“超プロ”K氏の金融講座
このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。
世界中がいま、巨額のマネーを印刷するしかない状態に追い込まれ、日本も日銀がインフレ政策に追い込まれるようになっていますが、その元凶を作ったのはいったい何でしょうか? 誰なのでしょうか?
それは世界中の巨大なバブルが弾けたからです。2000年には1京円(1兆円の1万倍)にも満たなかったデリバティブの想定元本が7年後の2007年には6京円という世界経済の規模の10倍にも拡張していったのです。
では、その2000年からの膨大なデリバティブのバブルを構築したのは誰? 何者?
言わずと知れたFRB(米連邦準備理事会)です。1999年、金融(銀行)と証券会社の兼業を厳格に禁止する「グラス・スティーガル法」を廃止、その後のデリバティブのバブルの大拡張を起こしたのは、まさにその当時の権力者、米財務長官、ロバート・ルービンとラリー・サマーズのコンビ、並びにその政策を全面的にバックアップしたグリーンスパン前FRB議長ではないですか! デリバティブがあれだけ拡張できたのも住宅バブルが起こったからです。住宅が永遠に上がることを前提にして金融商品が作られたのです。問題となった債務担保証券(CDO)や資産担保証券(ABS)、それの基になったサブプライム・ローン、さらにそれらを保証するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)など、全て住宅バブルに起因するものだったのです。
住宅バブルを構築したのは、ほかでもないFRB
そして当時FRBの内部では“住宅バブル”という言葉は禁句だったのです。FRB議長のグリーンスパンが“住宅バブル”という言葉の使用を禁止したのです! 考えてくださいよ! FRBは各金融機関から上がってくる数字が全て見えているのですよ! 投資銀行がデリバティブの残高を天文学的な額に増やしてきているのをしっかり把握していたのですよ! その異常な膨張ぶりを見ればいずれ起こってくることがわからないはずはない! わかっていて放置していたと思えばいいでしょう。
現に英国の中央銀行であるイングランド銀行は当時警告していたのです。2007年の金融安定化報告書の中でしっかりとそのリスクを指摘していました。巨大複合金融機関、いわゆる証券と銀行の垣根を超えてあらゆるビジネスを世界中で展開している米欧の巨大銀行ですが、それが突如破綻して、システミックリスク、要するに「世界的な金融危機が起きる可能性がある」としっかりレポートしていたのです。
現FRB議長のバーナンキは今回の危機には関係ないって? 冗談じゃない! バーナンキはFRBの委員、その時のメンバーではないですか! まさにルービン、サマーズ、グリーンスパンのもと、しっかりとバブル構築の政策をサポートしてきたのです。どこかでこのバブルの助長に警告しましたか? とんでもないバブル構築を見逃したどころか、作ってきたその張本人の一派です。
こんな簡単なことがあるでしょうか? 自分達でバブルを目一杯構築しておいて、世界的な危機を作り、その後、今度はそれを救ってやると言って、さらなる資金供給をしているというわけです。役割分担の役者を変えただけ、グリーンスパンが火付け役、バーナンキは火消し役を気取っているのです。
その見え見えのシナリオにすっかり騙されて、またまたFRBに頼ろうというのですからどうにもなりません。今回米国政府は金融規制改革法案を成立させました。その骨子の一つは、FRBに大きな権限を与えて金融監督の権限を集約させるということです。危機を作ったのがFRBなのに、そのFRBにさらなる権限を与えるのですか! わずか1年前はFRBの責任論が盛んになってFRBの分割論まで議論されたのです。いったいこの結末は何でしょうか? 私のように危機を起こしたのはFRBとまで言わなかったにしても、少なくともFRBが監督機関としてバブルの拡張や投資銀行の行き過ぎた投機を見過ごしたのは事実です。今までだって米金融を監督していたのはFRBです! 今まで危機を予測できずに杜撰(ずさん)な監督しかできなかったFRBがこれからは「お利口さん」になるのですか! まさに行政の焼け太りとはこのことです。
世界の王様は一体誰か?
