ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測

このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。

2020.06.01(第76回)
影響力を増す中国と漢方薬外交

 6月になった。やっと各国のロックダウンや行動規制が段階的に解除され、経済活動が再開される状況になってきた。政府による規制解除の根拠になっているのは、「実行再生産数」である。これは一人の人間が何人の人間に感染させるか表した数値で、1.0を下回ると感染は収束に向かうと考えられている。これは一人が感染させる人数が一人以下だということだ。各国で「実行再生産数」の低下が顕著になってきた。

●経済活動を再開して本当に大丈夫なのか?
 しかし、このよのような状況で実行再生産数が1.0を切ったので規制を緩和し、経済活動を再開して大丈夫なのだろうか? おそらく1日当たりの感染数もかなり減少し、回復率が上昇している日本のような国は段階的に規制を解除し、経済活動を再開してもよいかもしれない。
 しかし、イギリスやアメリカ、スエーデンのような、いまだに感染者数が増加しており、回復率は低く、致死率も高止まりしている国々では、実行再生産数の低下だけで経済活動を再開すると、感染爆発の第2波や第3波が襲う可能性は非常に高いように思う。
 ましてや韓国や中国では経済活動を再開したとたん、落ち着いていた感染者数はすぐに増加に転じた。ソウルのナイトクラブで発生した集団感染は100人を越えたし、中国の武漢市でも新たな感染者が発見された。感染力があまりに強く、コントロールするのが極めて困難なウイルスだ。

●アジアでは収束し、欧米で新たな感染爆発か?
 一方、新型コロナウイルスは高温多湿の環境では活動が大幅に衰えることが確認されている。これは「米国家安全保障省」の記者会見で確認された。事実、高温多湿の東南アジア地域では、シンガポールのように外部から感染者が入国してこない限り、感染者数は少なく、致死率や患者数もかなり低く、回復率は高い。もしそうであるなら、夏になるにつれ日本を含むアジア圏では、新型コロナウイルスの蔓延は収束に向かうことだろう。
 また、かつてほどではないにしても、いまだに感染者数が増加し、致死率が高く回復率の低いアメリカやイギリスなどの欧米諸国では、早期の経済活動の再開が引き金となり、新たな感染爆発が起こるのではないかと思う。6月にはそうした状況になるかもしれない。

●地政学的戦略としての治療薬
 さて、こうした状況で各国が影響力を拡大させる手段となり得るのが、新型コロナウイルスの治療薬である。いまアメリカは、新型コロナウイルスのワクチンとしてエボラ出血熱の治療用に開発された「レムデシビル」を鳴り物入りで採用した。日本も前例のないスピード承認で、国内の医療機関で使えるようになった。軽症用の「アビガン」とともに、「レムデシビル」は重症用の特効薬となることが期待されている。
 一方中国は、国内で「レムデシビル」の治験を実施した結果、効果がなかったとした論文をイギリスの著名な医学誌、「ランセット」に発表した。中国は独自のワクチンの研究を続けており、その供給を政治的な影響力を拡大するための手段として使う可能性が高い。
 これからは、新型コロナウイルスの特効薬を開発できた国がその供給を独占し、地政学的に強い立場になることは間違いない。たとえば中国が、有効な特効薬の開発に成功し、アメリカが中国からの供給に依存しなければならない状況になると、トランプ政権といえども中国に対しては強く出ることは難しくなるだろう。さらに中国は、各国へ特効薬を供給することによって、政治的な影響圏を一挙に拡大することだろう。
 特に、経済活動の再開でこれから新たな感染爆発が起こりかねない欧米の状況では、中国による特効薬供給の独占は、中国が影響圏を一気に拡大させる格好の手段となるだろう。

●手段としての漢方薬
 もちろんいま、中国やアメリカでは新型コロナウイルスのワクチンの開発は急ピッチで進んでいるが、すでに中国は、有効性が確認された薬の供給によって、各国への政治的影響力を拡大する動きに出ている。その有効な薬とは、漢方薬である。
 3月25日、アメリカの著名な研究誌、「薬理学研究」に研究者による審査である「査読」済みの論文が掲載された。「COVID-19のための中国の伝統的な治療薬」という題名の論文だ。著者は中国の研究者だ。この論文によると、漢方薬を処方された102人の患者では、33%の治療効果の上昇が見られ、中程度から重症の患者の27.4%に症状の改善があり、入院期間が平均で2.2日ほど短縮されたという。以下のサイトで論文を見ると、下のほうに肺から炎症が次第に消える画像がある。画像のaからdにかけて、炎症が小さくなってゆくのが分かる。

 Traditional Chinese medicine for COVID-19 treatment
 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7128263/

