“超プロ”K氏の金融講座
このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。
解約したくても解約できない!?
<解約できない!>、昨今、マドフ事件でも明らかになりましたが、ヘッジファンドに投資するような人達は、普通はかなりの資産家です。その彼らが恐怖と共にパニックになって、<早く、金返せ!>と叫んでいます。
しかしながらヘッジファンドはプロ中のプロ、こんな状態で解約されて、パフォーマンスの悪さがばれたら、二度と立ち上がれない!とりあえず、ここは、一端、解約を踏みとどまってもらい、3月までに、最後の一勝負、マドフになるか、生き残れるか乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負の最中です。
昨年、世界中の株式相場をはじめ、商品相場などを含めて、市場という市場は惨憺(さんたん)たる有様となりました。リーマンショックから一気に相場の暴落が始まったのでした。様々な要因は指摘されていますが、衆目一致するところは、「ヘッジファンドの換金売りが相場の急落につながった」ということです。
ヘッジファンドの昨年6月末の運用資産は約200兆円と言われていました。ところが、モルガンスタンレーによれば、この運用資産は、現在およそ約100兆円に半減しているとのことなのです。この100兆円近い資金の流出の過程で、世界の市場の大暴落が起こったのでした。
ヘッジファンドは“レバレッジ”といった、その資金を何十倍にも膨らませて投資していますから、この過程で、世界の市場を混乱させた資金は2000兆円にも3000兆円にも及んだことでしょう。そもそも昨年、世界の株式市場で失われた資金は約3000兆円と言われます。時価総額は半減したのです。ヘッジファンドはその名のごとく、ヘッジしている関係で、すべてが買いから投資しているわけでなく、下がったら儲けることのできる空売りや、デリバティブを使った、先物、オプションといった手法を駆使していました。これらが一気に市場から流出されたのですから、市場が、普通の値動きで収まるはずはなかったのです。
一見すれば、とてつもなく大きな市場に見えた世界の株式市場でしょうが、実際のメインプレイヤーはヘッジファンドで、まさに、池の中を、所狭しと泳ぐクジラのごとく、暴れに暴れ回ったのでした。
瀕死の状態にあるヘッジファンドの今後の出方は?
そして、昨年12月までの解約ラッシュは、11月あたりで峠を過ぎ、いくぶん世界の株式市場にも落ち着きが戻りました。さらに今月20日に発足したオバマ政権への期待と相まって、世界の株式市場は、昨年からみれば、安定しているかのようにも見えます。しかしながら、現実の状況は一つとしてよくなってはいません。実体経済の悪化は、かつてないほどのスピードで、世界を襲ってきています。また、一向に話に出てきませんが、5000兆円にも上るCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の引き受け手のメインプレイヤー(金融保険の引き受け手)であるヘッジファンドの資産が100兆円にまでに減少して、いかに決済されるのか全く謎です。とてもではありませんが、株式市場はじめ、為替市場を含めて、次なる大混乱を待っている状態にしかすぎないと言えるでしょう。
ただ一点、「オバマがなんとかしてくれる。素晴らしい経済チーム、サマーズ、ガイトナー、バーナンキ、史上最高のチームが、ニューディール政策を凌ぐ、経済刺激策を出してきてくれるに違いない」との期待が世界の市場を支えています。
しかしながら、第2弾の波乱要因が、時を同じくして待ち構えているのです。ヘッジファンドによっては、『ゲート条項』という解約の制限をうたった条項を盾にとり、昨年からの怒涛の解約請求を逃れてきたファンドも多数にのぼっていました。
バークレイズ・キャピタル証券の宮島秀直氏によれば、解約を凍結したヘッジファンドは新興国株式型で約1000本、グローバル株式のロングシショート型で、約600本など全部で1800本前後に達するとのこと。そして世界のヘッジファンドは全部で6500本程度なので、約25%が解約を拒否してきたというのです。この中には巨大年金などを預かる大型ファンドも多数あるとのことです。そしてこれらの資産総額は40兆円から45兆円に達すると指摘しています。すでに100兆円にまで資産を失ったヘッジファンドがさらに40兆円も解約を待っている状態ということは、昨年6月の200兆円の運用資産からみると、4分の1近くになるのです。もうすでに、壊滅状態といって間違いないでしょう。
<ゴキブリ取りだ>金を入れたら、解約をしようとしても、返してくれない。
この、一度入ったら抜けられない状況をもじって、ヘッジファンドに対しては強烈な皮肉が言われるようになりました。ブルンバーグには、こんな話も出てきました。
「ヘッジファンドという言葉の定義として、こういうのはどうだろう。『良い時は儲けの20%を懐に入れ、悪い時期には金を返さない集団』。」
さすがに四面楚歌となったヘッジファンドもいよいよ今年3月末の解約は、なかなか断りきれなくなってきているのです。宮島氏によれば、世界の年金基金を運用しているファンドなどから「解約凍結を解除しなければ、国際問題に発展しかねない」との強硬な意見なども、でてきているとのことなのです。
3月末、解約の申込期日の最終は2月の中旬、すでにこの圧力はヘッジファンドに大きくのしかかってきているはずです。時間はあまりない、短期で手っとり早く、収益を上げるには、売りか、買いか? 折からついに世界中の株式相場も息切れしてきた模様です。
昨年10月の安値から3ヵ月の安定期間は終わり、新たなる世界的な波乱が始まってきたようです。日本の相場も、2月13日の先物(オプション)の決済日に向けて、巨大な売り仕掛けが待っているかもしれません。
80%という前代未聞の人気で、発足したオバマ政権ですが、その初日のニューヨークダウは、何と4%の値下がりという、新大統領の就任日としては、かつてない下げを演じたのです。まさに汚れ役をすべて引き受ける、オバマ新大統領の前途を暗示してくれました。
シティ・グループ、バンク・オブ・アメリカについで、ついにイギリスのRBS(ロイヤルバンク・オブ・スコットランド)にも金融不安が発生してきました。次はいよいよ時価会計の甘かったヨーロッパの巨大金融機関の順番です。実体経済の落下と相まって、世界中の波乱の、第2幕の始まりです。

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★『大恐慌入門』
(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、朝倉慶氏の新刊『恐慌第2幕』
(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売!さらに最新刊 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』
(飛鳥新社刊)が5月30日に発売!
★『朝倉 慶の21世紀塾』を2009年2月より開始
朝倉氏の最新情報を【A】レポート、【B】CDマガジン、【C】セミナーから
詳しくはコチラ→http://www.funaimedia.com/asakura/index.html
経済アナリスト。
船井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を船井幸雄にレポートで送り続けてきた。
実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。
著書『大恐慌入門』
2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』
(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』
(飛鳥新社刊)を発売。