ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測

このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。

2017.07.01(第41回)
アメリカの内戦の可能性

 7月になりました。時間を経るにしたがって世界の混乱は一層加速しているようですが、その中心いるのはやはりトランプ政権のアメリカです。今回は前回の記事の続きになります。
 アメリカがこれから内戦に向かう可能性について検討します。このように聞くとなんの根拠もないトンデモ系の情報のようにも聞こえるかもしれませんが、実はまったくそうではありません。以前の記事でも何度も書いたように、いまトランプ陣営と反トランプ陣営の間でトランプの罷免ないしは弾劾に向けた攻防が続いています。それは、過去の政治対立にはないくらいの激しさになっています。

●コーミー前FBI長官の証言とロシアゲートの不可能性
 最近もいくつか大きな発展がありました。
 そのひとつは、コーミー前FBI長官が6月8日に行った議会証言の内容です。この証言は日本の主要メディアでも大きくとりあげられましたが、報道のポイントはトランプ大統領の司法妨害があったのかどうかという点に絞られていました。コーミー前長官の証言では、大統領から忠誠心の要求はあったものの、ロシアとの共謀疑惑の捜査をしないようにとの明確な要求はなかったと証言したのです。
 これは明白な司法妨害ではないものの、忠誠心の要求は捜査の中止を求める言外の心理的な圧力になったのではないかという見方もあり、専門家の間でも司法妨害にあたるのかどうか見解が分かれています。

 しかし、コーミー前長官の全証言を見ると、まったく異なった事実が見えてきます。議会では、ロシアとトランプ陣営との共謀の可能性に初めて言及した今年2月のニューヨークタイムスの記事について、ジェームス・ライシュ上院議員が質問しました。するとコーミー前長官は、この記事が「主要な部分は事実ではない」と記事の内容を否定して次のように発言したのです。
 「私は記者を責めているわけではないが、機密情報について記事にしている人々は、実際にはなにが起こっているのか知らないのだ。他方、なにが起こっているのか知る立場にある我々は、それを話すことができない。我々は報道機関に『それは間違いだ』とは言えないのだ。これがチャレンジだ」

 これは極めて重要な証言です。今年2月のニューヨークタイムスの記事こそ、トランプ陣営とロシアとの共謀を証明する決定的なものだとみなされていたからです。それをコーミー前長官自らが「これは事実ではない」として、全面的に否定してしまったのです。
 これは、ただでさえ証拠がほとんどないロシアゲートでは、トランプを弾劾することは実質的に不可能であることを示しています。

●トランプをアルツハイマーにして罷免する
 すると、トランプを大統領から追い落とすには、副大統領と閣僚の過半数が、大統領がもはや職務を遂行することが不可能になったと判断したとき、大統領の罷免を要求することができるとした、合衆国憲法修正25条4項を使うほかに手はありません。
 最近、トランプの個人的なアドバイザーで共和党きっての選挙参謀だったロジャー・ストーンという人物は、トランプをアルツハイマーの疑いがあるとして、大統領の職務を遂行する能力がもはやないことを証明し、罷免に持ち込む策謀がいまワシントンで進展していると証言しました。これから1ヵ月あまりでこのトランプのアルツハイマー説が報道され、トランプの弾劾に向けた動きは加速するだろうとロジャー・ストーンは予想したのです。

●トランプうつ病説
 そしてまさにロジャー・ストーンが予測したように、6月には、CNNやワシントンポストなどの主要メディアは、トランプ大統領の精神的な健康に問題のある可能性が大きいとする記事を掲載しました。
 それによると、トランプと最近話を交わしたある要人は、CNNとのインタビューで「トランプ氏が孤独な生活をしている。情緒的に萎縮し、体重も増えた。誰も信頼することができずにいる」とし、「それはトランプ氏に危険なこと」と述べました。
 また、別の匿名の消息筋は「大統領は海外歴訪を終えて今週ホワイトハウスに戻ったが、行く前と同じだ」とし、「孤独で、いら立ち、多くの人々に不満がある状態」と伝えました。また、「大統領であることが容易でなく、自分に合わないポストであることを悟っていると話した」とも伝えています。トランプは大統領として初の外国歴訪を控え、興奮するどころか日程が長くなりそうだと不平を言い、憂鬱そうだったといいます。
 こうしたことを根拠に、トランプはもはや大統領としての職務を遂行する能力を喪失しているとして、ペンス副大統領を中心とした閣僚が大統領を罷免する策謀が進展しているというのです。

