“超プロ”K氏の金融講座
このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。
「連鎖的なデフォルトと銀行の取り付け、世界は壊滅的なリスクに直面する可能性がある!」
ガイトナー米財務長官は危機感を露わにしました。米国当局は焦っています。「欧州の金融危機を何とかしろ」と欧州各国に迫っているのです。このままギリシア危機を放置すれば、突如のデフォルトを引き起こし、それが欧州発の金融恐慌を誘発、世界に伝播、ひいては米国まで甚大な被害が被ってくると懸念しているわけです。
実際、各方面からリーマン危機の再来、ないしはそれを上回る危機が訪れるとの警告が絶えません。世界銀行のゼーリック総裁は、「世界経済は危険な水域に入った」と述べました。またIMF(国際通貨基金)のラガルド専務理事は、「世界経済に下振れのリスクは高い」と、そして欧州危機を念頭において「現在のIMFの財源では、世界経済悪化なら全ての融資要請に応じることはできない恐れがある」と指摘したのです。
世界銀行とIMFという世界の金融の元締めからこのような発言が出てくることは尋常ではありません。まさに水面下で進む爆発的な危機に対して強く警告していると言えるでしょう。
民間サイドではもっとストレートに危機に対して発言しています。世界最大の債券運用会社PIMCOのエラリアン最高経営責任者は、「世界はソブリン危機(=国家破綻の危機)を震源とする金融危機が間近に迫っている」と述べました。投資家のジョージ・ソロスに至っては、ギリシアの破綻は避けられないという観点から、もう欧州当局は何らかの早急の対策が必要と訴えているのです。
すでに問題の焦点は、ギリシア“破綻後”
このコラムでも何回か書きましたが、もうギリシアの破綻は時間の問題で、避けることなどできないのです。後は、いかに上手く後始末をするか、いかにその影響を最小限に留めてギリシアを計画的な破綻に導くかということが焦点なのです。ギリシア再建と言って、財政の緊縮政策を打てば打つほど、経済は疲弊し、欧州各国が求めている借金返済からは遠のいていくのです。破産している国家をまだ破産していないと言っても、もう嘘もここまで、限界が来つつあるのです。
問題はすでにギリシアの秩序だった破綻ができるのか? ポルトガル、アイルランド、スペイン、イタリアへと波及を抑えることが可能か? またギリシアが破綻となれば、その国債を大量に保有している域内の金融機関が破綻状態に陥りますから、ギリシア破綻発表と同時に、域内の銀行に公的資金がスムーズに投入できるか? というところに焦点が移ってきていると思っていいでしょう。これはまだ正面だって言うことができませんから、水面下で準備をして、いかに上手く収めるか、当事者のユーロ圏各国、並びに中央銀行であるECB(欧州中央銀行)は断続的な協議を進めていると思えばいいでしょう。
ところがこれが上手くいかないのです。どうしても各国の思惑や利益が絡んできてしまいます。要は、ギリシアは破綻してその損失を支払うことができないわけですから、その損失を誰が負担するのか? という目前に迫った問題があります。しかしそれ以上に、たとえギリシアを破綻させてその債務を欧州各国で引き受けたとしても、その後のポルトガル、アイルランド、スペイン、イタリアへの波及は本当に収めることができるのか? もしそれができなければ、永遠にドイツをはじめとする北部欧州は、南欧諸国を支援し続けなければならないということになってしまいます。自ら稼いだ金をどぶに捨てるかのように、永遠に資金を補給し続けるのか? という根本的な問題もあるわけです。
実際、ギリシアが破綻したという前例を作れば、後に続く国家が出てきても少しもおかしくありません。ギリシアを破綻させることはない、ギリシアはユーロ圏に留めさせる、と豪語してきてギリシア国債は安全である、と言い続けてきたドイツやフランス、そしてECBの首脳の言葉は嘘だったことが明らかになれば、今度はアイルランドだってポルトガルだって、スペイン、イタリアだって、いつギリシアの二の舞になるか、わかったものではありません。当局の言うことなど信じたら酷い目にあうのです。
もともと無理のあった「ユーロ」という通貨
要するに、このソブリン危機、ユーロ圏各国の国債下落の連鎖的な危機には終わりがないのです。もともと違った国が17ヵ国も集まって同じ通貨を使うというところに無理があったのです。ユーロというモザイク通貨の矛盾が爆発して、このような問題が勃発したわけです。ドイツやフィンランドやオーストリアなど、経済力が強い国家だけが集まって同一の通貨を作れば良かったのに、ギリシアやスペインなど、経済力の弱い国家を組み入れて17ヵ国も一緒にするから悲劇が起こるわけです。
もともと、このギリシアなど南欧諸国の人達は、まさにシエスタ、昼寝ばかりしていて一生懸命働くような国民ではないのです。それなのに一緒の通貨にしたものだから金利が安くなって(ユーロ導入でドイツやフランスの後ろ盾を得て)、同じユーロという通貨ということで各国から資本が流入してバブルとなって、そしてあえなく破綻に陥り、今日に至ったわけです。
しかしこのギリシアや南欧諸国に資本を投下した北部欧州の金融機関はたまりません。とても返してもらえない貸し付けとなってしまったわけです。ですからギリシア危機は欧州全体の金融機関の問題となってしまったので、ここまでこじれているわけです。
しかしギリシアが立ち直れないのははっきりしてきました。投入した資金は全て泡と消える運命です。今となっては、ギリシアを破綻させて、このユーロ域内の銀行に公的資金を入れるという方向に持っていくしかありません。ところが、悲劇的なことに今度は、その公的資金の原資がないのです。リーマン・ショックの時はまだ、各国余裕がありましたので、借金してその原資を用意したわけです。いわゆる国債の発行です。元を正せば、この時に無理に借金をし過ぎてしまったので、各国国債漬けとなって借金が返せず、信用を失い金利上昇の憂き目にあって身動きが取れなくなってしまったというところが実情です。