これは民衆の性(さが)なのですが、何か事件が起きると「政府は何をやっている! 行政はどうした!」とお上に文句を言うわけです。そしてお上は「わかりました」とばかり規制を強化して焼け太るというよくある構図です。2001年のテロの後も世論の「ブッシュ政権は何をやっている!」との声に押され、結局、米当局はテロを未然に防ぐためということで個人情報の徹底的な調査に及ぶようになり、プライバシーは制限されるようになりました。また、今の米国入国の時の審査の厳しさを見てください。全て2001年のテロがきっかけです。もしテロも米政府の仕掛けだったとしたらこれはどういうことか? 気がついてみれば我々全てが管理されるようになってきているのです。我々が望んだという形でそういう風に持っていかれているのです。
まさに今回の金融規制改革法案は米上院委員会、共和党のジュピロ議員の言うように「モンスター法」なのです。蘇ったモンスター、FRBがさらに巨大化して、その傘下にまた巨大化した銀行群を置くのです。昨今のこの金融機関の巨大化を考えてみてください! JPモルガンはベアー・スターンズを吸収しました。バンク・オブ・アメリカはメリル・リンチを吸収、ウェルズ・ファーゴはワコビアを吸収、そんな巨大化した銀行群が、あろうことか資本不足というお題目のもと、さらに資本増強を繰り返したではありませんか! 日本のメガバンクもこの流れに乗っています。三菱UFJ、みずほ、三井住友、大幅な増資を繰り返しています。どうなっているのか? 本来は金融が肥大化してデリバティブなどの杜撰な投資が増えすぎて金融危機が起こったのだから、このデリバティブを含めた膨大な投資を縮小させて、金融の力を弱めるのが筋ではないですか! 実体経済に比べて膨れすぎた金融が問題の原因なのだから金融の力をそぐべきなのです。そしてその通り最初は<Too big to fail>で大きすぎて潰せないのが問題なのだから分割、縮小すべきという議論だったのです。
ところが蓋を開けてみればどうですか? 金融機関はさらに巨大化(もう潰せるわけがない)して、その頂点であるFRBはついに「モンスター」になったのです。
「100年に一度の危機」。前FRB議長のグリーンスパンは述べましたが、まさに創立100年になろうとするFRBは100年目にして、自ら起こした危機をバネにして「モンスター」に焼け太りました。考えてみればFRBはこのような焼け太りの繰り返しの歴史なのです。およそ100年前、1913年にFRBは創立されました。やはり金融危機が創立のきっかけでした。そして1930年代の大恐慌時代にさらに権限は強化されました。そして第2次世界大戦が終わると、金融だけでなく経済全般を監視するようになったのです。極めつきは1972年のニクソン・ショックです。金(ゴールド)との交換を拒否したドルはこの時点からはもう刷り放題、ついにFRBはこの地点で世界の王様になったと言えるでしょう。
世界の王様は誰ですか? イギリスのエリザベス女王ですか? オバマ大統領ですか?
違います。FRBなのです。ないしはFRBを牛耳る者たちです。彼らには選挙も何もありません。やり放題です。今回のように失敗(本当はシナリオ通りの陰謀)しても責任を取る必要もなく、かえって権限を拡張させられるのですから、このトリックは見事というしかありません。まさに世界の真の王様であるFRBは今までもこれからも実質、「無制限の世界経済への自由裁量権」が与えられている状態と言っていいでしょう。
モンスターであり、同時に実質世界の王様であるFRBはこれから一体どうなっていくのでしょうか? FRBは一手に金融部門における監督を任された形となっていますが、自分達が関与している銀行群であればともかくも、今回危機の発端となったAIGのような保険会社まで目が行き届くのでしょうか? また市場を暴れ回るヘッジファンドを監督できるのでしょうか? あらゆるものを監督するということはあらゆるものを見続けていなければなりません。今まで節穴だった監督能力がある日突然目覚めるというのでしょうか?
そんな事よりも自らが管理できるのか? リーマン・ショック後FRBの資産は2.6倍に膨れ上がったのです。モンスターになった自らの資産、その大半を占める不良債権、フレディマック、ファニーメイの住宅担保ローン証券の約130兆円分はどうするつもりか?
冒険家ジム・ロジャーズは「FRBはない方が世界経済のために良かった」と述べました。またブラック・スワンの著者ナシーム・タレブは「バーナンキなどという人を信頼している人はいない」と言ったのです。
「栄華盛衰」、「奢れる者は久しからず」、世界を手に入れ、膨張を繰り返すFRB! 大きくなりすぎたもの、行き過ぎたものは最後は崩壊するしかないのです。バブル、バブルと騒いでみても、究極のバブルはFRBに行きつくのです。バブルの後始末と言いながらFRBはさらに世界中の銀行バブルを拡張させたのです。そしてあらゆるバブルの歴史がそうだったように、あっけなく崩れ去るのです。1913年創立のFRBが自らの重みに耐えかねてついに崩壊に至るのは創立100年目の2012年でしょうか? バブルを謳歌してマネーで牛耳られた世界経済はFRBの崩壊と共に崩れ去るのです。
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★『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。
★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/
経済アナリスト。
株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。
実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。
著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。
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