“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2013.06
激動前夜

 「中国発のリーマンショックが起こる!」
 今、金融の事情通の間では密かに囁かれているのが、この大いなる懸念なのです。順調に見えていた中国経済ですが、明らかに変調で中国経済にはブラックボックスに隠された膨大な闇が存在していて、今やその矛盾が隠せなくなり、爆発するのが時間の問題になってきているという見方なのです。
 そしてこの中国発のリーマンショックはかつてのリーマンショックを超える衝撃を世界に与えかねないと懸念が広がってきたのです。
 金融のプロでなくとも中国経済はおかしいのではないか、という疑問は各方面から出てきていました。例えば人の住まない膨大な空いたアパート群です。あのようなゴーストタウンが中国の都市周辺に怒涛のように広がっているのに、一向に不動産価格が値崩れしていません。かえって中国全土の不動産価格が上がり続けているというではありませんか。これは何かおかしい、と普通の感覚で捉えるのは当然でしょう。

 また最近になってはっきり指摘されてきたのは、中国の経済統計の杜撰(ずさん)さです。輸出の統計などは輸出側の国と輸入側の国で全く違うのですからお笑いです。かねてから数字をごまかしているのは中国側と指摘されていました。これについては、最近は余りに数字の乖離も酷くなってきたので、ついに中国側は統計数字を変えてきたのですが、1ヵ月でいきなり二桁増の輸出の伸びが1%の伸びにまで改定されたのです。
 この辺のごまかしはかわいいものであったし、中国担当のアナリストは、中国当局の数字の改ざんはいつものこと、と独自の調査で中国経済のレポートをしていたというのですが、今までは大きな問題も起きませんでした。
 ところが今回は様々な矛盾が一気に露呈する可能性が高く、本当に中国発のリーマンショックが起これば、世界経済に激震を与えかねないと恐れられているのです。

いま、中国で何が起こっている?
 その原因は中国の金融のシステムにあるのですが、問題の最たるものはいわゆる中国特有の<影の銀行>という制度です。名前の通り<影の銀行>であり、表に出てきている金融の話ではないのです。正式に公表されている話ではないので余計に闇の中です。公表されている話でさえ、統計を操作して出鱈目を発表してきた中国当局ですから、<影>いわゆる表に出ていないブラックボックスの部分は、余計に何が起こっているのか、掴むのが難しかったのです。
 このような隠し事が表面化するときというのは、隠しおおせなくなって問題が噴出するときなのです。今までは封印に次ぐ封印を続けていますので、その反動で一気に爆発という形しかないわけです。ですから突如の中国版リーマンショック勃発か、と恐れられるわけです。

 中国では2008年、世界的な不況から脱するために無尽蔵の公共投資を行って、全国で不動産開発を行ってきました。このビジネスモデルは一向に変わらず、それを続けるだけだったのです。人が入らなくてもマンションを作り続け、飛行機が飛ばなくても空港を作り、車が走らなくても高速道路を作ってきたのです。国の発展段階を考えれば、インフラ投資は当然のことと言え、今までの30年近い二けた成長の経済発展を考えれば、この手法で成功してきたわけですから、それを単純に続けてきたわけです。中国側から見れば単に成功体験を続けてきたに過ぎないという形です。

 中国は基本的に官僚主導の、上からの経済指導体制ですから、公共投資を主体とする経済成長は、発展段階の中国の持つ良さが全面に出ていたともいえるでしょう。また中国の地方官僚は経済成長がどれくらいなされたのか、ということが出世の大きなバロメーターになっていますので、任期中の多くのプロジェクトを達成できれば自然に出世の道が開けるというわけです。こうして中国全土で際限のない公共投資の波が続いてきたのです。もちろん無尽蔵の資金はありませんから、借入が主体となるわけです。
 地方政府は、融資平台(プラットフォーム)と呼ばれる地方政府が、スポンサーの名前だけは民間会社の隠れ蓑を使って、膨大な資金を調達して公共投資を無限に行ってきたのです。ところが使わない空港や高速道路、マンション群を作っても、採算が取れるはずもありません。
 最初はスポンサーは銀行だったのですが、やがて融資に難をきたすようになり、いわゆる<影の銀行>システムから資金を融通するようになっていきました。金利は高いし、投資した物件の収益は上がらないというわけで、当然資金繰りに行き詰ります。資金を借りていられるうちは、一向に矛盾は露呈しません。借りた資金は返すからと言っていればいいのです。ところが資金が借りられなくなって、金利支払いができなくなると、そうはいきません。そしてプロジェクトよりも借金の金利返済に奔走しなければならなくなってくるのです。
 となるとどういうことが起こってくるかと言いますと、自分のこととして借金に追われていて、その借金が雪だるまになってきたことを考えるとわかりやすいと思います。
 借金に借金を重ねて、その場限りを続けてきたのですが、金利は雪だるまのように膨らみ続け、各方面から取り立ての催促を受ける形です。こうなると今までよりさらに多くの資金が必要になってきます。仕事で収益が出なければ、さらに資金が必要になり、借金の返済の奔走をするために、幾らの高利でも資金を融通しなければならなくなるのです。まさにサラ金に取り立てを迫られる末期状況です。

