“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2009.05
ゆっくり進むドル危機

なぜ、このタイミングでドル安?
 ドルがじわじわと値を下げてきています。先週(5月17日〜)は93円台まで、円が上昇してきました。この動きは加速していくのでしょうか? 今のところはドル暴落といったドラスティックな流れが始まってきたとは思いませんが、底流には、ゆっくりとしたドル危機が横たわっていて、いずれ、その危機は収集のつかない爆発となって、世界を襲ってくる、と考えておいたほうがいいでしょう。
 今回の特徴的なことは、世界の株式市場が息を吹き返し、安心感が広がってきつつある今、このときに、ドル安が始まってきたということです。このタイミングでなぜ、ドルが売られてきたのか? 実はここに次なる、本当の危機の芽が見えるのです。
 昨年のリーマンショックから、暴落に至った世界の株式市場は、連鎖的に数多くの危機を誘発してきました。アメリカのみならず、世界経済のリード役と言われた新興国の破壊的な株価の下げや、ヨーロッパ諸国ももちろん、ひどい状態に陥りました。石油で潤っていた中東地域でさえ、資源価格の暴落によって危機状態となったのです。
 まさに世界中、どこを見渡しても例外なく、危機に陥ってしまいました。このとき、世界は極端な流動性不足、いわゆる資金不足状態になったのです。

 この貧血状態に陥った世界の状況に、即座に必要とされたものは「現金」、要するに「ドル」だったのです。危機といってもお金があればしのげるのです。そのため、昨年の秋から世界中で必要とされる、異常なまでのドルの供給が、これでもか! これでもか! とばかりになされたのでした。そしてこの状態は今年の3月まで、収まることなく続いてきたのです。いわば、世界は断続的にドルの供給を受けて、それによってのみ危機が回避されてきたと言えるのです。

溢れたドルが招く、新たな危機とは?
 アメリカの中央銀行であるFRBは、世界の期待に応えて、ありとあらゆる資産(とても売れない証券化商品はじめ、破綻会社の不良資産)を担保に、大量のドル紙幣を発行してきました。世界各国における国債発行も、基本的には資金の供給であって、借金の証文のもとに紙幣を発行してきたことに変わりはありません。その結果として、世界中に、世界の基軸通貨であるドルが行き渡ったのでした。
 そして今、昨年から始まった株の暴落や、原油をはじめとする商品価格の暴落が止まって、世界の経済も落ち着きを取り戻してきたようです。そうなると、今度は次なる危機、いわゆる、溢れかえったドルがその多額の供給の重みに耐えきれなくなっていく、という全く別の危機が訪れるのです。簡単に言いますと、<株で大損してしまって破産してしまうので、それではまずいから、お金を刷って急場をしのいだ。そうしたら、お金を刷り過ぎてしまったから、お金の価値がなくなってしまった>ということです。
 このお金の価値がなくなってしまう、ということは経済学で言えば、インフレです。その兆候が少しずつ、見え始めているのが、今のドル安の流れと考えればいいでしょう。皮肉なことですが、危機が去ったら、今度は前回の危機を無理して止めた政策(ドル大量供給)の激しい副作用が始まってきた、というわけです。
 一般常識で考えても、お金を刷って景気が良くなるなんて、おかしいと思いませんか? そんな上手い話には何か、落とし穴があるに違いない、と思うでしょう! それが将来のインフレという形となって現れるのです。
 今はまだ、穏やかな流れですが、注意しなければならないのが、商品相場、特に大豆やトウモロコシ、小麦といった主要穀物の値段です。大豆は昨年7月の高値、1ブッシェル、16.6ドルから、昨年12月の安値、7.7ドルまで暴落した後、現在5割以上の上昇を見せて、11.75ドルまで値段を戻してきています。主要な輸出国であるアルゼンチンの不作は深刻で、今後の展開は予断を許しません。また、トウモロコシの価格も直近で2割も急騰してきました。問題はこのトウモロコシの現在の在庫率なのです。5月の第2週に米農務省が発表した2009−2010年度末(2009年9月−2010年8月)の米国内の在庫率は、なんと9.1%、危険水域と言われる10%を割り込んできました。ちなみに2005年の在庫率は20%でした。実は、商社間ではすでにかなりの逼迫(ひっぱく)感が出てきているのです。
 昨年は春から夏にかけて、異常な急騰を演じた商品相場ですが、今、ドル安という新たな危機を迎えて、新しいステージ、<必需品だけのインフレ>という最も警戒すべき事態に向かっているのです。

