“超プロ”K氏の金融講座
このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。
「ユーロは崩壊しつつある。その崩壊の過程は、欧州の金融システムに大きな問題をもたらしている。」
前FRB議長のグリーンスパンは警鐘を鳴らしました。投資家のジョージ・ソロスは同じくユーロ危機を懸念しています。スイスの雑誌のインタビューに答えて、「ユーロの崩壊は世界的な金融危機を誘発させる可能性がある」と指摘。続けて「ユーロが崩壊した場合に何が起きるのかが理解されていない。全く手のつけられないような銀行危機を引き起こすであろう」と述べたのです。
“ファイアーウォール(防火壁)”を超え、ユーロ崩壊に向けて加速
実際彼らの予言通り、ユーロの崩壊に向けて加速度がついてきたような様相です。ユーロ圏の主要銀行株の暴落は酷く、ここ1、2ヵ月で半値に落ちてしまいました。
米国当局は、米国で活動する欧州の金融機関の財務内容を調査し始めました。グリーンスパンやソロスだけでなく、主要なメディア、研究機関、当事者の金融機関からさえもユーロ崩壊の声が聞こえてくるのです。英銀大手RBS(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド)は、「欧州の債務危機は大規模なシステミックリスク・イベント(金融システム全体が崩れること)に悪化し、ユーロは臨死体験に向かうだろう」と、またフランスの金融大手のソシエテ・ジェネラルと同じくスイスの金融大手UBSは、「ユーロのメルトダウンに備えよ」と述べ、「ユーロのドルに対する劇的な崩壊の可能性を完全に排除することはできない」と言うのです。株価が半値になっている当事者の金融機関が公に懸念を表明するのですからただ事ではありません。実際問題、ユーロは完全に崩壊に向かっているのです。
全ては強固と思われていたファイアーウォール(防火壁)の破壊から始まったのです。ファイアーウォール、ユーロ圏にはこの大きな防火壁が存在すると思われていたのです。何の防火壁? それは「危機はスペイン、イタリアへは伝播することはない。ギリシア・ポルトガル・アイルランドと、スペイン・イタリアの間には大きな防火壁、越えられないファイアーウォールがある」というユーロ圏を覆っていた自信でした。
昨年のギリシア危機から始まったユーロ圏の債務危機ですが、これらの危機は必ずや、ギリシア、ポルトガル、アイルランドで止まる、また当局が止めるはず、と思われていたのです。
ギリシアは、その経済規模はユーロ圏全体の2.5%のシェアしかありませんし、ポルトガル、アイルランドはそれより小さいですから、たとえこれらの国が深刻な事態になろうともユーロそのものを脅かすことはないわけです。ところが、この危機がスペインにまで波及すると話は変わってきます。ましてイタリアまで来たら、なおさらです。2国の経済規模を合わせればユーロ圏の3割です。ですから、そこまで来ては救いようがないし、そんな事態は起こるはずもないし、起こしてはならないという見方が大勢だったのです。
ところが市場は容赦なく暴力的です。今年7月に入ってから、度重なるギリシアの債務危機に一応目途がついて、危機が収まったと思いきや、その後、何と危機が伝播、今度はスペインを通り越して、一気にイタリアに危機は波及、あっと言う間にユーロ本体を揺るがす事態が訪れてきたのです。
安定していると思われていたイタリア経済の実態
今までイタリアは、ユーロ圏各国と比べても比較的に経済運営は上手くいっているという評価でした。というのもイタリアでは財政赤字は着実に減らしていましたし、いわゆる毎年の財政赤字の額も、ユーロ圏各国のGDP比でみても悪い方ではなかったのです。ちなみに2010年の財政赤字を各国のGDP比でみるとイタリアは4.6%、フランスは7%、ギリシアは10.5%、スペインは9.2%、ポルトガルは9.1%、アイルランドに至っては32.4%、尚 米国は10.6 %、日本は9.2%です。なぜそんなイタリアにスペインを通り越して危機が波及してきたかというと、イタリアは確かに毎年の財政赤字の割合は他の諸国と比べて大きくはないのですが、それ以前、ここまで来る前に蓄積されたかなりの借金が国家としてあったのです。
