“超プロ”K氏の金融講座
このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。
●弱くなった米国のドルがなぜ買われる?
米国経済の強さ、ニューヨークダウをはじめとする米国株式市場の強さ、並びにドルの強さが目立ってきています。リーマンショック時はドルの時代は終わり、ドルは大暴落して世界はカオスのような状態に陥っていくのではないか、という不安が全世界を覆っていたわけですが、あれから6年経ち、今では逆に再び米国の経済的な強さが際立つようになりました。
私は2011年11月末のドル円75円台の時を契機として円相場は歴史的な天井打ち、ドルは今後大きな上昇相場に入っていく、と指摘しましたが、現実にドルは強くなる一方です。この壮大なドル高への歴史的な動きが始まっていることは何度も指摘してきましたが、もう一度多角的にドルの強さの源泉をみていきたいと思います。
そして今回は何故ドルなのか、という視点に立って現在の世界的な通貨事情も捉えてみたいと思います。
米国は昔からドルの大量の垂れ流しを指摘されてきました。米国は貿易赤字であり、経常赤字であり、他国から資金が入ってこないと資金不足で国家を運営できない状態です。そのうえ日本ほどではありませんが政府も借金漬けです。
OECD(経済協力開発機構)の指摘によれば、2014年現在で日本の借金はGDP比232%ですが、米国だってGDP比106%の借金があるのです。とても国家の健全経営とは言えません。
しかもリーマンショック後米国の中央銀行であるFRBはQE1、QE2、QE3といわゆる量的緩和政策を繰り返し、以前にもまして大量のドル紙幣を印刷し続けたのです。
ここにきてこの量的緩和政策の終了に向かって動いてはいますが、未だに大量に印刷したドル紙幣を回収するわけでもありません。
また、昨今のオバマ政権の力量不足は世界の不評を買っています。ロシアが横暴にもクリミアを奪取したのも米国の力の衰えが影響したことは疑いないでしょう。中国もそれを見透かしたように日本やベトナム、フィリピンなどに強気で横暴な挑発を繰り返すようになりました。
まさに最近は、政治学者イアン・ブレマーに<Gゼロの時代>と言わしめましたが、本当に米国の弱体化が世界を不安定にさせていることは疑いないでしょう。そんな弱くなった米国のドルが何故買われるのでしょうか?
様々な視点がありますが、まずは、現実的に世界中で膨大なドル需要がある、という事実をおさえていく必要があります。
一つは各国の中央銀行です。どの国も、自国の通貨を持っていれば、もしもの時に備えて自国の通貨に何かあった時にその通貨を防衛できる体制を備えておかなければなりません。通貨防衛です。通貨防衛と言えば自国の通貨を買い支えるわけですから、その対象はドルということです。世界で一番出回っている通貨は圧倒的にドルですし、一般的に通貨価値を守るということは、ドルの通貨価値に対して自国のレートを守るということに他なりません。であれば通貨防衛時はドルを売って自国通貨を買うこととなります。その場合、売るためのドルがなければ売ることができません。売るべきドルがなければ残念ながら自国の通貨を防衛できないのが現実なのです。
ですから、世界各国の中央銀行はドルを準備通貨として保有し、もしもの時に備えるのです。
アジア各国などは、1997年の通貨危機に懲りて、その後は外貨準備として大量のドルを保有しているわけです。まさにドルを購入しておく、ドルを保有しておくことはその国にとってはその国の通貨を守るための現実的な保険なのです。ですからドル需要は衰えません。どの国も通貨防衛策として円や中国の元やロシアのルーブルを保有するということは基本的にないのです。
またもっと積極的に考えると自国の輸出条件を有利にするために、為替介入を行うことによって自国の為替レートを引き下げ、輸出競争力を高めて、自国の経済を活性化させるという方法も一般的です。日本などが公然と為替介入をして、ドル買円売りを行えばかなりの非難を浴びるでしょうが、他の小国では公然と為替介入が繰り返されているのが実情です。世界第2位の経済大国である中国などは、日常茶飯事で為替介入を繰り返しています。お隣の韓国も公式には認めていませんが、堂々と為替介入を繰り返しているのです。
アジア各国は似たり寄ったりで、何処の国も為替介入には積極的です。
●「膨大な需要」があって、ドルは世界中で買い支えられている
では実際、為替介入とは何か、ということですが、これも自国の為替レートをドルに対して弱くするための介入ということになります。誰も円を買って、自国通貨を売るなどという為替介入はしません。あくまでドルに対して自国通貨を売る介入を繰り返すわけです。
となるとこれもどうでしょうか。結局はドルへの需要に他なりません。中国も韓国も、自国通貨を売却すると同時にドルを購入することによって自国の通貨レートを引き下げ、相場水準を思い通りに持っていくわけです。こうして自国の通貨レートを望み通りの相場水準に固定させ、それによって輸出を増やし経済を持ち上げるわけです。これが世界中の国々で行われるわけですから、ドルの需要が衰えるはずもありません。
