“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2009.12
新興衰退国

日本は新興衰退国!?
 「日本は“新興衰退国”だ!」10月にロンドンで行われたヘッジファンドの会議では、こう結論づけられたのでした。
 「新興国」に対して、「新興衰退国」、このコントラストは何なのでしょうか? 新興国は新しく伸びていく国、衰退国は衰えていく国? なぜ日本を衰退するというのか?

 BRICsに代表される中国やインド、ブラジルなどは発展途上で今やその国の人達の暮らしは爆発的に伸びていく直前です。我々がそうだったように、初めてテレビを見た瞬間、また初めて車を見た瞬間のあこがれのように、新興国の人達にとっては、新しい車などはあこがれの対象でしょう。40年前の日本のように活気づいて人々は働いているに違いありません。豊かさを求めていくという目標がはっきりしています。テレビが欲しい、車が欲しいなどというのは極めて自然な人間の感情であって、そのようなエネルギーが人々を一生懸命働かせるのかもしれません。
 また発展途上の国というのは、若い人達に溢れているというのも特徴です。BRICsの後に続くと言われるベトナムやインドネシアなどもその人口構成はまさにピラミッド型で、高齢者は少なく、若い人達で溢れています。これらの国の町自体もエネルギーで、はち切れんばかりです。

 翻(ひるがえ)ってわが日本を見ると、どうしても高齢化の波に押され、増えない人口が社会の活性化を奪っている感じは否めません。やはり人口が増えないということはある意味では決定的です。一人から二人に増えれば、当然食料も二人分要りますし、住宅や車、衣料、何でも需要が増えるのは当然です。人口が2倍に増えるところが同じ規模の経済では、人々は2分の1の食糧や半分の大きさの住宅に住むことになるわけで、そのようなことはないでしょう。人口が増えるということは自然に経済規模が膨らむということなのです。このことを日本に当てはめれば、日本の社会は人口が減っていくわけですから深刻です。車にしても住宅にしてもどのように新しい需要を作っていくのか? 経済的に考えると持続的発展という意味でどうしても難しい問題があるわけです。ですから民主党も子育て支援ということで、子供が産みやすい社会を作ろうと新しい政策を打ってきているわけですが、この方向は正しいでしょう。政策的にはもっと大胆にやる必要があるとは思いますが。
 今、ヘッジファンドを中心として日本を衰退国という場合、まずは日本のような成熟した社会においては、今後、人口が増えていくような社会になっていくのは極めて難しいという考え方があります。彼らの場合はこのことが直接、金儲けという形に転化しますので、勢い、日本売りということになっていくわけです。
 人口減少という問題だけではありません。日本の財政の問題もあります。今度の予算でも税収37兆円に対して95兆円の支出となりました。国債の発行が50兆円を超えることは確実で、いよいよ63年ぶりに支出より国債発行が上回ったのです。370万円の収入で950万円の暮らしをしたらどうですか? 1年だけではないのですよ、もう何年も続いているのですよ!個人も国も理屈は同じです。結果は明らかではないですか!
 今までも借金財政を続けてきた日本国ですが、もはや誰も今まで蓄積された借金を返せるとは思っていないでしょう。今や日本の累積赤字は1,000兆円に迫ろうという勢いで、何とGDPの200%、2倍です。かつてこのような借金を背負って、その借金を返すことができた国はありません。破綻という臨界点に向かっていることは間違いないでしょう
 よく日本の国債は、日本人の金融資産で賄(まかな)われているから安心と言いますが、そもそも日本人の金融資産は個人に属するものです。皆さん個人のものです。国のものではありません。そこには本来自由意思があって、どこに使おうが、投資しようが個人の自由です。仮に今、多くの日本人が低い金利の預金は拒否して海外の高金利を求めて一斉に外貨投資に走れば、日本の銀行は資金手当てを日本国債を売って用意するしかなく、そうなれば、国債金利は上昇して日本国は一気に破綻の道へ進んでしまいます。金融機関からみると不景気なので資金の投資先が国債しかなく、また個人サイドでは日本人は保守的でお固い投資専門、勢い預金ということになりますので、その資金が預金から結局国債に流れるという微妙なバランスを保っているのが現状なのです。

