ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測
このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。
11月になった。今回は新型コロナウイルスの危険な変異についてだ。
日本では「Go Toキャンペーン」の効果もあり、街には人が溢れ、新型コロナウイルスのパンデミック以前の状態に戻ってしまったかのような感じだ。たしかに、致死率はかなり低下し、重症患者の発生件数も大きく減っている。感染はじわじわとは拡大しているものの、経済の全面的な再開も時間の問題ではないかという雰囲気になっている。
一方、世界の他の地域では状況はまったく異なる。特にヨーロッパの状況は深刻だ。フランスやイギリス、それにスペインでは、新たに確認される感染者が1万人を超える日が続き、今年の春を上回る水準となっている。新たな規制を導入する動きが広がりつつある。
たとえばフランスでは、10月10日、新たに確認された感染者が2万7000人近くに上り、政府もフランスやヨーロッパがすでに「第2波」の中にあるとして、感染予防策を徹底するよう市民に最大限の注意を喚起している。
また、1日の感染者が10月上旬から1万人を超えたイギリスでは、ジョンソン首相は地域の感染の状況に応じた対策を導入することを発表し、最も感染が深刻なリバプールやその周辺では、パブやバーの営業を事実上、禁止した。
さらに、ヨーロッパで感染者が最も多いスペインでも1日の感染者が1万人を超える日が続いている。首都マドリードなどでは10月初めから通勤などを除いて自治体をまたいだ移動が禁止されている。このようにヨーロッパ各国は、経済活動への影響を見極めながら再び厳しい規制の導入を余儀なくされている現状だ。
●再感染の危険性と空気感染
そのようななか、新型コロナウイルスの新しい特性も発見されている。その一つは再感染の可能性だ。一度新型コロナウイルスに感染すると抗体ができるので、再び感染はしにくいと見られていたが、実はそうではないことが証明されるケースが多数報告されている。新型コロナウイルスの抗体の持続期間は予想以上に短く、感染から回復後、比較的短い期間で再感染する可能性があることが分かった。
さらに、再感染すると重症化するリスクが高まることが報告されている。10月12日、英医学雑誌の「ランセット」に、米ネバダ州在住の25歳の男性が再感染した例が報告された。新型ウイルスの感染症を再び発症した際、肺が十分な酸素を体内に取り込めず、入院治療が必要になったという。
男性には、新型コロナウイルスの影響をとりわけ受けやすいとされる基礎疾患や免疫欠如はなかった。「ランセット」に掲載された研究では、新型ウイルスへの感染によって獲得された抗体の持続期間に疑問を提起している。予想よりも短い可能性が高い。
また、新型コロナウイルスの空気感染の可能性を示す発表もある。10月5日、「米疾病対策センター(CDC)」は、新型コロナウイルスの感染経路に関する指針を再び改訂し、空気感染の可能性に関する情報を追記した。
「CDC」の声明では、「限定的かつ特異な状況において、新型コロナウイルスの保持者から6フィート(約1.8メートル)以上離れていた相手にウイルスが感染した」という報告や、新型コロナウイルス陽性者がその場を離れた後に他人が感染したという報告も、一部に存在することを認めた。
さらに、「そうした状況では、換気の悪い密閉空間で感染が発生しており、歌や運動など呼吸が増える活動を伴うことも多かった。そうした環境や活動が、ウイルスを運ぶ粒子の蓄積する原因になった可能性がある」と指摘している。
これは重要な発表だ。一般的に新型コロナウイルスは飛沫を通して感染が拡大するので、人との距離は2メートルのソーシャルディスタンスを維持すれば感染の危険性は低いと言われている。しかし「CDC」が発表したように空気感染するとするなら、この2メートルのソーシャルディスタンスで、感染の危険性が完全に回避されるわけではないことを示している。これが事実なのであれば、十分な注意が必要だ。
さらに、「オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)」の調査によると、紙幣や携帯電話のスクリーン、ステンレススチールなどの表面に付着した新型コロナウイルスは28日間生存することが分かったという。これまで考えられてきたよりも、はるかに長く生存する可能性がある。ということは、ものの表面に付着したウイルスから感染する危険性があることを示している。これも注意しなければならないだろう。
●抗体が無効な新型コロナウイルスの変異型
このように、新型コロナウイルスの新たな危険な特徴が毎週のように発見されている。しかし、そうしたなかでも日本ではほとんど報道されていないのが、新型コロナウイルスの変異に関する情報だ。非常に危険な変異型が発見されているのだ。
ちなみにいま、もっとも世界的に拡散している新型コロナウイルスの株は「D614G」という型だ。これは中国、武漢で拡散した「D614」から変異し、2月にヨーロッパで見つかった変異型である。さらにこの「D614G」にはさまざまな変異が起こり、いまでは100を越える変異型のバリエーションが発見されている。
最近「北京大学健康科学センター」と「北京微生物学および感染症センター」は、自然に変異した80の変異型と、このコロナウイルスが宿主の細胞に侵入するために使うスパイクタンパク質が変化した26の変異型を詳しく調査し、抗体に耐性のある変異型の特定に成功した。つまりこれは、新型コロナウイルスに対する抗体が有効ではない変異型の存在を特定したということだ。