 信じがたいでしょうが、これが全国的に起こっているのが今の中国なのです。「そんなバカな?」と思うかもしれませんが、実際に中国の金利は急騰しています。銀行間の資金を融通する金利が3月までは2%を割れていたのに先週は13%台にまで高騰しているのです。これは平均の金利の表示ですから、中には20%台で借入している中国の銀行が続出しているのが現状なのです。あなたは20%の金利を支払わなければ資金を調達できない銀行を信用できますか?

 中国では<信託>と言って、10%以上の金利を約束した高利回りの金融商品が山のように販売されています。
 地方政府は誰も入らないマンションや空港や高速道路を作ってきたのですが、一向に収益が上がらず、借りた資金が返せずに資金繰りが火の車となってしまいました。ですから10%以上の高利を約束されて集められた資金から、<影の銀行>のルートで資金を融通することによってギリギリの経営を成り立たせてきたわけです。その資金繰りがさらに行き詰ってきたのが今と思えばいいでしょう。
 中国は明らかに経済の減速がみられるのに、資金需要ばかりが爆発的に伸びているということ自体がおかしいのです。日本をみてください、誰も上手いビジネスがなく、資金の借り手がいないから金利が上がらないわけです。ですから資金需要を起こすように、経済を活性化しろ、ということでアベノミクスが始まってきました。ところが中国は金利が2%から13%まで跳ねるほどの資金需要が起こっているのです。その一方で経済が大減速中ということですから、いったいどうなっているのか、ということなのです。

「危機」は人為的に起こされる!?
 中国の公式統計によると2005年から2008年にかけては信用拡大、いわゆる資金需要とGDPの拡大の比率は1:1だったのです。ところが昨年はこの比率が4:1となったというのです。GDPを1増やすのに今までの4倍の資金が必要になっている。これはおかしくないですか。端的に言えば膨大な金利負担のような経済成長に全く役に立たない資金需要がここにきて爆発的に増えていることが見てとれるのです。

 ですから事情通は、中国経済は末期的な症状になってきていると懸念しているのです。
 投資家ジョージ・ソロスは「中国における影の銀行のシステムの急激な拡張は、米国のサブプライムローン問題と不気味なほど似通っている」と警告しました。
 そしてバンク・オブ・アメリカの中国担当のストラジストは「中国の現在の信用拡大の状況は、米国の2008年3月のベアー・スターンズ救済の段階にまできている。ここで局面を一変させるのは、リーマン・ブラザーズの破綻のような大きな出来事になる可能性が高い」と言うのです。
 実は既に中国当局は極秘でこの<影の銀行>の問題処理の青写真を作り、中国発のリーマンショックに備えて準備を始めている、という驚くべき観測があるのです。
 日本で起こった1997年の金融危機では山一証券や三洋証券、そして長期信用銀行や日本債券信用銀行や北海道拓殖銀行などが相次いで倒れていきました。この間、残った銀行には膨大な公的資金が投入されたのです。
 一見すると、自然に山一証券などが倒産に至ったかのように思えますが、それは違っていて、当時は多くの金融機関が倒産の瀬戸際にあったわけで、当局としては山一をスケープゴード的に倒産させることによって、世論に危機感を植え付け、政府による膨大な税金投入、いわゆる公的資金による銀行救済の道を開いたのです。危機が起きなければ世論は公的資金投入に納得してくれません。ですから人為的にシナリオを書いて、それに従って危機を演出して事を収めたのです。いわゆるショック療法です。
 米国で起こったリーマンショックも同じです。リーマン・ブラザーズをスケープゴードとして倒産させることによってまずは危機的な状況を作り、それによって米国政府による公的資金導入の道を開いたのです。危機がなければ誰が膨大な税金を銀行に投入することに納得するでしょうか。こうして米国政府は80兆円という膨大な資金を投入することによって危機を封印したのです。リーマンが潰れた翌日に世界ナンバー1の保険会社AIGは一夜にして連鎖的に危機に陥り、20兆円という支援を米国政府から緊急に受けるという事態となったのはまだ記憶に新しいところです。

