“超プロ”K氏の金融講座
このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。
破綻劇がもたらす都合のよい効果
現在の金融危機の状態を、1929年の危機と比べたり、日本の1990年代のバブル崩壊後の状況と比較して、論評する意見が多いようですが、それらの根本的な問題点は、今回のクレジットバブル崩壊の破壊力が、以前のケースとはケタ違いで、比較不能である、という視点が欠けているところです。
この事実を、リーマンの破綻と、よく引き合いに出される山一證券の破綻とを比べることで、見ていきたいと思います。まず、両者の共通点を思われるところは、“スケープゴート説”です。山一證券は、今でも言われますが、倒産させる必要があったのか? ということです。1997年当時、日本は激しい金融危機に陥っていました。多くの銀行の債務超過は公然の秘密であり、この問題を如何に処理するか? 当局は頭を悩ましていたのです。1995年には住専に5000億円近い公的資金を導入しましたが、このとき、喧々諤々(けんけんがくがく)の議論となって、国会は紛糾したのです。
世論が税金の無駄使いは許さない、というムードになっていて、とても公的資金導入という雰囲気はなかったのです。結果、反対を押し切った形で、税金は投入され、今でも当時のことは語り草となっているのです。この状況に懲りた国は世論誘導に走ります。国民全員が納得する形で、公的資金の導入をしようという腹です。それには、国民に危機感を持ってもらうことが必要だったのです。いわゆる恐怖の演出による世論操作です。そのターゲットになったのが山一證券でした。
山一が飛ばしと呼ばれる形で大量の隠し不良債権を持っていたのは事実でしたが、当時こんなことは公然の秘密であって、どこの証券会社も銀行も多かれ少なかれやっていたことだったのです。程度の差は当然あったとは思いますが。すでに事業通の間では、その半年も前から山一證券の倒産は囁かれていたのでした。そして秋、いきなり山一證券は破綻という風に烙印を押されたのでした。このニュースは日本全国を震撼させました。「あの山一が!」と国民は絶句したのです。そして金融危機の深刻さを理解しました。そして以後、公的資金を銀行に導入する話はとんとん拍子に進んだのです。
アメリカで起こったリーマンの破綻劇もこれに酷似しています。全米4位の証券会社です。当然、「あのリーマンが!」とアメリカ人だけでなく世界中の人達が絶句しました。それどころかこの破綻劇をきっかけにして、全世界の激しい信用収縮が始まったのです。そして、同じくこの事件をきっかけにして、金融機関に対しての税金投入がアメリカにおいてもすんなりと進むようになりました。ショックで、人々は危機を回避する必要を感じたのでした。
リーマンと山一證券、破綻の根本的な違い
それでは、この10年違いで起きた2つの破綻劇の金額的な結末はどうなったのか?
これを調べれば、そのスケールの本当の姿がわかるというものです。まずその破綻時の負債総額です。山一の場合は、3兆5000億円、当時としては、驚きの額だったのです。 これに対してリーマンの負債額は6000億ドル、当時の円換算で約63兆円と言われました。額にして約20倍です。これだけでも、スケールの違う破綻劇だったことがわかります。
しかし、さらに驚くべきことは、それからの回収劇なのです。山一證券のケースでは最終的に融資した日銀の負担額は1111億円で、これは破綻時の負債額のわずか3%、要するに山一證券は破綻したものの、清算したら、その97%が回収できたということです。これでは破綻時の様々な混乱やコストを考えれば、破綻させなかったほうが良かったと言えるでしょう。まさに山一はスケープゴートとなって国の世論誘導の犠牲者となったことが裏付けられました。
では、同じケースのリーマンを見てみましょう。リーマンの清算はその債務についてCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)決済のためのオークションが行われました。理屈としては債権の回収ですから、山一證券の場合には、日銀が引き受けたケースと同じことで、この金額でリーマンは清算されたのです。そしてこの金額は何と市場からの回収率9%という驚愕の金額だったのです。9%しか回収できなかったということは、およそ約56兆円近い損害、山一證券の1111億円と比べてください! およそ500倍です! 山一證券のときとは全く違う酷い債務超過の破綻劇だったのです。山一の時は無理矢理破綻させたといえますが、リーマンのケースは隠しに隠していたのです。
同じように見えて、実は全く違う。これこそが今回の未曽有のバブル崩壊のスケールなのです。日本のときのケースなど、比較の対象にはなりません。今現在、起こっているシティー・グループやバンク・オブ・アメリカの問題も、AIGの問題も全ては桁違い問題なのです。

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★『大恐慌入門』
(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、朝倉慶氏の新刊『恐慌第2幕』
(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売!さらに最新刊 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』
(飛鳥新社刊)が5月30日に発売!
★『朝倉 慶の21世紀塾』を2009年2月より開始
朝倉氏の最新情報を【A】レポート、【B】CDマガジン、【C】セミナーから
詳しくはコチラ→http://www.funaimedia.com/asakura/index.html
経済アナリスト。
船井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を船井幸雄にレポートで送り続けてきた。
実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。
著書『大恐慌入門』
2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』
(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』
(飛鳥新社刊)を発売。