ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測

このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。

2020.10.01(第80回)
アメリカ国内で本当に起こっていること

 10月になった。米大統領選挙が間近だ。そうしたなか、アメリカ国内の分断を伝えるニュースがあふれている。いまだに抗議運動は全米の主要都市で行われている。西海岸のポートランドやシアトル、また中西部のシカゴや東部のニューヨークなどの大都市などでは、「ブラック・ライブス・マター(BLM)」運動の激しい抗議運動は収まる気配はない。

 一方、そうしたなかでもアメリカ経済の順調な回復を伝える報道も目立つ。4月には14.7%に悪化していた失業率は毎月改善し、8月には8.4%にまで低下した。アメリカではいまだに新型コロナウイルスの拡大は続いているものの、経済は比較的順調に改善しているようにも見える。大統領選挙も終わり、ワクチンが開発されてパンデミックが収束する2021年ころには、アメリカの国内の分断と混乱も収束し、もとの状態に戻るのではと期待する観測も出てきている。特にそのような観測は、日本では強いようだ。

●食べられない5000万人とウツの激増
 しかし、詳しく調べると、そのような楽観的な観測が吹き飛んでしまう状況が見えてくる。たしかにアメリカの8月度の失業率は8.4%に改善しているが、実際には仕事があっても食料の確保が困難な人々は確実に増えている。米大手経済紙の「ブルームバーグ」によると、食料の確保ができない人口は今年の年末までに5000万人を突破すると予測している。

 これは2019年と比べると45%の増加だ。全米の人口は3億2000万人程度だから、これは総人口の15.6%にも上る。さらに「ブルームバーグ」の調査では、この数値は今後悪化する見込みがあるとしている。

 全米各地の大都市圏には、NPOなどが運営するフードバンクがあり、困窮している人々に週3回程度無料で食料を配給しているが、これまでにはない光景が見られるという。配給を受けるのに6時間程度並ばなければならない混雑、BMWやトヨタ、ベンツなど比較的に高額な車の車列、そしてホワイトカラーのサラリーマンを含め、あらゆる職業の人々が殺到しているのだ。
 これまでフードバンクにやってくるのは貧困層に限られていたが、新型コロナウイルスのパンデミック以後は、明らかに中間層が増えている。これはかつては見られなかった光景だ。リーマンショックをはるかに上回っている。これは全米各地の大都市圏で見られる光景になっている。
 それとともに、こうした状況に精神的に対応できない人々も急速に増えている。「デイリーメール」などが掲載した調査によると、ウツの症状に苦しむ人々は、過去8ヵ月で3倍になっているという。

●警官の死亡と治安悪化の悪循環
 こうした深刻な経済的困窮を背景に起こっているのが、止らない治安悪化の悪循環だ。その循環の起点になっているのが、警官の死亡とそれを背景にした警官の相次ぐ辞職だ。
 欧米や日本の主要メディアでは、警官に殺害されたアフリカ系アメリカ人と、それが引き金になって激しくなる「BLM」運動だけに注目が集まる傾向にある。
 たしかに、ビデオに撮られた警官によるアフリカ系アメリカ人の殺害の動画は、警官の過剰な暴力の凄まじさを現しており、激しい怒りが込み上げてくる。2020年に入って、すでに全米各地で123人のアフリカ系アメリカ人が殺害されているのだ。
 しかし、見過ごしてはならないのは、警官の死亡者数である。2019年に任務中に死亡した警官は147人であったが、2020年はすでに9月の時点で188人が任務中に死亡している。すでにこの時点で、昨年1年間よりも22%も任務中の死亡者数は多い。年末までにもっと死亡者数は増えるだろうから、年間の増加率はずっと高くなるはずだ。
 この死亡者数には、任務中に新型コロナウイルスに感染して死亡した警官の数も入っている。大規模なクラスターが発生した現場にも行かなければならないので、警官は感染リスクが高い職業だ。しかし、そうした死亡者数を除外しても、やはり今年は殺害された警官の数は多い。
 この理由は明らかだ。「BLM」運動が席巻するいまのアメリカの特に大都市圏では、警官が憎しみの対象になっているからだ。警官は襲撃され、殺害されるケースも増えている。

