“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2019.5
ドローンの脅威

 「われわれのドローンはサウジアラビアやUAEの首都を攻撃する能力がある」
 中東ではサウジアラビアと隣国イエメンの武装組織フーシ派との戦争状態が続いていますが、フーシ派の指導者は強気な言動を繰り返しています。フーシ派はサウジアラビアに対して執拗にドローンによる攻撃を繰り返しているのです。この地域の紛争は長く続いていますし、日本から見れば遠いところですから、大きなニュースにもなりません。一般的な注目度も低いでしょう。しかしここで繰り広げられている戦争の実態をみていると、われわれ日本人や世界全体にとっても大惨事が他人事でない日がやってくる戦慄を感じないわけにはいきません。実はドローンを使った新しい戦争の形態は驚くべき進化を遂げているのです。やがて世界を席巻するような大事件が起きて世界中が驚愕する日がくるのも時間の問題としか思えないのです。

●ドローンが脅威となり得る根拠
 単純に考えてみましょう。ドローンはどこでも買えます。ドローンを飛ばすことは誰に取っても極めて簡単なことです。近い将来には宅配もドローンを使って行う日が来るでしょうし、災害救助やインフラの補修や遠隔地への輸送も現在ドローンが使われ始めています。株式市場でもドローン関連株は将来有望とみられ人気化するケースが多いのです。
 ところが新しい技術は光と影があるものです。ドローンが便利で使い勝手がいいということは、逆に考えると悪いことにも簡単に利用できるということでもあります。
 かつて地下鉄サリン事件というオウム真理教が起こしたテロ事件では、日本中が震撼しました。地下鉄で猛毒のサリンがばらまかれたのです。この時オウム真理教は東京上空でサリンを撒き散らすことを計画していたと言われています。その計画遂行のため、ロシアからヘリコプターを購入していたという話もありました。現在であれば、かような大規模なヘリコプターなど必要もありません。どこでも簡単に購入できるドローンを使えばいいわけです。
 イエメンのような世界の最貧国で技術も物資も不足している国で戦争行為が可能なのは手軽に兵器に転用できるドローンを武器に使っているからです。現在戦闘用のドローンはイエメンで大量に生産されていると言われています。そのドローンでは、日本製やドイツ製や中国製などのモーターも多く使われているようです。とにかくドローン購入などは極めて簡単なのでたちが悪いわけです。イエメンでは商業用のドローンを改造し手榴弾など弾薬を装置させて武器として利用しているのです。
 現在の技術の発展でますます小さいドローンが作れる流れが生じてきました。米陸軍は手のひらサイズの偵察ドローン<ブラックホーネット3>を開発、各小隊レベルで配備しているということです。重量わずか18グラム、航続距離2キロ、速度は21キロ、全長16センチということです。無音で飛行してカメラ、センサーを装備、障害物を避けて目標に達するということです。
 「ブラックミラー」という近未来を風刺した米国のテレビドラマがあるのですが、そこではミツバチと同じ形態のドローンが作られて、殺人兵器となって、飛んでいき人の鼻の穴や耳の穴から侵入して脳に到達、対象者を破壊してしまいます。
 ここまでの技術が発展していなくとも、現在でも楽に商業用ドローンは飛ばすことができます。首相官邸の屋根で見つかったこともありますし、先日は渋谷のスクランブル交差点の上空にドローンが長く飛行していたことをNHKが報道していました。
 ドローンはどこでも飛べますし、小さいドローンなど飛んでいるのを見つけることすらできないでしょう。仮にドローンが5メートル上空を飛んでいれば上を見れば見えるでしょうが、ところが高度が上がって100メートル上空を小さなドローンが飛行していても誰も肉眼で確認することなどできようもありません。悪意を持ってドローンに弾薬や毒薬を積まれて飛行されても気づかれず、発見もできません。
 実はドローンの登場で戦闘の歴史的な形態に変化が出てきているのです。現実にイエメンとサウジアラビアでドローンを使った戦闘が繰り広げられているわけですが、その実態は極めて恐ろしいものです。

