若き経営者の奮闘録

13年間の教師生活から一変して入ったビジネス界。義父・船井幸雄からさまざまな教えを受けながら、日々学び、成長していく(株)本物研究所社長・佐野浩一の経営者としての奮闘録をお届けします。

2009.02
親父の言葉

  人はそれぞれ考えを持っています。
 いわゆるベテランといわれる人たちは、経験の量、知識の量で勝っていることはいうまでもありません。しかし、未経験者や経験、知識の浅い人たちも、やはり自分の考えを持っていることには間違いありません。このことは、新卒者の採用活動を進めるうち、大勢の応募者と話をしていて、再確認させられたことでもあります。彼らは確かに若い……。経験もありません。それでも、時として、こちらが驚くほどにユニークで明解な考えをもっていたり、ハッとさせられる未来像をもっていたりすることに気づいたのでした。
 経営トップとして、すべてをトップダウンで行うことは、ある点でとても簡単な方法論ではあります。しかし、残念ながら、すべての人を心底納得させられるかといえば、そうではないことの方が多いように思います。また、「よく考えて行動してほしい」と、トップは口グセのようにいいますが(実際私もそうでした……)、考える風土や環境がなければ、人はどんどん考えなくなってしまいます。これまた、あたりまえのことです。

 よって、最近私は次のように考えることにしています。
 「考えるアホ」になる。
 私はご存知のとおり、ビジネス経験はそう長くありません。そこに安住するつもりは毛頭ありませんから、日々学び、行動し、日々真剣に考えます。しかし、それだけではなく、「衆知を集める」というスタンスを積極的にとっていこうと実践を始めました。かつて、自分をサイズ以上に見せようとしたり、ちょっとカッコつけたりしたがる自分がいたことは事実です。でも、一人の人間が判断することなど、所詮間違いだらけです。ベストだと考えたことですら、本当にベストだったと決めてくれるのは結果のみです。ならば、衆知を集めたい。知らない自分を認め、知らないことを知りたい。そう考えています。
 「考えるアホ」。
 実は、アホにも責任が伴います。それは、アホを理由にして逃げてはいけないということです。次に、知らないことは恥じないといけませんが、知らないとわかったら、知るための努力と工夫が必要です。そして同時に、一時の恥をかかないといけません。
 一方、意見を求めるにもタイミングがあります。そのとき聞かなかったがために、大きな判断ミスを起こす可能性だってあります。

 「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」。
 私がまだ幼いころから、亡き父がよく口にしていた言葉です。いま、やっとその意味に心底気づこうとしている自分がいます。何十年かかってわかりかけてきた親父の言葉。ありがたいものです。


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Profile:佐野浩一

1964年大阪生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、13年間中高一貫教育校の英語教員として従事。2001年4月、(株)船井事務所に入社。2003年4月、船井幸雄グループ・(株)本物研究所を設立し、代表取締役社長に就任。商品の「本物」、技術の「本物」、生き方、人づくりの「本物」を研究、開発し、広く啓蒙、普及活動を行なっている。

ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる2005年10月に『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる
(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)を出版。




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