 金利の指標となる「10年物国債」の金利が現在は1.3%弱ですが、この金利が仮に景気回復とか国債の調達が難しくなって金利が上がるとかで5%以上になろうものなら、その金利返済だけで50兆円となります。そうなれば税収37兆円の日本が国家として財政破綻するのは誰でもわかります。収入で金利すら払えなくなるのですからね。
 日本政府も、「国債発行を44兆円以内に抑える」と、実現不可能なお題目を言っていますが、誰も達成できるとは思っていませんし、日本政府自身が単なるスローガンだということはよくわかっているはずです。要するに財政再建に力を入れているという姿勢を示さないと、放漫財政ということで国債消化が難しくなり金利上昇という過程に持っていかれるのが怖いのです。言わばできもしないことを努力している姿勢を見せることで、かろうじてごまかしているわけです。
 しかし、今回、日本は新興衰退国というレッテルが世界中に宣伝されたのは強烈です。人口は減る一方で、そのうえ天文学的な借金を背負っている日本。すでに臨界点は越えた、後は国債の消化に不備を起こし、金利の止まることのない上昇を招き、国家破綻へと至る、という日本破綻のシナリオは、もうすでに有力ヘッジファンドの間ではできているのです。
 現在GDPの200%という途方もない借入は2014年には246%に、2019年には300%になっていく、とIMF(国際通貨基金)も堂々報道しているのです。そしてその時は日本国内での国債消化は不可能で、外国に頼るしかなく、金利上昇、国家破綻へと至ると示唆しています。先進国の中で、いの一番に破綻するのは日本だという考えがすでに広く世界に喧伝されているのです。人口が減って経済的な成長戦略のない日本にそれを防ぐ手段はないと思われているのです。

 年末にかけて日本の株もやっと上がってきました。買い方の主力は外人買い、日本の個人は売り越しです。彼らが最後まで日本株を買い続けると思ったら大間違いです。勢いよく買い上がって日本人を安心させたその時から徹底的に売り叩くシナリオが、しっかりと裏で存在していると思わなければなりません。景気回復、株価上昇、明かりが見えてきた、そんなムードや報道が目立ってきたら要注意、ハイエナのようなヘッジファンドは日本株を買い上がるだけ買い上がって、日本人の安心した顔を見るのを待っています。日本人がたまらず投資するのを待っているのです。そしてその時から怒涛の売りを浴びせ、日本を震撼させるに違いありません。株は大きく動けば動くほど儲かる、上に放りあげてから、今度は叩く、儲けるためには手段を選びません。経済動向の推移を見ながら素直に株が動くと思ったら大間違い、景気なんて株を放りあげてやればよくなるのです。景気も株も思うように動かす、巨大な資金は何でもできるのです。

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(※朝倉慶氏は、(株)船井メディア企画の『朝倉慶の21世紀塾』でも詳しい経済レポートやCD情報、セミナーを開催、お届けしています。よろしければご活用ください。)


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止まらない<株売却ブーム>

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アベノミクス

14/11

バンザイノミクス

14/10

新刊『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(舩井勝仁との共著)まえがきより(※目次、舩井勝仁のあとがきも含む)

14/09

加速する物価高

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物価高騰に備えよ

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まえがき(新著『2011年 本当の危機が始まる!』より)

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金(ゴールド)相場の映すものは?

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ギリシア問題の末路

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ゴールドマン・ショック

10/03

郵政改革の裏

10/02

金融問題公聴会

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グーグルVS中国

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新興衰退国

09/11

デフレとインフレ

09/10

円高で、為替仕組み債が破裂(破綻続出へ)

09/09

悲惨なアイスランド

09/08

不発弾(米住宅問題)が爆発するとき

09/07

秋に向け、鳴りをひそめている危機

09/06

今後の行く末は?

09/05

ゆっくり進むドル危機

09/04

上昇、やがて、壊死する株式市場

09/03

アメリカン・エキスプレスのキャンペーン

09/02

リーマンと山一證券

09/01

ゲート条項

08/12

ドバイの落日

08/11

ターミネーター


船井幸雄・朝倉慶氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月に発売された、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が大好評発売中!!

『朝倉 慶の21世紀塾』を2009年2月より開始(主催:(株)船井メディア)
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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 船井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を船井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に船井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)を発売。

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