 そして今回の中国側の想定しているシナリオですが、はっきりと詳細をつかむことはできません。実はこれに絡んで事情通に注目されていたのは、先日の米中首脳会談なのです。
 6月初旬に行われた米中首脳会談は何と8時間という長時間の会議となりました。いったい何を話しあったのか? 通常日米でも日中でも、どんな首脳同士でも2時間程度の首脳会談が当たり前の話です。事務方は長時間の話し合いをするのはわかりますが、首脳同士が8時間も話し合うということは極めて異常というしかありません。そして会談内容は全く漏れ伝わってこないのです。

 過去を振り返ると、米中の首脳がこれだけの長時間の会談を持ったのは1972年のニクソンと毛沢東が会談したケース、また1985年のレーガンとゴルバチョフが会談したケースの二つしかありません。
 注目すべきことは、この二つの会談の前後には世界の枠組みを変えるような大事件が起きています。1972年7月、電撃的にニクソンと毛沢東の会談が発表になりました。1ヵ月経って8月あの衝撃的なニクソンショックが起こったのです。これによって金とドルの交換は停止され、それまでのドルと金をリンクした固定相場制は廃止となりました。世界は一気に変動相場制となり、今日に至るのです。
 まさにニクソンと毛沢東の長時間会談を契機にして、世界は劇的に変化しました。
 そしてニクソンショックでは世界の資本市場には激震が走ったのです。
 またレーガンとゴルバチョフの長時間会談も異様でした。この会談の2ヵ月前には<プラザ合意>があったのです。

 米中が何故、これほど長時間の会談を持つかというと、明らかに世界の枠組みを変えるような大きな議題を持ち、米中で調整を行っているとみるのが妥当なのではないでしょうか。もちろんそのような重要な案件は発表前の世の中に漏れるとは思えません。

 特徴的なことは必ず、市場の動きになって深く潜行するように動いてくるのです。
 今回のオバマ大統領と習近平の会談の後に起こってきたことが、まさに中国での金利急騰なのです。また中国の<影の銀行>の実体が大きくリークされてきています。
 これは明らかに中国当局が意識的に仕掛けているものです。中国当局が<影の銀行>による中国国内の矛盾を意識的にあぶり出そうとしています。当然、中国側に何かしらの思惑があって起こってきていると考えるべきでしょう。中国で大量に販売された10%を超える利息を約束した金融商品は元金を毀損していることは疑いないでしょう。
 そして仮に中国国民はその預金を失うようなことがあれば、中国国内は暴動にも近い状況が起こっても不思議ではありません。誰が考えても異常だった今までの中国の発展は必ずやその矛盾が収集のつかなくなるような混乱を生じさせるに違いないのです。
 市場は中国のハードランディングを懸念し始めています。そしてそれに対するウルトラCのような戦略はすでに極秘で米中で示し合わせているのでしょうか? 再び中国発の世界を震撼させるショックが迫っているのでしょうか?
 今回の長時間の米中首脳会談の後には、G8の場で安倍、オバマの日米首脳会談が開かれる予定でした。ところが階段は開かれませんでした。日本側の都合で会談が流れるということはあり得ません。何故オバマ大統領は安倍首相と会わなかったのでしょうか。いったい米中の間で何があったのでしょうか?
 折しも世界の資本市場は荒れに荒れてきました。世界中で株が売られ、本来なら株が売られれば買われるはずの国債をはじめとする債券も売られ(金利上昇)、それなら商品はというと、今度は金相場も大きく売られています。株も債券も金もあらゆる資産ベースが売りの対象になっています。
 投資家は何が起こるかわからない、とりあえず現金でということで世界中で投資資金を引き揚げ、資金の現金化が始まっているのです。
 爆発しそうな中国発のパニック、そして謎の米中の長時間会談、資本市場の異様な動揺、いったいこれからどんな幕が開くのでしょうか? いずれにしても全世界の人達が驚愕するような事象が迫りつつあるようです。

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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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