●警官の辞職が後を絶たない
 こうした警官が憎しみの対象になり、死亡者数が増加するなか、全米で警官の大量の辞職が続いている。たとえば9月9日には、ニューヨーク州、ロチェスター市の警察所長以下51人の警官すべてが辞職する意思を表明し、市当局を驚かせた。
 ロチェスターは、3月に起こったアフリカ系アメリカ人の警官による殺害が8月になって公表され、「BLM」の大規模な抗議運動が起こっている都市だ。また西部のコロラド州では、8月までに少なくとも200人の警察官が辞職している。
 もちろんこのような警察官の辞職は、「BLM」運動の高まりのなかで起こっている警察署の予算削減も大きく影響している。「BLM」運動の目標のひとつは警察予算の大幅削減であり、この要求を受け入れ、実際に予算の削減に踏み切る都市も増えている。ニューヨークやシカゴ、ミネアポリスやシアトルなどがそうした都市だ。予算削減のあおりで警察官が解雇されているのだ。

●止まらない治安の悪化
 警官の辞職が相次ぐなか、大都市圏の治安の悪化が止らなくなっている。これを象徴する出来事が、8月28日に首都ワシントンで起こった。この日はホワイトハウスで、共和党の全国大会がオンラインで開催されていた。共和党のランド・ポール上院議員は、大会に参加した後、ホワイトハウスを出て、2ブロック先にある滞在中のホテルに向かった。
 しかし、1ブロック歩いたところで「BLM」のデモ隊に取り囲まれ、襲われそうになった。幸いにも近くにいた警官の保護でホテルにたどり着いたものの、ホワイトハウスを出たところでこのような出来事が起こるのは、前例がないとしている。
 そして、全米の犯罪率を見ると、治安は悪化する傾向にあることが分かる。「ニューヨークタイムス」などの調査によると、新型コロナウイルスによるロックダウンの影響で人が出歩かなくなったことから、犯罪件数そのものは2019年比べて5.3%ほど減少した。しかしながら、殺人だけを見ると16.1%も増加している。これは5月までの集計値だ。
 「BLM」運動が全米に拡大する前の数値だ。運動が全米に拡大し、暴力の応酬が激しくなっている8月までのデータでは、犯罪件数も殺人件数もずっと増えているのではないかと見られている。

 このような状況のため、これまでないような事件が相次いでいる。9月7日、シカゴ市警は30人の地元のギャング団が、警官が銃を出したら射殺するようにとの指令をメンバーに出していることを明らかにした。これは、警官を射殺する場面をビデオで撮り、全国的に注目されることが目的だという。
 シカゴでは、すでに今年だけで51人の警察官が銃撃されている。シカゴ市警によると、市の各地で無法地帯が広まっているという。また先週末には、シカゴ南部にある人気のパンケーキ屋が襲撃され、50人が銃撃される事件が起こった。このような事件は大都市圏で増加している。

●自警する市民と中心から逃げ出す市民
 当然、治安の悪化が懸念される状況で売れ行きがが好調なのが銃だ。FBIの発表によると、2019年8月に比べ、今年の8月の銃の売れ行きは57%も増加したという。そのうちの64万人が初めて銃を購入した人々だ。このため、大都市圏を中心にした銃のトレーニングセンターは満杯で予約が取れない状況だ。
 また、こうした大都市圏の中心部の治安の悪化が引き金となり、ある現象が起こっている。それは、富裕層の郊外への引っ越しラッシュだ。ニューヨーク、ミネアポリス、シカゴ、サンフランシスコ、シアトル、ポートランドなど「BLM」の抗議運動が激しい大都市圏では、都市の治安の悪化を恐れた富裕層が、市内から安全なエリアへと引っ越しのラッシュが始まっている。引っ越すエリアは周辺の異なる州が多い。ニューヨークなどでは、アメリカの引っ越し業者、「U-Haul」に予約が殺到している有り様だ。
 この結果、ニューヨークやサンフランシスコをはじめいくつかの大都市圏では、市の中心部の不動産物件の価格が下落する一方、富裕層の引っ越し先になったエリアの価格が上昇するという逆転現象が見られるようになっている。