 この論文が発表された後、「査読」、「未査読」を含め漢方薬の新型コロナウイルスの有効性を証明した論文が現在まで13ほど書かれている。

●清肺敗毒湯
 3月25日に発表された論文で紹介されたのは、「清肺敗毒湯」という複数の漢方をミックスしたカクテルだった。これは以下の漢方でできている。すでに日本でも報道されているので、周知かもしれない。

 ・麻黄
 ・甘草根
 ・杏仁
 ・石膏
 ・桂皮
 ・タクシャ
 ・タマチョレイタケ(サルノコシカケ科の菌類)
 ・ビャクジュツ (白朮 / オケラ)
 ・マツホド(茯苓 / ブクリョウ)
 ・サイコ (柴胡)
 ・ショウキョウ
 ・シオン (紫□)
 ・フキタンポポ(カントウカ / 款冬花)
 ・やかん (射干片 / ヒオウギという植物)
 ・サイシン (細辛)
 ・サンヤク (ヤマノイモ)
 ・キジツ (ナツミカン)
 ・陳皮 (オレンジの果皮を干したもの)
 ・パチョリ(シソ科の植物)

 日本ではこのようなカクテルは手に入らない。だが、「麻杏甘石湯」、「胃苓湯」、「小柴胡湯加桔梗石膏」の3つを同時に服用して代用することができるとされている。これは日本の漢方薬店でも手に入るようだ。
「清肺敗毒湯」は2月17日に、「中国国家中医薬管理局」が正式に発表したものだ。この機関の独自な調査では、10省の57に上る指定医療機関で701人に処方したところ、130人が退院、268人に改善が見受けられ、212人では症状の悪化が止まり安定したという。そのうち351症例が詳しく分析され、高熱で苦しんでいた112人の患者のうち51.8%が常温に戻り、咳に苦しむ214人の46.7%が短期間で改善したと報じている。この結果は、3月25日の論文やその他の論文の内容と一致している。

●漢方薬の供給
 もちろん、「清肺敗毒湯」を中心とした中国のこうした臨床研究に対して批判がないわけではない。イギリスの著名な自然科学誌、「ネイチャー」は、副作用などを発見する十分な臨床試験が行われていないとして、安易な処方は危険だとしている。徹底的な治験の実施を要求している。

 しかし中国は、有効性が確認された「清肺敗毒湯」などの漢方薬の供給を一気に増大させている。この供給は無償援助として行われることもあれば、また普通に輸出されることもある。
 たとえば、漢方薬の製薬会社である「中国中約控股有限公司」は、イタリアとフランスに5万6800ドル分の新型コロナウイルスの漢方薬を無償で送った。さらに、やはり漢方薬の製薬会社である「貴州同済堂薬房連鎖有限公司」もフランスに1万8900ドル相当の漢方薬を寄贈している。また「石家荘以嶺薬業股分有限公司」は、イラクに24万9200ドル相当の新型コロナウイルスに効果がある漢方薬を無償で援助した。さらに「北京同仁堂国薬有限公司」は、シンガポール、トロント、そしてソウルなどの諸都市に相当数の漢方薬を寄贈している。

 もちろん、こうした無償援助だけではない。「石家荘以嶺薬業股分有限公司」は、新型コロナウイルスの肺炎も含めた気管支系の疾患の治療薬、「リャンハクイグエン(Lianhuaqingwen)カプセル」をタイで販売する許可を、タイ政府厚生省から得た。これはブラジル、インドネシア、カナダ、モザンビーク、そしてルーマニアに続く認可である。

●効果が分かると治療の切り札になるのか?
 まだ漢方薬は、特に欧米諸国では、新型コロナウイルスの症状を緩和する特効薬としては認められているわけではない。アメリカやイギリスのような国々は厳しい治験を求めており、その結果が出ない限り、すぐには認可するつもりはないようだ。
 だが、さまざまな国々で漢方薬の有効性は確認され、場合によっては特効薬のひとつとして認められるなら、漢方薬の世界的な需要は非常に高まるに違いない。早期の経済活動再開が引き金になり、6月に入ると欧米諸国ではパンデミックの第2波が発生する可能性はかなり高いように思う。そうした状況で、漢方薬の有効性が広く認識されているなら、まさに中国が新型コロナウイルスの治療法の一角を制することにもなる。
 欧米の大手製薬会社には、漢方薬の製造のノウハウはない。中国の実質的な独占状態である。もし中国が漢方薬を政治的な影響力を拡大するための手段として使うのなら、それは相当に強力な武器になるはずだ。パンデミックの第2波の到来は、この方向の動きを加速することだろう。

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Profile:高島 康司(たかしま やすし)
高島 康司(たかしま やすし)

社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/

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