“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2016.12
日本人と株式投資

 日本人は悲観論が大好きです。よく言えば慎重ということなのでしょうが、多くの日本人は現在の状況も将来の情勢も楽観的には見ていません。

●一貫して保守的な日本人
 2016年は非常に荒れた年となりました。年初から世界の株式市場は暴落し、その後持ち直したものの、5月には予想もしなかった英国の国民投票でのEU離脱選択という驚くべき衝撃が起きました。また11月の米大統領選挙ではトランプ氏の当選という世界を驚愕する事態となりました。その後、株式市場は暴落するのかと恐れられていたのに逆に大きく上昇し始めました。かような激変や予想できない展開、また世界中が対立を深めて分裂、摩擦を深めていく情勢を見ては楽観的になれないのは当然ですし、今後も多くの人たちが恐れるように世界は混乱に向かっていくように思えます。
 このような情勢下、日本人は資産運用についてもかつてないほどの保守的になってきています。日本人の金融資産は1700兆円強に及びますが、そのほとんどは預金や保険などいわゆる安全資産に偏っている状態です。先行きが見えず、将来の混乱を予感すれば当然の選択のようにも思えます。
 私はかねてから日本人の<株式売却ブーム>が続いていることを指摘してきましたが、この傾向は全く変わらず、11月のトランプ氏当選から日本の個人投資家の株売りには更に拍車がかかってきました。「トランプ相場はいつまで続くのか?」「トランプ氏がまだ大統領にもなっていないのに、その政策のいいところばかりみて、株を異様に買い上がっているばかりで、これでは大きな反動が来るはずだ」との意見がマスコミや学会含めて大勢でこのような見方は日本人にはしっくりくるようです。
 私も<超プロK氏の金融講座>としてこのようなコラムを毎回書かせてもらえるようになったのも、故舩井幸雄先生から<経済予測の超プロ>と認められたからですが、そのきっかけは激しい悲観論でした。
 今から9年前、2007年当時、米国での深刻な問題が生じていることをつかんでいましたので、2008年の世界的な株式市場の大暴落は避けることができない、と確信していました。そしてその根拠となる事実を舩井先生にレポートとして送り続けていたわけです。そして翌2008年には私の予想通り、世界を震撼させるリーマンショックの勃発となりました。
 その後2012年には大きな変動が起こる、という説が広く言われるようになり、緊張感、並びに新しい時代到来の期待感も広がっていたわけです。2011年、東日本大震災が勃発していよいよ2012年は大波乱の展開になると思われたのです。

 この2012年、予想通り波乱気味の世界情勢でした。特に欧州ではギリシアをはじめアイルランド、スペイン、イタリアなどが危機的な状況に陥って、ユーロの存続が懸念されるほどの事態にまで至ったのです。この2012年初頭、日本株も酷い低迷状態となり、日経平均も8000円台という有様でした。日本政府は量的緩和を更に拡大して、円紙幣を限りなく印刷し続けました。このような中、市場にも変化が生じてきました。

 実はこの時点で、私は株安の時代は終わって、今後、日本では歴史的な株高基調が始まり、今までとは打って変わった株高、そして将来のインフレに向かっていく流れが始まることを確信したのでした。この時、2012年6月にこの大変化、株式市場が歴史的な大底を打って長期的な上昇に入るということを世に発信したくて、拙著『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を発刊したのです。またこれからは株式投資の時代が到来すると確信しましたので、自らも<アセットマネジメントあさくら>を設立して多くの人の資産運用に役立ちたいと考えたのでした。その後市場では紆余屈折はありましたが、私は株式市場に関しては一貫して、基本的に強気を貫いてきました。

 この間、2012年から日本の株式市場はどうなったかというと、年間の動きで見ると、2012年、2013年、2014年、2015年、そして今年2016年と5年連続して上昇しているのです。おそらくこのコラムを読んでいる多くの人たちが株式投資は怖い、株はやがて下がるのでは? いつも株式市場は荒れている、世界情勢の先行きはわからず、とても株など買うべきでない、と思っているのではないでしょうか? 株式市場はこの5年間基本的に上昇しているのに、自分達の気持ちの上では、「株は上昇しているのではなく投資は怖いし市場は常に乱高下している、株は手を出すものではない」という感覚との落差を感じないでしょうか。
 この多くの人たちが持っている先行きが見えない、投資は怖い、現金化して様子を見よう、という考えが日本人を席巻してやまないのです。日本の個人投資家は株式市場に関して一貫して弱気で持ち株を売り続ける一方です。統計を見ますと、2012年1兆9111億円、2013年8兆7508億円、2014年3兆6323億円、2015年4兆9995億円、2016年、12月16日現在で2兆7485億円と日本株を売り続けています。私がこれから株式市場は上げ始める、と指摘して上昇が始まった2012年から累計で22兆422億円という驚くべき額を売り続けているのです。様々な投資家がいますが、これほど一貫して売り続けている投資主体はありません。おそらくコラムを読んでいる人たちの感覚とそれを体現している日本の個人投資家の売り一辺倒の投資動向は変わらないのではないでしょうか。日本の株式では有名なメガバンクでも3%以上の配当を出す会社がありますし、輸出関連の優良銘柄でも3−4%以上の配当を出している会社がごろごろあるのです。金利がほとんど取れない預金に資産を入れ続けている日本人は資産運用のバランスが取れていると言えるでしょうか? 余りに株式市場の下げばかりを恐れすぎているように感じ、合理性を失っているように思えます。