●共和党重鎮の銃撃事件
 このように、トランプの罷免を巡る反トランプ陣営の攻撃は激化しています。これと呼応するように、トランプと共和党への憎しみは激化し、共和党の議員を標的にした銃撃事件も起こっています。
 すでに報道されているので周知でしょうが、6月14日、ワシントン郊外の野球場で練習中の共和党議員が銃撃され、5人が負傷するという事件が発生しました。
 バージニア州アレクサンドリアの野球場で午前7時すぎ、毎年恒例の共和党・民主党対抗親善試合を15日に控えて練習していた共和党関係者に対して、男が銃を乱射したのです。院内幹事の護衛警官たちと銃撃戦になり、男は死亡しました。犯行を行ったのは、イリノイ出身のジェイムズ・T・ホジキンソン(66)という人物でした。
 負傷したのはスティーブ・スカリス下院院内幹事、警察官のクリスタル・グライナーとデイビッド・ベイリー、ロビイストのマット・ミカ、テキサス州選出下院議員秘書のザック・バースの5人でした。
 ホジキンソンは失職中の家屋評価員で、熱烈なサンダース支持者でした。フェースブックにはトランプ大統領を非難する書き込みが多くありました。野球場では、議員が「共和党なのか民主党なのか」聞き、相手が「共和党だ」と答えると乱射を始めたといいます。トランプと共和党への憎しみが動機であったことは間違いありません。

●事件は氷山の一角、鬱積する憎しみ
 私達は、日常的に増加している世界各地のテロ事件を聞き馴れているので、こうした銃撃事件をさほど重要に思わないかもしれません。しかしこの事件は、いまアメリカ国内に鬱積している激しい反トランプ感情の現れなのです。その意味ではこの事件は、これから多発するトランプ派と反トランプ派との暴力的な対立を予告している可能性があります。いま対立がどれほど激しくなっているのか概観してみましょう。

●民主党支持者の暴力的な攻撃
 暴力的な対立と聞くと、オルト・ライトなどのトランプ支持の革命主義者が引き起こすとのイメージを持つかもしれません。でも、そうではないのです。いまアメリカでは、サンダースやクリントンの支持者の左派系の人々によるトランプ支持者や共和党を対象にした暴力行為が目立って増えているのです。
 以下は、今年の5月から6月現在までの民主党支持者によるトランプ支持者を標的にした事件です。暴力的な抗議は大統領就任式が行われた1月に激増したものの、それ以降は沈静化していました。それが5月頃から急速に増加しているのです。

*2017年5月

・共和党議員のトム・ギャレットとその家族に、連続して殺人の脅迫が届く。

・トランプを支持している共和党のマーサ・マックサリー議員に殺人の脅迫をしていた人物がFBIによって逮捕される。

・テネシー州警察は、共和党のデイビッド・クスコフ議員の車でひき殺そうとした女性を逮捕。

・ノースダコタ州の警察は、タウンホールで共和党のケビン・クレイマー議員に暴力をふるった男性を追い出した。

・3人のトランプ支持者を自転車用のU型カギで殴り、重症を負わせた元大学教授が逮捕される。

*2017年6月

・前出のホジキンソンによる銃撃事件。

・共和党のクラウディア・テニー議員は「1人死亡、あと216人」との脅迫メールを受け取る。これは先の球場の銃撃事件の直後であった。

・インディアナ州で「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」というトランプのスローガンの旗をつけた車を運転していた男性が銃撃される。負傷者はいなかった。

・ジョージャ州共和党のキャレン・ハンデル議員に「汚いファシスト!」と汚く罵るメッセージと一緒に白い粉が入ったレターが送られる。警察は念のために議員の自宅周辺地域を閉鎖。

・ノースカロライナ州のシャーロットで、トランプ支持のTシャツを着た女性がスターバックスに入ったところ、「壁を作ったらどうだ!」などと店員から揶揄され、屈辱的なメッセージが張り付いたコーヒーカップを渡された。

 15日の銃撃事件を除いて、まだまだ小さな事件が多いものの、民主党支持者の鬱積した不満が爆発しつつあるようにも感じます。

●指導者が煽る
 このような事件が相次いでいるのは、トランプに対する鬱積した不満と憎しみであることは間違いありません。しかし、抗議行動を激化するように煽っているのは、むしろ民主党の指導的な立場にいる人々です。

●「共和党の下院議員を狩る」のハシュタグ
 民主党の選挙参謀であるジェームス・ディバインは、ホジキンソンによる前述の銃撃事件の直後、「共和党の下院議員を狩る」というハシュタグで、「我々は自己中心的で馬鹿で、ナルシストの金持ちと戦争状態にある。暴力的な事件になぜショックを受けるのか?」とツイートしました。その後ディバインは、FOXニュースのインタビューで、共和党は「階級闘争を始めている」として非難し、自分のツイッターの書き込みを正当化しました。