ですから、今までの累積の債務の総額でみるとイタリアはユーロ圏の中では突出して大きかったわけです。借金のバロメーターである国債の発行額は米国、日本に次いで世界第3位の大きさです。これまでイタリアでは債務の絶対額が大きくても毎年順調にきているのだから、危機は来ないと思われてきたのですが、昨今、ユーロ圏全体の景気悪化が叫ばれ、経済成長の大幅な鈍化をみるにつけて、一体、イタリアの持つ巨大な債務は返済されるのだろうか? という疑問が急速に広がってきたというわけです。このあたりが債券相場特有のリズムというか、いわゆるソブリンリスク(国家破綻のリスク)がいきなり出てくるところで怖いところです。
債券というのは基本的には借金なわけです。そうなるとその借金の借り元、国債ならその発行国、社債ならその発行企業の信用が一つの目安になるわけですが、この信用というのはある日突如、無くなってしまうということがこの債券の世界ではよくあることです。
最近の典型的な例ですと、東電のケースがわかりやすいと思います。安全確実な投資と思われていた東電発行の電力債ですが、今回の原発事故で会社の信用が、がた落ちして、今や投資家が見ているところは東電を日本国が救済するかどうかという視点に変わっています。当然金利は急騰、東電債は売買不能の状態です。
また今回に限らず、ギリシアをはじめ、ポルトガルやアイルランドの国債のケースもそうなのですが、これらのケースをみると、大体、10年物国債の利回りが7%を超えたところあたりから信用の失墜の加速が起きています。
これは、金利負担の増大から、債券の満期日に資金を返してもらえないかもしれないという懸念が一気に広がってくるわけです。そうなると今度はさらに金利が急騰し始めるというパターンです。このように、金利がある一定のラインを超えるとその国や企業は高金利での資金調達を余儀なくされ、ますます、資金を返せなくなっていく懸念が広がり、さらに信用をなくし、金利はさらなる上昇という悪循環に陥ってしまうというパターンです。
ギリシアの2年債などは、今や年利46%になっているのです。46%ですよ、日本なら法律違反の金利で、この金利なら2年で資金は倍になります。こんな危なっかしいギリシアの国債に本気で投資できますか?
このように債券の世界は、発行体が借金をしている形ですから、この信用が失墜し始めると流れは止めようもなくなって、金利が急騰してその発行体はサラ金地獄のようになって一気に深刻な事態に陥るわけです。
日本国債だっていずれ笑ってはいられません。今は誰もが日本国が破綻して借金が返せなくなることはあり得ない、と信じていますので、たとえ1,000兆円という巨大な借金があっても金利1%で日本国は借りられるわけですが、これが何かの拍子に日本国の財務が危ないのではないか、という疑念が多くの投資家に広がっていき、それが一般的なコンセンサスとなりますと、今度は信用失墜の悪循環となって金利が高騰し始めてしまうわけです。
このような悪循環が今回の欧州危機のケースでは、いきなりイタリアに波及してきてしまったわけなのです。何しろイタリアの借金は日本ほどではないものの、GDPの120%と強烈です。日本円にすると約200兆円の国債発行、言わば借金を200兆円抱えていて、その金利が昨今の危機波及でイタリア国債の利回りが6%を超えてしまったのですからたまりません。
200兆円で6%の利回りでは金利支払いだけで12兆円です。もし日本国債が6%の金利になったとすると金利支払いだけで1年に60兆円、税収が38兆円の日本国ですから即座に破綻です。しかしイタリアはこのように深刻な状況なのです。
というより先ほど指摘したように、このようなパターンに入ってしまうと債券相場の場合は信用失墜が加速しますので、もう以前のような低金利で資金調達ができる状態に戻れないのです。まさにイタリアに危機が波及した時点でユーロは崩壊の淵に立ったのです。
欧州中央銀行はECBならぬEBB(ヨーロッパ・バッド・バンク)に!?
