機的状況には、ほとんど対応できていないのが現状だ。
 しかし、それにしてもなぜこれほど対応がチグハグで、遅いのか? 中国がやったように、野戦病院などなぜすぐに作れないのだろうか? こうしたあまりにまずい危機対応の原因はなんだろうか?
 その原因ははっきりしている。日本の権力中枢で戦前から続く意思決定のシステムである。それは以下のような特徴を持つ。

1)強いリーダーを排除するコンセンサス主義
 日本の意思決定システムは、強いリーダーシップを排除する合議制が基本だ。そのため、権限をリーダーに集中する危機対応型の計画がもともと存在しない。そのため、危機が起こると関係組織や機関の担当者が集まる調整から対応が始まる。この調整過程では、それぞれの関係機関の利害や部分的な合理性に基づく議論が行われ、まとまった結論が出せない状態に陥る。その結果、すべての関係機関が納得できる抽象的で中身のない結論になる。対立した議論の両論併記と、具体的な方針の非決定が一般的だ。

2)責任回避の構造
 関係機関の担当者による合議制なので、責任を取るものがいない。これは司令塔になる中心がないということなので、問題が発生すると迅速な対処ができなくなる。問題が発生するたびに、関係機関の担当者による調整と合議が始まる。

●危機の対応は困難
 これが日本特有の意思決定システムである。危機の状態では、司令塔に権限を集中し、その指示で一斉に動くことが必要になる。しかし日本の合議制的なシステムでは、日常的に発生する小さな問題には対処できるかもしれないが、危機の対応は困難だ。関係機関のコンセンサスを取るための調整と合議に時間がかかり、結論が出るころには危機はもっと大きくなっている。また結論が出たとしても、関係機関の利害を合算した抽象的で中身のないものになっていることが多い。
 日本政府や官僚機構のこのような意思決定システムの弱点が露呈したのが、新型コロナウイルスのパンデミックが初めてではない。この構造はすでに戦前から存在しており、日本が危機に陥ったときにはいつも、いわば血栓のように危機の早期解決の障害となってきた。
 その具体例を上げればきりがないが、たとえばバブル崩壊後、銀行が抱える膨大な不良債権の処理問題がある。この処理ができないと、資金難に陥った銀行による企業への貸し渋りや貸し剥がしが横行し、企業倒産の増加から不況が長期化する。当時の日本政府が不良債権の買い取りを行う「整理回収機構」を立ち上げたのは、バブル崩壊から5年も経った1996年である。2008年の金融危機のとき、アメリカの中央銀行であるFRBは、1年以内に銀行の不良債権を買い取り、危機を一気に克服した。日本の対応とはあまりにも対照的だ。

●危機に対応できず、国民に投げ返す
 上記したような危機、例えば新型コロナウイルスの第6波がやってきたとき、日本政府の危機対応能力は限界に達するのではないだろうか? もし新たな変異種による第6波の感染が深刻であった場合、どうなるのだろうか? おそらく政府は、強制的なロックダウンなどの強い法的処置の導入に向けて動くことだろう。
 しかし、すでにあまりにもチグハグで後手後手の対応をこれまで見せつけられてきた国民は、もはや政府を信頼しないだろう。政府がなにを言っても従わないかもしれない。すると、それがまた蔓延をさらに拡大させ、危機が深刻化するというサイクルに入る。政府はそれに対処しようとするが、やはり対応は遅れ、チグハグな方針しか出てこない。
 このような状況が続くと、最後には政府は危機への対応をすべて国民に投げ返してくる可能性もある。つまり、「自分たちでなんとかしてください」ということだ。

●個人を強くする このような状況を生き延びるためにはどうしたらよいのだろうか?
 その答えは明白だ。我々個々人が自己の本来的な力を強化して、困難に対処することだろう。おそらく人間は捨てたものではない。未開拓の膨大な力と能力が、個々人の中に眠っているはずだ。その未知の力をたたき起こし、困難に対峙することが求められる。ではこの個人の力とはなんであり、それを開拓するためにはどうしたらよいのだろか? それはまた別の記事にでも詳しく書くことにする。

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Profile:高島 康司(たかしま やすし)
高島 康司(たかしま やすし)

社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/

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