(※朝倉慶氏は、(株)船井メディア企画の『朝倉慶の21世紀塾』でも詳しい経済レポートやCD情報、セミナーを開催、お届けしています。よろしければご活用ください。)

バックナンバー
23/04

危うい中東情勢

23/03

国債投資で破綻した米銀

23/02

食糧危機は再燃するか

23/01

ならず者国家 ロシア

22/12

インフレが起こす激変

22/11

資産所得倍増プラン

22/10

インフレ時代に突入

22/09

無謀な為替介入(ヘッジファンドの餌食に)

22/08

株安望んだ米金融当局

22/07

食糧を武器にするロシア

22/06

中国、健康コードを乱用する当局

22/05

ソロスの警告

22/04

仏大統領選挙

22/03

脱ロシアという難題(サハリン権益の行方)

22/02

中露蜜月時代へ

22/01

賃金上昇が始まる?

21/12

インフレがやってくる

21/11

COP26 脱炭素の挫折

21/10

アベノミクスは間違いなのか?

21/09

新刊『株高、資源高に向かう 世界経済入門』まえがき

21/08

習近平独裁 ソロスの警告

21/07

中国 共産主義へ里帰り?

21/06

武漢ウイルス研究所の闇(コロナは人災)

21/05

消滅する<恋愛>

21/04

孤高の天才投資家 西野匡の初めての本をご紹介

21/03

不気味な商品相場上昇(中国に振り回される世界)

21/02

景気回復へ

21/01

コロナ ワクチン接種へ

20/12

止まらない格差拡大

20/11

真のリスクとは(コロナ危機は終了)

20/10

緊迫する台湾情勢

20/09

安倍政権の功績

20/08

テスラ急騰にみる警告

20/07

コロナワクチン開発急ピッチ

20/06

輝き増す金相場

20/05

脱中国の動き

20/04

迫り来る食料高騰

20/03

今こそ株式投資(その2)

20/02

今こそ株式投資

20/01

グリーンスワン

19/12

オリンピックイヤー

19/11

欧州に忍び寄る危機

19/10

ペンス演説

19/09

先進国社会の病理

19/08

新刊『アメリカが韓国経済をぶっ壊す!』(仮題)まえがき

19/07

ここまできた顔認証技術

19/06

動き出した金相場

19/05

ドローンの脅威

19/04

株式投資に目を向けよう

19/03

現代金融理論(MMT)

19/02

米国を襲う<反資本主義>の波

19/01

ユヴァル・ハラリ氏の警告

18/12

欧州混乱から見える世界の潮流

18/11

中国の危険な挑発

18/10

米中間選挙(衰えぬトランプ人気)

18/09

輝き失った金相場

18/08

急進化する米国政治

18/07

衰えぬトランプ人気

18/06

米中対立とトランプ劇場

18/05

監視社会

18/04

イラン攻撃はあるか?

18/03

強権、独裁化の時代

18/02

新著『株の暴騰が始まった!』まえがき

18/01

イアン・ブレマーの警鐘

17/12

ビットコイン相場は終了へ

17/11

年金が大黒字

17/10

株式市場の<びっくり現象>

17/09

中国 止まらぬネット企業の勢い

17/08

好調な日本経済と外部情勢

17/07

仕事はなくなるのか?

17/06

イスラエルとサイバー技術

17/05

欧州危機は去ったか?

17/04

加速する人手不足と日本の将来

17/03

民主主義の危機

17/02

止まらない米国株の上昇

17/01

迫りくる戦争の危機

16/12

日本人と株式投資

16/11

トランプ勝利をもたらしたもの

16/10

新著『暴走する日銀相場』まえがき

16/09

AI技術者に殺到するヘッジファンド

16/08

止まらないデフレの行く末

16/07

ウーバーライゼーション

16/06

衝撃的な英国の離脱派勝利

16/05

衣食住がただ、お金のいらない世界に!?

16/04

熊本地震とヘリコプターマネー

16/03

トランプ旋風が写すもの

16/02

新著『世界経済のトレンドが変わった!』まえがき

16/01

波乱で始まった2016年

15/12

2016年の展望

15/11

中国の結婚事情

15/10

郵政上場

15/09

現れ始めた高齢化社会のひずみ

15/08

荒れた株式市場の先行きは?