では民間の銀行はどうでしょうか。
これも面白いことに、昨今は特に、国際業務を展開する巨大銀行については、BIS(国際決済銀行)の新自己資本規制(バーゼル3)によって、安全資産を組み入れることが義務づけられてきました。
安全資産とは何でしょうか?
株や不動産ではありません。BISのいう安全資産とは主に国債のことです。
現実的な選択として、強大な国際業務を行うような巨大銀行が保有すべき国債と言えば、日本国債というわけにはいかないでしょう。当然世界一流動性がある米国債ということになります。これも現実的なドル需要となります。
このような世界の官民の膨大な需要がドルを支えています。ドルが強いから選考するというよりは、世界の今のシステムの中で、自国のため、あるいは民間の巨大銀行なら自行のために、ドルを保有することが必要だから、ドルを購入することになるのです。
こうしてドル需要は世界的に衰えることがありません。現在、米国を除く世界の中央銀行と投資家を合わせた米国債の保有残高は6兆ドル(約612兆円)を超えているのです。そしてこの額は年々増え続けています。
かように考えるとやはり世界に最も流通している通貨の強みは圧倒的なわけです。既に広く世界で流通していることが多くの需要を生み出す背景にもなっています。
この、世界におけるドル体制を変えるためには、現実的にドルに替わるだけの通貨が出てくればいいわけですが、それが一向に現れないわけです。
ユーロも影響力を拡大しつつありますが、やはり問題も多く、ドルほどの力は有していません。また次に思い浮かぶのは中国の元ですが、これが全く準備通貨としては役にたちません。
元は各国の中央銀行が準備預金にする通貨として世界に流通できるようなシステムになっていないわけです。というより、中国自身がそれを許してくれないのです。
中国は為替市場を開放していません。中国の元は中国との輸出入のみに使うことを許されており、資本取引に使うことは禁止しています。ということは、ある国が中国の元を保有しても他の通貨と交換することもできないし、市場で自由に売り買いすることもできません。「為替介入して元を購入して自国通貨を売る」なんて芸当はできるわけもないのです。
これでは元を保有していても、いざというときに役に立ちません。ですから世界中の中央銀行が元を準備通貨として大量に保有するというわけにはいきません。やはり自由に売買できる、市場が開放されてオープンになっていることは世界に通用する通貨としては最低限の条件なのです。
世界の巨大銀行だって同じです。中国との貿易に使うための元を保有しているだけなら、ともかくそれ以上の元を保有していても他通貨と交換することもできず、運用することさえできません。そう考えると世界で基本的に通用する通貨は主にドル、次にユーロ、そしてその後は、日本円やポンドということになり、次いで流動性は落ちますが、オーストラリアドルやカナダドルということになります。
これが世界の通貨の現実なのです。となるとドルがどうのこうの、という前にドルを購入するしかない現実がわかってくるはずです。決してドル自体に魅力がなくても、ドルを保有する、ドルを購入していくしか方法がないという消去法的な現実が世界を覆っているわけです。その大本の米国経済が順調なのでドルが余計に信頼感を回復しているのが今の流れと思えばいいでしょう。
●米国経済は好調、ドルの復権は今後も続く見込み
日本円が有事になると買われるのもやはり、現在の世界の為替システムがもたらしているものです。世界を見渡して資本市場を開放して自由に売り買いできて、流動性が高い通貨はそうはありません。ドルにはとてもかないませんが、日本円だって世界の資本市場では立派に通用する通貨です。ですから有事で問題が起こると危険回避という観点で、日本円が買われるのです。
こう考えると、今の世界における各国各々の通貨価値とは、ドルに対しての相対的な価値が重要とも言えそうです。
そして昨今の傾向では、米国経済がリーマンショックの時とは違って完全に立ち直って世界をリードしようとしているのです。その中でドルを大量に印刷し続けた量的緩和政策を終了しようというのですから、当然今までのようなドルの大量供給はなくなっていきます。こうして、ドルの価値は安定していく、ドルの価値は上がっていくという展開に入っているのです。
そして米国では、経常赤字、財政赤字と言われてきた双子の赤字も昨今は解消に向かう流れが見えてきたわけです。
何と言っても一番大きいのはシェールガス革命です。2011年の米国の経常赤字は4659億ドルですが、同じく2011年の米国のエネルギー輸入代金は4623億ドルです。
かように米国の経常赤字の大半はエネルギーの輸入代金ということで説明がつきます。
