ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測
このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。
11月になった。もう2019年も終わりに近づいている。今年は変動の非常に多い年だったが、来年の2020年はもっと多くの変化が待っている予感がするのは筆者だけではないだろう。
今回は来年からさらに大きな問題として注目されることが確実な、地球温暖化問題について書く。
特に、いま地球温暖化への抗議運動の先頭に立ち注目を集めている16歳のスウェーデン人の少女、グレタ・トゥーンベリの背後にいる勢力についてである。これを詳しく調べると、新しい成長戦略を模索する金融資本の壮大な計画が見えてくる。
9月20日、ニューヨークで開かれる「国連気候行動サミット」を前にして、若者を中心に地球温暖化への対策を求める様々な抗議行動が欧米やアフリカ、アジアなど世界各地の150カ国で行われた。数百万人が行進したとみられ、人為的な気候変動に対する抗議としては過去最大規模のものとなった。
この運動の中心になっているのが、グレタ・トゥーンベリというスウェーデン人の16歳の少女だ。昨年8月から金曜日ごとに学校を休み、スウェーデン国会の前に座り込んで温暖化対策を訴え始めた。これを機に、気候変動対策を求める若者たちの運動の中心的存在となった人物だ。
すでに彼女は、温暖化対策を訴える活動でノーベル平和賞の候補になっている。また国連でのサミット出席のため、温室効果ガスを排出しないヨットで大西洋を渡り渡米した。これは地球温暖化対策を政府に迫るデモンストレーションになった。
そして、9月23日の国連「気候行動サミット」で、グレタ・トゥーンベリは怒りを爆発させ、世界で大きな話題になった。各国指導者を前にグレタは、温暖化により「人々は苦しみ、死にかけている。私たちは絶滅に差し掛かっているのに、あなたたちが話すのは金のことと、永遠の経済成長というおとぎ話だけ」などと主張。「あなたたちには失望した。しかし若者たちはあなたたちの裏切り行為に気付き始めている」と語気を強めた。
このニュースは日本の主要メディアでも大きく報道された。グレタ・トゥーンベリは日本でも広く知られている。
●グレタをリクルートした国際的NGO
しかし、昨年の8月にスウェーデン国会の前でほとんど単独か小人数で地球温暖化防止を訴えてプラカードを掲げていた少女が、わずか1年後には地球温暖化防止の世界的な運動の中心となり、国連でスピーチをするようになるとは少し唐突に感じないだろうか? 普通の少女がいきなり国際的なリーダーとしてもてはやされるのである。
グレタ・トゥーンベリの背後に影響力の大きい勢力が存在しており、グレタ・トゥーンベリはその力で運動の中心へと引き上げられた人物ではないのだろうか? そのような不自然さを感じるのは筆者だけではないだろう。
だからといって筆者は、グレタ・トゥーンベリの背後にいる闇の組織を暴き、彼らの恐ろしい計画を暴露するという陰謀論的な動機から彼女の背後関係に興味を持ったわけではない。逆に、背後にいる組織は地球温暖化を真剣に懸念する国際的な組織かもしれない。ただ筆者は、グレタ・トゥーンベリの背後になんらかの組織が存在しているとするなら、それがなんであるのか関心を持っただけだ。すると、彼女の始めた運動の向かう方向性もはっきりと見えてくるはずだ。
●国際的NGO、「ウイ・ドント・ハブ・タイム(We have no time)(我々には時間がない)」
グレタ・トゥーンベリが注目された経緯を調べると、背後で彼女を支援している組織がすぐに分かった。それは国際的な環境NGOの「ウイ・ドント・ハブ・タイム(We have no time)(我々には時間がない)」だった。以下がその公式サイトだ。
We have no time
https://www.wedonthavetime.org/
グレタ・トゥーンベリがスェーデン国会前で抗議行動を始めた直後、「ウイ・ドント・ハブ・タイム」のCEO、イングマール・レンツオッグがグレタの存在を広める一連のツイートを発信した。このツイートが広く拡散し、スウェーデン国会議員などの著名人もグレタに会いにくるようになった。彼女が運動を始めた昨年の8月は、スウェーデンの国政選挙の時期であったので、国会議員の面会が相次いだのはこれが背景だと見られている。
ところで、環境NGO、「ウイ・ドント・ハブ・タイム」の創立者であるイングマール・レンツオッグは、スウェーデンの通信分野の著名なコンサルタント企業、「ライカ」の創立者である。「ライカ」は金融産業を中心にコンサルタントサービスを提供していた。
このような「ウイ・ドント・ハブ・タイム」だが、創立されたのは2018年4月である。そして排出権取引も含め、ビジネスのプラットフォームが完成したのが、2019年4月だ。これは、グレタ・トゥーンベリがスウェーデン国会前で抗議活動を始める4カ月前だった。
また「ウイ・ドント・ハブ・タイム」は、地球温暖化を懸念するボランティアが集まったNGOというだけの組織ではない。NGOというよりも、しっかりとしたビジネスの基盤を持つ新興企業としての性格が強い組織だ。同社は環境問題関連のコンサルティングやデジタル広告作成のほかに、アメリカ一国で820億ドル相当の規模を持つ二酸化炭素の排出権取引のビジネスに参加している。個人でも企業でも「ウイ・ドント・ハブ・タイム」のプラットフォームから、二酸化炭素の排出権の売買に参加できる。
このような「ウイ・ドント・ハブ・タイム」だが、いまは環境問題に関係した世界最大規模のSNSを立ち上げることを目標にしている。まずは1億人のユーザーの獲得を目指すという。
●アル・ゴアのパートナー
しかし、「ウイ・ドント・ハブ・タイム」がビジネス基盤のしっかりした環境ベンチャーだとしても、スウェーデン以外ではさほど知名度のないNGOがツイートしたとしても、グレタ・トゥーンベリという16歳の少女の活動が国際的な関心を引くことはできない。おそらく、グレタの活動を広く拡散するためには、もっと大きな組織の関与があってもおかしくない、