そこで知恵を絞って何とかイタリアの破綻を防ぎ、ユーロ崩壊を止めようと必死の奮闘となったのが、欧州中央銀行(ECB)なのです。ここに至っては、万能薬であるマネー印刷という奥の手を使って事態の拡大を収めるしか方法はないのです。
どうするのかといえば、ECBが強引にユーロを印刷してこの暴落気味のイタリア国債、それに引きずられて同じく暴落気配のスペイン国債を買い支えるわけです。まさにバズーカ砲の登場です。幾らでも売り物を出してみろ、ユーロをあらん限り印刷してイタリア、スペインの国債を買って買いまくってやる、と宣言したに等しいというわけです。
この額がまた凄い、何と2週間で日本円にして4兆円、ギリシア国債を昨年1年間で買い続けたペースの数十倍の資金投入のスピードなのです。このペースでは1年間で100兆円の買い付けとなります。まさにECBはジャンク国債の買い取り機関、これではECB(ヨーロッパ・セントラル・バンク)ならぬEBB(ヨーロッパ・バッド・バンク)と大変身です。中央銀行がまさにバッドバンク、不良債権の買い取り機関に変身したわけです。こうなっては、その中央銀行をバックにして印刷されているユーロという通貨はまさに無価値になり下がる道に足を踏み出したと言えるでしょう。
国家危機と金融危機の協奏曲が現実となる!?
今回のECBのイタリア、スペインの国債買い取りには、ドイツ中央銀行は大反対です。このままユーロ圏の財政の統一化もなく、このような無軌道な域内国債の買い取りを続ければ、EU(ヨーロッパ共同体)は、ついには「インフレ共同体」へと落ちていくだろう、と警鐘を鳴らしています。
新しくIMF(国際通貨基金)のトップになったラガルド専務理事は、「欧州には時間がない、債務問題が深刻な危機につながっていく」と警鐘を鳴らしたのです。しかしこんな警鐘もすでに遅い。一旦、荒れ狂いだした市場からの攻撃は緩むことはないでしょう。グリーンスパンの言うユーロの崩壊過程はすでに始まり、ソロスが指摘したように、ついにユーロは制御不可能な金融危機を誘発していくのです。ユーロの崩壊は規定事実、であれば結論を知ったヘッジファンドは暴れるだけです。当局がイタリア、スペインの国債の空売りを規制すれば、今度は規制していないフランス国債を空売りです。フランス国債が規制されれば、今度は銀行株を空売りです。欧州域内の国債を大量に保有している欧州の金融機関は実質債務超過も同然、売りたたけばボロもでるというわけです。
ユーロ圏の国債が暴落する、そうなればユーロ圏の国債を大量に保有している金融機関も風前の灯です。まさに国家の危機であるソブリン危機がその国の金融機関をも破綻に導く金融危機を引き起こすのです。ソブリン危機と金融危機の協奏曲です。
日本だって仮に日本国債が暴落すれば、日本の金融機関は全滅、まさに国家危機と金融危機の共振が起きるのです。火の手がユーロから上がろうとしています。一体収まるのか? 行くところまで行くのか? 全ての政策はその場限りでしかも大きな副作用を伴うのです。いよいよ混乱を収める手段が尽きてきています。確実に言えることは、もう世界を覆う資本主義のシステムの崩壊は時間の問題となってきたということでしょう。
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経済アナリスト。
船井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を船井幸雄にレポートで送り続けてきた。
実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。
著書『大恐慌入門』
(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』
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(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』
(ダイヤモンド社)を発売。そして2011年7月に最新刊『2012年、日本経済は大崩壊する!』
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