●歴史から見る戦争の形態の変化
 歴史をみると戦争の形態の変化が起こる瞬間があります。昔の「いくさ」といえば槍や刀などを武器として双方戦っていたわけです。武者が馬に乗って刀や槍を振り回し戦いあっていました。織田信長や豊臣秀吉、徳川家康が活躍した時代です。当時は鉄砲が出始めたころで、ちょうど戦争のやり方が変わっていく瞬間でした。鉄砲を如何に大量に入手して効率的に戦闘で使用するかが勝負を決める時代となっていったのです。常勝軍団の武田の騎馬団が滅びたのはこんな時代でした。織田、徳川連合軍は長篠の戦いにおいて3000丁の鉄砲を用意、襲ってくる騎馬隊を次々に鉄砲隊で粉砕したのです。以後合戦の典型的な形は変わりました。
 また日本の戦史を振り返ると最も輝いた戦いは、日本海で行われたロシアバルチック艦隊を迎え撃った日本海海戦です。この時東郷平八郎率いる日本艦隊はバルチック艦隊を前にして敵前で大胆にも船の向きを変え、艦船からの大砲が最も打ちやすい角度に艦船を位置させ、結果、艦隊からの大砲が面白いようにバルチック艦隊に当たり、バルチック艦隊をほぼ全滅させることに成功しました。当時は艦隊対艦隊が大砲を打ち合う戦闘が主流だったのです。ここではよく大砲の打ち方の実践訓練を十分やり抜いた日本艦隊が圧勝したのでした。
 ところが昭和の時代に入って情勢は著しく変化しました。日露戦争の後、第一次世界大戦では飛行機が戦闘の主力の時代となりました。それでも日本は日露戦争時の大勝の余韻があって、艦隊対艦隊の戦いばかり想定していました。ところが飛行機主体の戦いでは空母が戦争の帰趨を決める決め手と変化していったのです。艦隊対艦隊の戦いばかり想定していた日本海軍は役にも立たない巨大軍艦の建造に力を注いだのです。結果、戦艦大和や戦艦武蔵など戦闘するための艦船としては優れた艦船を作ったものの、飛行機主体の戦いの中では役に立たず戦艦大和など戦いでの出番もなく、最終的に米軍に沈没させられることとなったのです。艦隊対艦隊から飛行機の戦いに典型的に変わることで、昔の戦いでの成功体験は全く役に立たなくなったわけです。
 現在ドローンの出現でかような戦争形態の劇的な変化が訪れようとしています。かつては陸での鉄砲をはじめとする戦闘、空からは飛行機の戦闘、その上の宇宙からの宇宙戦争、そしてインターネット上でのサイバー戦争とあらゆる空間での戦闘形態が出来上がってきて、各々の対抗策が取られてきました。
 ところがここに全く手をつけていない戦闘空間が存在していたのです。地上2メートル程度から地上100メートル程度の空間、いわば鳥や虫が闊歩する空間です。ここにおいてはここまでの世界の戦史において戦闘形態がありませんでした。この新たな空間の戦闘を作り出したのがドローンです。これによって今までの世界の戦闘の歴史において誰も積極的に使ってこなかった新しい戦闘空間が生まれてしまったわけです。実質的にこの空間を制御しなければ今後出てくる新しい戦争に勝つことはできません。
 イエメンで使われたドローンは時速240キロのものもあったということです。かようなドローンをどうやって撃ち落とすのでしょうか? ウクライナに世界最大級の武器庫があったということですが、ロシアのドローンから投下された一発の手榴弾によって武器庫が爆発、全滅させられたというのです。
 実際ドローンに手榴弾を詰め込まれたり、毒薬を詰め込まれたりして投下されたり、自爆されたりしては防ぎようもないでしょう。音もしない、電波にも反応しない、見えない、こんなドローンをどうやって撃ち落とすのですか?
 ミサイルで撃ち落とす? 無理です。小さすぎてとても撃ち落とせません。電波妨害する? 考えてみてください、現在あらゆるところに電波が通っています。ですから我々はどこでもスマホが使えるわけです。特定の地域ならともかく、我々が暮らすエリアにおいて電波は必要不可欠なものなのです。これではドローンはどこでも自由自在、結果ドローンから攻撃されたら防ぎようがないというわけです。
 現在の状況はドローンを使った新しい戦闘形態を試行錯誤している過渡期です。イエメンを始めとする中東でドローンを使った実践的な戦闘実験が行われていると考えるべきでしょう。結果的に現状では誰でもテロリストでも簡単にドローンで攻撃ができてしまいます。ドローン攻撃を防御する方は極めて難しく、防御の決め手が見つからないのが実情です。軍事技術や殺人技術も行き着くところまで行き着いてきたように思えますが、今後世界を震撼させるドローンを使った大規模な事件が起こるのも避けられないように思えます。

19/12

オリンピックイヤー

19/11

欧州に忍び寄る危機

19/10

ペンス演説

19/09

先進国社会の病理

19/08

新刊『アメリカが韓国経済をぶっ壊す!』(仮題)まえがき

19/07

ここまできた顔認証技術

19/06

動き出した金相場

19/05

ドローンの脅威

19/04

株式投資に目を向けよう

19/03

現代金融理論(MMT)

19/02

米国を襲う<反資本主義>の波

19/01

ユヴァル・ハラリ氏の警告


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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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