これらは、新型コロナウイルスの感染力と中和抗体に対する反応性に重大な影響を与える可能性のある変異だという。それらは「N234Q」、「L452R」、「A475V」、「V483A」、および「F490L」などだ。以下がこの論文に掲載されている新型コロナウイルスの変異型の図だ。ぜひ見てほしい。
http://www.yasunoeigo.com/heni
ちなみにこの図では変異型は円や五角形で示されている。それに書き込まれた英数字は、それぞれの変異型を識別するための記号である。そしてこの図では、それぞれの変異型の特性が4つの色で表されている。以下である。
水色:感染力の増大
黄色:感染力の減少
桃色:中和抗体に対する感度の上昇
緑色;中和抗体に対する感度の減少
ところでここにある「中和抗体」とは、ウイルスなどの抗原に結合してウイルスの活動を減退させたり、消失させる抗体のことである。「中和抗体に対する感度の上昇」とは、体内に侵入した新型コロナウイルスが抗体に反応して不活発になることを示している。また反対に「感度の減少」とは、ウイルスが抗体に反応しなくなり、活動性を維持することを表している。
そして、この図で注目すべきは水色と緑色で表示された変異型である。前者は感染力が強化された変異型で、後者は抗体に反応しなくなった変異型を表している。これを見ると、すでに8つの変異型では感染力が強化され、10の変異型では抗体に対する反応が弱くなっていることが分かる。つまり、抗体が効かなくなっているということだ。また、「D614+I472V」という変異型では、感染力が強化され、さらに抗体にも反応しなくなっている。
●いま拡散している変異型
さらに、抗体に反応しない危険な変異型に感染するケースがアメリカやヨーロッパで増えていることが明らかになった。それぞれの変異型の拡散は次のようになっている。
・V483A変異型:
アメリカでは、今年の5月の時点では感染者の0.1%程度にしか検出されなかったが、9月には3.7%がこの変異型に感染している。このペースで拡大すると、12月には50%の感染者が、この抗体に耐性を持つ変異型に感染していてもおかしくない状況だとしている。拡大が予想される地域は、アメリカ中西部と北東部になると予測されている。
・A475V変異型:
これも抗体に耐性を持つ変異型のウイルスである。5月の段階ではイギリスとアメリカでこの変異型の感染者は0.1%にしか発見されていないが、どんどん拡大している恐れがある。
・I472V変異型:
これは、もっとも抗体の耐性が高いとされる変異型だ。やはりアメリカとヨーロッパで拡大していることが確認されている。さらに「I472V」は、免疫系のいわば司令塔にあたるT細胞が反応しない可能性が高いとも指摘されている。これから研究論文が公表されるようだが、これは免疫系をすり抜けてしまう変異型なのかもしれない。
さらにこれだけだけではない。インドのアクシャット・バラジ博士による調査では、インド西端にあるグジャラート州では、17の変異型がさらに発見されている。これらの変異型は感染力が強く、また強い抗体耐性を持つという。
また、「IBM TJ ワトソン研究所」のタカヒコ・コヤマ博士が「世界保健機構(WHO)」に提出した研究では、強い抗体耐性があるだけではなく、有力な治療薬の「レムデシビル」や「ファビピラビル」が効かない変異型も発見されている。
https://www.who.int/bulletin/volumes/98/7/20-253591/en/
「レムデシビル」や「ファビピラビル」は新型コロナウイルスの特定のタンパク質を攻撃するが、このタンパク質が変異してしまったというのだ。
●日本ではどうなのか?
いま新型コロナウイルスにはこのような危険な変異型が出現している。強い抗体の耐性があると同時に、既存の治療薬が効かない変異型だ。新型コロナウイルスは変異が速いウイルスであることが知られているが、やはり気になるのは日本でこうした変異型の拡散があるのかどうかという点だ。日本の主要メディアなどではまったく情報は出ていないが、実際はどうなのだろうか?
また、抗体に耐性のある変異型の出現は、抗体の生成によって感染を予防するワクチンが効かなくなることを意味する。有効なワクチンの開発よりも、新型コロナウイルスの変異のスピードのほうが速いのかもしれない。だが、抗体の耐性があり、これまで以上に強い感染力を持つからといって、かならずしも重症化するリスクが高いことを意味するわけではないかもしれない。また、致死率が必ず上昇するというわけではないだろう。
だが、いまヨーロッパで始まった第2波のパンデミックのウイルスは、この変異型ではないのか? 感染力が強く、高い抗体耐性を持つ変異型だとしたのなら、いまのヨーロッパの感染拡大のスピードも説明できるかもしれない。
いずれにせよ、アメリカにおける変異型の拡大ペースから見ると、12月には50%の感染者が抗体に耐性を持つ変異型に感染していてもおかしくないという。ということは、12月には新たなパンデミックの第2波がアメリカを中心に始まる可能性もある。
日本でこうした変異型の蔓延は本当にないのだろうか? もし日本でもその存在が確認できるのなら、我々も本当に注意しなければならないだろう。
新型コロナウイルスに関してはさまざまな意見はあると思うが、気を緩めることなく、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの維持、手洗いとうがいの励行という当たり前の予防策を実施すべきだろう。警戒は怠ってはならないと思う。
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社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/