このエネルギー不足が、シェール革命によって米国では自前ですべてのエネルギーが確保できる形になったどころか、今度は一転して輸出まで行うというのです。IEA(国際エネルギー機関)によれば、米国はここ数年でサウジアラビアを上回る世界一の産油国になるというのです。これでは米国の経常赤字など数年で消滅するのは当然です。こうして米国の経常赤字も財政赤字も驚くべき勢いで減少中です。これではドルが弱くなる道理がありません。
このようにドルを取り巻く環境は盤石なのです。
確かに40年以上前、1971年のニクソンショック後、ドルは金とリンクしなくなり、ドルの大量たれ流しは始まりました。
その時の金価格1トロイオンス35ドルから、ドルの限りない発行によって40年経った2011年9月には、1トロインス1923ドルというふうに金価格はドルに対して40年間で約55倍と驚くべく上昇となりました。
ドルの価値は大幅に減価し続けていたのです。しかしここにきて米国経済はついに正常化、量的緩和の終了によって、ドルの価値が上がる流れになってきたのです。ですから金価格がドルに対しては下げ始め、昨年2013年には13年ぶりに年間で金価格が下がるという現象が起きたのです。いわばドルが通貨として復権しつつある流れの中で、アンチドルの受け皿だった金の価値が相対的に落ちてきたということです。
今後もドルの復権は続くでしょう。そしてドルは世界の中で最も輝きを増してくるでしょう。そういう意味ではドルが通貨として機能するわけですから、金利のつかない金は売却してドル投資を行う、という基本的な流れは今後も世界中で加速していくことでしょう。
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★『大恐慌入門』
(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』
(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』
(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』
(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』
(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』
(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』
(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』
(徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』
(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』
(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』
(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』
(徳間書店)を発売。
★『朝倉 慶の21世紀塾』を2009年2月より開始
朝倉氏の最新情報を【A】レポート、【B】CDマガジン、【C】セミナーから
詳しくはコチラ→http://www.funaimedia.com/asakura/index.html
★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
経済アナリスト。
船井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を船井幸雄にレポートで送り続けてきた。
実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。
著書『大恐慌入門』
(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』
(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』
(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に船井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』
(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』
(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』
(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』
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★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/