15/07

異常気象の連鎖

15/06

値上げラッシュ

15/05

新刊『株、株、株! もう買うしかない』まえがき

15/04

日米同盟強化の恩恵

15/03

アベノミクス その光と影

15/02

ギリシアの悲哀

15/01

止まらない<株売却ブーム>

14/12

アベノミクス

14/11

バンザイノミクス

14/10

新刊『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(舩井勝仁との共著)まえがきより(※目次、舩井勝仁のあとがきも含む)

14/09

加速する物価高

14/08

新冷戦という脅威

14/07

新刊『株は再び急騰、国債は暴落へ』まえがき より

14/06

深刻化する人手不足

14/05

何故ドルなのか

14/04

株高は終わったのか?

14/03

ウクライナを巡る暗闘

14/02

中国ショック

14/01

ハッピー倒産ラッシュ

13/12

インフレに向かう日本

13/11

株式投資に舵を切る年金基金

13/10

金相場のたそがれ

13/09

新刊『2014年 インフレに向かう世界』まえがき より

13/08

崩壊に向かう新興国経済

13/07

ドルが復権する世界

13/06

激動前夜

13/05

株 売却ブーム

13/04

異次元の世界

13/03

日本の行く末

13/02

株バブル勃発、円は大暴落(新刊まえがき)

13/01

「アベノミクス」がもたらすもの

12/12

浜田教授のリフレ政策

12/11

円を売る時がきた!

12/10

チャイナリスク

12/09

大恐慌か超インフレだ!(新刊「あとがき」より)

12/08

中東情勢の泥沼化

12/07

食糧危機の足音

12/06

ユーロ崩壊へのカウントダウン

12/05

新刊『2013年 株式市場に答えがある』まえがき

12/04

ぶり返すユーロ危機

12/03

円安が始まった

12/02

株式投資の勧め

12/01

上昇転換した株価とその背景

11/12

大波乱の幕開け(最新著『もうこれは世界大恐慌』序章)

11/11

ギリシア救済というトリック

11/10

崩壊に向かう資本主義

11/09

欧州危機と錬金術

11/08

ユーロ崩壊

11/07

逆ニクソンショック(金本位制への回帰)

11/06

2012年、日本経済は大崩壊する!(はじめに)

11/05

スーパーマリオ

11/04

インフレの到来

11/03

今後の経済と生き方

11/02

液状化する世界

11/01

始まった食料高騰

10/12

迫りくる大増税

10/11

物価高騰に備えよ

10/10

まえがき(新著『2011年 本当の危機が始まる!』より)

10/09

中国の謀略

10/08

ニューノーマル

10/07

焼け太ったFRB

10/06

金(ゴールド)相場の映すものは?

10/05

ギリシア問題の末路

10/04

ゴールドマン・ショック

10/03

郵政改革の裏

10/02

金融問題公聴会

10/01

グーグルVS中国

09/12

新興衰退国

09/11

デフレとインフレ

09/10

円高で、為替仕組み債が破裂(破綻続出へ)

09/09

悲惨なアイスランド

09/08

不発弾(米住宅問題)が爆発するとき

09/07

秋に向け、鳴りをひそめている危機

09/06

今後の行く末は?

09/05

ゆっくり進むドル危機

09/04

上昇、やがて、壊死する株式市場

09/03

アメリカン・エキスプレスのキャンペーン

09/02

リーマンと山一證券

09/01

ゲート条項

08/12

ドバイの落日

08/11

ターミネーター


朝倉 慶氏の新刊『日本人を直撃する大恐慌幕』『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、朝倉慶氏の新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売!さらに最新刊 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が5月30日に発売!

『朝倉 慶の21世紀塾』を2009年2月より開始(主催:(株)船井メディア)
朝倉氏の最新情報を【A】レポート、【B】CDマガジン、【C】セミナーから学べます!
詳しくはコチラ→http://www.funaimedia.com/asakura/index.html

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 船井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を船井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。

数霊REIWA公式サイト 佐野浩一 本物研究所 本物漢方堂 ほんものワイン原産地ジョージア 成功塾説法 舩井幸雄動画プレゼント 高島康司先生の「日本と世界の経済、金融を大予測」 メールマガジン登録 舩井メールクラブ 佐野浩一note