“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2008.11
ターミネーター

 ハリウッドでも、メガトン級のヒットとなると、長く人々の記憶に引き継がれるし、また、スターも作ります。そんな映画の一つに<ターミネーター>があります。
 ご覧になった方も多いと思いますが、機械に反乱を起こされた人間が、ほぼ全滅させられ、残った人間達と機械との壮絶な戦いが繰り広げられる、というストーリーで、当時、その設定の面白さと、ショッキングな結末が話題を呼んだものです。
 機械が作り出した、人間そっくりのロボットが<ターミネーター>。人間を殺すことだけがプログラムされているのです。いくら破壊しても、たとえ部品―つになったとしても、動くかぎり人間を殺そうとする姿に、恐ろしさとショックを受けた人も多かったと思います。そしてその<ターミネーター>の役を、あまりにリアルに演じた、アーノルド・シュワルツェネッガーは、ここから一躍スターとなり、その後、数々の主殺をこなして、現在はカリフォルニア州知事となっています。


株式市場で一人勝ちしているものの正体

 現在、世界の株式市場はひどい暴落となり、ほとんどの投資家は天文額的な損失を抱えるに至っていますが、この焼け野原の株式市場を、のっそのっそと我が物顔に闊歩している存在があるのです。CTA(コモデティー・トレーディング・アドバイザーズ=商品投資顧問業者)、別名マネージド・フューチャーズと呼ばれるヘッジファンドです。
 株式市場には、一般的な株式の取引と、先物取引(日経平均やトピックスといった指数を売買する)やオプション取引(指数に絡む権利売買)というデリバティブ取引があります。
 普通の株の売買であれば、一般の人にもわかりやすいでしょうが、デリバティブ取引は、かなり複雑で、一般の人達は近寄り難いものです。ですからこのデリバティブ取引は、主にセミプロやプロの市場と言っていいでしょう。CTAは、このデリバティブ市場を専門とする、先物、オプション専門のヘッジファンドです。
 今、数多くというよりほとんどのヘッジファンドは大きな損失を抱え、解約ラッシュで悲鳴を上げていますが、CTAだけは、涼しい顔で、毎日のように株式市場で暴れているのです。
 普通の人は、株式市場は、その株の業績の推移で動くものと思っていると思います。しかし、もう一つ、先物市場に絡む動きが常に存在しているのです。というのも、先物というのは、まさに先の物、すなわち、先行きの値段を売買しているに過ぎません。たとえば、トヨタは1円の円高で、400億円の損失を蒙(こうむ)りますが、それを阻止しようとして、先物の為替を売ったり、買ったりして利益を確定するのです。この先の物が動けば、将来、高いとか安いとかという値段がついているわけですから、当然、それが巡り巡って今の相場の値段に影響を与えるわけです。
  しかも、その額が巨大だったらどうでしょうか? 
  たとえば現在、為替相揚が1ドル100円で売買されているときに、トヨタをはじめとする自動車会社が円を買って、3ヵ月後の円を90円で売り買いしていたらどうでしょう? 3ヵ月後が90円なら、「今の100円は円高に動きそうだ」と100円の現在の相場に、円高の圧力がかかりませんか? 円を買いたくなりませんか? もしくは、もっと積極的に、「8ヵ月後の90円と現在の100円の差額を儲けることはできないか」と考えるかもしれません。


 このように先物の取引は、現在から1ヵ月や2ヵ月、3ヵ月先の値段の取引であって、当然跳ね返って現在の市場に影響を与えるのです。そしてこの先物や現在の現物市場の値段、もっと複雑に言えば、オプション取引などという手法を使うとさらに巧みに賭け口が広がるのです。
 頭が痛くなってくるかもしれませんね。実はこの先物、オプション、現物などといった取引を混ぜ合わせて、確実に儲かるであろう均衡点を見つけ出そうというのが、いわゆる「金融工学」というシロモノなのです。
 この金融工学に基づいて、世界の巨大金融機関は例外なく、様々なものに投資してきたのです。しかし今、人間の行う相場は、機械とは違う、まさに歴史にない動きを始めてしまいました。そのため、金融工学に守られ、完璧だと思っていた投資がすべて、想定外の巨大な損失となって、世界中に襲いかかってきているのです。
 とはいえなんと、まだしっかりと生き延びていて、利益をたたき出しているものがあったのです。それが、ヘッジファンドです。CTA、すなわちコモデティー・トレーディング・アドバイザーズはなんと、ほとんどが“ロボットによるトレーディング”を行っています。人間様が青くなっているのに、一人勝ち、株式市場で、毎日のように暴れています。 


 かくして人間様は機械にすべてのお金を巻き上げられ、一文無しになって、お互いが争って自滅に向かうという、<ターミネーター>の映画とは少し違いますが、同じ結果になろうとしているのです。

09/12

新興衰退国

09/11

デフレとインフレ

09/10

円高で、為替仕組み債が破裂(破綻続出へ)

09/09

悲惨なアイスランド

09/08

不発弾(米住宅問題)が爆発するとき

09/07

秋に向け、鳴りをひそめている危機

09/06

今後の行く末は?

09/05

ゆっくり進むドル危機

09/04

上昇、やがて、壊死する株式市場

09/03

アメリカン・エキスプレスのキャンペーン

09/02

リーマンと山一證券

09/01

ゲート条項

08/12

ドバイの落日

08/11

ターミネーター

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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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