そのように考えてさらに調べると、「ウイ・ドント・ハブ・タイム」は、米クリントン政権の副大統領で気候変動を警告する運動の世界的なリーダーであるアル・ゴアが設立した組織、「クライメイト・リアリティー・プロジェクト(Climate Reality Project)」のパートナーであった。CEOのイングマール・レンツオッグは、2017年にこの組織のリーダーシップ研修を受けている。研修後レンツオッグは、EUの気候変動の対策部門である「欧州気候変動政策タスクフォース」のメンバーになっている。
このように見ると、なぜ「ウイ・ドント・ハブ・タイム」が行ったツイートをきっかけにして、グレタ・トゥーンベリという16歳の少女が世界的に有名になったのか、その理由が分かる。「ウイ・ドント・ハブ・タイム」の一連のツイートは、アル・ゴアをはじめ気候変動対策を要求して活動している世界的なリーダーや著名人が、一斉にリツィートしたのだ。これが拡散した理由だ。リツィートの履歴はまだ残っているので、簡単に確認することができる。
このように見ると、グレタ・トゥーンベリが行っている孤独な活動を「ウイ・ドント・ハブ・タイム」のCEO、イングマール・レンツオッグが発見してツイートしたというよりも、スウェーデンの国政選挙の3週間前という政治家が世論にもっとも敏感になっている時期を選び、アル・ゴアと組んだイングマール・レンツオッグがグレタ・トゥーンベリをリクルートしたと見た方が自然に思える。またむしろグレタは、すべての活動が始まる前にリクルートされ、スウェーデン国会前でプラカードを掲げたと見ることもできる。
●アル・ゴアの金融資本との結び付き
話がここまでであれば、グレタ・トゥーンベリの始めた運動は、実は世界的な気候変動NGOが仕掛けたシナリオに沿って展開している運動だという事実を明らかにしたに過ぎない。グレタという16歳の少女が始めようが、世界的なNGOが始めようが、地球温暖化はすでに待ったなしの危機的な状況なので、運動が世界的に拡散したことは大変によいことではないかという見方も成り立つ。
しかし、さらに情報を深堀すると、気候変動対策だけでは済まない現実があることが見えてくる。それを如実に示すのが、アル・ゴアの背後関係と、金融資本との結び付きである。
アル・ゴアは2004年に環境関連産業と持続可能な産業に投資をするヘッジファンド、「ジェネレイション・インベストメント・マネージメント(Generation Investment Management LLC)」をパートナーのデビッド・ブラッドとともに設立した。ロンドンやサンフランシスコにオフィスがある。
ここから話は少しややこしくなるが、「ジェネレイション・インベストメント・マネージメント」のアル・ゴアのパートナーのデビッド・ブラッドは、「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」という組織のメンバーである。
「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」は、1)気候変動のリスクと機会を開示する企業の支援、2)低炭素社会へのスムーズな移行による金融市場の安定化の2つの目的を持つ組織だ。
「TCFD」の議長には、元ニューヨーク市長で大手経済紙「ブルームバーグ」の創立者、マイケル・ブルームバーグが就任している。メンバーにはアル・ゴアの「ジェネレイション・インベストメント・マネージメント」の代表者のほかに、大手投資銀行の「JPモーガンチェイス」、「ブラック・ロック」、「バークレイ銀行」、「HSBC」、再保険大手の「SWISS Re」、中国の大手銀行の「ICBC銀行」、インドの最大手鉄鋼会社の「タタ・スチール」、イタリアの半国有のエネルギー会社の「ENI」、世界的化学会社の「ダウ・ケミカル」、世界最大の鉱業企業の「BHPピリトン」など、そうそうたる企業が幹部を代表者として派遣している。
●「TCFD」の実態
このような「TCFD」だが、これはどのような組織なのだろうか? かなり見えにくい。しかし調べると、この組織は、世界の中央銀行が相互に決済をする機関、「国際決済銀行(BIS)」の「金融安定理事会(FSB)」が、メンバーを選定して立ち上げた組織だった。「TCFD」の基本的な目標は、各国の年金基金をはじめ、膨大な額の投資資金を環境関連産業に誘導する「グリーン・ファイナンス・イニシャチブ」の実施である。これにはイギリスの中央銀行、「イングランド銀行」や数多くのイギリスの大手企業も後押ししている。
つまり「TCFD」の基本的な目的は、再生可能エネルギーをはじめ、地球温暖化の防止と気候変動対策に積極的な環境関連産業に、金融市場の資金を誘導することである。
●資本主義再編成と「ゴールドマン・サックス」
こうした動きを見ると、金融市場の巨額の資金をクリーンな産業に誘導する巨大なプロジェクトが進行しているのが分かる。これには、大手金融機関、大手国際企業、そして中央銀行が参加して推し進めている巨大なプロジェクトだ。
そのように見ると、16歳の少女、グレタ・トゥーンベリが中心となって始まった、若者による気候変動対策を求める世界的な運動は、国際的な金融機関が巧妙に準備したプロジェクトであることが分かる。グレタ・トゥーンベリは、こうした巨大プロジェクトのシナリオを実現する役者のひとりなのかもしれない。
そして、さらにこれを調べると、この巨大な動きの中心にいるのは、「ゴールドマン・サックス」と「ジョージ・ソロス」であった。その目的はなんだろうか? 実はその目的は、成長限界にぶち当たった現代資本主義の再編成である。これについては別な機会に改めて書くことにする。
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社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/