しかしそれでも銀行を救うためには、借金を重ねるしかありません。ところがもともと、国の借金、国債が問題になっているのに、さらに借金である国債の追加発行となっては、ますます信用を失い、金利が上がってしまいます。そしてさらにタチの悪いことに、この危なくなってきている国債を保有しているのが、また各国の銀行であるという悪循環なのです。国と銀行が共々沈んでいく流れです。ですから袋小路みたいなものでこれは救いようがないのです。
そこで今、いろいろとごまかしの知恵を出そうと試みているわけです。ひとつはIMFによる救済の動きです。
本当はIMFは融資枠はもうほとんどない(ユーロ圏支援に使い過ぎた)のですが、補助的財源といって、「国際的通貨システムへの脅威を未然に防ぐか、そうした事態に対処する必要があるとき」にかぎり発動される特別融資枠を発動しようというのです。まさにIMFは資金切れで融資枠を持っていないわけですから、加盟国に対しての信用借りみたいなものです。この資金源はIMFの一般借り入れの財源とは別に、加盟各国の多国籍間融資で賄われるというのです。ユーロ圏各国も金がない、それを助けるIMFも金がないので、まさに日米など他から持ってこようということでしょうか。
ごまかしにごまかしを重ねるしか策がないのが現状
また、欧州金融安定基金(EFSF)という資金がおよそ日本円にして45兆円くらいあるわけです。これは、2010年に「ギリシア危機」が起こった時に欧州全体の危機に耐えられるようにと基金の大枠を作ったわけです。これがまた面白いのですが、基金は作りましたが、実はユーロ圏各国どの国も資金は出さないわけです。お金がないからです。
ではどうなっているかというと、この45兆円はEFSFとして債券を発行するわけです。国が国債を発行するようなもので、このEFSFが債券を発行するわけです。まさに45兆円分発行しようというわけです。そしてこのEFSFが発行した債券についてドイツが27%、フランスが20%、イタリアが18%、スペインが12%、各々保証すると言っているのです。要するにユーロ圏各国は一銭も出さないのだけど、我々が保証するからこの債券を買ってください、と言ってその債券を売って、その資金で各国を救済するわけです。そしてこのEFSFの発行した債券を、日本政府などは喜んで購入しているわけです。今回の場合はイタリアやスペインを救済するわけですから、その資金はイタリアやスペインの国債を購入するのに使われるわけです。まさに借金をする人間が、(この場合はスペイン、イタリアですが、)自分が保証するから金を貸してくれ、と言っているのと同じことなのです。それが素晴らしいスキームだということになっているわけです。
ところがまだ先がありまして、この45兆円だけでも、今回の欧州危機は収めることができないということになりまして、このEFSFの資金を今の4−5倍の約200兆円にしようという計画なのです。イタリアが200兆円も国債を発行しているので、200兆円近い資金を用意しないと救えないわけです。ところがこんなめちゃくちゃな政策や保証をドイツなどは嫌がっているわけで交渉は難航しているわけですが、今度はそれでは仕方がない、ということで新たに出てきた知恵は、このEFSFの45兆円をレバレッジを使ってもっと多く使えるようにしようというわけです。レバレッジを使うというのは、持っている資金を数倍に膨らませようということです。例えばあなたが100万円持っていて、それを元手に400万円用意して、それを使うというようなことです。
こうしてユーロ圏としては、45兆円の資金を元に4倍に膨らませて200兆円用意してしまおうというわけです。今後、イタリア、スペインの救済資金として200兆円くらい必要となるのだが、この資金は全て「ユーロ圏各国の保証」という錦の御旗の下に借金を重ねていこうという腹積もりです。まさに「一銭もいらない錬金術」借金の限りない増殖と言えるでしょう。借金をしすぎたから問題がおきているのに、その解決法は新たな巧みな借金の作り方なのです。こんなことが堂々とまかり通って、素晴らしい解決案として議論されているのですからもう世の末です。
このようにごまかしにごまかしを重ねてきているのが今の世界の現状なのです。日本の国債漬けも人ごとではありませんが、こんなマネーの錬金術、偽りの資金作りがいつまで通用すると思いますか? じわじわと市場の本当の崩壊が近づいてきているのです。マスコミもテレビも新聞も事の本質は書いてくれません。市場は矛盾を見抜いていよいよリーマンショックを超えるクラッシュを起こそうとしています。そして全てが崩壊した後に子供だましのような茶番の本質が明らかになるのです。
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★『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。
★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/
経済アナリスト。
株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。
実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。
著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。
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