●副大統領候補、ティム・マケインの発言
 上は銃撃事件直後のツイートとしては驚くべき内容です。まさに銃撃事件を引き起こしたのは、トランプの共和党であるとして非難しているような発言です。
 また、少し古いですが、今年の1月に民主党の元副大統領候補、ティム・ケインはMSNBCのインタビューで、「トランプ政権に対しては、議会で、法廷で、街頭で、オンラインで、選挙でとことん戦うのだ」と徹底抗戦を呼びかけていました。

●クリントンの抵抗基金の設立
 そして5月には、ヒラリー・クリントンはトランプの共和党と戦う「抵抗基金」を設立しました。これは「オンワード・トュギャザー」という組織で、「トランプの共和党を引きずり落とすために、あらゆる抵抗運動を行う活動家を養成する」としています。選挙の敗北後、クリントンは盛り上がる抗議運動を見ていて、こうした運動に資金を提供できる組織が必要だと感じたといいます。クリントンは、活動資金を寄付する人々を集める役割を果たすとしています。
 こうした活動には、クリントンの国務長官時代を含め、クリントンの側近だったスタッフが結集している模様です。

●檄(げき)を飛ばすバーニー・サンダース
 そして、こうした指導的な立場にいる人々のなかでも、もっとも激しくトランプを非難しているのはバーニー・サンダースです。6月20日、前述の銃撃事件のあった5日後、バーニー・サンダースはフェースブックの主催するライブに質疑応答イベントでおおよそ以下のように述べ、檄を飛ばしました。

 「全米の国民は政府のあらゆるレベルにプレッシャーかけ、何百万人もの労働者を不利な状況に追いやる政策をやめさせなければならない。これこそ、政治革命である。我々は立ち上がって戦わなければならない。そして、なんとしてでも、政治の意思決定過程に我々が参加しなければならないのだ!いまワシントンは前例のない状態にある」

 このように発言し、トランプ政権に対する徹底抗戦を呼びかけました。

●伝統の崩壊とオルト・ライトの反撃
 いまのアメリカのこのような状況を見ると、これは過去に本当に前例のない事態であることがよく分かります。アメリカの大統領選挙が大きくもめることは、過去に幾度か起こっています。たとえば共和党のブッシュと民主党のゴアが争った2000年の選挙がそうです。あまりの接戦だったので、大票田のフロリダ州の得票の再集計が行われようとしたとき、最高裁からの停止命令がありブッシュが大統領に就任しました。このときもブッシュ陣営の不正投票疑惑がありました。

 しかし一旦ブッシュが大統領に就任すると、それまでの抗議運動は少なくなり、アメリカ国民はブッシュを大統領として受け入れました。また、ブッシュからオバマへの政権移行も激しい選挙戦にもかかわらず、オバマの就任以降はオバマを暴力的に拒絶する運動などは起こりませんでした。もちろん後に、選挙を通して合法的にオバマ政権に圧力をかける「ティーパーティー運動」は起こりましたが、議員を銃撃するような暴力的なものではありませんでした。
 これまでアメリカは、どのような状況でも新しい大統領が誕生すると、国民は大統領をそれなりに受け入れ、政権の打倒を暴力的に主張することは少なかったのです。それがこれまでのアメリカでした。

 しかし、トランプ政権だけは状況がまったく異なります。民主党寄りの国民の多くはいまだにトランプを大統領として拒絶し、トランプを引きずり落とすためには暴力も辞さないという集団が増えてきているのです。ユーチューブには、トランプとの徹底抗戦を叫ぶ動画であふれています。そうしたチャンネルも多いのです。
 こうした状況がもっとエスカレートすると、次の段階は明白です。今度はトランプを熱烈に支持している側の暴力的な反撃があることでしょう。トランプ陣営には、暴力革命を主張し武装したオルト・ライトや、草の根の超保守層がやたらに多いのです。リベラルな民主党左派どころの水準ではありません。

 共和党の議員団を標的にした、6月14日の銃撃のような事件はこれからも激増することが予想されます。すると、それに対するオルト・ライトの本格的な反撃が始まるのも時間の問題となってくるでしょう。特にトランプの弾劾、ないしは罷免が現実的になると、その可能性が高まることでしょう。
 そのような状況は、もしかしたら本当に激しい暴力的な対立の前夜なのかもしれないのです。要注意です。

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Profile:高島 康司(たかしま やすし)
高島 康司(たかしま やすし)

社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/

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