●連鎖する悪循環
 これを見ると、いまのアメリカの大都市が陥りつつある悪循環は明らかだ。
 暴徒化した「BLM」の抗議運動とトランプ支持の武装化した極右団体や自警団が衝突して死者が出る状況になっている。一方、治安維持を行っている警察は「BLM」やそれに賛同する市民から強く憎まれており、大都市では警官の襲撃が相次いでいる。また、特に民主党の知事や市長のいる地域では、「BLM」の要求を受け入れ、警察の予算削減が実施されている。
 警察にはこの状況への憤りが蔓延しており、各地で警官の辞職の連鎖が止らなくなっている。この結果、警官の不足から特に大都市圏を中心に治安が悪化し、殺人件数も増加している。こうした状況で身を守るために市民は武装し、銃の売れ行きが極端に増加している。
 また富裕層は日に日に治安が不安定になる都市の中心部から、周辺地域の安全なコミュニティーへの引っ越しを始めた。ニューヨークなどでは引っ越し業者の予約も取れない状況だ。こうした状況が背景となり、大都市圏の中心部の不動産価格は下落する一方、富裕層が移動した周辺地域では価格が上昇するという逆転現象がいろんな都市で起きている。

●さらに悪化する循環
 では、このような悪循環は今後どうなるのだろうか? どこかで循環の連鎖が止り、正常な方向への逆の動きが始まるのだろうか? いいや、そうならないことは明らかだ。3ヵ月後に迫った大統領選挙に向けて、この悪循環はさらに強化される可能性のほうが高い。
 それというのも、左派系の「BLM」と極右のトランプ支持派との対立と憎しみはあまりに大きく、妥協する余地などまったくないからだ。両者にはそれぞれ自動小銃で武装した集団が加わっており、両者の対立による銃撃戦が複数の大都市で起こるのは、もはや時間の問題になっている。すでに両者の小競り合いによる死者は、ウイスコンシン州、ケノーシャ、オレゴン州、ポートランド、そして、シカゴ、シアトル、ニューヨークなど各都市で発生している。すでに3ヵ月前の6月初旬の段階で19人が死亡している。

 「BLM」の抗議運動が拡大し、トランプ支持の極右との対立が続く限り、銃撃戦は規模を拡大させながらさらに多くの都市に広まって行くことだろう。もちろん、ほとんどの「BLM」運動は平和的に行われている。しかし、そうしたデモにトランプ支持の武装した極右が発砲したり、デモ隊に車で突っ込んだりする事件は多くなっている。いずれかの時点で、規模の大きな銃撃戦が複数の都市で起こるのは時間の問題かもしれない。
 特にいまの状況は、「法と秩序」の維持をスローガンに選挙戦を戦っているトランプには有利に作用している。いまは民主党のバイデンは7ポイントほどリードしているが、この状況が続くと、バイデンとトランプは接戦になる可能性も大きい。

 今回は郵送による投票も許可されている。アメリカの郵便システムは非常に効率が悪い。宛て先に届くまで何日もかかるのが普通だ。11月3日の選挙では、最終結果が出るまで8日以上はかかるのではないかとも見られている。もしトランプとバイデンが接戦であれば、この間に両者が勝利宣言をしてしまい、収拾がつかなくなる可能性も出てくる。
 もしそうした状況になったのなら、全米の複数の都市で、武装した一部の「BLM」とトランプ支持の極右の間で本格的な銃撃戦が起こることも考えられる。これはもう内戦と呼べるような状況だ。これは、いまの時点では極端な予測に聞こえるかもしれない。しかし、先に説明した悪循環の連鎖が止らない状況を見ると、現実にならないとはいえないのではないかと思う。選挙まで1ヵ月を切りつつある。本当に注目しなければならない時期になった。

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Profile:高島 康司(たかしま やすし)
高島 康司(たかしま やすし)

社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/

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