●私が株を買うことを奨める理由
 では何故、このような弱気一辺倒な日本の個人投資家の売りが続くのに、日本の株式市場は上げが続くのでしょうか? 買いの主体を見てみますと、主に日銀、年金、企業の自社株購入、そして外国人投資家は時には大量に購入して、時には大量に売っています。
 この事実を捉えて、日本の株式市場は官制相場で、日銀や年金の買い付けに支えられて値段を保っている、やがて化けの皮がはがれて暴落することとなる、という見方にもなるわけです。
 私が何故、「株式を買うべきだ」と主張しているかと言えば、デフレからインフレへの変化がやがて生じるということ、そしてそれを国が強引に推し進めているという事実を甘くみてはいけないということなのです。
 確かに日銀の買い付けが強烈で株価を支えた効果があったのは事実ですし、日銀や年金の買い付けがなければ株価はもっと大きく崩れていたでしょう。しかし日銀は購入し続けましたし、年金も買い続けたのです、それは国策だからです。デフレからインフレに持っていくのは最も重要な日本の国策なのです! そして国はそれを実現することができるのです!
 だから国の覚悟を甘くみてはいけない! 株を買わなければいけない! のです。考えてください。日銀は円紙幣を印刷することができるのです。そのお金で株を購入し続けているのです。最初は年間4000億円だったものが1兆円になり、3兆円になり、今年7月には6兆円になりました。円紙幣を印刷して株が買われ続けているのです。それだけではありません。日銀は今でも年間80兆円という膨大な額の日本国債を、円紙幣を印刷して購入し続けているのです。お金は次から次へと今でも無尽蔵に供給され続けているのです。それでもデフレからインフレにならないので、この政策を止めることはあり得ません。

  人々はどうしても直近の事件とか世の中の雰囲気に押されがちで本質を見失っているところがあるのです。株が実は5年間上がり続けていたという事実は驚きませんか? このようなことは1980年代のバブル期以来のことなのです。しかし誰も株が上がっているとは思えず、危ないとしか考えていない。このギャップはなんでしょうか。

 日本は膨大な借金があり、これをまともに返すことは誰が考えても不可能です。しかしインフレが起こって、例えば物価が10倍になれば、消費税から得られる国の税収も必然的に10倍となり国の税収は飛躍的に増えて、今のGDPの250%に上ると言われている借金も簡単に返せるようになるわけです。歴史を見ればわかりますが、例え25年に渡ってデフレが続き物価が上昇することはなかったにしても、何処かでいきなりインフレが到来することは十分あり得るのです。そうなれば国の財政の問題は一気に解決します。要するに物価が上がる状態、継続的に上がろうが、いきなり大きく上がろうが、現在の物価水準からかけ離れた水準にならなければ国は借金を返すことはできません。はっきり言えば株が現在と比較して暴騰状態のような環境下にならなければ国は財政の問題を解決することはできないということです。遅かれ早かれいずれその日はやってきます。その走りが現在で、だから多くの人が意識できないのですが株が実はじわじわ上昇しているわけです。水面下に深い上昇トレンドが生じていることを感じ取らなければなりません。

●故竹田和平さんの教え
 今年、日本一の投資家と言われた竹田和平さんが亡くなりました。まことに残念なことです。和平さんは企業の応援団になると言って株式を購入しても会社の経営に口出しするようなことはしませんでした。まさに<旦那>として陰ながら企業を応援してきた投資手法です。毎日何回も<ありがとう>を連発するというその生き方には多くの人が感銘を受けたのです。
 その和平さんは投資について「株や不動産は、死んだふりをすることはあっても、決して死なない。時間はかかっても戦災をくぐり抜けて生き残る。でも現金や国債はインフレの前には一たまりもない。国家が作る紙で、それ自体に何の価値もないからね。株は実際に何かを生み出す会社が発行する世界共通の価値だがね」として株式投資の効用を説いています。そして「自分の投資先は、日本株、不動産、金(ゴールド)が中心、国債、外債、現金には興味がない。このままでは世界中で財政バブルがはじける。その時食えなかったらアウトだからね」と述べていました。
 折しも世界の経済の中心である米国でトランプ政権が誕生、米国は日本ほどではないものの、借金にまみれています。その米国が法人税を35%から15%に減税して、所得税を最高税率39%の7段階から33%、25%、12%の3段階に減税、キャピタルゲイン課税は増税なし、相続税は無税にするというのです。しかも公共投資を10年で日本円にして約115兆円行うとぶち上げました。まさに財政をフル回転させてお金もないのに借金で減税、公共投資を連発しようということです。これではインフレ期待が爆発するのも当然で、その流れを受けて円安となり日本株にも火が付いたのです。
 今こそ和平さんの言葉をかみしめる時でしょう、<財政バブルがはじける>ということは<インフレが到来する>ということです。株式市場の上げを決して甘くみてはならないのです。米国は大きくインフレ政策に舵を切ってきました。そして日本政府は円安も株高も大歓迎していくのです。世界の先行きは不透明で不確実性ばかりが強調されます。その通り先行きは見通せません、しかし世界中で有り余るマネーがうなりを上げようとしていることを見逃してはならないのです。

16/12

日本人と株式投資

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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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